« 2004年5月30日 - 2004年6月5日 | トップページ | 2004年6月13日 - 2004年6月19日 »

2004.06.12

謎の超人間ケリーが暗示するもの

 あいもかわらず昭和32年生まれの私は毎週鉄人28号を見てうるうるしているのだが、前回の第10話 「謎の超人間ケリー」では、表面的な回顧のイメージの奥でいろいろ思い出すことがあった。ドラグネット博士の尋常じゃないヘアスタイルはなんとなく覚えているが、この話自体は記憶にはない。なのに、どうにもリアルに感じられるのは、戦争のために改造人間となったというあたりの設定だろう。(だから、たぶん、鉄人28号もあんなに巨大なわけがないのだが…)。
 あの時代、なぜかこういう話が多かったように思う。サイボーグ009でも、空爆機と一体化した敵のサイボーグ(薔薇を愛するキャラだったと記憶しているが)とか、手塚なんかにも特殊自動車のパーツとなるためのロボットだとかあった。日本に限らない。キャプテン・スカーレットも似たようなものだ。これってリバイバルしているのか?って、今やったらサウスパークのケニーかよという笑いを誘うだけか。レンズマン(小説のほう)でも、グレーレンズマンではやはり死体から再生する兵士のイメージがあった。SF版七生報国か思う。
 今回の鉄人28号の不乱拳博士はそうそうに死んでしまったが、モンスター良久は、アニメではぼかしていたが、あれはヒト胚性幹細胞(ES細胞)とハルク(緑だしな)の連想のキャラだろう。ES細胞が出てくるあたり、意外にリメーク鉄人28号は新しいのかなとも思うが、スティーブン・カーツ(Steven Kurtz)のこととか考え込むと、意外に洒落でもないように思えてくる。が、その話は今日は書かない。
 ES細胞といえば、ナンシー夫人による、幹細胞研究の拡大を提唱が気になる。このところ米国ニュースを読んでいてレーガン追悼ものにうんざりするのだが、イラン・コントラ疑惑でもっと叩けないのは、ブッシュの思惑なのだろう。政治の上っ面などどうでもいいことだが、なぜナンシー夫人が幹細胞研究の拡大を提唱しているか。ロイターの「故レーガン元大統領夫人、幹細胞研究提唱者に」(参照)ではこう伝えている。


 夫人は、故大統領が自分の手の届かない場所に行ってしまったとし、「だからこそ、(アルツハイマー病で)苦しむ他の家族を救うために、できることは何でもしようと決意した。私達は、これを無視することは出来ない」と語った。
 支援者はアルツハイマー病治療の突破口となる可能性があるとしている。

 思わず、え?、そんな単純なことでいいのか。ナンシー夫人も●●かよ、と思うが、よくわからない。ご存じのとおり、ブッシュは幹細胞研究に同性愛結婚なみの嫌悪を示しているのだが、そのあたりの背景とか空気がわからない。一応裏としては上院議員有志の動きがある。共同「ES細胞の研究拡大要請 米上院有志が大統領に」(参照)。

 【ワシントン7日共同】ブッシュ米大統領が、人体のどんな細胞にも成長できる胚(はい)性幹細胞(ES細胞)の研究に厳しい姿勢を取っていることについて、上院の過半数に当たる58議員は7日、超党派で大統領に対し研究の拡大を求める書簡を送った。患者団体や研究機関でつくる医学研究振興連合(CAMR)が明らかにした。

 このあたりがよくわからないのだが、実際のところ米国ではES細胞の研究は進んでおり、日本もその尻馬に乗っているというか、実質的に無宗教な国民性をいいことに適当に進んでいる。たとえば、共同「ES細胞から心筋細胞 信州大が国内初」(参照)。

人体のあらゆる臓器や組織に成長できるヒトの胚(はい)性幹細胞(ES細胞)を心臓の心筋細胞に分化させることに、信州大医学部の佐々木克典教授(組織発生学)の研究グループが国内で初めて成功したことが13日、分かった。


 佐々木教授によると研究グループは、米ウィスコンシン大が作ったES細胞を輸入して心筋細胞などに分化させる研究計画を文部科学省で認められ、2003年3月から研究を開始した。

 なんだ、それ?という感じもする。市民社会とジャーナリズムはこんな呑気なことでいいのだろうか。
 とはいえ、森岡正博のHPにある「ヒト組織・クローン規制法・ES細胞」(参照)も、正直なところよくわからない。この問題はどう考えたらいいのか、という議論と、現実の科学の動向の力学の関連がなにかずれているように思う。この問題はすでに超国家として国連も関与しているのだが、そういう問題なのだろうか?
 もっとも、じゃ、おまえはどうなんだと問われれば、受精卵を原料とする技術は悪魔的だと思う。そう思うのは、自分の宗教的な心情だし、その心情は、譲る気にもならない。
 話が横にそれていくが、ぼんやりと夢想しつつ、この研究で世界の尖端を行く韓国のことも気になった。韓国は米国から突き放されようとしているのだが、この時、トランプ(切り札)となるのは、もしかしたらこの技術か?というくだらないことを、鉄人28号の見過ぎだろうが、連想した。ニューズウィーク日本語版2004.3.3「韓国の格安ヒトクローン研究」が興味深い。

