世田谷一家殺害事件から四年
書いても年末の雑談になってしまうと思う。明日が大晦日かと思うと、あの事件を思い起こす。
平成12年12月30日深夜から未明にかけて上祖師谷に住む宮沢さん一家四人が殺害された。あれから四年過ぎた。今年も事件解決の糸口すら見つからなかった。昨年大晦日に私はこのブログで大手新聞各紙社説がこの問題に触れないことに苛立ちを書き散らした。しかし、また一年ブログを続けてみて、あの苛立ちは諦観に変わってきてしまったと思う。恐らく、明日の新聞社説になにもこの事件に言及がなくても、そういうものかと私は思うのだろう。
今年は災害の多い年で「災」という字がキーワードになったとも聞く。しかし、天災というのは絶えることなく起こりうるものであって、人知の及ばない面がある。道徳をたれるみたいだが、人間にはどうしようもなく運と不運というものはあり、天災は不運ということになるのだろう。人はそうした運や不運に流されつつも、それに流されまいとして生きていくものだし、生涯というスパンで見たとき、運と不運がその人の人生にどう意味づけられるかは、その人の生き様のあり方に側に取り込まれる…つまり、どんなに不運でもそれを生きた人生には意味がある…と思う。というか、そう信じたい。
もちろん、それは大きな虚構かもしれない。スマトラ沖地震の被害者はいよいよ10万人に及ぼうとしている。天災とは、自然とは、依然畏怖を覚えるものだし、不運で済まされないような虚無がばっくりと口を開けているように思う。突然途絶えた人生には、生涯という意味への模索が閉ざされてしまう。
世田谷一家殺害事件が社会にもたらした恐怖は、天災とも不運とは違うものだ。こうした悪事を撲滅すべく人の社会は努力していかなくてはいけない…しかし…と、それでもそれは、あたかも天災のようにどうしようもなく見えてしまう。11月17日に奈良県で起きた小1女児殺害事件も、その後解決の方向も見えない。このままこの事件も新しい年を迎えることになるのだろうか。いや、事情聴取が始まったようではある。追記同日:同県三郷町に住む男(36)が逮捕された。
いや、世田谷一家殺害事件は、今年はどうだったのか、と、もう一度問うてみよう。
Yahoo! JAPANにはこの事件記事のログがある。「Yahoo!ニュース - 世田谷一家殺害事件」(参照)がそれだ。著作権などの理由か、掲載されている点数はまばらになっているが、数えてみると18点ある。過去のものからめくっていく。なんども読んだ記事ばかりだなという思いがよぎるが、読んでいない、気になる記事もあった。先日23日の出された共同"15-45歳「少年」明確に 世田谷一家4人殺害4年"(参照)だ。
東京都世田谷区で2000年12月に起きた宮沢みきおさん=当時(44)=一家4人殺害事件は30日で発生から丸4年。現場に犯人の指紋が残りながらも捜査は難航しているが、犯人像は徐々に浮かびつつある。
冷蔵庫のアイスに興味を示す点などから「15歳-45歳」とし、少年の犯行の可能性を明確にした。
少年犯罪?
私は、その可能性は考えてもいなかった。もちろん、可能性としては考えられはするだろう。が、奇妙な思いがする。率直に書くが、この事件は当初、15歳というレンジの少年犯罪を予想させる情報はなかったと思う。そして、今頃こういう情報を出すのは、この四年間で、少年によってもこれほどまで残酷な事件が起こりえる、というふうに日本社会の空気が変わったからだろう。
もちろん、残虐さというなら、あるいは少年が引き起こすというなら、この数年の社会の空気など言い出さなくても、戦後の世相などでもあったことだろう。しかし、この事件についてわれわれが恐怖を覚えるのは、その虚無性だ。どうやら怨恨でも、カネ目当てだけでもない、しかも犯人の挙動は血まみれの死者に動揺の様子もみせていない。つまり、こうした虚無を少年にだぶらせても不思議ではない社会の空気が出来てきたのだ。
事件を社会問題に還元して社会を論じたいというオチにしたいわけではない。ただ、若い少年に及んだ虚無の、社会感覚は、今現在の私の感性の一部だとは思う。
うまく言えないが、それはなんなのだろうか。一つには、たぶん、どのような社会でも失ってはいけない正義への希求感覚の、新しい形の麻痺なのではないか。
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コメント
リンクの話もある。
真実かどうかはわかんないですが、中国人の犯行とか?
逃げてしまえば調べようがないですから。
あと、遺留品もそれ臭かった記憶が。
投稿: てるた | 2005.01.24 15:49