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2005.01.20

イラク石油食糧交換プログラム不正と日本国内報道

 イラク石油食糧交換プログラム疑惑が「疑惑」といったレベルから脱しつつある。予想されていたこととはいえ、一昨日大きな転機があった。暗躍していたイラク系米国人が米国裁判で起訴事実を認めた。つまり、このプログラムに不正があったことはかなり明確になった。
 被告はイラク系米国人サミール・ビンセント(64)で、1998~2003年にかけて、制裁をすり抜けて石油の闇取引をするため、国連及び米政府の担当者にロビー活動を展開し、さらにこの闇取引から500万ドルほどの利益を上げていた。
 基本的なことを繰り返すとまたブログのレベルが低いぞとお叱りを受けるかもしれないが、この不正はフセイン政権が国際世界を騙していたという不正でもあるのは当然だが、重要なのは国連が噛んでいたからこそできた不正だった。国連は制裁の裏側で石油の闇取引に荷担していたのである。その意味で、この問題の一つの焦点は国連ではある。が、本丸はこの不正の重要なプレーヤーが米仏露という国家が絡んでいる点だ。米国の手が汚れてないわけはない。ロシアもそうだが、ロシアの石油ビジネスはすでに大きな転機にあり、やや陰謀論的な推測なのだがプーチンはこの問題で事実上ブッシュとあるレベルまで合意ができているだろうと私は推測する。問題は、フランスだ。すでに一部高官が名指しされ、スイスの闇口座なども一部は事実上は解明している。これにアナンの息子コジョも噛んでいると見られるのだが、現状ではコフィーへの疑惑は一部は明白に解明されているものの、大枠のイラク石油食糧交換プログラム疑惑のなかでは解明されていない。当然、このスジ上にアナンとシラクがいるのだが、こう言うといかにも陰謀論みたく日本では聞こえのだろうが、私の感触ではこれはすでに国際的な常識である。
 つまり、問題は、この問題を誰がどこまでなんのために解明するのか、ということになっている。端的に言えば、イラク石油食糧交換プログラム不正は、EU対米国、国連対米国、OPEC対ブッシュ&サウジ王家、という対立の利害のカードゲームとなっている。
 どうしたらいいのかだが、この問題は日本の国益も関連してきているので、単に真相を明らかにせよという単純な主張にはならない。特に国連に大金を拠出しているのだからそれ相応の矜持が必要なのだが言うに虚しい。
 ちょっと言い過ぎだが、この問題について日本の体制左翼の認識は甘すぎてというか、端的に言うと中国の代弁しかしていないので困ったものだなと思う。言うまでもないが昨年の貿易実績を見ても明らかだが中国はEUとの関連を深め、米国&ドルから離れつつあるし、米国はそうした対立をいいことに日本をからめた中台緊張に軍産業の活路を見いだそうとしている。また、OPECやサウジといった旧体制の石油産出国との関連で中国はアフリカや南米に権力を伸ばそうとしているのだが、それはそれで大国面して勝手にやってもいいともいえるのだが、アフリカの人権問題への配慮があまりに乏しい。特にダルフール問題への国連の関与の足を引く効果を上げていて、嘆かわしい。中国は元来自国民を国軍で殺戮するような国家なので人権を説くのは無意味だが、それにしても、もう少し表向きだけでも国際ルールとして人権を配慮してもよさそうなものだ…がそのあたり国内の体制左翼は自民党橋本派並に頭が古い。せめてガーディアンでも読んでゴードン・ブラウンでもプッシュしてIMFの金(キン)の解体でも支援しろと思うのだが…。
 話を戻す。今回がサミール・ビンセントが罪を認めたというニュースだが早々国際的にはトップニュースとなり昨日の極東ブログ・エントリ「朝日新聞の変な外信」(参照)をささっと書いているときにすでにGoogle News(米国)の国際ニュースのトップ項目になっていた。が、上にうだうだ書いたように今回の解明それ自体がニュースバリューを持つという時節でもなく、むしろ、日本人として見ると、このニュースがどう国内に報道されるかということが重要だと思えたので、昨日はそのようすを時折ワッチした。
 結論から言うと、国内報道が出た。先日、これも極東ブログ「国連ヴォルカー調査が発表された」(参照)を書いた時点では、国内報道はどうなってんだと思ったものだが、以降子細に見ると、主要紙もそれなりにベタレベルだが言及はしていた。その意味で、今回の報道もベタ程度には出るだろうなとは期待した。というわけで、話を日本との関わりにおいて、国内での今回のニュース報道について少し話を移すというか、このエントリのネタはそちらのほうが主眼でもある。
 正確に追ったわけではないが、国内報道の流れは、こんな感じだったかと思う。意外なのだが、TBSが先行していたようだ。該当ニュースは"石油食糧交換計画巡る不正疑惑で起訴"(参照)である。時刻は、8:30。


 国連のイラク石油食糧交換計画をめぐる不正疑惑で、18日、アメリカの司法当局はイラク系アメリカ人の男を 起訴しました。
 「1996年から 2003年にかけて、 ヴィンセント被告は 9百万バレル以上の石油を 数百万ドルで売ったことを 認めている」(アシュクロフト司法長官)
 起訴されたのはイラク系アメリカ人のサミール・ ヴィンセント被告です。

