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2004.05.22

なぜチャラビ宅がガサ入れされたのか

 20日の話になるが、イラク駐留米軍とイラク警察が、イラク統治評議会議員(元議長)アハマド・チャラビ宅と、以前議長を務めていたイラク国民会議(INC)の事務所の家宅捜索を行った。表向きは国家所有の車両を盗んだ容疑というが、もちろん名目に過ぎない。
 CBSは複数の米政府高官の話として、チャラビが米国の機密情報をイランに流しており、このガサ入れは漏洩関係者を割り出すための捜査だとした。この話は、3日売りの米版ニューズウィーク(May 10 issue)の記事"Intelligence: A Double Game"(参照)がとりあえず発端になっている。チャラビの紹介をかねてひく。


May 10 issue - Ahmad Chalabi, the longtime Pentagon favorite to become leader of a free Iraq, has never made a secret of his close ties to Iran. Before the U.S. invasion of Baghdad, Chalabi's Iraqi National Congress maintained a $36,000-a-month branch office in Tehran?funded by U.S. taxpayers. INC representatives, including Chalabi himself, paid regular visits to the Iranian capital. Since the war, Chalabi's contacts with Iran may have intensified: a Chalabi aide says that since December, he has met with most of Iran's top leaders, including supreme religious leader Ayatollah Ali Khamenei and his top national-security aide, Hassan Rowhani. "Iran is Iraq's neighbor, and it is in Iraq's interest to have a good relationship with Iran," Chalabi's aide says.

 チャラビは、米国亡命のイラク人知識人で、反フセイン政権組織のINCの代表を務めており、こうした経緯から、米政府は当初民主化イラクの指導者として送り込む意図もあった。端的に米側傀儡と見られていた。
 イラクと通じていたことがわかったので米国がチャラビを抛擲したと見ることはできるし、実際チャラビとイラクの関連はあったようだ。もともと、チャラビはシーア派でイラクのシーア派との関連があった。
 しかし、問題はそう簡単に解けるものでもない。どういうわけなのかよくわからないのだが、同じく米版ニューズウィーク(May 20)では、"Crime and Politics"(参照)として、今回の事件は政治的な流れによるものではないとしている。

In fact, sources close to the investigation tell NEWSWEEK that Thursday’s raid stems from a long-running probe by the Central Criminal Court of Iraq into financial corruption and criminal charges linked to the INC and its alleged efforts to profit illegally from Iraq’s reconstruction. Among the documents police were searching for relate to charges that INC officials profited from the introduction of a new currency. According to an official with the Coalition Provisional Authority, an INC-affiliated company was placed in charge of destroying the old currency, but “a lot of money was coming out again into circulation instead of being burned. Some of it had signs of partial burning.” The currency handover was supposed to be a one-to-one exchange, he said, “but we got a lot less in old money then we gave out.”

 つまり、新貨幣導入にあたる、金銭的な不正追跡の流れだというのだ。実際のところ、そういう背景も否定できないし、直接的にはそう見るのも妥当かもしれない。
 しかし、その結果を政治の流れで見るなら、明らかにチャラビの追放であり、国連ブラヒミとの対立を避けるためだ。チャラビとブラヒミは対立しており、現状では米国はブラヒミを立てなければ、そもそも国連委譲がおじゃんになりかねない。この関連では、国内ニュースでは17日に朝日新聞系がまるでブログのような記事「暫定政府閣僚選びを報道の米、国連『ブラヒミ案つぶし』」(参照)を出している。

 ニューヨーク・タイムズ紙が4月末、ブラヒミ氏の「意中の暫定政府指導者」を暴露したことで国連内の不信感は高まった。ハーフィズ計画相を首相に、パチャチ氏を大統領にという構想は、米側も合意していた。だが、ブラヒミ氏は「イラク人による自主的な選択」とするため、イラク側から名前が出るよう調整を進める意向だった。
 構想を知るのは国連、米側を合わせ一握りの高官に限られており、国連側では、統治評議会のチャラビ氏らを後押しする国防総省からの意図的なリークという観測が強い。ある国連幹部は「暴露はブラヒミ案つぶしとしか考えられない」と語気を強める。

 しかし、今となっては、チャラビを国防総省が押しているとは考えにくい。
 そうしたなかで、チャラビ側からは、れいの国連疑惑のほのめかしが出てきているし、私も、真相はこれが関係しているかもしれないという印象はある。国連疑惑については、極東ブログ「石油・食糧交換プログラム不正疑惑における仏露」(参照)でも触れたが、日本では事実上、報道規制のような状態になっているように見える。
 ある程度あからさまに国連疑惑との関連を指摘したのは、Forbs "Chalabi Raid Complicates Oil-For-Food Probe "(参照)だ。少しくどいがひいておく。

 The purpose of the raid was not disclosed, but Chalabi himself later told reporters that among the items seized were files related to the oil-for-food program, which he and the council have been probing.
 During the program established by the United Nations Security Council in 1995, the U.N. reportedly oversaw a flow of funds totaling $15 billion a year. Revenues were held in an escrow account run by BNP Paribas for the U.N. The oil-for-food program became a lucrative source of contracts for Russian and French oil companies, including Lukoil and Total (nyse: TOT - news - people ), according to congressional testimony by Nile Gardiner of the Heritage Foundation. The U.N. itself collected a 2.2% commission on every barrel of Iraqi oil sold, generating more than $1 billion in revenue. The U.S. Congress' General Accounting Office estimates that Saddam Hussein's regime siphoned off $10 billion while the U.N oversaw the program.
 The raid on Chalabi's home--characterized by the White House as resulting from an Iraqi-led investigation--may frustrate the ability of private accounting firm KPMG to complete a comprehensive audit into the oil-for-food program, which generated $67 billion in revenues for Iraq between 1997 and 2002, according to the Heritage Foundation. KPMG began investigating in February 2004 on behalf of the Iraqi Ministry of Oil, the Central Bank of Iraq, the Finance and the Trade Ministry and the State Oil Marketing Association.