 アメリカやイギリス、フランスなどでは、クローン人間づくりに結びつくおそれがあることから政治問題化しており、研究者は身動きが取れないのが現状。そのなかで韓国の研究チームは、着実に研究を重ねてきた。
 もっとも、彼らが資金的に恵まれていたわけではない。年間200万ドルにも満たない予算は寄付金や授業料でまかなったもので、大学側はほとんど援助をしていない。政府にいたっては補助金ゼロだ。
 研究室も100平方メートル程度の狭いもので、研究員はひじをぶつけ合いながら作業している。「外国の研究者は、今回のプロジェクトにカネを使っていないことに驚く」と、黄は言う。「カネや物がありすぎて怠けるより、不足した状態で苦労したほうがいいときもある」

 私の考えは間違っているかもしれないが、ES細胞の研究の基礎は最先端設備ではなく、ロッキーホラーショーのような世界なのかもしれない。とすれば、頭脳さえあれば、どこでも可能なのではないか。
 もっとも、韓国が有利なのはどう記事にあるように、不妊症研究が進んでいるからだ。

 生殖産業が発達しているため、研究で使う卵子にも事欠かない。黄のチームも、16人の女性から計242個の卵子の提供を受けた。
 だが、実験を成功させるうえで最も有利に働いたのは、政府の介入がなかったことかもしれない。

 おぞましい感じもするし、こうした動向をつい韓国の文化的な背景に結びつけたくもなるが、そういうことでもないだろう。
 不死のバイオ戦士の夢想をSFが描いたのは、冷戦下だった。現在冷戦が終わったが、最終兵器としての核は国家を越えて分散された。と、同時に、バイオ戦死の悪夢も分散されてきているような気がする。気がするっていうだけの話なんだけどね。

| | コメント (4) | トラックバック (0)

2004.06.11

脳は40歳を境に衰えていくようになっている

 オンライン版のNatureに9日"Gene regulation and DNA damage in the ageing human brain"(参照)という記事が掲載された、といって、標題と概要しか見ていないのだが、標題は「人間の脳における遺伝子の規定とDNA損傷」だろうか。脳の老化には遺伝子的な仕組みがあるという話のようだ。概要を追ってみよう。


The ageing of the human brain is a cause of cognitive decline in the elderly and the major risk factor for Alzheimer's disease. The time in life when brain ageing begins is undefined. Here we show that transcriptional profiling of the human frontal cortex from individuals ranging from 26 to 106 years of age defines a set of genes with reduced expression after age 40.

 脳が老化すれば認知能力も低下する。そして老化はアルツハイマー病にも関連するのだろう。そういわけで、各年齢層で脳を調べたところ、40歳を境界として発現が減少する特定遺伝子が存在し、これが脳の老化を示しているのではないのか、というのだ。

These genes play central roles in synaptic plasticity, vesicular transport and mitochondrial function. This is followed by induction of stress response, antioxidant and DNA repair genes. DNA damage is markedly increased in the promoters of genes with reduced expression in the aged cortex. Moreover, these gene promoters are selectively damaged by oxidative stress in cultured human neurons, and show reduced base-excision DNA repair. Thus, DNA damage may reduce the expression of selectively vulnerable genes involved in learning, memory and neuronal survival, initiating a programme of brain ageing that starts early in adult life.

 40歳から脳が老化するというならそれほど科学的な知見とも言えないが、今回の研究のポイントは少し違う。
 人間が学習などを行う場合、脳の構造的な表現としてはシナプス形成としてして見られ(これを可塑性というのだが)、これは、ストレス反応や抗酸化物質やDNA修復遺伝子の援助を受けるらしい。そこで今回特定された遺伝子だが、これが特徴的にDNA損傷を起こすようなのだ。しかも、これらはそもそも酸化ストレスに狙われやすくなっているというのだ。当然、このDNA損傷が結果として脳の学習能力の衰えにつながる…。
 と、書いたものの、私は今ひとつこの特定遺伝子と学習の遺伝子の関係がよくわからない。
 話は別途"The Brain Starts to Change at Age 40"(参照)などで一般向けのニュースとなっている。話の切り出しは、40歳過ぎたら子どもとトランプの神経衰弱やっても勝てないでしょうということだが、そんなことはどうでもいい。気になるのは、この特定遺伝子と可塑性を担う遺伝子の関係だ。

One group of the genes plays a role in what researchers call synaptic plasticity - the ability of the brain to make new connections so critical to learning and memory.


Another group of genes, involved in processes such as responses to stresses and defense against damaging oxidants such as free radicals, are turned on in the aging brain. The researchers found that regions of particular genes are quite vulnerable to DNA damage in the aging brain.

 この解説によれば、可塑性を担う遺伝子と、今回特定された酸化ストレスに弱い遺伝子は別のようだ。この酸化ストレスに弱い遺伝子のために、遺伝子全体がやられ、結果的に可塑性も落ちるということなのだろうか。
 外堀を巡っているようだが、ロイターヘルス"The Brain May Start to Age at 40 Years"(参照)は、簡素にこう書いている。

According to the team, DNA damage begins to accumulate in these genes. This damage could affect vital brain activities, such as learning and memory. Moreover, this may initiate a program of brain aging "that starts early in life."