 内容の流れを見ると、これはCNNからの流用っぽい。CNNにも邦文"石油食料交換計画の不正、イラク生まれの米国人を訴追"(参照)が上がったので、邦文ではあり邦文報道は時間的には遅れているのだが、比較してみると面白い。

(CNN) アシュクロフト米司法長官は18日、記者会見し、旧フセイン政権下のイラクに対する国連の人道支援事業「石油・食料交換計画」をめぐる不正疑惑について、イラク系米国人1人を訃報取引などの疑いで訴追したと明らかにした。
 長官によると、ニューヨークの連邦地裁に訴追されたのはサミール・ビンセント被告(64)。同被告は外国政府の代理人として必要な登録をしないまま、98~03年にかけてフセイン政権の指示に従い、経済制裁緩和のため秘密裏のロビー活動を国連や米政府担当者に対して展開した。またイラク原油900万バーレルを転売して、300万~500万ドル(約3億~5億円)の利益を得たという。
 長官によると、ビンセント被告はニューヨーク連邦地裁で同日開かれた審理で、罪状を認めたという。

 それに遅れて10:54にニューヨーク18日時事(参照)が流れた。が、この記事では起訴までにしか触れられていなかった。時間的に見て、すでにCNNやABCなどでも出ていたので、時事の側になにか問題がありそうだ。
 共同も出してきた。共同記事は地方紙にコピペ(Copy&Paste)で配信されるので、記事数は増えた。むしろ、大手紙側がよくわからない。大手紙の外信をまとめているgooの外信のリストには上がっていないようだ。
 共同の記事はネットから閲覧できる最初のものとしては、徳島新聞"石油交換疑惑で初の訴追 米国人が違法に利益"(参照)があるが、そのタイムスタンプを見ると、" 10時38分"なので時事より速い。

【ニューヨーク18日共同】アシュクロフト米司法長官は18日、記者会見し、経済制裁下にあったイラク向けの国連の人道支援事業「石油・食料交換計画」をめぐる疑惑で、イラク生まれの米国人1人を旧フセイン政権のために違法な活動をした罪で訴追したことを明らかにした。この疑惑での訴追は今回が初めて。

 後半があるが、内容はほとんどベタ。時事のベタ記事は無視されることも多いので、今回の報道の事実上の引き金となったのは共同のようだ。が、繰り返すようだが、共同はできるだけ無色な記事としているので、その意味がわかりづらい。その点、先のTBSでは、こんなオチがついている。

 まもなく退任予定のアシュクロフト司法長官が、このタイミングで起訴したのは、国連に対する けん制とみられてます。

 昨日の極東ブログ・エントリ「朝日新聞の変な外信」(参照でひいた朝日新聞の外信と比べると、お楽しみいただけるかと思う。
 共同の記事のまま流せない大手紙だが、遅れて東京新聞が記者名入りで"旧フセイン政権 代理人罪認める 国連支援事業公判"(参照)を出したが、共同ベタに近い(仕事してね)。毎日新聞は、この問題を一昨年前からときたまワッチしてきたこともあり少しヒネリがある。以下はトリビアネタになりそうだ。

同被告は58年に渡米後、ボストン大を卒業。陸上選手として活躍し、64年にはイラクのオリンピック代表の1人にも選ばれている。

 と微笑んで終わりという以上に、サミール・ビンセントは当然対外フセイン派なので同じく人間の盾などで活動した日本国内の同派ともつながりがあるのではないかと私は推測する。
 毎日新聞外信で優れているのは次の点だ。

 この起訴を機に、米司法当局の捜査や国連の独立調査委員会(委員長、ボルカー前米連邦制度理事会議長)の疑惑解明に弾みが付きそうだ。

 ヴォルカー調査はまだ終わっていない。6月にさらに報告書が出るらしい。この点は、むしろCNNが面白い。

石油食料交換計画の不正疑惑を調べている米独立調査委員会(委員長・ボルカー前米連邦準備理事会(FRB)議長)は、同被告から事情聴取できるよう希望するとコメントを発表した。

 つまり、ヴォルカーとしては後手に回ったというか、ばっくれるわけにもいかないか、ということなのだろう。
 以上、今回は国内報道の側に焦点をあてたのだが、今ざっと大手紙の外信を見るに、まだニュースは上がってないようだ。大手紙がこれからどう出てくるのか、それと、共同がどう外信を捌いているのかが気になるところだ。
 っていうか、こんなの、英米圏のネットを覗けば筒抜けに見えることなので、ブログが興隆してくると、こうした日本での外信の流れに別の流れがでてくるのではないだろうか。ブログはジャーナリズムかとか、一次ソースがとかいう議論より、国際的なニュースと外信の関係がブログで底上げすると、日本国内の対外的な世論の質も変わってくるだろうと思う。

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コメント

世界のトップニュース(Googleニュース英語版)が日本でベタ記事、しかも大手では出ていない所あるなんて、日本は大丈夫なのでしょうか。国内の報道だけ見ていると浦島太郎になったりして。21世紀だよ今は。

投稿: hasenka | 2005.01.20 11:15

本題とは関係ないですけど、
> 闇取引から500万ドルほどの利益
隊長すげーな、と思いました(笑)

投稿: (anonymous) | 2005.01.20 21:43

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