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2004.11.05

増税すると労働時間が減り生産力が落ちる

 11月2日の政府税制調査会の答申とやらによると、本当に定率減税をやるのだそうだ。へぇ本気なのかと思う私が呑気過ぎるのだろう。朝日新聞系「『増税路線』に転換へ 政府税調、来年度改正答申で」(参照)の記事で石弘光会長は「減税や公共事業で景気を回復させ、税収増を通じて財政再建するという従来の考えから決別する必要がある」と強調したのことだ。構造改革路線はやめて、ひたすら税負担増ということになる。
 実際には、来年から減税規模を半減し段階的に廃止するらしい。定率減税が全廃されると年間3兆300億円の増税とのこと。と言われてもピンとこない。
 この政策、たしか公明党発だったよなとちょっとネットを見渡すと、赤旗のサイト「公明党が主張する 所得税定率減税の廃止」(参照)に具体的な計算がある。一年前の記事なので状況は違っているのかもしれないが、概ねこんなところなのではないか。

給与収入 現在納税額 増税額 増税率(%)
300 0 0 0.00
400 3.92 0.98 25.00
500 9.52 2.38 25.00
600 15.12 3.78 25.00
700 21.04 5.26 25.00
800 28.48 7.12 25.00
900 41.28 10.32 25.00
1000 55.04 13.76 25.00
1100 69.6 17.4 25.00
1200 84.16 21.04 25.00
1300 98.72 24.68 25.00
1400 116.6 25 21.44
1500 141.2 25 17.71
2000 283.7 25 8.81
5000 689.23 25 3.63
10000 1021.73 25 2.45

 モデル世帯(片働き夫婦、子ども二人の四人家族)で年収800万世帯だと7.12万円の増税になる。それほどたいしたことないとも言える。年収500万円だと2.38万円増。流行の300万円以下だと現状同様税負担なし。高額所得世帯の増税率が小さいので、これならそれほど社会的に文句はでないのではないかなと思う。
 やっぱ日本は増税しかないですか、とも思うが、米国ではブッシュの選挙公約では「減税恒久化、増税は行わず」ということだった。というあたりで、そういえば、今年のノーベル経済学賞受賞(参照)のエドワード・プレスコット(Edward Prescott)(参照)米ミネアポリス連銀エコノミストが先日ブッシュに「けちな減税するんじゃなくどかんと減税せーよ」とアドバイスしていたのを思い出した。"Nobel laureate calls for steeper tax cuts in US"(参照)に10月11日のこのニュースが残っている。


"What Bush has done has been not very big, it's pretty small," Prescott told CNBC financial news television. "Tax rates were not cut enough," he said. Lower tax rates provided an incentive to work, Prescott said.
【試訳】
TV放映CNBCフィナンシャル・ニュースでプレスコットは「ブッシュがこれまでにした減税は十分に大きいとは言えない。かなり小さい」と言った。さらに「減税は十分ではない。税率が低ければ人々はよく労働するようになる」とも加えた。

 プレスコットと言えば実物的景気循環(リアル・ビジネス・サイクル、RBC)理論とか有名なのだそうだがもちろん私は知らない。その理論に基づいての提言なのかとちょいと思って、調べると、へぇな話がある。「ユーロ圏:時間的不整合性」(参照)で、キドランドとの共著"Rules Rather Than Discretion:The Inconsistency of Optimal Plans"(Journal of Political Economy, 1977)をもとにこうなるのだそうだ。

両氏は、この論文の中で、政策当局は低インフレ政策にコミットできないと指摘している。両氏の指摘によると、インフレ期待が低いなら、政策当局は一時的に生産を潜在能力以上に押し上げるために浮揚策を実行するのが好都合と考えるかもしれないが、経済主体は合理的で政策当局の動きを予想して行動するため、経済主体は低インフレを予想せず、生産は拡大しない。経済政策における「動学的不整合性」は、このように「人々が期待を合理的に形成するとき、政策を実行する前には最適である政策が、実際に政策を行う段階では必ずしも最適ではなくなること」をさす。