 併せて同記事では、ヴォルカーが実質的には無力な状態に置かれているともある。が、それ以上に突っ込んではいない。やや陰謀論めくが、チャラビとしては、自分を葬れば国連疑惑の重要情報を暴露するぞ、というデモンストレーションなのかもしれない。
 チャラビについては、日本では、どちらかというと比較的単純な理解で納まっているようにように見える。批判の意図はないが、例えば、軍事アナリスト神浦元彰は次のようなコメントを出している(参照)。

 言うまでもなくチャラビー氏は詐欺師である。昔から米国防省やCIAは、そのような怪しい人物が大好きである。そして最後はババを引いて外交政策に打撃を受ける。やはり米国政府にはそのような本質が代々受け継がれているのでないか。
 もやは米国(ブッシュ政権)のイラク占領統治は完全に失敗した。ブッシュ政権内部の告発ばかりではない。ネオコンの中からも「その失敗」を認める発言がゾロゾロと出てきだした。

 間違いとはいえないのだが、そうシンプルに捕らえられるものだろうか。
 チャラビについては、Financial TimesのコラムニストJohn Dizardがsalonに掲載した記事"How Ahmed Chalabi conned the neocons"(参照)がかなり深く掘り下げている。日本語で読める、産経系「米、資金提供ストップ・家宅捜索… チャラビー氏と『絶縁』確定的に」(参照)は、John Dizardの記事を参照にしている印象を受ける。

 チャラビー氏と米政府との関係は、湾岸戦争(一九九一年)直後にさかのぼる。当初、米中央情報局(CIA)が情報提供を受けていたが、情報の精度に問題があったため、CIAは同氏との関係を停止した。
 その後、フセイン政権打倒の目的で九八年に米議会でイラク自由化法が成立し、クリントン大統領は翌年からチャラビー氏の組織に情報提供などの名目で国務省から資金提供することを決めた。しかし、国務省も情報の精度や提供資金の同氏の私的流用などに疑念を持ち続け、一昨年五月には資金提供を停止した。
 こうした中、緊密な関係を維持し続けてきたのが、湾岸戦争時の国防長官だったチェイニー副大統領をはじめ、ラムズフェルド国防長官、ウォルフォウィッツ国防副長官や国防総省情報当局だった。
 チャラビー氏は、イラクの大量破壊兵器開発計画に関する情報をイラク戦争前に国防総省に提供しており、一方で同省はチャラビー氏への月額三十四万ドルの資金提供を今月まで続けていた。

 ここでは、チャラビ支持者を列挙しているのだが、これはいわゆるネオコンであり、John Dizardの記事ではネオコンとの関連でチャラビを描いている。
 実は、チャラビについて調べながら、ネオコンについて、私は考えなおしていた。ネオコンとは何か? これがネットを軽く探っただけではよくわからない。AllAboutの「アメリカで台頭、ネオコンって?」(参照)やはてなのキーワード「ネオコン」(参照)はわかりやすく書こうとしていのか、曖昧な説明になっているように思える。また、日本にこの言葉を流行らせたと言われる田中宇の「ネオコンの表と裏」(参照)については、私には理解できなかった。
 salonのJohn Dizardの記事"How Ahmed Chalabi conned the neocons"ではむしろ、チャラビからネオコンを説き起こすような説明になっている。端的に言えば、パレスチナ問題を解決するためには、クリントン時代のような和平の模索ということではなく、一気にイラクに親米の民主主義国家を作り、イスラエルと連携させれば、その連動で解決するというのだ。これには、対アラブ世界の実質的な制圧も含まれているようだ。

Why did the neocons put such enormous faith in Ahmed Chalabi, an exile with a shady past and no standing with Iraqis? One word: Israel. They saw the invasion of Iraq as the precondition for a reorganization of the Middle East that would solve Israel's strategic problems, without the need for an accommodation with either the Palestinians or the existing Arab states. Chalabi assured them that the Iraqi democracy he would build would develop diplomatic and trade ties with Israel, and eschew Arab nationalism.

 なお、同記事では、単純に聞くと陰謀論のようだが、イスラエルとイラクを結ぶパイプラインについても深く考察されている。が、ここでは触れない。
 ネオコンについては、もう少し考えてみたい課題に思える。チャラビ復権による親イスラエル国家としてのイラク民主共和国は出現しないだろうが、ブッシュ政権が続くなのなら、国連の陰でネオコン的な模索がそう簡単に途絶えるわけでもないだろうからだ。

追記04.05.23
 チャラビと国連疑惑の関連だが、重要なことを忘れていた。salonの"How Ahmed Chalabi conned the neocons"では、チャラビが1980年代にサダム・フセインの金を扱っていたらしいことを示唆している。石油・食糧交換プログラム不正疑惑について、チャラビの態度はフカシではないのかもしれない。


But Lebanon was not the only venue for the Chalabi family's flexible and innovative approach to international finance. This may come as a surprise to some of Ahmed Chalabi's newer friends, but he helped finance Saddam Hussein's trade with Jordan during the 1980s. Specifically, Chalabi helped organize a special trading account for Iraq at the Jordanian central bank. Due to the problems created by the war with Iran, Saddam Hussein was unable to obtain credit on normal terms. The special account with the Jordanians allowed him to swap oil for necessary imports -- at least Saddam thought they were necessary -- without going through the international credit system.

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2004.05.21

中国の近未来にどう向き合うか

 今朝の新聞各紙は、昨日の陳水扁総統二期目の就任式とその演説に触れていた。が、どうでもいいような内容ばかりに思えた。しいていうと、朝日新聞が随分台湾に軟化したかなという印象があるくらいだ。どれも、社説の執筆者は、「ことなかれ」をよしとする話を書くと、現実もそうなると思っているのだろうか。李登輝のように、忍耐を持ちながらでも積極的に事態を切り開いていく決断力こそ、まさに日本精神のように思うのだが、そんなことを現代の日本で言っても始まらない。この間、李登輝が蒋経国との思い出を綴った「見証台湾-蒋経国と私」が出版されたり、また、国民党関連で政党間の統廃合が進むなど台湾の状況の変化があるのだが、そうした事情もすっぱりと社説からは抜け落ちていた。こうした新しい台湾の動向のなかで二期目の陳水扁総統の方向性を問うことは難しいのだろうか。
 どの社説も似たり寄ったりなのだが、陳総統就任演説については、産経「台湾総統2期目 自制的な姿勢を評価する」がくわしい。


 三月の総統選挙で再選された台湾の陳水扁総統が、二期目の就任式に臨んだ。陳総統は就任演説で、二〇〇八年までの任期中に新憲法を制定する意向を改めて示す一方で、中台間の平和と安定のための新しい関係づくりも提唱した。自らの信念と意欲を示しつつ、全体に抑制のきいた、かつバランスの取れた演説だったといえる。

 ポイントはとりあえず新憲法制定である。

 中国側はここ数日、新憲法制定の動きを非難し、「台湾独立のたくらみは粉砕する」(国務院台湾事務弁公室)などとして、武力行使もちらつかせて台湾側を牽制(けんせい)してきたが、陳総統は演説で、国家主権、領土、統一・独立問題などは、新憲法には含めないとの意向を示した。陳総統がここまで自制を示した以上、中国側も聞く耳を持つべきではないか。

