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2004.12.01

国連アナン事務総長退任まであとニ手

 臭い切り出しだが、率直に言って日本の報道はどうなっているのだろう? ブログ対既存ジャーナリズムというような枠はこの際どうでもいいのだが、日本のジャーナリズムがかなりおかしいような気がする。気になる2点を取り上げる。重要なのは後者の国連アナン事務総長退任問題だ。
 まず一点目は、昨日のエントリに書いた陳家山炭鉱の続報だが、日本国内に情報がまるでないというわけではないのだが、事実上はないに等しい。こうした災害の場合初動の48時間が重要になるというのが常識だと思うのだが、そういう枠組みが報道から明白に欠如している。
 中国の炭鉱災害については今回が最悪だとはいえ、近年続発していた。この様子はロイター"CHRONOLOGY-Snapshot of Chinese mining disasters"(参照)で年表形式にまとめられている。異常な状態だと思うのだが、解説は見かけない。
 不確かな情報で危機感を高めたいわけではないし、今回の陝西省ではなく四川省なのだが、"四川:石炭備蓄が危機的状況、産業構造にも問題"(参照)という話を興味深く読んだ。


 四川省の石炭不足が危機的状況になっている。備蓄量は41万トンと、全省の使用量8日分にすぎない状態。燃料ショートのため、11月24日には9つの発電機を停止している。11月30日付で新浪網が伝えた。

 四川省の石炭不足および電力不足は2002年からはじまっている。同年の石炭生産量は5358万トン、03年には7253万トン、今年は8000万トン以上の生産が見込まれるなど、生産量は増えているが、需要に追いつかない状態だ。


 これと昨日エントリーに引用した11月9日の東京新聞"四川でも10万人暴動"(参照)と合わせて考察すると妄想のようなお話もできそうだ。いや、妄想では困る。だが、どこからこの問題に着手していいのかもわからないが、きちんとした考察が必要だ。どこかによい考察があるなら、読みたいと思う。少なくとも、陳家山炭鉱の続報を事実上ネグっているような日本のジャーナリズムはおかしいと思う。
 二点目は国連疑惑だ。極東ブログでも石油食糧交換プログラム関連でなんどか扱ってきたが(参照)、この問題を論じるだけで右派に思われる節もあって最近ではニュースは追いつつ、問題の収束を見つめるだけとしていた。そう、なんとなく終わりになるのだろうという感じもしていたからだ。ボルカーの判断は良識ということかとも思っていた。なにより、このネタは米国大統領選挙ではブッシュ再選への燃料になるかとも思っていたがその気配もあまりなかった。
 しかし、11月24日のワシントンポスト"Oil-for-Food Inquiries Aren't Finished"(参照)で指摘されてように、終わってはいない。そしてその後の展開は、国連アナン事務総長退任へチェックメイトニ手という動きになってきた。
 米国大本営とはいえこうした問題には国際的な配慮を示すVOAまで"US Calls on UN Chief to Release All Oil-for-Food Facts "(参照)として触れてきたので、多少あれ?とすら思った。しかし、すでにある程度「疑惑」の次元は終わっており、VOAの記事で書かれているように、国連内部資料の公開が求められるはずだ。日本など国連への拠出金が大きいのだから、まさにその権利があると言ってもいいだろう。
 が、日本国内ではこの関連の報道を見かけない。過去の経緯で見ると、この問題については大手ではNHKが事実上隠蔽しているに等しく最低であると私は思う。かろうじてCNNジャパンが"アナン国連事務総長、息子の疑惑に「残念」 "(参照)で次の報道を見かけた。

国連のエッカート報道官は26日、石油・食糧交換計画に関わったスイス企業コテクナから、コジョ・アナンさんが西アフリカ情勢に関するコンサルタント料として報酬を受け取っていた期間は、以前に発表したよりも長かったことが判明したと発表。国連は以前、コジさんとコテクナとの関係は、同社が石油・食糧交換計画の取引を受注した98年を機に終わったと発表していたが、実際には04年2月まで報酬が支払われていたと訂正した。

 少なくとも国連がこの件で嘘をついていたことは明確だ。アナン・パパは息子のことは知らないとバックレているが、某国首相が息子の面を民放テレビで売っているのとはわけがちがって、彼は息子を国際政治の場にデビューさせたのだから、責任がないわけもない。というか、常識的に見て、アナン辞任議論がスケジュールに登らないとおかしい状況にある。
 すると、後任の問題やら、国連の置かれた状況だのが大きく変わることになるのだし、その問題をもはや取り上げる時期に来ているはずだ。
 と、ここで右派のウォールストリートジャーナルを引くと滑稽かもしれないが、それでもこの話はどこかの陰謀論とは違い大筋が通っているので、参考になるだろう。"Time for a Kofi Break"(参照)はこう切り出す。

Things are going badly for Kofi Annan. The oil-for-food scandal has revealed U.N. behavior regarding Saddam Hussein's Iraq that ranges from criminally inept to outright corrupt. Rape and pedophilia by U.N. peacekeepers haven't gotten the kind of attention they'd get if American troops were involved, but the scandals have begun to take their toll. And the U.N.'s ability to serve its crowning purpose -- the "never again" treatment of genocide that was vowed after the Holocaust, and re-vowed after Cambodia and Rwanda -- is looking less and less credible in the wake of its response to ongoing genocide in Darfur. And finally, the U.N. has so far played no significant role in defusing the Ukrainian crisis.