 誤解かもしれないが、金融政策とかでインフレ期待を高めることなんてできないと言っているような気がする。
 それはそれとして、先のプレスコットの提言だが、こうしたRBC理論と無関係ではないのだろうが、ちょっと違うようだ。というのは、この話は、昨年11月のFRB Minneapolis Researchで公開された"Why Do Americans Work So Much More Than Europeans?(アメリカ人はヨーロッパ人に比べてなぜよく働くのか?)"(参照)につながっているからだ。

ABSTRACT: Americans now work 50 percent more than do the Germans, French, and Italians. This was not the case in the early 1970s when the Western Europeans worked more than Americans. In this paper, I examine the role of taxes in accounting for the differences in labor supply across time and across countries, in particular, the effective marginal tax rate on labor income. The population of countries considered is that of the G-7 countries, which are major advanced industrial countries. The surprising finding is that this marginal tax rate accounts for the predominance of the differences at points in time and the large change in relative labor supply over time with the exception of the Italian labor supply in the early 1970s.
【抄訳】
アメリカ人は、ドイツ人、フランス人、イタリア人に比べて50%も長時間働く。しかし、1970年代前半では西欧の人々がアメリカ人より長時間働くということはなかった。この論文で、私は、収入に対する税率がこの労働時間の差異をもたらす影響について、時系列にかつ国ごとに調査してみた。対象はG7の先進国の人々とした。私自身驚いたのだが、1970年代前半のイタリアで例外があるものの、限界税率こそが労働力と労働時間の推移を決定しているのである。

 え?!である。
 税率を上げたら人は働かなくなるというのだ。欧州で労働時間が少ないのは税率が高いからなのだ、と。とすれば、税率を上げるほど国の生産力は落ちることになるな。
 って、よくわからないのだが、それって経済学の常識なのか? プレスコット大先生が言うのではなく、匿名のブログで書いてあっておかしくないお話のような気がするのだが。
 というわけで、詳細については、この論文をPDFで読むことができる(参照PDFファイル)。ので、気になるかたはそちらへどーぞ。
 この説がトンデモなのか常識なのか、私はわからないし、日本に適用できるのかわからないが、がだ、なんとなくだが、これって本当なのではないか。
 というわけで、政府に国民生活の保証をさらに求めるままにしていくと、日本も税率をじわじわ上げていくことになり、労働時間が減少し、労働力が減少し、生産力が落ちてジリ貧化していくのだろう。
 それって、すでに年収300万円以下の世帯はそういうのの先取りなんだろうか。いずれによ、家庭団欒とか自分の時間が持てるビンボながらも呑気な日本になっていくのかもしれない。それもまたよし、かな。

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コメント

いつも拝見しています。
鋭い指摘が好きで見ていたのですが、

今回の記事だけは許せませんでした。


それは、最後の一行です。
あくまでも管理人さんの考えなのかしれないのですが


       「いいわけない」


国の弱体化を容認する発言を1人1人がする事で、
集団意識に蓄積していってしまう事になるので、
特に政治的な話を公の場でする時は、
ぜひ気をつけてほしいと思いました。

また、次の記事楽しみにしています。

投稿: がお | 2004.11.05 14:22


家庭団欒とか自分の時間が持てるビンボながらも呑気な日本になっていくのかもしれない。それもまたよし、かな。

僕はあこがれるな。それ。

投稿: さいもん | 2004.11.05 15:06

みなさま、こんにちは
極東ブログさんの最後のところは、若干のJOKEと思ってます。
だって、全員が300万以下だと税金も年金も国債も破綻しちゃいますから。
しかし、結構、北欧あたりだと夫婦で600万円くらいの収入で、なかなか経済的理由で離婚できないとかいう話もあります。
また、米国の雇用統計見ても、新規雇用者の半分は時給10ドル以下ともいいます。日本だと時給1000円だとアルバイトですね。年間1800時間働いて180万円です。
日本でも男だけが働くような文化があったわけですが、賃下げとかリストラとかで旦那の給料が下がり、奥さんがはたらきに行くと、この1000円コースになり、さらに男の職場が奪われることになります。
税金問題は、そのうち自分でまとめるつもりですが、手取りとやる気の関係でよく言われるのは、5%給料が下がると10%やる気が下がる、が、10%給料が上がってもやる気は5%しか増えないとかいいますね。人間はあたまのいい動物だが、また怠惰な動物だというところではないでしょうか。