 産経社説の展開が暗に示すように、現状では、新憲法制定の内実よりは、それによる国内事情や大陸との摩擦が問題のように見える。極言すれば、大陸側がいくら猫かぶっても、この問題を突きつけることで真相を炙り出す、というか、現実というものに台湾人を直視させることができる。これは総統の勇気のように見える。ちょうど某国とはまったく逆のように。
 と、大陸側を「猫かぶり」としたが、台湾の視点を除けば、まるで猫かぶりというより、なんだか大国風情も身に付いてきたようにも見える。中国はそのまま行けばいいんじゃないかとも思えてくる。
 これについて、16日読売新聞に掲載されたフランシス・フクヤマのエッセイ「中国 老練の微笑外交」が示唆深かった。

 これに対して中国は急速に拡大する自国の経済力が、アジア諸国と世界全体にとって脅威に映りかねないことを痛感しているように見える。そして、通商の相手やライバルからの反発を未然に防ぐため、非常に手の込んだ外交攻勢を展開してきた。

 そして、政治面でも以前のように、なにかと安保理決議を阻む拒否権の連発をやめるようになり、北朝鮮についても保護者としての役割を果たすようになった…というのである。これがフクヤマの言う老練な微笑外交というわけだ。そして、それらは当然歓迎できるとしているのだが、強い懸念も表明している。

だが、中国の新政策は、自国がまだ成長途上で国力が弱い間だけ、近隣諸国や諸大国を安心させておくための一時的な戦術に過ぎないのかもしれない。そこに真の問題がある。

 国際政治に関心を持つ欧米人なら普通そう思うだろう。だが、実際のところは中国はそういう遠謀を持っているわけでもないだろう。現状の中国には国際的な知識人やテクノクラートの層があり、それらは米国と同じように緩い条件下なら最適に行動するが、基本的な中国の政治要因というものは、結局のところ依然内政、つまり、中国内部の政争に依存していると思われる。悪い言い方をすれば、彼らにとって世界とは中国であって、それ以外はない。
 ただ、そんなことなら、たいした話でもない。フクヤマはこの先、そのような中国への懸念に対して、軍事を退け、政治を強調している。実は、ここが一番難しい問題だ。

 米国と日本は、もっと緊密な共同作業を通じて中国に対処する必要がある。ただし、現在の北京からの朝鮮は主として政治的なものであり、中国を的とする軍事同盟の構築ではなく、考え抜かれた政治的対応が求められる。

 わかりやすいようでわかりにくい主張だ。意味不明じゃん、と投げたくもなる。少し深読みをするなら、現状と大局の違いが重要なのだろう。つまり、現状は政治の連携であり、大局には軍事の問題だと。わかりにくいのは、その大局の部分をあまりあからさまに書くことが、政治的な活動の阻害になるからだ。
 もう一つ問題なのは、遠謀がないのは、中国ばかりではなく、米国も日本もそうだということだ。基本的に米国は軍産共同体という経済に南部キリスト教的な倫理観の頭脳がのっかているような、そら恐ろしい慣性が働くし、日本は先の社説もそうだが、言霊主義というか「ことなかれ」のマントラを唱えながら、依然経済は重商主義から脱する気配もない。
 それが現実というものだ。が、政治の動向というのは、しかし、フクヤマが暗黙に想定しているような国家の次元ではないのかもしれない。この先言うと失笑を買うようだが、ブログが国家間の政治に機能し始める時代が来るのだろうと思う。
 余談めくが、韓国が今後、国際世界でどのような位置を占めるような国家になっていくのか、やや悲観的な状況になってきたが、それでも日韓の政治言論的な摩擦は、日本語と韓国語が構造面や用語の面で似ていることから、かなりの部分がテクノロジー的に交流が進むのではないかと思う。ブログを読み合うようにもなるだろう。
 これに対して中国がどうなるかだ。20日付のNorth Korea Zone "Getting around internet blocks"に、中国でタイプパッドがブロックされて読めない人は、ここから打開の手がかりを見つけてくれという話が掲載されていた。あれ?と思ったのは、中国は、まだタイプパッド、つまり、ブログを遮断しているのか。昨年その話は話題になったが、今でもそうなのだろうか。
 実態がわからないし、笑い話のようだが、ブログは、中国の政治の保守化(専制化)への抵抗力とはなるのだろう。問題は、それが日本語と中国語の間でどうなるか、なのだが、理論的にはかなり進むのだろう。それが現実にいつ政治的な意味を持つのかはわからないが。

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2004.05.20

在韓米軍縮小が意味すること

 どうも無粋な話が連日続くことになるが、政局だの年金だのは特に言及することもない。私が気になるのは、在韓米軍の問題だ。そして、その根は日本の問題でもある。
 今回の在韓米軍縮小の件で韓国が泡を食ったようすは、東亜日報「在韓米軍イラク派遣、韓米同盟の『緩み』に懸念の声」(参照)がわかりやすい。


 米国が、韓国との十分な事前協議もなく、在韓米軍の第2歩兵師団兵力のイラク派遣を電撃的に決定したことで、韓米間に意見調整や協議のための外交チャンネルが十分に稼動していないのではないかという懸念が高まっている。
 米国は、在韓米軍兵力の派遣を14日に一方的に通告してきたが、政府は何の対案も示さないまま4日後の17日、盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領とブッシュ米大統領の電話会談で事実上これを受け入れた。
 また、イラク派遣の兵力が韓国に戻るかどうかについても、両国の立場が明確に整理されていないなど、意見調整に異常な兆候が見て取れる。

 「意見調整に異常な兆候が見て取れる」という表現が面白いが、実際はこの兵力はもう韓国には戻らない。なので、これを機に、在韓米軍は従来にない規模の削減になる。つまり、第二歩兵師団第二旅団の4000人弱が今後一年間イラクに駐留し米国に帰る。現状では、この削減が在韓米軍の一割だが、これが五割くらいまで削減されるだろうとみられている。朝鮮日報「米、最近在韓米軍の完全撤退を検討」(参照)などによれば、全面撤退という話もある。
 当然、韓国での米軍の力は落ちるのだが、とりあえず米軍側はそんなことはないと説明しているのだが、これが笑えるお話だ。

 潘基文(バン・ギムン)外交通商部長官は18日、内外信記者会見で「米国はGPRを通じて、迅速に対応できる統合軍の配置構想を講じてきた」とし、「このため、作戦上の追加負担なく在韓米軍派兵が可能になったと、韓国側に説明した」と話した。
 潘長官はさらに、「米国は、今後3年間に渡って(韓半島に)110億ドルを軍事戦力強化費用として出費することをすでに決めた」とし、「米軍は、パトリオット・ミサイルの配置や、海・空軍力の強化、近隣地域の戦略爆撃機の増強配置など、必要なすべての補完措置を取る」と説明した。

