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2005.01.01

2005年新年雑感

 あけまして、おめでとうございます。
 雑談です。
 2005年になるのかと思うと感慨深い。ミレニアム2000年のカウントダウンをしていたのがつい先日のようにも思えるのだが、四捨五入で言えば、2010年という時代になる。そういえば、1984年になったときも、1948年に書かれたオーウェルの未来小説の年になったのかという話題があり世人は感慨ふかく思ったものだ。村上春樹は1986年に「‘THE SCRAP’―懐かしの1980年代」として1980年代を戯れに回顧していたが、今では懐古だ。懐古なるものはきりがない。
 私事だが、昨晩は、年越し蕎麦をなんとなく食べた。というか、それをもって夕食とした。実家にいたころは、年取りのご飯とかいって粕漬け鮭で二杯食わされたものだ。信州のだけの風習というわけでもなく、「歳取り魚」の一例である。
 その後、沖縄に転居し何度か大晦日を他家と過ごしたが、かの地では年越し蕎麦に沖縄そばを食う風習が定着しつつあった。滑稽であることはウチナーンチュも自覚しているようではある。なんくるないさ。他に、沖縄の大晦日ではすき焼きというのがあった。これは、沖縄と限らないようだ。変な風習だなとは思うが、それが伝統だという家風もあるだろう。
 私は正月の喧噪を好まないので、昨晩は早々に床に就いたもののいつものラジオ深夜便はない。世間の物音に耳をすますと、ときおり遠くを消防車と救急車が通り過ぎる。しばらくすると近場の寺の除夜の鐘も聞こえる。紅白歌合戦が終わったころかと、ラジオをオンにするとほどなく2005年となった。花火が遠く聞こえるようにも思ったが、気のせいだったかもしれない。
 日本の風習でいえば、たしか大晦日から元旦は寝ない。この夜を年取りというが、昔は数え年なので全国民がみな歳をカウントアップした。こうした数え年にこだわる老人が私の子供の頃にはよくいた。あの時代の空気を知っているのは昭和32年生まれの私くらいが最後かもしれない。当然のことだが初夢とは元旦から二日にかけて見るものである。
 初夢の富士だのなすびだのといったトリビアを書くのは控えるが、新春というのは、本来、旧暦のものである。今年でいうなら2月9日。中華圏では春節として祝うし、沖縄でも旧正として祝う地方は多い。
 新暦では初春と言われても春の趣はなにもない。近代日本というのは戦後にならぶ日本文化の破壊と再創造の時期だったし、およそ文化と歴史というのはそういうものだ。昨今の女帝を忌避する議論など歴史に吹き飛ばされていくがいい。それでなお残るものだけが日本文化なのだと、日本を信頼するしかない。
 近代日本の文化破壊と再創造は奇妙なものだった。暦を破壊し新暦にしても行政上は問題ないが、例えば俳句の季語はめちゃくちゃなものになった。歳時記はしかたなく四季の他に新年を別立てにした。なに俳句など近代以前は連歌の発句であったものを都合良く改造したものだ。発句としての姿に独立性はあるものの、それだけを単独の文芸とする野蛮さこそが近代化というものだ。
 近代日本では、和歌も短歌となり、あたかも西洋人のように自然を愛でることが文芸であるかのようになった。しかし、日本の歌というのはまず人の心の動きから始まるものだ。愛の想いがあり、死者への想いがある。死者への想いと愛の想いがどれほどか通底していることを折口信夫は「死者の書」で明かした。
 漢籍では詩は詩経から始まるかのごとくであり、唐代には詩人を排出した。とはいえ、唐心においては、詩とは政治であった。日本の古代の詩歌も唐代の文化の影響を受けているのだから、政治がテーマとして潜んでいるのだが、明治という時代はそこに日本文化の起源というもの倒錯的に見るだけだった。戦後から半世紀を経て日本はまた似たような擬古に覆っていくように思える。年取りの魚も食いもしないで、日本の文化というのだ。畑からご都合でこさえた明治神宮に参拝客も多い。
 と、愚痴か。新暦では情緒もないが、雪の正月ならよかろう、と、家持の歌が心に浮かぶ。

 新しき年の初めの初春の今日降る雪のいやしけ吉事

 冒頭は「あらたしき」、末は「よごと」と下すのが通例になっている。家持が因幡守として国府の饗宴でなした歌とされている。この歌をもって万葉集は終わる。
 あたかも良きことがあれと未来に期待をかけているかのようだが、この歌を最後に置くべく万葉集を編纂しているとき、家持は失意の人生の最後に近かった。父旅人も武人であれながらヘタレを極めた挫折の人生だった。息子もそうなった。さらに大伴氏の末路は哀れというか滑稽なものとなった。
 それでも、ヘタレの文学とは味わい深いものである。かくのごときヘタレのブログも2005をカウントする。さても、いやしけ吉事、と結ぶ。

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コメント

あけましておめでとうございます。
今年も世情の普段からはなかなか見えぬ場を斬る
鋭き筆鋒、心より期待しております。

投稿: kagami | 2005.01.01 16:40

「あけまして、おめでとうございます。」ほか、関連は「雑感」ぐらいですが、TBなげさせてもらいました。

投稿: 0 1/2 | 2005.01.01 16:57

>昨今の女帝を忌避する議論など歴史に吹き飛ばされていくがいい。

何をムキになっているんだか...

投稿: q | 2005.01.03 00:40

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