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2005.02.27

スペインのご事情、EU憲法とレグラリサシオン

 2月20日に実施されたスペインでの、EU(欧州連合)憲法の是非を問う、加盟国で初めての国民投票だが、賛成多数が見込まれることもあり、それほどには話題にはならなかったようにも思う。私としても、ふーん、スペインでしょ、EUに労働者を送り込む側の国でしょ、補助金とかもがーちょーんと貰っているじゃん、観光で食ってる面も多いしね、で、賛成だってか、ふーん、といった感じであった。
 国内の報道などを見るに、賛成が76.73%と反対の17.24%を大差で上回ったとして喜んでいるトーンが感じられたが、ふと昨日のエントリを書いたあと考え込んだ。この選挙の意味は、投票率も42.32%のほうではなかったか。そのあたりの雑感を書いてみたい。
 話の枕に日本経済新聞記事"スペイン、EU憲法に77%が賛成・投票率は42.32%"(参照)を引用しておく。


 同日深夜(日本時間21日朝)に官邸で記者会見したサパテロ首相は「スペイン国民は欧州の歴史を作った」と各国の先陣を切る投票でのEU憲法承認の意義を強調。「スペインが切り開いた道にしたがって後に続いて欲しい」と述べ、今後国民投票を予定している加盟国に呼び掛けた。焦点の投票率は2004年6月に実施した欧州議会選挙の45.1%を下回ったが、圧倒的な賛成票によって投票所に足を運ばなかった「サイレント・マジョリティー」の幅広い支持を印象づけた。野党の国民党などが投票前に与党の責任を追及する目安としていた「40%」も上回り、国内的にもサパテロ政権への求心力を高める結果と受け止められている。

 前半はどうでもいいし、お目出度いトーンもスルーして、今回の投票におけるスペイン国民の無気力さという点から見ると、昨年の議会選挙の投票率を下回ったわけだ。これはれいのテロ後の反発だったのかもしれない。スペイン国内的には、今回の投票では、40%を割るかというところがテロ後のサパテロ政権の事実上の承認ラインだったようだ。で、この結果の42.32%は、日経の記事のように「サパテロ政権への求心力を高める結果」と見るのは難しいように思う。
 関連ニュースを見直してみた。欧州側では一応安堵。米国はさして関心もないという印象だがそれでも日本よりは報道はある。読みやすいところで、CNNジャパン記事"スペイン国民投票、EU憲法を承認 加盟国で初"(参照)がわかりやすい。

 スペイン内務省によると、総票数1330万票のうち、EU憲法に賛成が76.4%。反対が17.4%、6%が白紙投票だった。投票率は有権者役3500万人のうち42%にとどまった。
 今回の結果を受けて、スペイン議会が批准の是非を決める。スペインは1986年のEU加盟以来、計860億ユーロ(約11兆6100億円)の補助金を受けており、与野党ともに、EU憲法を支持している。

 気になったのは6%の白紙票だが、これが抗議の意図なのかがわかりづらい。もしそうなら、投票率から事実上この分を減算してもいいのではないか。EU憲法を蹴飛ばそうとした前政権のアスナールの影響がまだ残っていると見るのも難しいだろうが、それでも反EUの気風はまだまだスペインにはあるのだろう。とすると、他の国も推して知るべしかもしれない。CNN報道にあるこの補助金だが、来年からはこれが東欧にまわるので、むしろこの時点での投票はかなり仕組まれた印象も受ける。
 ところで昨日のエントリでCASA ROSSAのエントリをぱらぱらと読みながら、スペインに関連して、"不法滞在者 80万人に査証発給へ!"(参照)が気になった。先日スペインで行われたレグラリサシオン(regularización:大赦)である。ニュース的な話については、2月12日の読売新聞記事"スペインが不法移民を合法化 EU諸国、流入懸念し批判"を引用しよう。

 スペイン政府は、国内に滞在する不法移民約百万人に対して一定の条件を満たせば、滞在、労働許可証を付与する大胆な合法化策を今月七日から実施した。移民はいったん、滞在、労働許可証を得れば欧州連合(EU)域内を自由に移動できるため、他のEU諸国からはスペインの政策に早くも批判が高まっている。
 スペインは、不法移民にとって欧州諸国への玄関口となっており、現在、南米、北アフリカなどからの不法移民がスペイン国内で建設業や農業などに従事している。
 同国が不法移民の合法化に踏み切ったのは、地下経済のあぶり出しにつながり年間数百万ユーロ(数億円)程度の税収増も見込まれるためだ。

 先日読売の外信は使えねーとかタメ口をこいたが、反省。よく書けている。というわけで、記事を読んでいただければわかるが、スゲーなである。まず、これってEUに対外民を取り入れるお安い窓口だし、しかも地下経済の吸い上げって、なんだか、それって※クザ?みたいな感じだ。
 今回のEU憲法投票を前にしてのレグラリサシオンなのかよくわからないが、CASA ROSSAのエントリにもあるように今回が初めてではなく、6回目である。
 今後もこの施策が通じるのだろうかということもだが、この状態を他EU諸国がどう見ているかというと、読売記事標題にもあるようにかなりむっとしている。しかし、ここでEU憲法はGOGOにしておきたい…ま、つらいところか。
 今後この流れ、つまり、EU憲法成立への機運と不法移民のバランスはより深刻になっていくのだろう。この当たりのEUの事情が世界にどう跳ね返ってくるのは、私にはよくわからない。大局的に見れば、洒落でなく、EU自体がイスラム圏になりうる。

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コメント

極東ブログ様
あなたのブログはパクルられています。
http://www.bloglines.com/blog/Yochomachisanjin?subid=7270307
記事は散人の記事ナンバーになっている。まるで散人が極東ブログを書いているようにみえるぞ。

投稿: N | 2005.02.28 03:46

EUのイスラム化少し前に切込隊長が触れてますね
http://kiri.jblog.org/archives/001302.html

投稿: (anonymous) | 2005.02.28 06:50

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