 後半部分から言えば、これは、例の日本が荷担するミサイル防衛システムである。この実現に向けてこの秋からイージス艦が日本海に常駐する。のだが、以前にも触れたようにミサイル防衛システムなんか実用にならない。ただ、日本のカネをじゃぶじゃぶ米国企業に垂れ流すだけ。そんなもので韓国が守れるわけもない。
 というか、ちょっと失言めくが米国はどうやら韓国を守る気がないようだ。そんなことでは北朝鮮から国境は破られるはミサイルぶち込まれるぞとちと不安にもなる人もいるだろうが、多分北朝鮮はそんな自滅をする気はないだろう。実質的には北朝鮮の軍はすでに解体しているのかもしれない。
 その意味で、実際的には北朝鮮には軍事的な危機はなく、むしろ北朝鮮の現体制の存続は、韓国と米国にも利益になる。韓国はこんなものを背負い込みたくはないし、米国にとっても実質リスクはないのに軍産業に日本のカネを投入できる。では、日本にとっては利益になるのか? それがよくわからないが、半世紀くらい後に統一朝鮮ができることをリスクと考えれば利益なのか(皮肉です)。
 冗談はさておき、従来の軍事の観点から考えれば、韓国が従来米軍がしていたことを肩替わりすることになる。当然、それには計画が必要になる。中央日報「『安心しろ』ではなく対策を」(参照)では簡単にその計画について言及している。

もっと大きな問題は、米軍撤収が本格的に始まった場合、どう対処するかだ。特に、北朝鮮の長距離放射砲を無力化するための対砲兵作戦など、米第2師団が担当してきた「特定任務」をすでに引き継いだのなら、これに必要な多連装ロケットなどを購入するのに途方もない予算が必要となる。北朝鮮の事前徴候を探るための情報体系を構築する金額は計算できない。

 実際旧来の枠組みのまま、この計画を実施するかどうかはわからない。が、いずれ、韓国に軍の負担はのしかかるだろう。これも言い方が悪いが、詰まるところ、この問題は韓国の国民が決めればいいことだ。
 日本に関わる問題は、海外駐留米軍再配置(GPR)のほうだ。今回の在韓米軍の縮小はGPRの一環だからだ。これがどうなるのか。中央日報「在韓米軍が在日米軍の支持受ける」(参照)に興味深い指摘がある。

米国が地上軍中心の駐韓米軍と海・空軍主軸の在日米軍の水平的分業関係を終え、日本側に戦力と指揮部を集めようという動きを見せているからだ。

 単純に読むと在日米軍が強化されるようにも読める。しかし、そう単純に考えて済む問題でもない。

 在韓米軍と在日米軍の変化は、米国が日米同盟を太平洋版米英同盟に位置づけようという点とかみ合っている、という分析だ。ここには、米軍が推進する軍の機動化にも日本の方が有利だという判断があるとみられる。
 米陸軍第1軍団司令部の日本移動計画も注目される。第1軍団は配下に米第2師団を置いている。在韓米軍の主力部隊を在日米軍が指揮する可能性が高まったというのは、象徴的な意味を持つ。これに伴い、米国は韓半島防衛については、有事の際の迅速配置軍投入や、危機高調時の戦闘爆撃機、母艦などの隣接配置を主軸と考える可能性が高い。

 まずわかるのは、ようやく冷戦が終わるということだ。それで「北」にフロントする在韓米軍が整理されるわけだ。また、日本も、冷戦用の基地ではなくなる。ここでも、では何向けの基地なのかと考えやすい。端的には中国ではあるのだろう。が、その問題はここでは扱わない。
 いずれにせよ、GPRは日本を基軸に推進されるのだが、ここで重要なのは、このアイディアの主人公はとりあえずラムズフェルドであることだ。彼は、現代戦のIT要素を強化し、地上兵力を削減し、手の汚れない航空戦力を重視していこうとしている。余談だが、米国でも日本でも現代において徴兵の復活があるぞと馬鹿なことを言うやつがいるが、現代の戦争にトーシロは要らない。毛沢東率いる人民の力とか人海戦術の時代ではないのだ。
 だが、このラムズフェルドのアイディアは、イラクで役に立たないことがほぼ証明されてしまった。しかも、この戦争ではクロートの傭兵をがばがば入れることになった。当然、構想の見直しは出てくるだろう。どうなるのかわからない。
 もう一面、GPRで重要なのは、米国の4軍の体制をなんとしたいというのがある。この問題は、米国の内政問題なのであまり見えてこないのだが、日本の場合は、もろに米軍の不利益を受けている地域、沖縄があるので、そこから透けて見えてくる部分が多い。例えば、普天間飛行場返還のすたったもんだは、米国4軍の利権が根にある。米国家側に強い指導力があれば、あんな小さな居住区内の海兵隊の飛行場など、基本的には空軍である嘉手納基地に統合できる。というか、沖縄を来訪したラムズフェルドもなぜこんな問題が解決できないのかいぶかしがってすらいる。万一、住民被害が起きれば、在沖米軍全体が崩壊する危険性もあるからだ。
 現状は、米国連邦議会では、海外駐留米軍再編計画を大統領に提言する「海外基地見直し委員会」の設置を計画し、その公聴会に稲嶺恵一沖縄知事の出席を求めている。沖縄タイムス「米議会海外基地見直し委」(参照)によれば、この計画が、うまくいっていない。

 八人で構成する「海外基地見直し委」の人選は遅れ、議会が指名を公表しているのは、空軍系シンクタンク「ランド研究所」のトンプソン所長、いずれも退役軍人のコーネラ(海軍)、カーティス(空軍)、テイラー(陸軍)の四氏。軍の既得権益が主張されるのがほぼ間違いない顔ぶれだ。

 繰り返すが、GPRで重要なのは、こうした4軍の体制を近代化したいという思いが米国の中枢にあるのだ。
 こうした状況に対して私はどう考えているのか? かなりの部分が、イラクの今後とラムズフェルドの去就にかかっているとは言える。それでも、はっきりしていることは、どのような体制であれ、日本は重視されるだろうということだ。日本は、いわば、米軍のための最大のスペシャリストとなるのだろう。これだけのIT技術とその製造能力を持っていること自体、米軍にとって最大のメリットになるのだ。
 これから米軍の世界展開に日本の国全体が組み込まれていくのだろうと思う。これは、従来のように自衛隊が米軍の末端や兵站として機能するというのはわけが違う。鬱になってきそうだ。
 もちろん、そんなこと妄想かもしれない。そうだといいなと思う。

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2004.05.19

北朝鮮竜川駅爆破とシリアの関連

 ガセかもしれないので、どう扱ったらいいのかわからないのだが、気になることは気になるので、簡単に触れておきたい。北朝鮮の竜川(Ryongchon)駅爆破に関連した話だ。
 少しまどこっしいが、私がなぜこの問題が気になったかというあたりから書きたい。きっかけは、18日付のNorth Korea Zone "Web report claims to confirm Syrian-NK explosion connection"(参照)の記事だ。North Korea Zoneは、この問題について以前にも"Japanese newspaper: Syrian technicians killed in Ryongchon explosion"(参照)で取り上げている。が、あらためて取り上げたのは、18日付のWorldTribune.com "N. Korean rail explosion foiled missile shipment to Syria"(参照)で取り上げられていたことだ。少し長いが話をひく。


