「NHKに言いたい」で終わるというシナリオなのかな
NHKの不祥事に対するNHKからの回答とも言える、昨日の「NHKに言いたい」(参照)を見た。2時間を超える番組なのに、あるいはだからなのか、ひどく、つまらなかった。でも、私も「NHKに言いたい」として、もう一つここにエントリを書いておく。
番組「NHKに言いたい」は、朝まで討論とかの真似事なのだろうか、個々の意見には聴くべきことも多いのだが、この番組を総じて見れば、対話自体のエンタテイメントに過ぎず、不祥事の具体的な対応という問いかけに答えたものとは言えないかった。つまり、この番組の構成が、意図的になのか(ガス抜きとか)、まずい。あるいは表層的に、この番組を映像メディアとして見るなら、「NHK海老沢勝二会長ってすげー恐い顔しているな、こいつってこれでも辞任しないんだな、呆れるなぁ」というのがエンタテイメント的なメッセージだったのだろう。
このNHKの不祥事問題に関連して私は以前、極東ブログ「今回のNHKの不祥事は録画でハゲを見せて終わり」(参照)を書いたが、依然、関連会社の問題のほうが重要かなとは思っている。些細な例だが、NHKで報道した「永平寺」(参照)をDVDで売るのはいいとして、制作費はNHK受信料持ちなのに、なんでこんなに高額なのだろう。
別の言い方をすれば、今回の不祥事は、事実上は、問題にすらなっていないと思う。その話を当てこすり的に補足しよう。
NHKの側の問題としては、単純な話、不祥事であれなんであれ、受信料というカネが入ってくればOKであり、入らなければアウトだ。だが、今回の一連の不祥事で行き詰まったカネは、11月末の時点では11万3000件。これがさらに膨れてもせいぜい20万件止まりだろう。これに対して、現在受信料を払っている世帯は約3800万世帯。桁が違う。不払いの意思表示が問題だとかいうが、3800分の20なんて屁でもない。日本社会の惰性・無気力を考慮すれば、今後、地滑り的に不払い者が増えるという事態もならないだろうし、NHK側としても年金問題のように未来の経営ビジョンが描けないなんてこともない。少なくともNHK側には実質の問題なんてない。
以前からでもNHKの受信料の不払いは多いと言われるが、それとても、50万世帯で天井ではないだろうか。多く見積もっても、NHKに受信料なんか払いたくないという世帯は100万世帯程度で収束する。やはり、こんなの、NHK側にはどってことのない問題なのだ。
これは結局、れいの「ブログ対新聞」といった愉快なメタ議論にも関係するが、新聞なんて事実上すかすかでも、戸配と広告による新聞社の収益構造が変わらなければ、変わりはしない。むしろ、戸を中心とする日本社会のシステムがじわじわと崩壊することで、新聞もNHKも崩壊するのだろうが、それというのは、ごく自然な社会変化の過程だ。
では、NHKはこの機に何も変わらなくていいのかといえば、多少は変わるだろう。NHKとしてもこれだけ「祭」にしたからには、あと十年くらいは不埒なやつも出にくくなる。でも、それだけのことだ。そして、それはそれでいいのかもしれない。と思うのは、国民年金の問題のように、支払いを強制化するような政治権力の介入を招くよりはましかもしれないからだ。
問いの方向を少し変えて、惰性のNHKはどんどんつまらなくなっていくかだろうか? NHK好きの私にしてみれば、別にそれほどクオリティが落ちているとも思わない。先日の3回特集「ローマ帝国」は中学生レベル以下のすかすかの内容だったが、見る側のレベルもそんなものかもしれない。私について言えば、NHKがキリを入れる韓流ドラマにはまるで関心ないが、だから困るわけでもない。クローズアップ現代とラジオ深夜便があればいいからだ。そのくらい。NHKのメディアとしての価格も、他の情報の価格帯と比べれば、まず妥当だろう。というか、そういう判断が実際の日本社会には結果的に多い。
今回のNHKの不祥事がうやむやで終わるとして、どうしても嫌だな、やりきれないなと思うのは、エビ・ジョンイルより、NHKの経営委員会という存在だ。端的に言って、本来なら、ここできちんと海老沢勝二会長の首を切るべきでしょう。それができないというか、まるで機能していない。今後も機能しそうにない。
経営委員の任命は内閣だが、その活動は、事実上、政府側のシナリオ通りに動いているし、それに対して、空気を読め的にNHKの政治情報は規制されている。反面、そこから奇妙にずれたところでは、旧来の左翼インテリ的な奇妙な政治メッセージを出してもいる(例えば、NHKは国連疑惑には触れない)。でも、この点について言うなら、稚拙な偏向報道は別のジャーナリズムで個々に叩き潰していけばいいのだ。ブログのネタにもなるしね。
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コメント
20分の3800だとさすがのNHKもヤバイですね。
投稿: 石井 | 2004.12.20 04:10
↑なんたって、190倍ですからね(笑)。
投稿: Rashita | 2004.12.20 07:37
