ディエゴ・ガルシア(Diego Garcia)の津波
スマトラ沖地震が発生し、その被害がスリランカからインド洋を越えてアフリカにまで及ぶと聞いたおり、私が気になったのはその中央に位置するディエゴ・ガルシア島(Diego Garcia)の被害状況だった。結果としては被害はほぼなかった。
ディエゴ・ガルシアはスリランカの南西、インド洋中央部にある島で、英国領であったことから、ここに英国と米国海軍の基地が置かれている(参照)。
この島は米英が中東に軍事作戦を展開する上で非常に重要な拠点ともなるのだが、軍事展開をするには補給面で弱点があるようだ。同じく珊瑚礁に載った沖縄本島のようには十分な石油施設がない。ディエゴ・ガルシアの場合は地下や臨海部に給油設備を作ることが難しいのだろう。自衛隊のインド洋沖での補給は、実質このディエゴ・ガルシアの運用に組み込まれている。今回自衛隊の起動がやや早かったのはここからの移動だったと思う。米国からの通知が先行した可能性はないのだろうか。
ディエゴ・ガルシアのホームページ(参照)には、現在津波情報が申し訳程度に掲載されている(参照)。情報は、AP"Geography Protected U.S. Diego Garcia Base"(参照)のほうがやや詳しい。ディエゴ・ガルシアの津波被害について、私は当初環礁による効果かと思っていたが、むしろ海溝の影響らしい。
The atoll is in the Chagos Archipelago west of the Chagos Trench, a 400-mile-long underwater canyon that runs north and south and plunges to depths of more than 15,000 feet in some areas. The trench is one of the deepest regions of the Indian Ocean."The depth of the Chagos Trench and grade to the shores does not allow for tsunamis to build before passing the atoll," the Navy said. "The result of the earthquake was seen as a tidal surge estimated at 6 feet."
今回は津波被害が少なかったものの、洋上の孤島ともいえるディエゴ・ガルシアに軍事基地を置く以上、津波に対する警告システムが存在しないわけはない。このことは、台風銀座の在沖米軍が気象に敏感であることからも推測できる。では、それはどのように動いていたのか? はっきりとしたことはわからないものの、ある程度推測が付く段階になってきた。
パキスタン紙なのでその点からの偏向はあるかと思うが、デイリータイムス"US had advance warning of tsunami: Canadian professor"(参照)はカナダ人マイケル・チョスダブスキー(Michel Chossudovsky)教授の見解を引いて、今回の津波を米軍が十分事前警鐘可能な時点で察知していたとする話を載せている。同記事では専門家とあるが、彼の専門分野は経済学なので、チョムスキー同様場違いな土俵で息巻いているだけと見てもいい。いずれ、他科学者からの裏付けや他のスジからの裏付けがないと愉快な与太話のネタになるのだが、いずれにせよ、この話でポイントとなるのはディエゴ・ガルシアだ。
Prof. Chossudovsky writes, “It is worth noting that the US Navy was fully aware of the deadly tidal wave, because the Navy was on the Pacific Warning Centre’s list of contacts. Moreover, America’s strategic Naval base on the island of Diego Garcia had also been notified. Although directly in the path of the tidal wave, the Diego Garcia military base reported ‘no damage’,” All that was needed was for someone to pick up the phone and call Sri Lanka, he adds. Charles McCreery, director of the Pacific Tsunami Warning Centre, said, “We don’t have contacts in our address book for anybody in that part of the world.” The fact is that only after the first waves hit Sri Lanka did workers at National Oceanic and Atmospheric Administration’s Pacific Tsunami Warning Centre and others in Hawaii start making phone calls to US diplomats in Madagascar and Mauritius in an attempt to head off further disaster. “We didn’t have a contact in place where you could just pick up the phone,” Dolores Clark, spokeswoman for the International Tsunami Information Centre in Hawaii has said. “We were starting from scratch.”
この話をどの程度に受け止めるかだが、事実としてディエゴ・ガルシアでの気象システムは機能していたのだろう。また、ここからわかることだが、先のAP通信記事もホノルル発だったが、これらの情報はいったんハワイに集められるようだ。
好意的に見るなら、ディエゴ・ガルシアの被害想定が弱かったことが、スリランカや東南アジア地域への情報が十分に行かなかった理由となるのかもしれない。それ以前に、ホノルルから米軍系の通報が出されても、今回の被災地域では通報が行き渡るシステムはなかったのかもしれない。
津波関連ではないが、ディエゴ・ガルシアについては、いろいろ困惑する話がある。原住民の帰還問題については"ディエゴ・ガルシア"(参照)などで邦文で読める。また先日のサロン・コムではガーディアン記事"Indefinite and secretive"(参照)でこの島にガンタナモのような施設があるらしいことも報じられた。
The CIA is also reported to be holding about 30 senior al-Qaida officials in secret detention centers at Bagram Air Force Base near Kabul, Afghanistan; on Britain's Indian Ocean island, Diego Garcia; and on U.S. ships at sea. British officials have denied knowledge of such centers at Diego Garcia.
ディエゴ・ガルシアは、サンダーバード基地を隠しているわけでもないのに、なにかと秘密が付きまとう島でもあり、日本も結果的に深く関与しているのが気にかかるところだ。
| 固定リンク
「時事」カテゴリの記事
- 歴史が忘れていくもの(2018.07.07)
- 「3Dプリンターわいせつデータをメール頒布」逮捕、雑感(2014.07.15)
- 三浦瑠麗氏の「スリーパーセル」発言をめぐって(2018.02.13)
- 2018年、名護市長選で思ったこと(2018.02.05)
- カトリーヌ・ドヌーヴを含め100人の女性が主張したこと(2018.01.11)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
年末に友人(日本人)の家に遊びに行った時、その友人が
「米国は津波を事前に察知して、自国と友好関係にある国にだけ知らせた。で、インドには知らせなかったらしい」
と言っておりました。(情報源不明。)
タイ政府が津波が来ることを知っていて警報を出さなかった(読売新聞より)ということは少なくともタイは米国の友好国(←名だけでなく実質的にという意味で)なんだな、とそれを聞いて初めて認識しました。
投稿: 西方の人 | 2005.01.05 11:02
ディエゴ・ガルシアに付きまとう秘密といえば、John Pilgerという人も書いていましたね。
http://pilger.carlton.com/print/133384
投稿: むぎ | 2005.01.05 18:36
「暗いニュースリンク」に掲載された
http://hiddennews.cocolog-nifty.com/gloomynews/2005/01/post_1.html
アル・ジャジーラ2004/12/28付け記事によると米国海洋大気庁は津波を察知したものの監視体制が確立されてないこともあって、誰に知らせるべきか分からなかったとありますね。
タイが警報を出さなかった事についても書かれていますが、観光シーズンの最中だったため観光業へのダメージを恐れた為のようです。
投稿: エフ | 2005.01.06 00:22
今回の海自の移動は、タイ国→外務省→海自で、帰国途上の艦隊が反転したというものだったようですね。
流石の海自も、海外出動の起点を米軍の指令にするわけにはいかないでしょう
投稿: おーつか | 2005.01.06 02:25
ディエゴ・ガルシアには米軍情報部から津波警戒アラートが入っていたようです。
投稿: ねこ仏少年 | 2005.01.07 06:13