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2005.01.19

朝日新聞の変な外信

 朝日新聞バッシングをしたいという意図はないし、こんなのスルーしといてもいいかなとも思ったのだが、この手の問題は日本国内のネットではあまり話題にも上らないだろうし、記録として残しておくのもいいだろうかとも思うので、簡単に書く。国連の石油食糧交換プログラム不正疑惑についての16日付の朝日新聞記事"アナン事務総長、対米改善へ動く 国連高官すげ替え"(参照参照)についてだ。
 話の概要は新聞記事らしく冒頭に書かれている。


アナン国連事務総長が、「国連たたき」を続けるブッシュ米政権や米議会との関係改善策を探っている。米側の覚えが良くない高官の一部をすげ替え、意思の疎通を向上させるのが眼目のようだ。米政府との関係悪化に気をもむ米民主党系の外交畑重鎮たちの助言をいれた結果と言われる。だが、関係悪化の根底にあるイラク問題を巡っては、アナン氏も譲歩の姿勢は見せておらず、効果を疑問視する声もある。

 一読、なんだかなぁという感じだが、でもこの程度なら朝日新聞だものね、産経新聞だって別の意味でこんな程度だものね、と思う。
 ついだが、この話題のニュースとして重要なのは次の点だ。

 高官すげ替えの第1弾は、3日に発表されたマーク・マロックブラウン国連開発計画(UNDP)総裁の国連官房長併任だった。

 つまり、マーク・マロック・ブラウン(Mark Malloch Brown)が重要人物ということ。この話は彼が英国人ということで、いつもなら芳ばしい対立を描くガーディアンもテレグラフも仲良く嬉しいなのトーンの記事だったのが笑えた。ニューズウィークにもインタビュー記事が掲載された。日本版には掲載されないみたいだが。
 ちなみにガーディアン"Take the lead, Kofi "(参照)は今回の人事をこう描いている。

It is understanding of the need for change that has brought Mr Malloch Brown from the UN development programme to Mr Annan's office, which is braced for a forthcoming report on the oil-for-food row and the certainty that it will give Washington more ammunition. Supporters of the UN, like this newspaper, are often accused of being too reverential. That is to misrepresent the reality of an organisation that can only be as good as its members. The UN is far from perfect, but the only world body we have, still dominated by the victors of the second world war, and needs reform, not marginalisation.

 ガーディアンも左派というかリベラルな新聞だが、朝日と比べるとなんと謙虚な姿勢だろうかと思う。彼ら自身と国連の関係を理解し、そして国連は完全ではありえないという現実的な視点を持ち合わせている。朝日新聞もこのレベルになるといいのだが。
 話を戻して、朝日新聞の先の記事だが、これを読んで、おお、燃料投下だ!と思ったのは次のくだりだ。

 米政府や議会の「国連たたき」は、表向きはイラク・フセイン旧政権時の「石油と食糧の交換計画」での不正疑惑を持ち出すという形をとることが多いが、根源は国連がイラク政策を批判し続けることへの不満にある。

 こんなの新聞が書いていいことなのか。なんの根拠も示されていない独断でしかないよ。極東ブログも陰謀論とかご指摘を受けるけど、ここまで独断はしてないと思うが。ま、それでもブログと新聞は違うはずだが。
 私の見落としかもしれないけど、それまで朝日新聞って石油食糧プログラム不正を扱ってきただろうか。コフィーのだめ息子の不正とか扱ってきたのか。それどころから、ヴォルカー調査の結果について触れていたのだろうか。十分ではないけど、国連に問題があることはこれまでの過程で明白になっている。国連も一部だが非を認めている。というか、より多くの不正が暴かれることへの防戦にあるように見える。確かに米政府や米議会は国連を批判することが多いが、それでもこの記事の独断のような話ですむことではない。今朝もこの問題の新たな進展のニュースがニューヨーク・タイムズを含め各紙で上がっている。一例は"Virginia Man Pleads Guilty in Oil-for-Food Inquiry"(参照)である。
 このあたりも、苦笑ということかなと思うのだが、が、その先はテクニカルに困惑した。というか、ここがこのエントリのキモなのだが。朝日新聞記事はこう書く。

 こうした動きに関し、国連寄りの論陣を張ってきたニューヨーク・タイムズ紙の社説は10日付で「不当かも知れないが、ワシントンの協力が必要だから」と高官すげ替えもやむなしと断じた。民主党系重鎮の意向と軌を一にした動きとみられる。

 ここで私は、おやっ?と思ったのだ。あれ、ニューヨーク・タイムズ社説ってそうだったっけか?
 ここでちょいと確認なのだが、朝日新聞のこの記事だと、ニューヨーク・タイムズがなぜ「ワシントンの協力が必要だから」としたのか、どう伝わるのだろうか?
 記事の冒頭を繰り返す。

アナン国連事務総長が、「国連たたき」を続けるブッシュ米政権や米議会との関係改善策を探っている。米側の覚えが良くない高官の一部をすげ替え、意思の疎通を向上させるのが眼目のようだ。

 つまり、関係改善=「ワシントンの協力が必要だから」というふうに読まれるのではないか。
 当のニューヨーク・タイムズ社説"Housecleaning at the U.N."(参照または参照)の対応部分を読んでみよう。こう書いてある。

It is no secret that the re-elected Bush administration would like to force out several highly competent officials who have disagreed with it over Iraq or other sensitive issues. Some may have to go, however unfairly, since the United Nations cannot do its very necessary work - from helping tsunami victims to delivering on the promise of real help for the billions trapped in absolute poverty - without at least minimal cooperation from the United States.

