« 北朝鮮の政権交代のシナリオが見えてきたか | トップページ | 2004年、中島らも追悼 »

2004.12.28

スマトラ島沖地震津波に思う

 スマトラ島沖地震津波で沿海の各地ではすでに二万人を越える死者が出たことがわかった。津波が襲ってくるのは、地震発生から時間的に遅れることがあるので、防災の用意があれば被害は防げる、と言いたいところだが、現実にはそうもいかない。今回の地震はスマトラ島沖とはいえ陸地に近いので地震発生から津波が来るまでの時間差はあまりなかったのかもしれない。また、津波地震とよく言われるように陸地からではあまり地震を感じないこともある。
 サロン・コムのニュースを見ていると、国連の発表があり(参照)、今回の地震はcostliestとあった。今後の対策に巨額の費用がかかる。


Dec. 27, 2004 | United Nations -- The earthquake and tidal wave that raced from southeast Asia to east Africa this weekend, killing tens of thousands of people, may be the costliest disaster in history, reaching billions of dollars, the U.N. emergency relief coordinator said Monday.

 陸上の地震などの場合、救援は初動の四八時間が急務だが、今回の津波災害の初動対策はあらかた終わったのではないか。それでも被害者への対策や伝染病の蔓延を阻止する対策は急務だ。
 私は今回の津波被害で、沖縄での生活のことを思い出した。港から50メートルといったところの平屋に数年暮らしていた。窓から海が見えた。リーフが広いのでそれによって津波は軽減されるのだろうなと思ったが、実際に津波が来たら一発で終わりだなとも思った。地震が発生したときは、いつも津波を恐れた。
 沖縄の人間が津波を恐れるのには歴史的な理由もある。通称明和の津波と呼ばれる1771年の八重山地震津波では八重山諸島と宮古で津波の被害で1万2千人が死んだ。石垣島では現在空港建設問題で話題になる白保地区だが、ここでは、およそ千6百人、村人の九八%が亡くなったという。つまり、村が壊滅した。
 この地には伝説がある。海人(うみんちゅ)が人魚を捕らえたところ、「竜宮に帰りたい」と懇願するので海に放った。すると、ほどなく再び海上に姿を見せ、「津波が来るので山に逃げなさい」と告げたという。
 こうした津波から奇跡的に難を逃れたという伝説は本土にも少なくない。それだけ津波が恐ろしいものだということを、伝統社会はそれなりに伝えうるものだろうとも思う。なので、というわけでもないが、今回のスマトラ沖地震津波のニュースを聞いたとき、こうした伝統的な知恵が伝えられてなかったのではないかとも思った。
 近代化を迎えた日本でも、明治二九年(1896年)、明治三陸大津波では約2万2千人を越える人が津波で死んだ。被害が大きかったのは津波地震特有の揺れの小さいこともあっただろう。震度三程度だったらしい。この地域には慶長の大津波(1611年)の伝承もあったのだから、津波の恐ろしさは伝えられてはいたのだろう。
 明治30年代というと私の祖父母が生まれた時代である。私の祖先は山間の人ではあったが、津波の怖さというもののあるリアリティはしっかり継いでいたように記憶する。
 私も津波というものが心底恐いなと思ったのは、津波で百人を越える人が亡くなった昭和58年(1983年)の日本海中部地震の映像を見たときだ。ちょっと言葉に詰まるのだが、本当の津波というのはサーフィンの高波なんていうものではまるでない。マンション群が高速でぐぐっとせまってくるような感じだ。そういえば、昨今のマンションを見上げるとき、津波ってこんなのが襲ってくるのだなと思うことがある。
 津波の被害といえば防災をという話題にもなる。しかし、平成五年(1993年)北海道・奥尻島と渡島半島西部を襲い百人以上の死者を出した北海道南西沖地震では、日本海中部地震での津波をもとに築かれた防潮堤だったのに、この時に襲った津波はそれを越えてしまった。
 今回の津波災害に関する海外の記事では、テレグラフ"A terrible reminder that nature is dangerous"(参照)が私などには心に迫るものがあった。

The extent of yesterday's tidal cataclysm makes it hard to think about the individual losses. Our brains are not designed to compute suffering on such a scale. We can relate to a single death. We can even, with more difficulty, feel grief at an atrocity such as that at Beslan. But, when whole villages are extirpated and thousands slain, our minds seem to skim off the surface. We might cling to the more manageable components - the fate of British tourists, for example - but the swallowing up of whole communities is literally unimaginable.

