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2005.01.04

スマトラ島沖地震津波被害支援、その後の印象

 スマトラ島沖地震津波被害について、この間の、各種ニュースソースの読みも十分ではないし、自分の心のなかの整理もついていないのだが、それでもいろいろ思うことがあるので、ブログの即時性ということで書いておきたい。
 死者は15万人を越えそうだ。こうなってくると数字だけが浮いて被害についての感覚が麻痺してしまう。それでも、私の知る限り昨年の晩秋の時点でダルフール危機では12万人の死亡が推定され、その後の進展もないのと同程度だろうかと思う。ダルフール危機については、昨年半ばから日本でも関心が高まったわりに実際上の解決を向けての進展はない。日本に伝えられる政治ニュースとしては、スーダン南北問題やダルフール反乱軍の動向に関心が移っており、本来の危機の実質から関心が逸れつつあるように見える。ダルフール危機に目を向けろとブログでいきり立つのは意味がないだろうが、津波被害に比して世論の落差を思う。
 津波被害に世界の関心が集まるのは、その規模がすさまじいこともだが、欧州人が多いことも関係しているのではないか。スウェーデン人の被害者が特に目立つ。スウェーデンはバカンス大国とはいえ、また太陽を求める国民性があるとはいえ、千人を超える被害がでる可能性の指摘は、それだけこの地域への旅行者が多いことも示している。他に、イタリア人旅行者なども多いようだ。邦人被害は百人を越える可能性もありそうだ。
 嫌みにとらないで欲しいのだが、世界では昨年テロ警戒ということが言われていたが、反面では国際的な旅行者の実態はあまり変化がなかったのではないだろうか。自分がかつてぶらり旅をした経験でいうと、日本人や米人は意外と集団行動をする。が、欧州人はあまりそうしてない。それだけ旅慣れてもいるのだろうが、統制しづらい。
 国際支援のあり方については、その主導を巡ってすでに国際間の権力闘争の様相があるといった視点がまことしやかに語られ出している。例えば、3日付"スマトラ地震:支援巡り新たな火種 国連主導求める欧州"(参照)などはそうした相貌を伝えているかのようだ。


 パウエル国務長官は31日、ニューヨークで行ったアナン国連事務総長との共同記者会見で、中核グループも「国連の全般的な監督に従う」と解釈できる発言をしたが、前日まであいまいな言い方に終始していた。一方でブッシュ大統領は、津波被害に関する1日のラジオ演説で、米国が国際的な有志連合を主導すると強調した。
 各国別の支援や非政府組織(NGO)の活動を統括するのは本来、国連の役割だ。なぜ米国、日本、インド、オーストラリア、カナダ、オランダの「中核グループ」を構成し、主導するのか。
 米国にとって、今回の震災支援は、国際社会が納得する役割を果たし、イラク政策の失敗をばん回する好機だ。またアジア地域での米国の政治的、軍事的プレゼンスを維持するためにも支援の主導権を握る必要があると見られる。

 そうなのだろうか。私はこの記事に米国への悪意に近い印象を受ける。実際の動向についてよくわからないのだが、こうした政治的な読みを先行させるのは、政治的に言えば、いかがなものか、と思う。
 3日付けとは言え、毎日新聞記者の取材が古いのかもしれないが、同じく3日付け(英国時間)BBC"Earthquakes shake up governments"(参照)でも同じく、今回の津波と国際間の政治駆け引きを扱っているのだが、かなりトーンが違う。

This shift of view itself represents something of a turnaround from the initial judgment that US President George Bush - by stating that four countries, the US, Japan, India and Australia, would take the lead - was undermining the position of the United Nations.

 ここで"initial judgment"と触れているのは、1日のブッシュによる支援有志連合といったものだろうが、その後の経緯はそこからスジ立てできるものではない、というのが、国際政治を見ていくうえで重要になるのではないか。
 パウエルについても毎日の記事では、反米気分を誘うようなネガティブなトーンで書かれているが、BBC記事では逆に近い。

Mr Powell himself referred to the prospect of the United States being seen to reach out to the Muslim world. Indonesia after all is the most populous Muslim country.

Mr Powell is apparently aware of the opportunities both for US foreign policy and perhaps for himself to make a positive impact before he leaves office.


 つまり、国際協調を進めたいパウエルのよい花道となったと見たほうが正確だろう。
 米国と支援についての日本の国内報道をなんとなく見聞きして気になるのだが、この間の米軍の支援活動だ。私の好むVOAなどは大本営でもあるので連日そんな話題だったのだが、ごく単純に見れば、支援の初動として米軍は賞讃されるべきではないだろか。先のBBCでもそう簡単に触れている。

In the current disaster, some effects are already emerging.

The perception of the United States in the world has been changed for the better, with the rapid despatch of a US aircraft carrier to ferry help by helicopter to the survivors in Aceh.


 BBCは英国の報道機関であり、有志連合として親米だからというのは穿ちすぎだろう。個人的に気になるのは、この地域の米軍プレザンスの構造までわかって批判的な報道があればいいことだ。結果として見れば地域は違うのかもしれないが、Diego Garciaなどあまり報道されていなかったように思う(参照)。
 支援を受ける側の、特に、スリランカとアチェの状況だが、この地域は紛争地域ということで、これも一筋縄ではいかない。同じく先のBBCでは、そうは言っても早急に判断せず監視していこうではないか、という英国らしいトーンで書かれている。

The tsunami struck in two countries where there have been major rebellions against central government - Sri Lanka and Indonesia. It is too early to assess its effects, but there will be some.