 つまり、国連が津波被害者や絶対的貧困援助という仕事をするためには、最小限であれ米国の支援なしにはできないよ、というのがニューヨーク・タイムズ社説の意図だ。ただ、米政府や議会からの「国連たたき」を受けているのでしかたなしに高官すげ替えという妥協をしたというのではないのだ。国連には大きな任務があるのだから、この妥協もしかたがない、というように国連の責務の自覚に主眼が置かれている。そこが朝日新聞記事から読みとれるだろうか。ニューヨーク・タイムズの立場はガーディアンのように基本において国連が不完全なものであるという認識が前提になっている。
 朝日新聞の読解力って大丈夫?的問題なのか、意図的なねじ曲げなのだろうか。
 朝日新聞の記事はエール大学国連研究所のサタリン上級研究員の言葉を借りて締めている。がこれもなぁ。

このため、サタリン氏は「ブッシュ政権は今後も声高ではないにせよ、アナン氏批判を続け、米議会も国連に批判的な姿勢を崩さない」と、今回の関係改善の試みに悲観的な見方をしている。

 人の言葉を借りているけど、朝日新聞は、米国と国連の関係はうまくいかないよというのだ。
 朝日新聞って、改革されない不正体質の国連と米国がうまくやっていけ、とか思っているのだろうか。それ以前にアフリカ問題などでも自縄自縛の現状でもいいと思っているのだろうか。やれやれ。

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コメント

どうやら朝日が国連を過大評価しているというのを主張したいようですが、この記事中で朝日が国連を位置づける記述をしているようには見えませんし、関係改善=「ワシントンの協力が必要」は朝日の記事を読むだけで誰でも普通に「最小限であれ米国の支援なしにはできないよ」と理解できるのではないでしょうか。

いままで結構筋の通った文章も多いと思っていたこのブログがここまで支離滅裂な文章を載せるようになったのが残念です。タイトルの付け方や書き出しに見られる幼稚なテンションが収まってから、堂々と「朝日新聞をバッシングする」と断言して論理的な記事を書いてくださることを朝日嫌いも朝日好きも期待していると思います。頑張ってください。

投稿: s | 2005.01.19 17:20

いつもの***さん節だと思いますが、
何か変?

投稿: (anonymous) | 2005.01.19 18:13

別に変じゃないと思いますよ。まあ色んなこと言う人がいますが、あまり気にしないで読み応えのある記事を書いてくれることを期待しています。

投稿: a | 2005.01.19 18:40

国連もアメリカもお互い意地はらずにいてもらいたいです。
ただ、朝日新聞の解釈はちょっと釈然としない節もあります。
もっとも、ニューヨークタイムズの考えが正しいとは限りませんが。

投稿: 棚旗織 | 2005.01.19 20:58

国連事務総長の長男と石油食糧交換プログラム不正疑惑の話も以前取り上げられてたし、いつも通りの記事に見えますがね。まぁ朝日は今NHKの話であんなことになってますからナーバスになってるのかな?

投稿: | 2005.01.19 22:32

NHK問題での朝日の対応を見てると、北朝鮮政府のそれを連想してしまいます。あと一昨日、朝日放送の「TVタックル」という番組で、日本のツナミ復興支援金外交を巡って、国連について言及していたのですが、「これらは常任理入りの為のポーズだが、最近は国連の人道支援を巡る不正疑惑が発覚している。もし事実なら、私達の税金は正しく使われていないという事になる」と、イラクのイも、オイルのオも言ってませんでした。「韓国、戦前戦中、国連」の話題になるとすぐにコレだから困ります。

投稿: 通りすがり | 2005.01.19 23:09

読み解いてくれているので裏側の流れが分かるけど、素のままでは単純に元情報から離れすぎて狂ってるとしか...外信がこんなレベルとは寒気すら覚えるなぁ

投稿: i | 2005.01.20 01:02

国連を過大評価というより、アメリカ現政権は国連と犬猿の仲である ということを朝日新聞としては主張したいのでしょう。 ところで、朝日新聞って批判するとこうやっていろいろ難癖つけられるあたり、朝日って「愛されている新聞」なんだな、と感心することしきり。

投稿: ぷー | 2005.01.20 01:33

ははは、と笑ってしまいました。
朝日新聞はウェブ板の記事タイトルぐらいしか読んでないのでなんも言えんのですが。

>改革されない不正体質の国連と米国が、、、
という前提で朝日を読んでは腹は立つだろうな、と思ったですよ。

別口ですが、アフリカ問題は非不正体質になった国連と米国と朝日が一緒になんかしても解決には二世紀近くかかると思います。
あと国連とは単に国家群が集まる《場》なのだということがなかなか理解できてない日本のヒトが多い気がします。

投稿: ねこ仏少年 | 2005.01.20 08:35

幹部職員の更迭という事実に対し、「アメリカの圧力だ!」と糾弾したいのが朝日新聞で、「(圧力ではあるが)やるべき仕事があるのでやむを得ない」というのがニューヨークタイムズ紙なんでしょう。朝日が若干自らの立場に引き寄せて書いている感がありますが、意図的なねじ曲げとまでは言えないと思います。
あと、「朝日新聞をバッシングするつもりはない」という書き出しはむしろ朝日的な何かを感じて気になりました。

投稿: p | 2005.01.21 00:56

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