投稿: おおた葉一郎 | 2004.11.05 15:45

>誤解かもしれないが、金融政策とかでインフレ期待を高めること
>なんてできないと言っているような気がする。

はい誤解です。ていうか結論が全く逆ですね。引用文は従来型の単純な金融緩和ではなくインフレターゲットが必要な理由に他ならず、流動性の罠についてのクルーグマンの説明と内容はほぼ同じです。あなたはインフレターゲットのキモが合理的期待に働きかける点であることも理解せずに批判してたんですね。「リフレ派の議論は頭ではわかっても」なんてよく言えたものです。

背景にある理屈を理解せず、言葉面だけ見てリフレ派に反論できるようなものがあれば何にでもすがりついた挙句に自爆するというアンチリフレ派に共通したパターンを踏襲されたことは非常に残念です。(いまどき2chの厨でももう少し警戒するものですが) 

「インフレ」という言葉に脊髄反射するのはいい加減やめませんか?そんなに難しい理屈じゃないんですから、一度クルーグマンの論文(コラム)を読みこまれてはどうでしょう。まあ、誤った教育によって植え付けられたアレルギーを取り除くには年齢的なリミットがあるようですし、時事問題の解説をなさる方には物事を深く掘り下げることが苦手な方が多いようですのであまり期待はしていませんが、経済以外の価値ある記事を汚すような電波を流されていることに気づいておられないようなので敢えて煽り85%配合でご忠告申し上げる次第です。

投稿: 金利とはなんぞやデフレとはなんぞや | 2004.11.05 18:29

週休二日制にして良くなった事ってあるかな?
今思うと、日本人が長時間働く事がなんであんなに叩かれていたのだろう………

投稿: (anonymous) | 2004.11.05 20:44

ちょっと議論が錯綜しているようですので私からもコメントさせてください。

「金利とは~」さん(省略失礼)が指摘されているとおり、上記の引用文はインフレターゲットの必要性を述べた文章です。ただし、このDynamic Inconsistency(以下DI)の議論をリフレと絡める考え方は間違っています。DIの議論はインフレバイアス(引用文で言う「低インフレを予想せず、結果的にインフレ率が高まる現象)を解消するためのものに過ぎません。議論の仮定からデフレバイアスは発生し得ない(多分)ので、DIに基づくインフレターゲットは物価を抑えることは出来ても上昇させることは出来ません。

それから、この議論とクルーグマンの議論も無関係です(クルーグマンの議論がJapan's Trapを指しているのならば、ですが)。クルーグマンの議論は実質均衡金利がマイナスである状況では均衡マネーサプライを上昇させることにコミットすることが有効だ、という話であって、DIとは関係ありません。

DIについてはRomerのテキストが非常に分かりやすくまとめているので、そちらの再読をお勧めします。

まぁ、なんにしてもDIの話は本文の趣旨とは無関係なので、どうでも良いといえばどうでも良い部分なのですが・・・長々と失礼しました。

投稿: 馬車馬 | 2004.11.05 23:25

あ、最初にコメントしようとしていたことを書き忘れました。
引用文は遅れてきたラッファーカーブのようにも見えますが。

労働意欲(正確には、労働によるdisutility)までも考慮に入れた経済政策、というのはごく最近の経済学の流行のテーマで、場合によっては「金融緩和をするとwelfareが減少するケースもありうる」といった今までとは正反対の結論も出てきたりしてもめています(最近は知りませんが)。

あと10年位したらこの辺りの議論にも一通りの整理がつくのではないかと期待しているのですが、なにぶん複雑なモデルが多いので、整理されても私には理解できないかもしれませんね(笑)。