 概ね、この特定遺伝子自体が可塑性を担っているわけでもなく、むしろ、人間脳を必然的に老化=劣化させる機能を担っている、と言えるだろう。
 私の与太話はここからだ。
 どうやら人間の脳というのは、40歳を境に学習能力などが衰えていくように出来ているわけだ。従来はよく20歳を過ぎれば脳細胞はどんどん死滅していくというようなことが言われていたものだが、最近の知見では、おそらく、40歳くらいまでは知力は伸び続けるようでもある。
 しかし、そこまでか。実感としても、40歳を過ぎると、俺の頭もダメだなぁ、になってくる。若いやつにはかなわねーよ、である。権力のなかにいるなら、知力じゃない部分で、若い者を利用したり貶めたり画策するようになる。醜い。
 科学の知見など時代で変わってくるものだが、今回の発表が概ね正しいなら、人間の脳は、40歳あたりから徐々にぼけ出すといい、というメリットがあるのだろう。どんなに頑張ったって人間は死んでしまうし、どんな屁理屈こいても、死の恐怖などは克服できそうにもないのだから、ぼけるというのは、それだけでメリットだろう。あるいは、生物集団としてのメリットもあるのかもしれない。
 ここでまた実感でいうなら、40歳を過ぎると、過去が、つまり、過去の記憶がつらいなぁになってくる。どの程度の男がそう思うものかわからないが、若いときにつれなくした女に、すまねーなと思えるようにもなる。
 今回の知見では、基本的には脳の老化を、やはり酸化ストレスとしていた。やはりである。デンハム・ハーマンの奇妙な仮説と見られていた学説がやっぱり正しいのか?というより、酸化ストレス自体は生命に必須の出来事なので、むしろ、抗酸化機能をどう遺伝子が担っているかということが問題だろう。
 人間の老化は、機械の摩滅損傷に似ているという人もいるが、人間は鉄人28号のように完成品としてできるものではなく、正太郎のように成長し、そして老いていくというプログラムされた過程を取る。
 それでも、脳の老化の基底にあるのは酸化ストレスだろうとは言えるので、今回の例でいうなら、脳の抗酸化システムを援助できるようにしてやればいいのだろう。現状では、アルツハイマー病を例としても、効果について賛否が分かれるビタミンEだが、弱い効果はあると見てもいいのだろう。
 話はさらにゴマ臭くなる。メラトニンもどうやら脳で働く抗酸化物質のようだ。眠りというのは、ある種の酸化ストレスの修復なのだろうか? ここでゴマ臭い話なのだが、メラトニンを飲むとかなりの人が悪夢を経験するのだが、この悪夢というのは、先に書いた、思い出したくもない記憶の残存ではないのか? これらの選択的に排除された記憶は、それ自体が酸化ストレスではないのだろうか?
 もちろん、そんな話は冗談である。真に受けないで欲しい。
追記(040612)
 CNN"Research: Brain genes start to slow at 40"(参照)によると、40歳以降は、酸化ストレスとみられる損傷を修正するための遺伝子が活発になるとある。

Slightly less than half of the 400 or so genes -- including those involved in learning, memory and communication between brain cells -- were found to be functioning at a lower level, perhaps because of some kind of damage, the researchers found.

The remaining genes were found to be working harder after age 40. They included genes involved in DNA repair, antioxidant defense and stress and inflammatory responses.

Overall, the findings suggest that the first set of genes had sustained damage that hampered their functioning, and the other genes were working harder to try to lessen or repair that damage, said Bruce A. Yankner, a professor of neurology and neuroscience at Harvard Medical School.

| | コメント (6) | トラックバック (0)

2004.06.10

イラク警察と自衛軍は米軍の指導下に置かれる

 どう理解していいかよくわからないのだが、AP系"U.S. General: Iraq Police Training a Flop"(参照)が気になるので、簡単に触れておきたい。
 話は、これまでのイラク統治のミスは米軍が十分にイラク警察(自衛軍)を訓練・統率してこなかったからだ、というもので、今後はこの点(指導)が改善されるらしい。
 話は同時にファルージャ掃討の失敗についての嘘臭い弁解にもなっている。それにしても、イラク警察(自衛軍)を米軍が訓練という形であれ介入していくというあたりは、やはり気になる。


 ``It hasn't gone well. We've had almost one year of no progress,'' said Army Maj. Gen. Paul D. Eaton, who departs Iraq next week after spending a year assembling and training the country's 200,000 army, police and civil defense troops.
 ``We've had the wrong training focus - on individual cops rather than their leaders,'' Eaton said in an interview with The Associated Press.