 A North Korean missile shipment to Syria was halted when a train collision in that Asian country destroyed the missile cargo and killed about a dozen Syrian technicians.
 U.S. officials confirmed a report in a Japanese daily newspaper that a train explosion on April 22 killed about a dozen Syrian technicians near the Ryongchon province in North Korea. The officials said the technicians were accompanying a train car full of missile components and other equipment from a facility near the Chinese border to a North Korea port.
 A U.S. official said North Korean train cargo was also believed to have contained tools for the production of ballistic missiles. North Korea has sold Syria the extended-range Scud C and Scud D missiles, according to reports by Middle East Newsline.
 "The way it was supposed work was that the train car full of missiles and components would have arrived at the port and some would have been shipped to Syria while others would have been transported by air," an official said.

 この話によれば、北朝鮮の竜川駅爆破は、北朝鮮からシリアに送るミサイル関連の物資が爆破したもので、このため、同行していたシリア人技術者が十数名も爆死したそうだ。
 しかし、この話自体は、日本人には、それほど驚くべきことでもない。というのは、ここで触れられている"a Japanese daily newspaper"は産経新聞であり、この話自体は日本国内ではすでに報道済みだからだ。該当記事は、産経のサイトからはすでに削除になっている。気になるのは、なぜかその北朝鮮特集のページからも削除されていることだ。しばらくはGoogleのキャッシュで「北の列車爆発 シリア人技術者乗車 直後に残存物防護服で回収軍事物資を輸送中?」(参照)は読める。

 先月二十二日に北朝鮮の北西部、竜川(リヨンチヨン)で起きた列車爆発事故で、シリア人技術者らが死傷し、大きな機器とともに乗り込んでいた一画の被害が特に大きかったことがわかった。朝鮮半島情勢に詳しい軍事筋が六日、明らかにした。同筋はこの機器の中身は不明としながらも、事故直後には防護服を着た北朝鮮の軍関係者が現場に到着、一団の乗っていた車両の残存物だけを回収したとしている。このため、北朝鮮とシリアの間で極秘裏に軍事物資の輸送途中の事故だった可能性が高いとの見方を強めている。
 同筋によると、列車に乗り込んでいたのは、シリアの科学調査研究センター(CERS)という機関から派遣された技術者ら。CERSは科学技術振興のために設置されたが、シリアの大量破壊兵器開発計画のなかで重要な役割を果たしているとの疑いも持たれている。

 15日付けのNorth Korea Zoneでは、この産経系のニュースを一週間遅れて紹介したにとどめたのだが、18日のWorldTribune.comの記事では、ご覧のとおりさらに踏み出して、書いている。
 問題は、WorldTribune.comの記事は産経系のニュースを又聞きした伝言ゲームの情報なのか、ということだが、"U.S. officials confirmed a report in a Japanese daily newspaper "ということから、別ソースからの確認のようだ。つまり、米国側からだと言える。ミサイルと明確に書いたのも米側の情報なのだろう。また、化学兵器の搭載はなかったとも指摘している。
 それでも、初報は産経新聞であることには違いないので、このあたりの産経系の情報収集が気になる。
 WorldTribune.comの情報が確かなら、竜川駅爆破の原因として言われてきた「硝酸アンモニウム肥料を積載した列車と石油タンク車を入れ替える作業中に不注意で電線に接触したのが原因」という説は疑わしい。というか、この説は、専門家から被害規模から推定して無理があることは指摘されてはいた。また、金正日暗殺説もとりあえず却下されることにもなる。
 関連して、当然の連想だが、先日の米国によるシリア制裁も、北朝鮮関連という線も浮かんでくる。が、この点についての情報はない。
 以上の話は、ガセなのか?
 North Korea Zoneでは、気の利いた皮肉も書いている。

NKzone wonders where the mainstream media is on this story. Too busy fighting over who gets on the charter plane with Koizumi to Pyongyang?? Or is the Ryongchon explosion story too "old" to revisit at this point?

 確かになぜこの問題は注目されないのだろう? しかも、反面で、小泉再訪朝でメディアは浮きたっている。
 米国支持のように取られるかもしれないが、シリア関与が確実なら、イラク問題と北朝鮮問題は、直結してしまうのに、日本は自衛隊だけがイラク問題であるかのような風潮でいいのだろうか。
 余談めくが、今日の韓国各紙が米軍の縮退に強い危機感を表したことも関連して触れておきたい。朝鮮日報「これが韓米同盟の質的変化なのか」(参照)がなかでも鋭い指摘をしていた。

 在韓米軍1個旅団4000人余の撤退は兵力の数だけを持って対北抑止力に及ぼす影響を論じる問題ではない。在韓米軍の実質的戦力は兵力規模に劣らずその情報力と火力に土台を置いていおり、韓国軍の対米情報依存度は映像情報98%、信号情報90%に達する。とりわけ在韓米軍の存在はそのことが米国本土の絶大な情報力及び火力とつながっているという点で威力的なものであり、そのつながりの密接さは韓米同盟の質がどれだけ高度化しているかにかかっている。

 現在の軍事とは、いいことか悪いことかわからないが、ITを駆使した情報戦でもある。その点で韓国が抜け落ちる危険性がある。もしかすると、これは米国による韓国への制裁なのではないかとも勘ぐりたくなる。が、常識的に見るなら、すでに北朝鮮の脅威は地上勢力としては問題ないということなのだろう(直接米軍人を半島の前線に置くこと避けたのかもしれないのだが)。
 北朝鮮から日本へのミサイルの脅威は、依然変わらないどころか、竜川駅爆破は不気味な暗示なのかもしれない。日本海にはイージス艦が出ずっぱりになる。「日本海にイージス艦 米、9月から常駐配備」(参照)をひく。

 【ワシントン22日共同】米国防総省は、ミサイル防衛の一環として、9月に高性能レーダーを備えたイージス艦1隻を日本海に常駐配備する方針を決定した。イングランド海軍長官が22日の講演で明らかにした。海上配備型の迎撃システムで、具体的な配備先が公表されたのは初めて。

 危機感を高めたいわけではないが、北朝鮮という国はそういう国なのだ。拉致問題解決は日本人の悲願であり、核兵器開発抑制は国際的な世論だが、その隙間に、ミサイルの脅威は依然残る。「北のミサイル開発情報相次ぐ 米韓が監視態勢」(参照)をひく。