投稿: 馬車馬 | 2004.11.05 23:56

>国の弱体化を容認する発言を1人1人がする事で、集団意識に蓄積していってしまう事になるので、特に政治的な話を公の場でする時は、ぜひ気をつけてほしいと思いました。

国民一人ひとりが「ビンボながらも呑気な生活」を望んでいるなら、弱体化を容認するのは問題ない気がしますが。
望んでいないなら蓄積しないだろうし、わざわざそんな野暮なつっこみをしなくてもいいのでは?
たくさん働いてたくさん稼ぎたい人はそうすればいいでしょうが、たくさん稼ごうと思ってない人にそれを無理強いしなくても。

投稿: 横槍スマソ | 2004.11.06 01:06

>馬鹿馬

概念とそれを説明するモデルの区別がついてないですね。Dynamic Inconsistencyって別にインフレバイアスのモデルでしか成立しない話じゃないですから。ゲーム理論関係の論文を漁ればそれこそ山のようにキドランド=プレスコット以外のモデルを見つけることができると思いますよ。

投稿: 金利とはなんぞやデフレとはなんぞや | 2004.11.06 01:16

「ビンボながらも呑気な生活」と言えば響きはいいですが、実際それは貧乏ではないのでしょう。中産階級ののんびりした意見のように思います。停滞した経済のしわ寄せは、社会の最下層から順に回されます。そしてその層が少しずつ増えていくのでしょう。もちろん中産階級のスタンスとしてはそれもありなのかもしれません。しかしながら、結局どこかで所得の再分配のための元手は用意しなければならないのでしょう。

クルーグマンは現代の文脈で読むのに非常に良いものを提示してくれます。言ってることに間違いはほとんど無いと思います。ただ、日本人と米国人は経済的に非常識な行動ばかり取るから、現実に適用してどうなるかは神のみぞ知る、という気もします(笑)馬鹿には馬鹿に合わせた対応も必要、というと角が立ちますが。

投稿: カワセミ | 2004.11.06 01:57

>金利とはなんぞやデフレとはなんぞやさん:

Dynamic Inconsistencyの議論が幅広く使われているというのはおっしゃるとおりですが、ここではインフレターゲットの話をしているわけですよね?DIの話をKydland-Prescottとまったく違う文脈でインフレターゲットの議論に当てはめた研究というのは聞いたことがなかったのですが、メジャーな論文だけで結構ですので教えていただけませんでしょうか?

それから、金利とは~さんはKydland-PrescottのDIの議論からインフレターゲット→リフレ政策の話を展開されているわけで、だからこそ私は上記のようなコメントをしたのですが、それに対して「キドランド=プレスコット以外の~」とおっしゃられても困ってしまいます。論理展開を整理していただけると助かります。

あと、クルーグマンの議論とDIの関連もご説明いただけると幸いです。

他人様の庭先ですみません… >finalventさん

投稿: 馬車馬 | 2004.11.06 07:34

あの~。場違いかもしれませんがおおた葉一郎さまにおききしたいことがあるのですが、

>また、米国の雇用統計見ても、新規雇用者の半分は時給10ドル以下ともいいます。日本だと時給1000円だとアルバイトですね。年間1800時間働いて180万円です。

これよく出てくる話なんですけど、アメリカの雇用統計の元ページ(U.S. Department of Labor)を調べてみても見当たらないんです。実際の数字は日米ではどのくらい違うのか調査したいので、情報源がどこなのか教えていただけませんか?