 イラク統治の失敗点は米軍が個々の警備員の教育に焦点をおいたためで、もっと指導層を教育すればよかったのだ、と米軍がほざいている。そして、その論理で、ファルージャ掃討の失敗は指揮系が米人だったからだろう、としているのだが、APのこの記事では、一応「そうでもないっしょ」的な指摘も含まれている。いずれにせよ、米軍のミスはミスだ。
 現在の問題は、こうした米軍による、イラク人への軍事指導が必要になるという状況だ。
 朝日新聞社説やNHK「あすを読む」などは、イラクの治安回復にはさっさと米軍駐留を止めるか権限を限定せよと無責任に言い放つのだが、常識的に考えても、そんなわけはない。イラクが一丸となって反米的な態度でいるわけでもないのだ。朝日新聞やNHKなどが好む「イラクの人たち」というのは、クルド、スンニ、シーアと利害が分裂し、しかもそれぞれに民兵という私的な暴力が組織化されているので、これを国家側に統合するにはそれなりの軍事力が当然必要になる。そして、それが暴発しているのは、それを抑えるための、国家側の力が自前では足りないとみていいだろう。
 8日のことだが、イラク暫定政府のアラウィ首相がバグダッド郊外の製油所で従業員ら向けに、石油歳入権が委譲されたと宣言し、石油施設を防御する特別の部隊を創設したと言っているが、そういう高度の軍事力が魔法の杖でほいっと出てくるものでもあるまい。彼がイラク主権移譲後も多国籍軍必要だとしているのは、なにも米国の傀儡政権だからとするのはうがちすぎだ。国連もそのあたりを汲んでいると見ていい。先の記事ではこうある。

As U.S. occupation leaders prepare to hand power to an Iraqi government in less than three weeks, Iraq's own security forces won't be ready to take a large role in protecting the country. A U.N. Security Council resolution approved Tuesday acknowledges Iraq's lack of a developed security force and provides a continued multinational troop presence until 2006.

 多国籍軍の形であれ、国連も2006年までは駐留を認めざるをえないとしている。ここでフランスなどがNATOの盟主気取りでいるなら、結局米軍の任務は重くならざるをえない。
 以上のように書くと、私がさも米国よりの意見に見えるのだろうと思う。しかし、私としては、誰かがイラクの治安をサポートしなければ、むしろ、その間にイラクの国軍は米軍の事実上の指導下におかれるようになるだろうということを懸念しているのだ。
 いずれにせよ、イラクの警察組織や自衛力としての国軍が整備されることで、時事上の膨大な雇用が生まれ、そこに石油歳入を投入することで富みが配分されるという構造になるように思われる。そして、それは、国家が機能しなければ、石油の地域的な偏在を通して、クルドとシーアに対するスンニ側の潜在的な対立を強めることになるのではないか。
 日本の貢献というのがあるとすれば、イラクの非軍事的な事業の拡大を促進するべきものであり、そして、そのためにも自衛隊の関与は欠かせないように思う。
 ただ、イラクに主権が委譲された後も「イラク特措法」なのか、というあたりがよくわからないが。

| | コメント (1) | トラックバック (1)

2004.06.09

ミステリーショッピング(mystery shopping)

 先日ラジオでミステリーショッピングの話を聞いた。もしかすると、「それってミステリーショッピングじゃん」と私が思っただけで、話にこの用語は出てこなかったかもしれない。
 そういえば、ミステリーショッピングという言葉は日本語になっているのか、と思って、最新用語の多いgooの日本語辞書をひいてみると、あった(参照)。三省堂提供「デイリー 新語辞典」に収録されているようだ。


ミステリーショッピング 【mystery shopping】
客に扮した調査員が,営業中の小売店などで顧客満足度を点検する調査のこと。接客態度・店舗設備・品揃えなどの項目を,顧客と同じ視点で調査する。調査結果は顧客満足の向上に役立てる。

 定義もそれほど悪くない。三省堂提供「EXCEED 英和辞典」ではこうだ。

mystery shopping
【経営】ミステリー・ショッピング (phantom shopping) ((調査員を顧客に仕立ててサービスや施設の清潔度,価格設定等を秘密裏に調査すること)).

 ついでに、ミステリーショッパーも収録されている。

ミステリーショッパー 【mystery shopper】
営業中の小売店などで,客に扮して顧客満足度を点検する覆面調査員のこと。

 この語については、むしろ英辞郎が弱く、"mystery shopping company"でしか掲載されていない。また、"mystery shopper"は「ミステリー・ショッパー、客を装った商品調査員{しょうひん ちょうさいん}」として掲載されているが、"phantom shopper"の「仮想買い物客{かそう かいものきゃく}」は誤訳語だろう。
 いずれにせよ、ミステリーショッパーとは、客に偽装した調査員ということなのだが、米国などだと、実態は、客が請け負いで調査するというのが近いかもしれない。というか、そういうイメージが強そうだ。
 現状の米国のミステリーショッピングのマーケットの統計値を探したのだが、簡単には見つからなかった。だいたいの予想で言えば、日本ではまだそれほどのニーズはなさそうだ。今後、日本でも増えるのだろうか気になる。
 日本だとフリーターとか専業主婦がたるいバイトでできそうだが、実際はそうはいかないだろう。売り手の側でも、きちんと買い手となる層の意識が必要になるからだ。だから、フリーターのお姉さんにきれいな服を着せビトンを持たせてミステリーショッパーに仕立てても、その購買意識やテイストまでは変えられないから、結局、使えねー、ということになる。つまり、ミステリーショッッピングのリソースとは、購買可能な階層に所属している意識そのものだろうからだ。
 米国のミステリーショッピングのサイトを見るとMSPAといった業界団体ができていて(参照)、ミステリーショッパーとなるための倫理規定なども設けているようだ。
 データベースには各種の資料も掲載されていて面白い。ミステリーショッパーについては、例えば"Be A Mystery Shopper"という記事では、こんなイメージで描いている(参照)。

The next time you're making a deposit at the bank, ordering a hamburger from a fast-food joint or checking into a hotel, the person standing behind you in line may not be a regular fellow customer; she may be a mystery shopper. Mystery shoppers work on a contract basis, and their job is to secretly evaluate consumer-service companies by posing as ordinary customers.