 人間の脳というのは、これほど大惨事を理解するようにはできていないのかもしれない。もちろん、それでいいというわけではない。テレグラフの論調に賛成するものでもないが、人間が自然の前にいかに小さな存在かという事実は愕然と存在する。

追記(2004.12.29)
 死者は5万人を越え、WHOは疫病によるさらなる危険性の警告を出している。このエントリでは曖昧にしか扱っていなかったが、被害は対岸のスリランカやインドにも大きい。この距離を考えるに津波の警告は技術的には可能であっただろう。悔やまれてならない。

|

« 北朝鮮の政権交代のシナリオが見えてきたか | トップページ | 2004年、中島らも追悼 »

「時事」カテゴリの記事

コメント

日本赤十字社が災害義援金を集めているようですね…
http://www.jrc.or.jp/sanka/help/news/703.html

苦しんでいる人々の苦しみが少しでも和らぐことを、
心から願います…

投稿: kagami | 2004.12.29 00:46

日本の人気グループの曲に、その名前を使ったものがありますね。私は、それがヒットした時、とても違和感を持ったのでした。不謹慎だとさえ感じたものです。そんなメローな音楽に仕立ててはいけないとも思いました。私の中に、「津波はとても恐ろしいものだ」という観念があったからだということに、今回やっと気づきました。

投稿: r-38 | 2004.12.29 01:48

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: スマトラ島沖地震津波に思う:

» スマトラ島沖大地震 [SAKのブログin福岡]
インドネシアのスマトラ島沖の大地震で発生した 津波による死者は、2万3266人に [続きを読む]

受信: 2004.12.28 14:55

» スマトラ島沖地震 [さいとうくんのニュース速報!?]
スマトラ島沖で大きな地震がおきました。マグニチュード9でした。 本震が大きく、そ... [続きを読む]

受信: 2004.12.28 17:01

» スマトラ沖地震とblog [muse-A-muse]
(via.PJNET.org, “Bloggers and Tsunami: But Is It Journalism?”) NYTの記事(“Blogs Pr... [続きを読む]

受信: 2004.12.28 17:37

» スマトラ島沖地震と、もうひとつの巨大地震 [オーストラリア・シドニー海外生活ブログ]
インドネシア・スマトラ島沖で発生したM9.0という巨大地震。タイのプーケット島やピピ島をはじめ、とりわけ多くの国々で甚大な被害をもたらした『津波』だが、インド洋... [続きを読む]

受信: 2004.12.28 18:42

» インドネシア・スマトラ沖地震情報 [(^Q^) まうんとくっく日誌]
インドネシア・スマトラ沖地震情報について緊急記事を書きました。 トラックバックによる安否情報、支援情報などを受付します! [続きを読む]

受信: 2004.12.28 19:20

» インド洋 地震津波関連義援金情報 [light side]
さて、新潟や台風の時も北国でやりましたが、 インド洋地震津波関連も募金サイト情報展開いきます。 【コロンボ28日共同】大津波を引き起こしたスマトラ沖地震の死者... [続きを読む]

受信: 2004.12.29 00:08

» 世界中の人が… [Cafe De Bangkok]
Excite エキサイト : 主要ニュース 皆様、ご心配をおかけいたしましたが、私は無事にバンコクに戻ってまいりました。 津波の当日は、インドネシアのバ... [続きを読む]

受信: 2004.12.30 01:15

» スマトラ沖の地震・津波 [ワシントンDC雑記]
想像を絶する災害で、本当に痛ましい限りですね。 直接は本件に関係ない米国においても、テレビ、新聞は本件についての報道が相当の割合を占め、「tsunami」とい... [続きを読む]

受信: 2004.12.30 03:25

» ●大津波の衝撃映像~紹介Blog一覧/スマトラ沖大津波 [●スマトラ沖地震・津波の映像Blog●]
■衝撃の大津波映像■ 押し寄せる大津波を撮影した衝撃の映像が、各国のBlogなどで多数紹介・公開されています(下記URL参照)。日本ではこれらの映像があまり地上... [続きを読む]

受信: 2005.01.02 00:42

» Appleがスマトラ沖地震のチャリティー呼びかけ [newton-designing. weblog]
家のネットワークが復活したので、さくっと見ていたら、Appleのホームページがいつもと違い、シンプル&シックになっている。スマトラ沖地震のチャリティーを呼びか... [続きを読む]

受信: 2005.01.04 22:38

» 日本でも過去に大津波。死者4万人波高38m[地震注意報] [地震注意報 EarthquakeAlert]
地震注意報 EarthqukeAlert SeismeAlerte -Mail [続きを読む]

受信: 2005.01.28 10:58

» 奥尻 [日めくりカレンダー]
今日は奥尻の津波被害と復興過程についての簡単なレポートをつくってのです。 あしたからうちの研究室の先生がスマトラに行くとかで、急遽、講演用資料を作成することにな... [続きを読む]

受信: 2005.02.15 19:59

« 北朝鮮の政権交代のシナリオが見えてきたか | トップページ | 2004年、中島らも追悼 »