投稿: F.Nakajima | 2004.11.06 09:02

>馬鹿馬

インフレターゲットに当てはめるも何も、インフレターゲットとはDynamic Inconsistencyをもたらなさい金融政策ルールが必要という主張に他ならないんで。詳しく知りたいならそこらへんに山積みされているインタゲ本でも読みなさいな。他人の庭先でとぼけた質問を繰り返す前にやることはたくさんあると思いますがね。

投稿: 金利とはなんぞやデフレとはなんぞや | 2004.11.06 12:25

金利とはなんぞやデフレとはなんぞやさん、こんにちは。「煽り85%」了解しています。私自身はリフレ派に中立です。ご推薦のクルーグマンの書籍は山形さんの訳のものなどを読んでいます。エントリでも洒落とわかるように書いたつもりですが、経済学はどっちかというと時代的にマル経だったので、電波になっているところはあるかと思いますので、今後ともご教授ください。

馬車馬さん、こんにちは。議論は話が他の読者さんの益になるものなら、ウェルカムです。極東ブログはコメントのほうが面白いとなれるのもまた良しです。

投稿: finalvent | 2004.11.06 13:56

>金利とはなんぞやデフレとはなんぞやさん:

えーと、困りましたね。金利とは~さんはこの分野にお詳しいと思って前回の質問をしたのですが・・・。

基本的なところから説明します。
インフレターゲットがDynamic Inconsistencyを解決する金融政策ルールだというのは至極当たり前の話です。各論文ではまずDIが存在する状況を仮定して、それをどのように解決できるかを論じているわけですから。

Kydland-Prescott(K-P)の場合、DIが存在する状況を以下のように仮定しています。まず民間部門が期待インフレ率を自分で決め、その後中央銀行=政府が実際のインフレ率を決める(政府はインフレを完全にコントロールできると仮定)とします。このとき、政府は基本的には低インフレを望むものの、期待インフレ率より高いインフレを設定するとGDPを刺激できるので、高インフレ政策を取る誘惑にも駆られます。

すると、民間部門はそれを合理的に予想して(政府に対して疑心暗鬼になっている状態)、最初から期待インフレ率を高めます。これがインフレバイアスであり、K-PがDIの弊害として説明したものです。

このとき、民間が期待インフレ率を決めるよりも先に政府が「予定」インフレ率を公表することで、民間部門の疑心暗鬼を未然に防ぐことが出来る、というのがK-Pの議論です。

この一連のプロセスに、リフレに応用できる議論がありませんよね、というのが私の最初のコメントの趣旨です。それに対して「インフレターゲットとはDIをもたらさない金融政策だ」、というのはまるであさっての方向のお答えだ、という点は理解していただけたでしょうか。

…正直、金利とは~さんの理解のレベルが私の想定と違っていたような気がするのですが…改めて伺いますが、
RomerのAdvanced Macroeconomicsのp478-482を読んだことはおありですか?(なお、このテキストは日本では大学院生向けとされていますが、この部分は誰でもわかるくらい簡単に書いてありますので、興味のある皆様にもお勧めです)

まぁ、私もこれの他にWalshのテキストとSvenssonの代表的な論文(+α)くらいしか読んでいないので、えらそうなことは言えないのですが。


とりあえずこんな感じなら他の読者さんの益にもなるでしょうか? >finalventさん

投稿: 馬車馬 | 2004.11.06 19:28

>馬鹿馬

話がループしてるんですけど、わざわざ繰り返し説明しないといけないんですかね。人のblogのコメント欄で議論してるのって傍から見ると激しく間抜けだと思うんですけど。それもどうでもいいような話題で。

私は概念とモデルの区別をつけろといったはずです。キドランド=プレスコットはDynamic Inconsistencyが存在することを示す為のモデルに過ぎません。彼らがあの論文で示したかったのはDynamic Inconsistencyという概念であって、モデルはそれを説明する為の道具です。私は何もインフレバイアスモデルがインフレターゲットに適用可能だといっていたわけではなく、そのモデルが説明しているDynamic Inconsistencyという概念こそがインフレターゲットのキモだといっていたわけです。

そしてDynamic Inconsistencyは彼らのモデル以外でも成立する概念です。インフレバイアスモデル以外でDynamic Inconsistencyが成立することを示すモデルはゲーム理論関係を中心に山ほどあると指摘したはずですが、あなたはそれを探しましたか?