Mystery shoppers work their own schedule, typically going on as many assignments as they choose in a day's time. That flexibility combined with the perk that mystery shoppers often get to enjoy the goods and services they're told to purchase for free may make this seem like an ideal occupation. But, like any other field, this line of work has its disadvantages, not the least of which is the time and effort one must invest to excel and earn decent wages.

 この他、ざっと関連の情報を見ていくと、対象として、小売り店のマーケット以外に病院などもある。日本ではたいした根拠もなく雑誌や書籍で病院のランキングが掲載されているが、こうしたものもミステリーショッパーが利用できるとだいぶ違うだろう。
 ミステリーショッパーの組織・運用はインターネットが便利なはずだと思って、ぐぐると日本でもさすがにいろいろと情報はあるようだが、印象としてはかなりゴマ臭い。
 しかし、こうしたミステリーショッパーの管理はいずれインターネットと強く関連してくるように思う。気になるのは、例えば、「ネットは新聞を殺すのか-変貌するマスメディア」だが、次のようにネット社会と消費動向を示唆している。

 IDC社によると、製品やサービスの内容を形容する標準的な仕組みが開発され、2008年までにほとんどの小売業者がその仕組みを採用する確立は80%。消費者の意見を幅広く集め、効率よく表示する仕組みが2006年までに開発される確立も80%。携帯電話などの機器がバーコードを読み取り、商品に関する評判や情報を提示する仕組みが2008年までに普及する確立は40%。質のいい意見を発信する消費者に報酬を与えるための少額電子決済の仕組みが2008年までに普及する確率は60%と予測している。

 直接的にはアフィリエイトが想定されているのだが、ブログなどもGoogleの動向からして、すでにそういう消費行動の仕組みのなかに組み入れられてきている。
 総合して言えば、今後ネット社会は、なんらかのシカケでマーケットの評価を決定するようになるのだろう。
 その先、あれこれと想像してみるが、あまりイメージがわかない。

| | コメント (0) | トラックバック (2)

2004.06.08

で、イラクの石油歳入権はどうなる?

本文を読まれる前に(040609)

 本文に追記したが、この件(石油歳入権)については、名目上、イラクに委譲されることになった。米国の息のかかる首相に仕立てたこともあるが、どうせ委譲せざるをえないし、また、実質石油施設を守るのは米軍になるのではないかとも思われるので、米国もこれ以上の無理はやめたというわけだろう。

 イラク暫定政権を承認する国連安全保障理事会の新決議案の動向がよくわからない。私の関心がすっかりイラクの石油歳入権に向いているのもいけないのかもしれない。ので、頓馬な話を書くことになるかもしれないが、そのあたりの現状の雑感を書いておきたい。
 日本の報道だけとは限らないがイラクの治安は混迷を窮めベトナム化しているといった話もないわけではない。が、私にはなんだかよくわからない。結局のところイラクの警察機構はサダム統治下に近いものに戻るので、その反発や、この間総崩れになった国境警備をいいことに対外勢力の混入もあるだろうとは思う。一時期懸念されていたサドルのマフディ軍も事実上解体しているようだし、歴史的に見るなら、新しい権力委譲の時期によくあるごたごたのレベルのようにも思われる。
 日本の報道では米軍駐留に関心が向けられ、朝日新聞などは明確には言わないものの、米軍駐留が諸悪の根源風なストーリーに仕立てたいようだが、この件については、現在の暫定政権が米軍駐留を望んでいることから、お話としては浮いてしまう。もともとこの政権は米国の息のかかったものだが、だからといって、他にブラヒミ=国連案がよいというような対案も実際的ではなかった。
 私の関心も多分に陰謀論的な方向にあるのか、米軍駐留は、基本的に石油施設とその歳入の権利のための重石としているだけなのではないかと思う。また、「石油歳入権をほったらかして何が主権委譲かよ、笑わせる」と思っていたのだが、この部分も権限委譲になる方向のようだ。いずれ委譲せざるを得ないのだから、このあたりのごたごたはなんなのか気になるのだが、よくわからない。結局のところ、今回の決議でどの程度石油歳入権がイラクに委譲されるのかが、よくわからない。
 石油歳入権などたいした問題ではない、ということかもしれないが、先日公開された国連案を見ると、いやいやほとんど特記事項と言っていい。
 全文はBBC"Text: Iraq draft resolution"(参照)にあり、石油歳入権は三つの柱の一つになっている。


The revised draft UN resolution on Iraq being circulated by the US and UK at the Security Council:

  • maps out the handover to a sovereign Iraqi government by 30 June
  • provides for a US-led multinational force, with authority to take all necessary measures for security, while setting a date for the end of its mandate
  • grants Iraq full control over its own natural resources while temporarily maintaining international control over its oil revenue fund


