美人だろうが民主化だろうが、私はチモシェンコ(Tymoshenko)が嫌い
私は率直に言ってウクライナ選挙に続く騒動にそれほど関心はない、ということは先日の極東ブログ「ウクライナ大統領選挙雑感」(参照)にも書いた。その後も基本的にどちらの勢力にもそれほど荷担する心情はない。だが、日を追うにつれ、気炎を上げているユシチェンコ陣営に不快感を覚えるようになった。それほど政治的な意識ではなく、印象に過ぎない。でも、この印象を書いておきたい気になってきた。
不快の核は、ユシチェンコ陣営のユリヤ・チモシェンコ(Glamorous Yulia Tymoshenko )元副首相(44)の存在だ。彼女の紹介は読売新聞系"カリスマ的な演説…ウクライナに「ジャンヌ・ダルク」"(参照・または参照)を借りよう。
【キエフ=飯塚恵子】大統領選をめぐって政治危機が続くウクライナで、野党代表ビクトル・ユシチェンコ大統領候補(50)を支え、「ウクライナのジャンヌ・ダルク」(欧米メディア)と注目を集める女性政治家がいる。
ユリヤ・チモシェンコ元副首相(44)で、敏腕ビジネスウーマン出身の同氏は、女優のような容姿とカリスマ的な扇動演説を“武器”にキエフで連日10万人以上のデモ隊を動かす原動力となっている。
こういうのって不快なんだよね。個人的なものかもしれないのだが。かつてニクソン追及のために奮闘していたジョーン・バエズに萌えの少年時代を送ったことへの嫌悪感かもしれないなとも思うだが。それでも、バエズは今でも好きだが、チモシェンコについては、うへぇという感じがする。自分でもよくわからない。美人? ま、それは人の好みもあるでしょうけど(参照)。
「萌え」の問題だからというわけでもないが、要は物語的な言葉による描写っていうこともあるのかもしれない。読売系のニュースを引用したのは、この語り口も紹介したかったせいもある。ナイーブとはいえこの書き出しはねーだろという感じがする。
このあたりについては、そう感情的に無茶苦茶を言っているつもりはない。BBC"Ukraine's 'goddess of revolution' "(参照)と比べてみるとわかりやすい。
Orange-clad protesters call her "Goddess of the Revolution" while outgoing President Leonid Kuchma and some of the oligarchs - Ukraine's business and political elite - are believed to hate her.
【試訳】
オレンジ色をまとった抗議者たちは彼女を「革命の女神」と呼ぶ。だが他方、クマチ元大統領やロシアの新興財閥は彼女を嫌悪しているようだ。
いかにも明暗のあるリードが先にくる。
チモシェンコに、こうしたダークサイドがあることは、先の読売系のニュースも伝えてはいる。
トレードマークは、長いブロンドを3つ編みにして後頭部に回すウクライナの農民風髪形。だが、チモシェンコ氏は実は、工業が栄える東部のドニエプロペトロフスクの出身。地元財閥との関係を深め、ウクライナの天然ガスを取り扱う「統一エネルギー機構」代表を95年から2年間務めた際には商才を発揮し、巨額の富を蓄えたとされる。
98年に国会議員に当選し、現在の政敵・クチマ大統領の庇護(ひご)を受けて政治基盤を築いたが、2000年に大統領と対立、副首相を解任された。その後も2001年には汚職容疑で逮捕され、釈放されるなど、闇の部分も併せ持つ劇的な半生を送ってきた。
端的に言って、このあたりの彼女の過去の持つダークな部分が今回のウクライナ騒動にどのような影響を持っているのかが気になるところだ。
実際のところ、30日に野党陣営が与野党協議の決裂を宣言した背景はチモシェンコの画策だろう。ユシチェンコが大統領になれば、チモシェンコは首相になるのは、過ぎゆく今年の流行語で言えば、間違いない。下衆の勘ぐり的に言うと、ユシチェンコに致死ならぬ毒を盛って一番利益を得るのは誰なんだ?
読売系のニュースでは「統一エネルギー機構」について曖昧に書いているが、こいつは独占企業だし、商才を発揮というよりは、そのビジネスの全容は不透明なままだ。BBCの言葉を借りるとこうだ。
They point to her controversial past when in the 1990s she reportedly made a fortune from questionable gas trading.
【試訳】
ウクライナの人々は彼女について評価の割れる過去を指摘する。彼女は、1990年代において疑惑がつきまとう天然ガス取引で財産を形成したと言われているからだ。
彼女の「汚職容疑」も天然ガスに関係している。クチマ元大統領との対立も、ようはこうした彼女の疑惑に端を発していると言っていいのだろう。
BBCでは、ユシチェンコの下でチモシェンコがロシアの新興財閥のカネを政府側に吸い上げたという話も伝えているが、彼女が首相となれば、さらに新興財閥の追討を徹底させる…というか、その利益を自分の統制下に置くようになる。彼女自身も新興財閥ではあるが。
日本語圏以外にネットを見渡すと、この問題にはいろいろ陰謀論も渦巻いている(参照)。日本経済新聞などにも事前に暗示的な記事があったりもする(参照)。しかし、私などにはなにが真実だかわからない。多少なりともわかるのは、東部資源にダークな関わり秘めたチモシェンコのような政治家が牛耳るような国には所属したくないよ、という東部分離派の言い分だ。
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コメント
んーと。
批判する時には“美人”いらないのでは( ゚ー゚)?
褒める時にはさして構わない気もしますが。
投稿: 紅玉石 | 2004.12.17 16:49
黒いなぁ....
投稿: i | 2004.12.19 04:26
美人というのは貶し文句にもなるのでは。
投稿: スープ | 2004.12.20 07:14
> 過ぎゆく今年の流行語で言えば、間違いない。
こういう書き方好きです(笑)。
投稿: (anonymous) | 2004.12.28 21:51
ダークサイドで思い出しましたが、ユシチェンコ夫人とCIAの繋がりについての記事を国内のサイトでも見つけました。
日本語で読める記事としては、こちらのバックナンバーはウクライナ選挙についてかなりつっこんだ所まで触れています。
http://www.tbs.co.jp/newsi_sp/eurasian/index.html
投稿: エフ | 2004.12.28 23:55
彼女についてもっと知りたいですね。
投稿: K | 2007.04.23 08:01
正直根拠もなく片方だけが黒って決め付けてるのが不快かな
投稿: | 2010.02.08 21:40