北朝鮮が今年三月以降、長距離弾道ミサイルのエンジン燃焼テストを準備しており、米韓両国はこのエンジンが米本土の一部に届く射程六千キロの「テポドン2号」に搭載されるとみて監視態勢を取っていることがわかった。韓国紙、中央日報(六日付)が外交消息筋の話として伝えたもので、在ソウルの外交筋も産経新聞にこの事実を認めた。

 あるいは、こうした危機の構図をあえて米国が描かせているのかもしれない。だが、全体の構図に日本人が無知であっていいわけはないだろう。

追記(04.05.26)
 朝鮮日報に24日重要なニュースが掲載されていた。事件を暗殺未遂とする見る新しい証言だ。「North Korean Security Believes Ryongchon Explosion an Assassination Attempt 」(参照)。


According to a source, North Korea's State Safety & Security Agency concluded that the massive explosion that occurred in the North Korean city of Ryongchon on April 22 had been conspired by anti-North Korean government forces to harm North Korean leader Kim Jong-il.
 A North Korean official who was recently on his business trip to China said, “The North Korean National Security Agency has investigated the incident since it took place and concluded that rebellious forces had plotted the explosions targeting the exclusive train of Kim Jong-il. The security agency, in particular, gained evidence that cell phones had been used in triggering the explosion and reported to the North Korean leader that the use of cell phones should be banned for the sake of the leader’s safety, the official said.

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2004.05.18

イラクに主権は委譲されてもお金はダメ

 イラク情勢について、目につきやすい戦闘の状況に加えて、このところどうも主権委譲に関連して、米軍と国連の間で香ばしいやりとりが進んでいるようだ。ただ、この国連が旧来の意味での国連だけではなく、ケリー支持やその他の反ブッシュ勢力(ソロスとか)も噛んでいるようなので複雑。というか、複雑極まりない。
 しかし、ある意味では単純とも言える。要するに主権委譲後に誰が石油の利権を握るかということだ。国連か米国か。もっとも、そう言うと単純すぎるし、よくある陰謀論のように聞こえるかもしれない。そこが難しいところだ。極東ブログでは、できるだけ、難しい面を扱いたいと思うのだが、単純な反米論者などに誤解されやすい(っていうか理解されないのだろう)。
 話の切り出しにSalon.comの"Raiding Iraq's piggy bank"(参照・要登録)を借りる。問題提起はこうだ。


As the occupation of Iraq dissolves further into bloody chaos, the colonial overseers in Baghdad are keeping their eyes fixed on what is really important: Iraq's money and how to keep it. Whatever apology for a "sovereign" Iraqi government is permitted to take office after June 30 -- and U.N. envoy Lakhdar Brahimi admits in private that he "has to do" whatever the Americans tell him to do -- the United States is making sure that the Iraqis do not get their hands on their country's oil revenues.

 つまり、"hands on their country's oil revenues"ということであり、米国はその手を離す気はないよということだ。主権はイラク国民に返すが、石油収入益は渡さないよ、と。しかし、それって主権委譲になるのか?と考えれば、日本人の感覚からすれば、なるわけないでしょと言いたい。が、日本国の立場はと再考すれば、暗澹たる結論を言わなくてなるまい。
 もともとこの戦争は石油利権だという言い方もある。が、とりあえずそれは今回は扱わない。「世界を動かす石油戦略」も理解していない初歩的な誤解が含まれている可能性が高いからだ。
 話を続ける。

We are talking about big money here: Iraq's oil exports are slated to top $16 billion this year alone. U.N. Security Resolution 1483, rammed through by the United States a year ago, gives total control of the money from oil sales -- currently the only source of revenue in Iraq -- to the occupying power, i.e., the United States. The actual repository for the money is an entity called the Development Fund for Iraq, which in effect functions as a private piggy bank for Paul Bremer's Coalition Provisional Authority. The DFI is directed by a Program Review Board of 11 members, just one of whom is Iraqi.

 問題は、DFI(the Development Fund for Iraq)のありかただとも言える。本来なら、石油収入益は国連管理下であるはずだ。しかし、そう簡単に話が進まないのは、国連が善なのに、アメリカが力でごり押しというだけではない。やっかいなのは、これが、極東ブログ「石油・食糧交換プログラム不正疑惑における仏露」(参照)でも触れた国連疑惑に関連していることだ。

The development fund is not solely dependent on oil money -- of which it had collected $6.9 billion by March. Under the terms of 1483 the DFI also took over all funds -- $8.1 billion so far -- in the U.N.'s oil-for-food program accounts (Russian and Chinese support for the resolution was bought by agreeing to keep the oil-for-food racket running for a few more months); various caches of Saddam Hussein's frozen assets around the world, amounting to $2.5 billion; and further cash left behind by Saddam inside Iraq, estimated at about $1.3 billion. The money is kept in an account at the Federal Reserve Bank in New York.

 アナンがヴォルカーを選んだのは現状では最善かとも言えるが、アナン自身がいつ吹っ飛ぶとも限らないし、疑惑のリストにはシラクも載っているので、どこまで火がつくかもわからない。
 Salon.comの"Raiding Iraq's piggy bank"ではこの先、Halliburton社への支出について議会の歯止めがないことも問題にしている。このあたりは、明白過ぎるのだが、だからHalliburtonが悪玉だと簡単に陰謀論にして済むことでもない。むしろ、この金を制御せよ、が当面の課題であるべきだ。
 ソロス(George Soros)は、早々にこの問題に首を突っ込み、"Iraq Revenue Watch"(参照)で、この金の制御が米国に回らないように活動を始めている。ソロスの真意がどこにあるか、どう評価していいのか正直なところわからない。気になるのは、むしろ、わかりやすい図式が広まりつつあることだ。日経系「イラク泥沼化、それでも ブッシュ大統領再選へ」(参照)ではソロスの最近の活動についてこう図式化している。

 ブッシュ再選に待ったをかける動きはある。選挙資金集めではブッシュ陣営が民主党の諸候補を圧倒しているが、最近になって投機王のジョージ・ソロス氏が500万ドル以上の巨額の資金を集めて反ブッシュ、民主党候補支持のキャンペーンを始める、と宣言した。ソロス氏は、共和党新保守派(いわゆるネオコン)を自身に従わないものを淘汰する「至上主義」として決めつけている。ソロス氏が出身国ハンガリーでナチス・ドイツに占領された当時の体験を引き合いに出しながら、ネオコンのイデオロギーの影響を強く受けているブッシュ大統領の対外強硬策を厳しく批判している。ユダヤ系ハンガリー移民であるソロス氏が、同じくユダヤ系政治専門家が占めるネオコンに対抗することの政治的意味は興味深い。というのは、ブッシュ政権は親イスラエル路線をとり、アメリカ政治に大きな影響力をもつユダヤ系の支持を広範にとりつけていた。ソロス氏のような動きがユダヤ系社会に広がると、民主党候補には大きなプラスになる。経済トレンドと同じように今後はこうしたイスラエル・ユダヤ系社会の支持動向も見逃せない。

