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2005.01.25

OECD対日経済審査報告と毎日新聞社説でちと考えた

 理解してないこと書くんじゃねーと言われそうだが、気になるので書く、というか、ブログを通して教えていただければ儲けものという不埒な意図である。話のきっかけは昨日の毎日新聞社説"財政展望 本当に破たん避けられるか"(参照)である。内容の大筋は毎度毎度の、一部財務省パブリシティですかぁ、みたいなのだが、ちょっとスルーできないなと思ったのは、経済協力開発機構(OECD)対日経済審査報告とのからみだ。まず、毎日新聞社説の提起はこう。


 内閣府と財務省が中期の財政展望を公表した。また、経済協力開発機構(OECD)も対日経済審査報告で、財政再建に注文を付けた。日本経済が国、地方を合わせて国内総生産(GDP)の1.7倍もの長期債務を抱え、財政政策が機能不全に陥り、金融政策に過度の圧力がかかっている状況下では、財政再建の信頼できる改革と展望を提示することは何よりも重要なことである。

 OECD対日経済審査報告のキーワードが入ってなければスルーなのだが、そこを毎日新聞社説はどう捕らえているのか気になって読むのだが、そこがわからない。
 話が錯綜するかもしれないが、毎日新聞社説としては、状況をこう見ている。つまり、構造改革や予算改革が加速化できなければ、公債等の対GDP比率は190%に近付き、国債発行の幾何級数的な増加が起こりかねない、と。

それを避けるには、国債発行を減らしていくしかない。財務省は国債の海外での消化拡大を目指し、投資家説明会を開始した。海外の投資家の保有比率が高まることで、相場の乱高下を危惧(きぐ)する声もあるが、一方で、市場での評価も厳しくなり、常に有利な条件で消化できるわけではなくなる。財政改革の一助にもなりうる。

 国債発行を減らすというのはそうかもしれないとは思うが、海外の投資家の保有比率が高まるというのはわからない。あんなもの買うやついるのか?
 私がよくわかってないのだが、国債発行を減らすというのはそうかもしれない、として、それでどうやってデフレを克服せいと? もうデフレじゃないのか、と。まぁ、それとこれとは話が別かもしれないので、これはこのくらい。
 当初の問題意識に戻るのだが、OECD対日経済審査報告関連で、毎日新聞社説はこう書く。話のスジは、基礎的財政収支の黒字化が13年度と見られているということについてだ。

そうであれば望ましいが、OECDが指摘するように、仮に、基礎的財政収支が黒字化しても、国・地方の公債と借入金の残高が200%を超えている可能性がある。

 この点をOECD対日経済審査報告で確認してみた。キーワードは200%ということで単純に見たので、基本のハズシかもしれないが、該当箇所と思われるのはこれだ。"Economic Survey of Japan 2005: Achieving fiscal sustainability"(参照)より。

Even if consolidation advanced at the 1/2 per cent of GDP pace included in the Perspective, it would take more than a decade to meet the target, by which time gross debt might have risen to 200 per cent of GDP or more, imposing a significant burden on the economy and increasing the possibility of a rise in the risk premium.

 この部分について言えば、毎日新聞社説が外しているわけでもないのだが、この先はこう続く。

The negative impact of the high debt in Japan, however, is limited by the high private-sector saving rate and the low level of interest rates. Nevertheless, the medium-term plan should be more ambitious, even though special circumstances make fiscal consolidation more challenging in Japan than in other OECD countries. At a minimum, the government should achieve its goal of a 1/2 per cent reduction in the budget deficit per year.

 というわけで、トーンとしては地味な緊縮財政でなんとかなるっしょ、というのがOECD対日経済審査報告のように思える。それって毎日新聞社説のトーンと違うような…。
 些細な点だけ取りだしたようだが、ざっとOECD対日経済審査報告を読む限り、全体として毎日新聞社説のトーンとは逆のように感じられる。そのあたり、どうよ?というのが、冒頭、気になるということだ。
 OECD対日経済審査報告については、国内ニュースとしては、日経"OECD、日本の量的緩和解除は物価上昇率1%メドに"(参照)があった。先にちょっと触れたが「それでどうやってデフレを克服せいと?」というのの対応がやはりメインになっているとみてよさそうだ。

政策の焦点を「デフレからの脱却に当てるべきだ」と強調、金融の量的緩和策を巡り「日銀は解除の条件について、例えば物価上昇率1%とするなど十分高く設定するように」と注文を付けた。

 そして、具体的にはこう。

量的緩和策については、仮に消費者物価がプラスに転換しても拙速に解除しないよう強調した。日銀政策委員会が2003年10月に公表した解除の条件に基づくと「インフレ率がわずかでもゼロ以上になれば解除の可能性があり、日本経済がデフレに押し戻されかねない」と懸念を表明した。

 私もざっとOECD対日経済審査報告を読んだが、そんな感じだ。そして、この報告書を、単純な話、そっくり日本の財政政策にすればいいのではないか、あるいは、すでにそういうことになっているという感じもする。
 誤解されかねない言い方だが、毎日新聞社説批判とかではないが、今回の毎日新聞社説のトーンはたぶん財務省の一部あるいは特定の派の代弁ではあるのだろうが、対外的にみると随分ローカルな意見だなという感じがする。
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自治体破産
再生の鍵は何か
 が、だが、毎日新聞社説は明確に書いてないが、これってやがてくる地方財政の破綻実態への衝撃に備えよということではないのか。「日本経済が国、地方を合わせて国内総生産(GDP)の1.7倍もの長期債務を抱え」のポイントは「地方」か。
 先日、「自治体破産―再生の鍵は何か」を読んで、地方自治体というのはかつての銀行のように制度上破綻できない仕組みになっているだけで、実態は破綻に近いようだと思った。呆れたのだが、団塊世代地方公務員の退職金などのメドもまるで試算されていないようだ。

二〇〇七年度に大量の退職者が予想されているにもかかわらず、日本の多くの自治体がそれに対する備えも充分にすることなく、いたずらにときをすごしているのは無策の批判を免れないではないだろうか。この問題に関する限り、自治体の多くが「出たとこ勝負」を決め込んでいることが懸念される。

 ちょっとうなってしまう。地方自治に関してまだ開示されていないファクターが大きく、実際にはOECD対日経済審査報告のシナリオみたいには進まないのではないのか、っていうか、そのあたりがクリアに見えないものかと思う。

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コメント

>呆れたのだが、団塊世代地方公務員の退職金などのメドもまるで試算されていないようだ。

まさか徳政令で無かった事に、という訳にもいかないでしょうし、
現実的対策としては退職金の分割払いなんかどうでしょうか。
50年頑張って生き抜けば全額受け取れますとか。
親父のシベリア抑留の恩給が分割払いでした。

投稿: くろちゃん | 2005.01.25 20:51

地方自治体も破綻しますよ。財政再建団体といいます。

投稿: cider | 2005.01.25 22:04

>>くろちゃん
つ[輪転機]

投稿: シャイロック | 2005.01.26 04:29

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