 詳細はBBCサイトにあるのと、具体的にどうよ?がよくわからない文章なので、引用は控える。
 叩き台の国連案では、基本的には、石油歳入権はすべてイラクに移るということなのだが、そのあたりが米仏間でどのような扱いになるのだろうか。
 もともと今回の戦争は、石油・食糧交換プログラムを悪用していたフランスやロシア、シリアに対する米国の制裁の意味合いもあり、しかも、このプログラムに関連して、極東ブログ「石油・食糧交換プログラム不正疑惑における仏露」(参照)でも触れたが、国連自体がダーティな存在だった。シラク大統領の名前も堂々と不正疑惑のリストに上がっているくらいだ。なので、陰謀論めくが、今回のブッシュとシラクの会談も実際にはこのあたりのもみ消ししゃんしゃんということなのだろうと思う。
 この問題は基本に返って考えたほうがいい面も多いので、簡素にまとまったForeign Affairs"Iraq Oil"(参照)を見直してみたい。この文書は基本的には明確に書かれているので、私が蛇足を加えるまでもないのだが、気になるところを引用する。

現在、イラクの石油産業に関して実際に意思決定を行っているのは誰か。
 日々の業務に関する決定はイラク人、特にタミル・ガドバン石油相代行とサダム・フセイン政権下で石油輸出を独占管理していたイラク国営石油公社(SOMO)の上層部が下しているだろうと石油産業の専門家は考えている。また、シェル石油の元社長兼CEOだったフィリップ・キャロルがイラクの石油省のアドバイザーを務めている。エネルギー産業に関する情報を提供するエネルギー・インテリジェンス社のシニア・エディターであるカレン・マツシックによれば、アメリカのイラク戦後復興計画では、キャロルはイラクの石油産業を監督する国際委員会の委員長を務めることになっていたが、最近になって連合軍はその構想を捨て、イラク国民自身に石油産業を管理する大きな権限を認めることにしたようだ。

 冗談ではないつもりだが、明確に曖昧な状況が描かれている。問題の石油歳入権だが、こうある。

安保理決議一四八三では、イラクの石油収入の利用に関して、どのように定めているか。
 安保理決議では、すべての石油収入はイラク中央銀行内に新設されたイラク開発基金に預けられ、イラク暫定統治機構との協議を行った上で、米英が管理することになっている。現在のところ、イラク暫定統治機構はイラク統治評議会のメンバー二十五人で構成されている。石油収入は「不透明な形で使用してはいけない」とされており、以下の目的でのみ使うことが認められている。

  • イラク国民の人道的救済
  • 経済復興とインフラの修復
  • イラクの継続的な武装解除
  • イラクの文民による統治機構の費用
  • 「イラク国民の利益となる他の目的」


 これが今回どの程度まで暫定政権に委譲されるのだろうか? そこが知りたいのだが、よくわからない。
 また、結局、イラクという国家は石油歳入の再配分機構としての期待から成り立っているというのが本音なのだから、そのあたりも重要だ。が、Foreign Affairsはどうもばっくれているようだ。

将来、イラクの石油収入の一部がイラク国民に分配される可能性はあるのか。
 イラク暫定占領当局代表のポール・ブレマーは何度も石油からの利益をイラク国民に分配する信託基金を作るよう主張してきた。この方式のモデルとなるのはアラスカで行われているものだ。アラスカでは石油収益の一%を小切手の形で六十三万人の住民に直接配分している。去年、アラスカの住民は一人あたり千五百四十ドル受け取った。しかし、石油専門家の中には、イラク国民が二千四百万人もいることを考えると、少なくとも短期的にはこの方式はイラクでは実行できないだろうと指摘する者もいる。イラクの政治状況は依然として混沌としている上に石油売却からの利益は限定されているのに対し、分配金に対する需要ははるかに大きい。たとえ二〇〇四年に百四十億ドルという連合軍のもっとも楽観的な予測に沿った石油産出が可能になっても、ブレマーが推定した千億ドルというイラク再建費用全体にはほど遠い。

 Foreign Affairsのこの問題設定自体がよく理解できない面がある。どう転んだって歳入を直接イラク国民に配分するわけはないと私は思う。また、近未来的な歳入についてはこう述べるしかないのだが、この説明は潜在性に対する過小評価を誘導しているのではないか?
 むしろ、これから米国が意図するのは、マチ金のように、イラクの石油をがっちり世界経済のかたにはめることで、その点はつい陰謀論的にハリバートン社やチェイニーとの関わりなどについても言及したくはなるだろう。が、私の考えでは、それはただハリバートンがでかいだけというだけに思われる。
 イラクが今後、奇妙な形でのアラブ主義なり国粋主義的な形態を取らないためにも、世界市場にはめ込んでしまえ、というのはしかたがないのだろう。それが新しいかたちでの帝国主義だといえばその通りなのだが、昔の帝国主義の歌で批判できる問題とは様相が違う。
 いずれにせよ、当初ネオコンが想定していたようなある意味で純粋な政治性というものはなく、世界経済の仕組みがこうなってること、つまり、石油の市場の安定性がかなり至上命題に近い現状、米国はその国益といった近視眼ではなく、イラクをかたにはめるしかないのだろう。そう思う。

追記(040609)
 石油歳入権な名目上イラクに委譲されることになった。とりあえずはメデタシ。もっとも、お目付役は付く。詳細はBBC"Key points: UN resolution"(参照)。