 こうした、ある意味で日本人にわかりやすい図式は緻密に論駁しなくてはいけないのだろうと思うが、率直なところ今の私には難しい。
 いずれにせよ、"Iraq Revenue Watch"で公開されている文書は、この問題を考えるうえで重要であるはずだ。できることなら、左翼といった旧来のバイアスがかっていない視点で、これらのソースを精緻に読み解いている論者はいないのだろうかと思う。
 余談めくが、「アラブ政治の今を読む(池内恵)」で啓発されたことでもあるが、イラクという国のアイデンティティは結局のところ、この石油という利権の配分権の意識とも言い換えていいようだ。冗談みたいだが、主権とはこの石油収入益の権利を実質指しかねない。

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2004.05.17

最近のイラク情勢について

 米国での報道から見ていると、イラクの戦闘ではかなりの動きがあるのだが、あまり日本国内では報道されていないようだ。特に、新聞社系のニュースが弱い。朝日新聞はほとんど沈黙しているようにすら見える。朝日は、れいの虐待がラムズフェルドの承認だったか、というニューヨーカーの記事"THE GRAY ZONE"(参照)を早々にネタにして「収容者への威圧、『国防長官が承認』米誌報道」(参照)という記事を書き飛ばしているが、これもどうやらAP経由臭い(参照)。朝日に報道能力がなくなっているようにすら見える。
 他紙も似たようなものだが、読売はやや奇妙だ。カイロ特派員からのニュースがあるのだが、これが米ソースやアラブ系のニュースの伝聞を書いているだけだ。例えば、「イラク各地でサドル派と交戦続く、爆弾テロも」(参照)にはこうある。


中部カルバラでも16日、米軍と交戦したマフディ軍兵1人が死亡。南部バスラでは16日、英軍駐屯地近くの住宅に迫撃砲が着弾、2歳の双子女児と母親、祖母の4人が死亡した。

 というのだが、ニュースのトーンが感情的であり、ソースが不明だ。非難する意味ではないが、他も参考がてらに示しておこう。「モスルに迫撃砲攻撃、イラク人4人死亡・17人負傷」(参照)より。

【カイロ=柳沢亨之】ロイター通信によると、イラク北部モスルのイラク軍関連施設に15日午前、迫撃砲による攻撃があり、イラク軍への志願手続きのため施設入り口で並んでいたイラク人4人が死亡、17人が負傷した。

 また、同記事ではこうある。

 AP通信によると、バグダッド北東部にあるサドル師派の拠点「サドルシティー」で14日夜から15日未明にかけ、米軍と交戦したマフディ軍兵2人が死亡した。

 皮肉に聞こえるかもしれないが、ロイターとAPをまとめるなら、カイロで書く必要はない。
 以上、ちょっとしつこい感じだが、日本でのイラク報道がどうも奇妙なことになりつつある。
 事態について話を移す。共同系ニュース「イラク聖地などで衝突続く 米兵死者、776人に」をひく。

 【バグダッド16日共同】イラク中部のイスラム教シーア派聖地カルバラなどで15日から16日にかけ、米軍と反米武装勢力の衝突が続き、バグダッドでは15日夜、道路に仕掛けられた爆弾が爆発し米兵1人が死亡、1人が負傷した。

 詳細は日本時間で14日時点だが、New York Times "Battles in Najaf and Karbala Near Shiites' Religious Sites"(参照)がわかりやすい。

BAGHDAD, Iraq, May 14 - Fighting erupted Friday in Najaf when American tank troops and soldiers battled militiamen loyal to the rebel Shiite cleric Moktada al-Sadr in a centuries-old cemetery near the revered Shrine of Imam Ali.
 Amid plumes of smoke and explosions that echoed around the narrow streets, the shrine itself was reportedly hit by gunfire, pitting its golden dome with four small holes.
 The damage, however slight, marked a moment that the American military has been straining to avoid in its five-week standoff with Mr. Sadr: any violation of the holy sites of Najaf and Karbala, held sacred by Shiites around the world, that could inflame Shiites here into a broader uprising against American forces.
 But many moderate Shiites have called for Mr. Sadr and his militia to leave Najaf, and there were no signs of wider unrest on Friday. Despite the damage, the United States military said it was taking extraordinary pains to convince Shiites that it was doing everything to keep the violence away from the shrines.

 米軍によるサドル潰しが進行していると言っていいのだろうと思う。戦闘は続いているがファルージャ掃討とはかなり違うようだ。
 事態はどうなっているのか。考察の一例として、神浦元彰軍事アナリストでは、日本ソースだけから、次のように印象を書いている(参照)。

サドル師が提示した停戦協定を米軍は拒否をした。あくまでサドル師の殺害か拘束を目指すという。またサドル師も徹底的に占領軍と戦うことを宣言した。そこで比較的安全と言われてきたサマワにも戦火が飛び火した。アメリカとしてはサドル師の抵抗勢力を徹底して鎮圧し、反米に傾くシーア派に見せつけたい狙いもあるようだ。そのため本丸のサドル師は当分は生かしておいて、その間に各地のサドル派の武装勢力(マファディ軍)を、一人でも多く殺害する作戦のようである。
 米軍はそのようなやり方しかできないが、果たしてそれでイラクは安定した国になるのだろうか。私はイラクの治安がさらに悪化していき、駐留米軍を苦しめることになると思う。

 この見解は軍事的というより、日本人にとって一般的な見解ではないだろうか。いずれにせよ、イラクの米軍は混迷を深めているというあたりだろう。
 そうなのだろうか?
 少し古いが、4月6日のWashington Post "A Necessary Fight"(参照)では、この時点で、明確にサドル側との妥協を否定し、サドル側を徹底的に壊滅するように示唆している。恐らく、現時点では、この視点は米軍のそれを代弁していると見ていいだろう。

U.S. officials wouldn't say when they might seek to arrest the cleric, who reportedly has taken refuge in a mosque surrounded by his heavily armed militiamen. But now that the conflict with the Mahdi Army has begun, U.S. commanders should not hesitate to act quickly and with overwhelming force.

 the clericはサドルを意味する。ご覧のとおり、早急に殲滅するように主張されている。むしろ、このアクションが、れいの虐待関連のごたごたで1か月近く延期されたのではないだろうか。つまり、軍はけっこうシナリオ通り動いているようにも見える。

The Marine action represents a return to more aggressive tactics against an enemy that appears not to have weakened as much as U.S. commanders believed. Such offensive operations have a cost, in Iraqi and American lives, and in new televised images of violence from Iraq. Yet the alternative -- to step back from confrontation with Iraq's extremists -- would invite even worse trouble.