 あと、余談めいた二点。
 あまり報道に触れないのだが、日本人やインド人は死体を火葬してしていくものだが、被害地域によっては文化・宗教的にそうもいかないようだ。このあたりの問題はあまり報道で取り上げられないようだが、伝染病などを考えるとなんとか対処のしようがないものかと思う。
 もう一点は、国際支援において、中国のポジションが見えない。中国は内政が複雑なのでこうした場合に緊急の行動が取りづらいのかもしれない。いずれ大国然とした物言いが好きな国だが、実際が伴わないという状況なのだろう。華人のネットワークも地域民救済に機能しているのかはニュースからは見えない。

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コメント

ダルフール危機とスマトラ沖地震津波被害の比較について(のみ)書きます。

一方は政治(経済)問題に発するものであり、片方は、もちろん人為的要因(アジアでの急速な開発等)はあるものの直接な源因は自然です。これはメディアの扱い方についても言えるし、情報を受け取る個人サイドにも当てはまる。ルアンダ虐殺については未だに分析も結論も対策もないまま、またぶり返す様相を見せている。イラク戦争はあれだけ個人レベルでの反対の声があがったにもかかわらず始められ、未だに収まる様子がない。メディアには情況の複雑さを報道する意思も時間もないし、第一、スポンサーも着きにくいだろう。
観光客が多い、つまりハンディカムも多いアジア圏での災害は【絵】になるし、感情移入も容易い。たとえば、今回の災害が単にインドに限られていたら、あるいは中国内陸部で起こっていたら(津波はないですが)、これだけの反応はありえなかった。

もちろん、私は今回の災害への反応自体を批判するつもりはありません。亡くなったスーザン・ソンタグが書いたように、報道するメディアがあるにしろ、ないにしろ、またその提示の仕方がどうあれ、現実の【苦しみ】は存在する。他者の苦しみに反応できなくなったら、自己の人間性を疑ったほうがいいと思っています。

今回の【国際社会】の反応については、グローバル化された地球のあり方が顕著に現れていると思います。これはもう少し考えてみたい。
この場合、ダルフールとの比較は有効かもしれませんね。
しかしこれだけの人間が死んでいく、それをすぐ隣で見ているような罪悪感を感じ、息苦しい毎日です。
あと、日本での報道についてはかなり言いたいことがあるんですが、、、これはまた別の話です。

投稿: ねこ仏少年 | 2005.01.04 09:48

どこのチャンネルだったかは忘れましたが、Chinaと書かれた服を着た人たちが作業にあたっている場面が映っていましたよ。被災後2ー3日以内だったと思います。

投稿: むぎ | 2005.01.04 18:13

うーん。火葬というのは専用の炉がない限りかなりの
コストを必要とする(そうしないと生焼け)と、聞いた事があるのですが、こういった場合どちらの方法がよりとられやすいのでしょうか?ホロコーストの記録映像なんかで見られる大きな穴ほって大量に遺体を放り込んで上に石灰のせて埋める、というのが戦争とか自然災害でのむしろ自然な葬り方では、と思いますが、誰か詳しい人お願いします。

投稿: 猿小玉 | 2005.01.04 23:52

短時間に焼き尽くす火葬なら費用がかかるでしょう。
穴を掘ってそこに死体をいれて長時間焼くのであればさほど費用はかかりません。そのうち、死体が燃えはじめて次から次へと死体を放り込めるようになるでしょう。

今日もコンビニに100円。

投稿: 禊マン | 2005.01.05 09:21

もともと人口が多く、埋葬に適する土地が少なかったインドで火葬が一般化したのは理解できます。高温で熱帯病も発生しやすい。(日本でも土葬から火葬へと移行したのも土地不足が原因だと思う。)

あと、津波の影響で土が粘土化し墓穴がほれない、という説明をTVがしてました。

キリスト教徒は魂と身体についての独特な感性を持ち、火葬を受け入れにくい、というのはあると思います。

投稿: ねこ仏少年 | 2005.01.05 16:59

>伝染病などを考えるとなんとか対処のしようがないものかと思う。

被援助国として有名な南アジアの某国(イスラム教国)で、援助活動の一環としてバースコントロールを主体とした家族計画を普及させようとした時、現地の人の間では
「(コンドーム・ピルなどで)人間が子供の数を制限するのはイスラムの教えに反する」
という意見が強かったそうです。
そこでとある海外援助機関は、まず各集落のイマーム(キリスト教の牧師、神父にあたる)を集めて説得し、
「バースコントロールはイスラムの教えに反しない」
という解釈を一般に広めることから始めた。
そのかいあって現在では家族計画に抵抗感がある人はあまりいないようです。

この方法が「火葬」にも使えませんかね?時間がないか・・・・・・。
でも、ブラジルの建築家リナ・ボ・バルジ(イタリア人だが8年間のブラジルでの活動後、37歳の時帰化)が、現場の作業員たちが食事のことでストライキを起こした時、牧師を呼んでミサを開くことであっと言う間にストライキを収めたというエピソードがあります。
ストライキの原因は支給される食事が、ある日突然伝統的なフュージャンという豆料理から大豆に変わったこと。フュージャンでなければ力が出ないという彼らに対して、牧師が「フュージャンがなくても大丈夫、大豆を食べても問題なく作業ができますように」と祈ったとか。
(出典:現在休刊中の雑誌「X-Knowledge HOME」 2003年12月号)

でもフュージャンと火葬じゃ・・・・・・。

投稿: 西方の人 | 2005.01.05 20:53

中国に関してこんな記事が出てきましたね。
http://www.sankei.co.jp/news/morning/06int002.htm
中国もやってはいるけど、アメリカや日本の前に霞んでいるというところでしょうか。

投稿: (anonymous) | 2005.01.06 11:49

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