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2004.12.27

北朝鮮の政権交代のシナリオが見えてきたか

 北朝鮮の話は気乗りしないのだが、ここに来て急に政権交代というシナリオが強くなってきたようだ。あるいは、そこまで行かなくても、北朝鮮内部の体制変化への言及は増えてきた。例えば、24日のNHK"北の体制不安定化の兆し"では公安がこんな話を流している。


公安調査庁がまとめた「内外情勢の回顧と展望」によりますと、北朝鮮は、貧富の差の拡大などによって体制が不安定化する兆しが見られると初めて指摘し、今後、体制を支える権力基盤に亀裂が生じることもあり得ると分析しています。

 公安による北朝鮮の読みとしては、内部の貧富差が権力闘争をもたらすというのだ。そうだろうか。
 北朝鮮の体制崩壊の懸念は、イギリスのガーディアン"Tremors that may signal political earthquake in North Korea "(参照)などにも見られる。

European policymakers have been advised to prepare for "sudden change" in North Korea amid growing speculation among diplomats and observers that Kim Jong-il is losing his grip on power.

 当の北朝鮮も、世界が北朝鮮を危険視している動向に配慮し出しているようでもある。昨日付けのAP"Report: N. Korea Won't Invade S. Korea"(参照)では、北朝鮮は自国からは侵略しない声明も出した。
 こうした高まる北朝鮮崩壊のシナリオだが、現状では陰謀論に近い観念の遊びに近く、具体的なシナリオと見るにはあやうい。北朝鮮の崩壊なり政権交代の可能性は高まるだろうと以上のことは言いづらい。
 とはいえ、少し踏み込んだ政権交代のシナリオが話題になってきている。特に、中国が現状の金正日政権をより中国の息のかかる政権にすり替えるという話だ。日本語で読めるネタは韓国紙が目立つ。
 きっかけは、一昨日マイケル・ホロウィッツ・ハドソン研究所首席研究員の発言を受けてのことだ。ネオコンのシナリオとも読まれたわけだ。典型的な記事として、中央日報"米強硬保守派ホロウィッツ氏「北朝鮮は1年以内に崩壊」"(参照)を引用する。

ホロウィッツ氏は23日、ワシントンのハドソン研究所で「平壌(ピョンヤン)にはクリスマスがない:金正日政権は持続するのか」というテーマで講演を行った。ホロウィッツ氏は「金正日政権維持の対価がますます膨らみ、中国が(北朝鮮の)一将軍をを選んで政権を奪取させ、これによって中国軍20万人を北朝鮮に送るというシナリオを検討中」と主張した。 また「9月に米上院が北朝鮮人権法案を全会一致で通過させたのは、北朝鮮政権の終末を知らせる強力な信号」と語った。

 この手のシナリオとして見れば、それほど衝撃的でもない。似たような話は以前から流布されてもいた。例えば、極東ブログ「プリンス正男様、母の生まれた国へ、またいらっしゃい」(参照)でもあえておふざけを混ぜてこの手の話に言及しておいた。

杞憂ではあるまい。金正日政権が突然崩壊して北朝鮮に権力の空白ができれば正男への王権委譲はすんなりとはいかないだろう。朝日新聞が暗黙にヨイショするように、金正哲あたりに王朝を嗣がせた親中傀儡政権ができるかもしれない。そういえば、河の向こうに中国の軍隊が見えるじゃないか。

 ホロウィッツのシナリオでは、金正日後の傀儡政権では現在の将軍をトップに据えるとのことだが、私は、先のおちゃらけ話でも触れたように、実際には名目の王様を立てるだろうと思う。というのは、現実の北朝鮮はすでに王権の世襲を行い、壇君神話も建国神話となっていることからわかるように、日本の天皇のような血統的な王の希求がある。いくら南伸介系お笑いフレーバーの金正男とはいえ、長男を無視するわけにもいかない(だから暗殺が話題にもなる)。
 関連した韓国の動向も気になる。すでに政権交代の話題が韓国で盛り上がっているとしても、こうした中国の介入についは、つい最近までは韓国では事実上タブーに近い話題でもあったようにも思える。少し古いが12月9日付け朝鮮日報"北朝鮮の「崩壊」と「政権交代」"(参照)ではこの問題をこう切り出している。