 ここでサドルを徹底的に叩くことが、むしろ被害を食い止めるというのだ。
 この問題は、このWashington Postの記事が書かれた事態から変化し、すでに国連委譲が背景になっていることだ。ファルージャについては、どうやら旧フセイン派との妥協はできたようでもある。そこにシーア派の焦りもあるのかもしれない。ただ、シーア派とはいえ、サドルはシーア派を代表しているわけでもない。
 それでも、マファディ軍のような安易な武装勢力はいずれつんでおかないと内乱の芽にはなるだろう。
 以上、米軍を擁護したいわけではないが、米軍がなんとなく言われているほどアノマリーな状態ではないようには思える。

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2004.05.16

ジェンキンスさん問題は難しい

 小泉首相の北朝鮮再訪がよくわからない。国内では拉致被害者家族8人全員の帰国がこれで実現できるような空気が流れている。小泉政権としては、この花火で参院選を押さえ込む腹づもりだ。逆に言えば、これがコケれば参院選も危うい。かなり裏を取って勝負に出たというところだろう。が、くどいが、そんなものなのだろうか。今回の再訪は、どう見ても山拓の仕込みだろうし、そう考えると、当初は小泉再訪ではなく、福田が飛ばされるスジだったのではないか。今となってはそれはどうでもいいことなのかもしれないが。
 小泉首相の北朝鮮再訪については、私としても、なんとなく拉致被害者家族8人全員が帰国するような気分でいた。が、15日付のNorth Korea Zone "Dealing with Jenkins"(参照)を読みながら、少なくとも、ジェンキンスさん(Charles Robert Jenkins)についてはそう簡単にはいかないのだろうと思った。国内でもこの問題にある程度注目が集まっている。くせ球だが、朝日新聞系「8人の帰国どう実現 首相再訪朝、ジェンキンスさん焦点」(参照)をひく。


 小泉首相は22日の再訪朝で、北朝鮮の金正日(キム・ジョンイル)総書記に拉致被害者の家族8人の無条件の帰国・来日を最優先課題として要求する。だが、8人のうち脱走米兵だった曽我ひとみさんの夫ジェンキンスさん(64)は来日した場合、米国に身柄の引き渡しを求められ訴追される可能性がある。さらに北朝鮮が「死亡した」などとした10人の安否の真相究明の方法や、横田めぐみさんの娘キム・ヘギョンさん(16)の来日をどう実現するかなど、調整が必要な課題は多い。
 在韓米軍から北朝鮮に脱走したジェンキンスさんは、米国にとって現在も訴追対象だ。ベーカー米駐日大使は13日の記者団との懇談で「米国の拘束下に置かれれば、通常の手続きにのっとって罪に問われるだろう」と述べ、軍法会議にかける方針を示した。

 ただし、小泉側は米国を抑えることができると踏んでいるようだ。さらに同記事より。

 自民党の安倍晋三幹事長は14日、曽我ひとみさんに電話し、首相の訪朝を説明。曽我さんは「夫は米国人なので心配している」と話したという。
 日本政府は米国に「配慮」を求めており、来日した場合も「米側の特例措置は期待できる」(首相官邸筋)とみている。
 米国との調整以上に微妙なのが本人の意思だ。政府関係者によると、ジェンキンスさんは「北朝鮮を出たくない、という意向のようだ」という。北朝鮮側も「ジェンキンスさんは拉致被害者ではない」(日朝交渉筋)として他の家族と一線を画す認識だとされる。

 この朝日新聞系の報道だが、どうも話が変だという感じがする。
 まず、先の引用で前置きもなく「脱走米兵だった曽我ひとみさんの夫ジェンキンスさん」ということになっている。つまり、脱走米兵は事実認定されているかのようだ。が、事実についての日本側の判断を考慮せず、しれっとそう書いてしまっていいのだろうか。この点については、事実認定という点に絞っても、ジェンキンスの親族が特設サイト"In Support of Charles Robert Jenkins"(参照)でいくつか疑問を投げかけている。
 後半の引用にあるようにジェンキンスさんに北朝鮮出国の意志がないということもあるうる。というのは彼自身も、脱走容疑に怯えている可能性もある。当たり前のことだが、脱走というのは国家への反抗に等しく罪も重い。自身がそう認識しているとも考えられはする。
 だが、北朝鮮側が彼を他の家族と一線を画す認識という点を、だらっと垂れ流しにしている朝日新聞系のニュースも奇っ怪なものだ。というのは、ここで「一線を画す」としないと、単に米人を拉致したことになるからだ。日本という国は防衛力しか戦力を持ち得ないので、主権を構成する国民のすら積極的に守ることは難しいが、米国の場合、これが明白に拉致となれば、軍事力を使っても保護に乗り出す。つまり、米国にそうさせないための北朝鮮側の意図に過ぎないとも言える。
 もっとも、米国側でも一応脱走の認識ではいたようで、だからこそ、救助の試みはなかったのかもしれない。そのわりには認定が曖昧だ。1965年の失跡から17年後の1982年に認定されたものの、生存の確認もできていない。確認されたのは、1996年、北朝鮮の宣伝映画「Nameless Heroes」に米諜報機関幹部役で出演したためだ。なお、この脱走問題を極めて悪化させてくれたのは「週刊金曜日」とJNNでもあるのだが、ここでは触れない。あらためてこんな胸くそ悪いものに言及したくもない。
 小泉側でもある程度この問題は詰めているのだろう。日本にとにかく連れてきて、脱走とは違う面での証言が本人から出れば、ブッシュも恩赦が出させる。しかし、それってすごい離れ業だなとも思う、というか、なんかシュール過ぎな気もする。
 この問題、つまり、ジェンキンスさんを含めての帰国は、理性的に考えると迷路のように思える。なのに、気分だけは、日本人のせいか、どうも先走ってしまう。
 余談だが、私の親族にもJenkins姓があるが、通常、ジェンキン「ズ」と濁音の「ズ」呼んでいる。なんでメディアはそろってジェンキン「ス」なのだろうか。

追記04.05.23
 朝日新聞系ニュース「ジェンキンス氏は軍事裁判の対象 米国防総省が声明」(参照)では以下のように、罪を問うことを確認した。これで事実上、日本に連れてくることは不可能になった。


 米国防総省報道官は22日、日朝首脳会談を受けて、拉致被害者の曽我ひとみさんの夫で元米兵のチャールズ・ジェンキンス氏が「極めて深刻な罪」に問われていることを強調する声明を改めて発表。「近い将来、変更することは想定されていない」とも指摘し、米国政府としてジェンキンス氏を訴追する姿勢を変えるつもりのないことを明らかにした。

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