Oil profits
 The Security Council notes that, upon dissolution of the Coalition Provisional Authority, the funds in the Development Fund for Iraq [a fund established to hold and administer the use of Iraq's oil profits, which was previously administered by the Coalition Provisional Authority] shall be disbursed solely at the direction of the Government of Iraq.
 The International Advisory and Monitoring Board shall continue to monitor the operation of the fund. An additional full voting member designated by the Government of Iraq shall be added to the board.
 The Security Council decides that these arrangements be reviewed at the request of the Transitional Government of Iraq or twelve months from the date of this resolution, and shall expire upon the completion of the political process outlined above


Oil for food
 The Security Council decides that the Interim Government of Iraq and its successors shall assume the rights, responsibilities and obligations relating to the Oil for Food Program that were transferred to the Coalition Provisional Authority.

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2004.06.07

米の研ぎ方・飯の炊き方

 身近な者が、「米はあまり研いではいけない」といった話をしているので、なんとなく聞いていると、どうにも馬鹿なことばかりいうので、つい「その馬鹿な話はどこから聞いてきたのか」と問うと「あるある大事典」らしい。この番組は私はまれにしか見ない。まだネットにサマリーは出てないので、馬鹿話がその番組どおりかわかからないが、米の研ぎ方・飯の炊き方について、以前ネットで試しに調べて唖然としたことがあったので、実践的な方法を書いておくのもいいのかもしれない。というわけで、書いておこう。
 と、人の方法を馬鹿だのぬかすわりに、以下の方法が正解というものでもない(この手のことはそんなものだ)が、私はこれで通していてなんら問題ない。私が食っている飯よりうまい飯にありつくこともあまりないので、これでいいのではないか。なお、米の話は今日はあえてしない。
 まず研ぎ方。研ぐには木桶がいいようだが、なければしかたない。いわゆるボウルでもいい。ザルは用意する。ザルも竹のがいいのだが、なければしかたがない。ボウルとセットのザルでもいい。
 ボウルに米を量って入れ、これに水をたっぷり入れて、さっとさっと手で米を回し、白濁した水を捨てる。表面的な汚れを落とすわけだ。この作業を素早く行う。20秒くらいか。そして水をしっかり切る。
 次に研ぐのだが、これはそう簡単ではない。が、ようするに、米粒と米粒を適度な力で摺り合わせることを念頭に置けばいい。米粒が刷り合うときに、余分なぬかが落ちるのだ。ある程度力を入れないと研げないが、腰を入れてみたいに押し付けて研ぐことはない。もむ感じでよいと思う。これが1分ほどか。米に水を吸わせないように素早く行う。この時、米粒が割れているなら、失敗。やりすぎ。
 そしてこの状態で水をたっぷり入れ、先ほどのように回して水を切る。先ほどより白濁した水が出る。これを捨てて、もう一度同じことを繰り返す。このとき、水が少し白濁するかなという程度ならよし。水が透けるまで研ぐことはない。そして、ザルで水をしっかり切る。
 そして20~30分置く。ザルがまがいものなら、下にべちゃっと水気が残らないように気を配ること。この間、料理の下ごしらえでもしろ。
 次に炊き方。用意するものとしてはキッチンタイマー。それとできれば、お櫃があるといい。というか、お櫃は是非薦めたい。最近は3合くらいので檜のいいお櫃がある。鍋は蓋ができれば取りあえずなんでもいいが、できれば、肉厚の鍋がいい。蓋も重みのあるほうがいい。
 さらっとした米を適当なサイズの鍋に入れ、水を入れる。米に加える水の量は1.2倍。というか、米と鍋がよければ同量くらいでいい。蓋をして、がーっと強火にかける。ここが勝負だ。難しいのはここだ。米の量や火力にもよるが5分ほどで、ぶほほっと吹き上がる。このぶほほっとくるのがポイントだ。多少吹きこぼれてもいい。米のほうでもやる気満々じゃねーかというのを見て、吹きこぼれない程度の中火にする。中火よりやや弱くてもいい。この中火を5分。タイマーを使え。
 そして、中火5分が経過したら、とろ火5分。これもタイマーを使え。とろ火タイムが終わったら、火を消して、蒸らし10分。なお、5分で二回に分けるのがメンドイなら、ぶほほぉから弱火10分でもなんとかなる。
 10分たったら、お櫃に入れる。終わり。だが、お櫃がなければ、しゃもじで米の天地をかき回す。火が強すぎると、少し焦げることがあるが、そのあたりの調節は、1週間もすれば慣れる。

cover
今さらながらの和食修業
 以上で終わり。言葉にすると難しいし、慣れないとコツが掴めない点もあるのだが、くどいがやっていればわかる。とにかくやること。これで、炊飯器とは一生おさらばである。慣れれば、意識を入れるのは、最初のぶほほっの瞬間だけだ。あとは、ほとんど手間でもない。
 と偉そうに書いたが、このやりかたは、「今さらながらの和食修業」に掲載されている手法をまねたもの。同書は私がお薦めする料理本のなかのベスト5に入る。っていうか、できたら、文庫じゃなくて写真の多い、「今さらながらの和食修業 Maple book」のほうがいい。この本の料理ができる女がいたら、阿川佐和子のように嫁にいく必要はないだろう。

| | コメント (6) | トラックバック (2)