石井さん、Rashitaさん、こんにちは。ご指摘部分を修正しました。イージーミスということで修正記録は残してません。というか、いただいたコメントをもって修正記録とさせてください。
別件、Downroad.Trojanですが、他のかたも警告がでているのでしょうか。このブログで考えられるとすると、iframe、google adsenseのJavaScript、JPEG画像です。iframe自体が警告対象になっているということはないでしょうか。
投稿: finalvent | 2004.12.20 08:17
NHKに代表される日本的システムは有効なのか。日本は平衡感覚に優れた優秀な国なのか。やはり何も変われない情けない国なのか。NHKの件は結局どうでもいい小さい問題なのか。まぁ、うまくいっているうちは何も変える必要ないわけだが。本当に金が集まらなくなるまで現状維持か。ふ〜む。
投稿: hasenka | 2004.12.20 09:44
団塊の世代ぐらいは
世間体があるからと
NHKの受信料の引き落としを
止めようとはしない。
また、ネットの情報には疎く
毎朝の新聞が楽しみな世代。
新聞が宅配で送られてこない状態など
考えられない世代。
世代が入れ替わるぐらい時を待たないと
改善しないような気がする。
投稿: (anonymous) | 2004.12.20 10:49
不祥事を起こした特殊法人のトップが辞任するのは、
マスコミの批判→政府の指導監督不行き届きとなり、
政府から暗黙の圧力がかかるためと考えられます。
海老沢会長が辞めないのは、マスコミや世間の批判が足りないか(笑)、
あるいは政府によるコントロールが不十分なためでしょう。
不祥事防止のためにも、このへんをもう少し強化するのも一案です。
そもそも受信料は放送法を根拠とする広義の税金ですから、
国税庁がまとめて徴収するのが合理的ですし、
払う払わないの不平等もこれで解消されます。
要するにNHKは、税金の徴収権限を与えられたにも関わらず
外部からの監視が十分に及ばないお役所なわけで、
不祥事が多発するのは当然ともいえます。
もちろん、放送内容に政府の不当な干渉が及ぶとマズイでしょうが、
過去50年の(実質的)国営放送の実績をみる限り、
さほど心配する必要はなさそうですし、それこそ民放はじめ
各種ジャーナリズムの皆さんが頑張ればよろしいのではないかと。
なんだか総務省の回し者みたいな主張ですが(笑)、
それがイヤなら分割民営化すればよろしい。
いずれにせよ、海老沢会長が辞めるかどうかはどうでもよくて、
ここいらでNHKという組織のあり方を、公共放送の必要性まで含めて
考えてみるべきではないでしょうか。
ハゲとかエビジョンイルとか罵倒しても何にもなりません。
このまま放置しておけば、地上波デジタルへの移行で
受信料の取りっぱぐれがなくなり、
NHKにとっては最高にウマー!となってしまいます。
ところで、NHKの報道姿勢を批判されているようですが、
政府の規制を受けているとか左翼偏向だとか、
以前のエントリでは偏向のなさに感心しているとも書かれているし、
何がなんだかさっぱりわかりません。
組織は一つの人格で動いているわけではないので、
報道内容の決定には様々な要素が絡んでくるのだろうと思います。
このあたり、はてなの方の一行社説批評を読んでいても気になるところです。
投稿: (anonymous) | 2004.12.21 00:31
いつも興味深く読んでいます。
本論とは関係ないところでの質問です。NHKの番組のクオリティについて、あまり変化していないと仰っていますがここ20~30年くらいの長い期間で見てもやはり目立った変化がないとお考えでしょうか。
私は20代でそれを判断できませんが、finalventさんが昔をどう捉えているか知りたくて質問いたしました。
投稿: アシダ | 2004.12.21 01:58
アシダさん、こんにちは。NHK番組のクオリティですが、ええ、昔からあまり変わってないように思います。時代とともに変遷しているだけというか。だから、レベルが低いなと思うときは、それなりに社会のレベルでもあるのだと思います。このあたりそれほど批判の意図はないのですが、誤解する人もいるかもしれませんね。
で、このクオリティの変遷ですが、この件については、実は、アシダさんが確認する方法があります。NHKでは深夜帯に過去の作品のアーカイブスをやっているのです。これを選んでご覧になるといいですよ。
投稿: finalvent | 2004.12.21 07:14
お返事ありがとうございます。
お勧めくださったアーカイブは何度か見たことがあります。思い返すと、リアルタイムで放送されるクローズアップ現代やNHKスペシャルと同じような印象を受けていました。
なぜ、あのような質問をしたか考えてみますと、最近は国際情勢などのニュースではキャスターは全く私見を言わない一方、くだけた雰囲気のときはかなりバラエティ的な方向になっているせいではないかと思います。1980年代には、NHKはもっと真面目一本槍なものだと思っていました。
ともあれ、それは番組や報道の質とはあまり関係ありませんでした。
これからもエントリー期待しております。
投稿: アシダ | 2004.12.23 17:36