お得意のスクリプトにそった議論で相手を論破しようとするあまり、相手の突っ込みの意味もよく考えず機械的に予定稿を書き込んだ挙句、話が噛み合ってないのを相手のせいにして論点を整理しろとは白痴もいいとこです。

教科書読んでお勉強するのもいいですけど、モデルを使って何かを説明するという発想が育ってないと何の意味もありません。衒学願望を満たしたいのならあなたのレベルに合った暇な人が2ch方面にたくさんいますからそちらでどうぞ。

投稿: 金利とはなんぞやデフレとはなんぞや | 2004.11.06 23:52

金利とはなんぞやデフレとはなんぞやさん:

DIはゲーム論というよりも、appliedな世界(trade関連で使われていたのを何度か見たことがあります)でよく使われてますね。前のコメントでも書きましたが、問題なのはDIとインフレターゲットの議論の関連性、特にその議論をリフレ政策へ応用できるかどうかです。インフレターゲット以外の議論でどれだけDIが議論されていようが、それはここでは問題ではありません。

2つ前のコメントでうかがったことですが、
>Dynamic Inconsistencyは彼らのモデル以外でも成立する概念です

ということであれば、「彼らのモデル以外」でインフレターゲットをリフレ政策に使用可能だ、ということを示すなり、示した論文を紹介してください、と申し上げているわけです。議論がループしているのは、金利とは~さんが私の質問に答えて下さらないからですよ。

さすがに他の読者さんの益になるかどうか自信がないです。続けてよいものか、削除するべきか、finalventさんのご判断に従います。まぁ、私もさすがに疲れてきましたが…。

投稿: 馬車馬 | 2004.11.07 00:50

金利とはなんぞやデフレとはなんぞやさん、馬車馬さん、こんにちは。

>finalventさんのご判断に従います。

このブログの管理者でもあるので、その点から発言します。基本的な礼儀(ルール)が守られ、閲覧者に有益な「多事争論」というのは、それ自体で重要なのだと考えています(結論がなくてよい)。ただ、私もきつい議論を繰り返した経験もあり、それから言うと、このあたりでいったん休息的な中止がいいかと思います。というのは、やや専門的過ぎ、そしてその専門性が有意義な場所は別にあるように思えるからです。

このブログの執筆者としては、率直に、RBC理論は反リフレ政策的に読まれることはないのかなという素人っぽい、そしてイタズラっぽい疑問でした。自分がその側面を十分に理解してないことについては、「誤解かもしれないが~気がする」として明言したつもりでした。

もう一点は、このエントリの主題は、プレスコットの新しい?視点が面白い、これってネタ?ということでした。この面に即された馬車馬さんのラッファーカーブ?という指摘は興味深いものでした。

あと、雑感的にいうと、マクロ経済学と限らず、私が無知であることを書くというのは、それをこうして是正する対話の過程におけるなら、それ自体・全体は有意義かなとは思います。単純な話、自分の勉強になります。

というわけで、締め言葉ではないのですが、両氏に感謝してます。

投稿: finalvent | 2004.11.07 07:11

finalventさん:

どうもお手数をおかけしました。

他人様の庭先で、という引け目は一方であったものの、逆に自分のブログではこのような第3者のコーディネートは望めないということもあって、心置きなくツッコミを入れてしまいました。その意味ではfinalventさんに甘えさせて頂いたことになります。どうもすいません。

RBCそれ自体には好景気不景気という波それ自体が存在しないため、そもそも景気対策の議論には使いにくい側面があります。そのため、まずRBCモデルに仮定を加えて景気の波を作り、更にその景気の波にどう対処するかを考える、というめんどっちい上に複雑な作業が必要になるため、色々と研究はされているものの「使える」理論はまだ出てきてはいないようですね(ここ数年は良く知りませんが)。

まぁ、まだまだ若い学問ですから、学者さんたちの今後の研究に期待する、ということで。

それにしても、政治や社会、文化の話から、RBCにまで広がるfinalventさんの教養と興味の幅にはただただ驚くばかりです。今後とも記事を楽しみにさせていただきます。では、お騒がせしました・・・。

投稿: 馬車馬 | 2004.11.07 09:07

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