 最近、北朝鮮の政権交代(regime change)がよく話題になっている。北朝鮮の改革と開放に向け、金正日(キム・ジョンイル)政権が交代されるべきだとか、北朝鮮政権が不安になれば東北アジアの安保が危うくなるなどとしながら、自分らの観点でもって政権交代問題をいとも簡単に取り上げているのである。

 朝鮮日報の議論は、この先やや混乱した展開になるのだが、中国の関与について言及を避けているためだだろう。また、アジア諸国の政治議論の典型でもあるのだが、対外問題を内政問題にすり替えてしまっているのも議論の混乱のもとになっている。
 しかし、この朝鮮日報の論説は、ブッシュ政権が盧大統領をすげ替える可能性を示しているとも読める点が興味深い。ちょっと変な日本語だが大意は通じる。

 ひいて、盧大統領の「北朝鮮崩壊不可」の言及が北朝鮮の内部要因により、金正日体制に何らかの変化が来ることまでも願わないということと解釈されれば、それは大多数の韓国人の真の願いを反映したとみる根拠もなく、また、内政干渉という指摘を受ける可能性もある。
 それが、何らかの目的を持って、金正日政権の歓心を得るためのことであるばら、危険なことである上、空振りに終わってしまうだろう。
 北朝鮮政府は今この時点では、米大統領と信頼を築き、米国の朝野を動かすことのできる実力を持った韓国指導者をより好むはずだ。金正日政権が最も恐れを持って注目しているのは、結局ブッシュ政権であるためだ。

 北朝鮮崩壊なり政権交代のシナリオより、米国の圧力による盧大統領切り崩しのほうが先行するかもしれない。問題は、北朝鮮体制というより、朝鮮半島における大国のパワーバランスになるだろうからだ。
 北朝鮮の新レジームが出来たとして、また韓国の政権の質が変貌したとして、それは米国対中国のパワーバランスの機能を担わされる。中国側としては北朝鮮は韓国や日本との緩衝地域でもあり、米国側としては、中国の軍事的な台頭を許さないこともあり、対中国の軍事的な恰好のカモフラージュである。
 こうした状況で日本はどうあるべきかと問いたいところだが、選択肢は事実上ない。韓日の連携を深め反米反中を模索するというずる賢さと度量のある政治家はいまや両国には存在しない。
 余談めくが中国にとって北朝鮮を保持しておく理由は地政学的には十分だとも言えるのだが、多少気になるのは、ウラン資源というスジはないのだろうか。もしそうなら、米国もIAEAも日本と統一朝鮮が連携する可能性を早々に潰しにかかるはずだし、中国も北朝鮮資源へのちょっかいを見せるだろう。

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コメント

>韓日の連携を深め

釣りですか?

投稿: 一読者 | 2004.12.27 14:04

韓国のメディアで、
統一朝鮮、日本双方が共に核攻撃能力を保持する選択肢を示唆する記事が出ています。
北朝鮮の崩壊に中国の手を借りると共に、
韓国からの米軍の撤退を行わせるという展開を
描いている人達がいる様です>韓国政府
中国軍から韓国軍へと占領の引き継ぎが行われた時に、同時に米軍の韓国からの撤退を目指すと。
統一朝鮮もMDを導入するのでしょうか?

投稿: (anonymous) | 2004.12.27 23:09

今必要なのは政権交代ではないか

投稿: i | 2004.12.28 01:53

韓国人です。いつも拝見させていただいてます。
北朝鮮の政権交代は急激なシステムの変化(崩壊?)を伴うことになるでしょうね。それがどんな形になろうとも、南の韓国の方にはものすごく大変な負担がかかる事になると思います。経済的にも社会的にも。
だから今の韓国政府は「できるだけsoft-landingできるように」北朝鮮を支援したいわけです(開城工団とか金剛山観光とかいろいろと)。でも韓国と北朝鮮が仲良くなると困る人たちが韓国内には結構だくさん居まして…。ま、韓国の現政府か、北朝鮮か、どちらかを早めに崩してしまいたいとか思っていたりするわけですね。
今の韓国って、ただでさえ大変なのにもぉ…

そして、何故か韓国の普通の人々は、中国の朝鮮半島への影響力を全然認めていません。ほとんど無意識のレベルで否定しているし、これからも認めることはないでしょう。だから北朝鮮に政権交代-崩壊-が起こると、中国が北朝鮮に手を出してくることになるとはあまり考えていません。ちょっと困ってます。

投稿: 普通はread-only | 2004.12.28 23:29

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