 不用意な刺激にならないように試訳はあえて避けておこうと思う(気乗りしない)。
 ウォールストリートジャーナルのエッセイでは、後任として声の高まるバツラフ・ハベル(Vaclav Havel )元チェコ大統領というのはどうだろうか、とネタにしている。確かにネタというだけに思える。ビロード革命なんて過ぎ去った時代のことであり、これを現在に持ち出すのは洒落としては面白いが、それだけという感じがするからだ。
 それでも、明確に国連は変わらざるを得ない。とすれば日本がこれに大きく関わらなくてはいけない。なのに、日本に情報も議論もなきに等しい。いや、私にはそう見える。違っているならそれでもいい。議論を起こすべきだし。

追記(2004.12.2)
米国1日付けウォールストリート・ジャーナルに連邦議会上院小委のノーム・コールマン委員長がアナン事務総長に辞任を求める寄稿をした。
該当記事:Kofi Annan Must Go(参照

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コメント

安保理改革の話が進んでいるので一時止まっているのかも知れません。これが恐らく破綻すると思うのですが、その後国連絡みの話の進展は色々あるように思います。

雰囲気としては、日本は水面下では動いているように思います。
ただジャーナリズムの怠慢はどんな観点からも否定できませんね。

投稿: カワセミ | 2004.12.02 21:41

こちら仏紙のNY特派員が送った記事です。 http://www.lemonde.fr/web/article/0,1-0@2-3220,36-390359,0.html)
これは米共和党による五月蝿いコフィ・アナン追い出しキャンペーンだったと書いてます。アナン息子の収入は非合法ではないのだが、このキャンペーンのおかげでアナンのイメージダウン効果は引き出せた。だが先日の国連総会ではアナンの演説後スタンディングオベーションがあって事務総長に対する支持の強さが確認された、といった内容です。

ちなみに、現事務総長選出時に米国はアナン氏を強く押してフランスなんかと敵対してました。
米国としては飼い犬にかまれた的な思いもあるのかもしれないですね。

一時国連活動に興味があって、日本のプレスweb版ググリまくってた頃があったんですが、国連関係って日本の報道はあっても2・3行でした。ヨーロッパでは重要演説、内容全文はなくとも、少なくとも一枠記事にはなります。

投稿: ねこ仏少年 | 2004.12.12 09:12

ねこ仏少年さん、こんにちは。アナン解任問題はブッシュ政権側で継続のメッセージが出たので、チェックメイトとならずに、取り敢えず収まったと見ることができそうです。この問題、アナンのイメージダウンをはかり国連への米国のプレザンスを増すという側面より、私が気になるのは国連の情報開示の問題です。アナン続行なら続行で改革後は情報開示を進めてもらいたいとは思います(現実的ではないのですが))。あまり陰謀論には立ちたくないのですが、まだ、なにか波乱は感じます。

投稿: finalvent | 2004.12.12 09:52

finalvent さん、こんにちは。
今回の疑惑に対する監査依頼は今年四月にアナン事務局長自身が出しています。アナン氏の退陣はないにしろ調査結果を見ていく必要はあるでしょう。事務総長が進めたい国連改革と米国共和党の望む改革の間に大きな差があるのは明白ですから、今のところ“綱引き”やってるなという印象を持ってます。共和党右派はアナン逮捕とまで言っていましたが、辞任するダンフォース米国連大使や各国代表がアナン支持に回ったのを見て情況悪しと判断、米政府は結局アナン継続支持に回ったということでしょう。

パウエル退陣後、国連無用論を説くネオコン一派がどう動くか、というところ。
軍産石油業界に直接関与する米政権幹部に比べたら月額2500ドルなんて屁みたいなもんだ、と思ってはいけない(笑)ですね。
国連改革はいずれにせよ必要ですが、米国現政権のツール化に結びつく改革は困るわけです。

投稿: ねこ仏少年 | 2004.12.12 21:33

追加です。
12月1日のNYタイムズに掲載された国連改革関連記事の無料版です。
陰謀説からは程遠いですが読む価値はある。
U.N. Report Urges Big Changes; Security Council Would Expand
By WARREN HOGE
http://www.theledger.com/apps/pbcs.dll/article?AID=/20041201/ZNYT03/412010411

投稿: ねこ仏少年 | 2004.12.12 22:09

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