2004.06.06

天安門事件から15年

 4日夜に香港で行われた天安門事件犠牲者追悼集会は返還後最大規模となった。15周年という区切りを意識してのことか、香港における民主化運動が高まりという意味か。私には後者のように思われるが、それは香港返還記念日の大規模デモで様相がくっきりとしてくるだろう。当然ながら、当の天安門はこの間、戒厳令に近い警備下に置かれ、なにごともなかったようだ。
 日本国内の報道も、香港の追悼集会を報道するに留まった。日本国内ではこの問題の関心は薄い。かく言う私にしても、率直なところ、単純に中国の民主化を支持できるというものでもない。そうでなくても社会インフラがいまにも崩れそうな中国は世界経済の爆弾のようにすら見える。
 天安門事件の解明についても、ほぼ「天安門文書」でケリがついており、また、当時の事件に関わった学生も、この10年間でその存在基盤を失っているかに見える。極端な様相としては、新しい中国の世代が国粋化していくなかで、事件の世代は馬鹿な米国かぶれということにされていく。
 ニューズウィーク日本語版6・9に寄稿された王丹の「天安門事件のたった1つの教訓」も読み応えはなかった。王丹などすでに象徴でしかなく支持している身近な同士はないのかもしれない。それにしても民主化への希求は弱く、むしろ共産党への断罪に執心している。無難すぎる。政治的には奇妙な違和感も感じた。


 89年には多くの人が趙紫陽に望みを託していた。だが天安門事件の直後、彼は共産党総書記の地位を追われた。92年以降は朱鎔基に期待が集まった。そして今、われわれは胡錦涛国家主席と温家宝首相の指導力に期待している。

 ジョークなのだろうか。それとも、これが中国の政治の現実というものだろうか。そうなのかもしれない。胡錦涛はうまく江沢民を出し抜くのかもしれない。
 王丹が当初の期待としていたのは当然ながら趙紫陽だったが、今回の追悼集会関連のニュースでは奇妙なほど、趙紫陽の名前を耳にすることが多かった。香港では未だに趙紫陽への人気が高そうなのだが、率直なところ私には不可解な印象もある。今さら趙紫陽が復権するということはありうるのだろうか。90年代後半あれだけ期待を持たされて、結局つぶれてしまったというのに。
 しかし、ことが中国だけにきな臭い線が捨てきれない。端的に言えば、趙紫陽は実際の権力を裏で掌握している江沢民降ろしのための御旗に過ぎないのではないか、とは思う。それを伺わせるニュースもある。産経系「天安門事件 党内で映像回覧のナゾ 「無関係」江氏アピール?」(参照)をひく。

【北京=野口東秀】中国の民主化運動が武力弾圧された天安門事件(一九八九年)について、中国共産党宣伝部は当時の経緯を映像記録でまとめたCD-ROMを作成した。幹部向けの内部資料として回覧されているが、資料作成の真意をめぐっては、弾圧正当化の公式見解を若手幹部に刷り込むものか、あるいは事件後総書記に抜擢(ばってき)された江沢民中央軍事委主席が事件の再評価に備えて自身の生き残り工作を始めたのかなど、評価が二分されている。

 このニュースはこうコメントを付け加えてもいる。

 事件後、上海市の党委書記から党総書記に抜擢された江沢民氏は、弾圧にはタッチしていないものの、趙紫陽氏の失脚によって政権を委ねられている。事件評価の行方は、江沢民政権の合法性にかかわる問題だけに、弾圧に「無関係」と訴えるだけでは事件再評価への江氏の備えはまだ薄弱とみることができる。

 産経新聞的な勇み足のコメントなのか、あるいはなんらかの裏の感触があるのかわかりづらい。
 この機に天安門事件について新聞のデータベースを当たってみて、当たり前のことのようだが、記事がリアルタイムにDB化しているのに呆れた。歴史がこのように電子化されるものだろうか。ハンガリー騒動が、こうして電子的に検索されたらさも面白いだろうとも、少し思った。
 天安門事件の経緯をDBを通して、今の時点でざっと眺めていくと、すでに天安門文書が出た現在でも、鄧小平という人間はわかりづらいな、という印象を持った。彼が即座の弾圧に及んだのは間違いないのだろうが、趙紫陽を切ったのは、思想の相違というか権力への勘だったのだろうか。あるいは、解放軍との関連でやもうえないという判断だったのか。さらに資料を遡って眺めていくと、天安門事件がなくても趙紫陽は屠られていたようでもある。
 趙紫陽がこの間生き延びてきたのは、中国の歴史を見れば、不思議でもない。口を割らないかぎり、責めることができないというが中国の歴史だ。最初に剣を血で塗った人間がえんがちょ、じゃないが、弱くなる。誰も手出しができない。
 さらにDBを見ていると、鄧小平は最晩年、趙紫陽が復権できるように画策していたという話もある。まったくのガセでもないのだが、そうした脈絡が今でも生きているということがあるのだろうか? 中国という国はわからないものだと思う。

| | コメント (5) | トラックバック (0)

« 2004年5月30日 - 2004年6月5日 | トップページ | 2004年6月13日 - 2004年6月19日 »