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2004.11.22

胡錦濤のキューバ訪問

 たいした国際ニュースではないのだが、胡錦濤のキューバ訪問が気になって、ネットをうろついてみた。発端は、チリのサンティアゴで開催されたAPEC(Asia Pacific Economic Cooperation:アジア太平洋経済協力会議)関連のニュースを見ながら、中国の胡錦濤国家主席の動向が気になったことだ。
 ニュース的にはAPECに関心が向くのだが、他の側面もある。胡主席は今月の11日の時点で中国を旅立ち、チリ以外にブラジル、アルゼンチン、キューバの中南米四か国も歴訪していた。当たり前だがれいの原潜騒ぎの時には北京を留守にしていたわけだ。帰国は23日ということなのでまだ北京に戻っているわけではない。重慶市の動乱なども胡主席の留守の出来事だった。
 四か国の歴訪といっても、APECのおまけではあるのだろうが、以前のアフリカ訪問などと同様に資源・エネルギー外交の一環でもある。日経系"中国が中南米外交強化・胡錦濤国家主席が4カ国歴訪"(参照)では次のように報道していた。


ブラジルやアルゼンチンの資源開発を軸とした経済交流の拡大が柱。中国は関係強化で資源の確保を図ると同時に、台湾外交の切り崩しや、米国の一国主義への対抗を視野に入れている。

 また同記事では中国が中南米との貿易に熱心だとも指摘している。

中国と中南米の経済関係は毎年緊密化の一途だ。中国海関の統計では1―9月、ブラジルの対中輸出は前年同期比52%増、中南米全体では同46%増だった。日本の中南米貿易の縮小傾向とは対照的だ。

 それはそうかもしれない。末文に日本との比較ということで話に色を付けているのだが、実際はもう少し冷静にみたほうがいいのは、フィナンシャルタイムズ"Beijing blessings"(参照)が皮肉っぽく指摘するとおりだ。

Above all, governments should not exaggerate the scale or impact of Chinese inflows. With or without Chinese investment, Latin America will still face enormous economic challenges. The region must maintain fiscal discipline in order to secure stability. And if it is to create enough jobs and address pressing social problems, it will still need both to do more to help small and medium-sized companies and to attract capital and technology from the developed world. A China windfall will help, but it will not be a panacea.

 試訳は端折るが、フィナンシャルタイムズは、こうした中国の資源・エネルギー外交をそれほど驚異に見るべきではないとしている。理由は、中南米諸国が経済問題を抱えていることに加え、中国も経済的に失速すると予想されているからだ。
 ところで、私が気になったのはそんな偉そうな経済の話ではない。資源・エネルギー外交だという点で、ブラジルとアルゼンチンはわかる。それにチリは今回のAPECの目的地でもある。で、キューバはどうよ? 資源もエネルギーもないよ、あそこ。
 ということで、キューバ? 胡錦濤がなぜキューバ? そういえば高校生の時、岩波新書「キューバ:一つの革命の解剖」だったか読んだな。そういえば中学生の時、日比谷で岡林信康が「サトウ(栄作)を刈りに行く」とか息巻いていたっけ(これは挫折した)…とか連想する。そうだ、キューバって共産主義ってことで中国のお仲間だったな、と。
 ネットをひくと、あたり。そういうことのようだ。Sun-Sentinel紙というフロリダ南部の新聞に"A show of ideological solidarity from China"(参照)という関連の記事があった。

But if the first part of Hu's Latin American tour reflected the needs of a pragmatic new China that has thrown open its doors to dynamic entrepreneurs -- even inviting capitalists to join the Chinese Communist Party -- his last stop, a visit to Havana on Monday, is a nod to China's ideological alliances and a show of solidarity with his communist brethren.

 試訳を端折るが、胡主席のキューバ訪問は投資といったビジネスの要因より、同じ冷戦時代からの共産主義国の誼みがあるようだ。同記事ではキューバのニッケル資源投資なども触れているが、むしろ援助といった意味合いなのだろう。米国のキューバ制裁への当てつけもあるかもしれない。
 記事の後半を読むとわかるが、中国とキューバには共産主義以外にも歴史の絆があった。米国と中国の歴史でも同じだが、苦力といった中国労働者の移民の歴史だ。

China's connections with Cuba date to the 1840s, when Chinese laborers arrived on the island to work on sugar cane plantations. They helped fight the Spaniards in Cuba's war of independence and established a bustling commercial center near Havana's capitol building. By the early 1900s, Havana's Chinatown, or Barrio Chino, was the largest Chinese outpost in Latin America.

Today, fewer than 400 Chinese immigrants remain in the Barrio Chino. Most are in their 70s and have seldom journeyed back to their homeland -- a country they now barely recognize for its economic boom.


 私はキューバには行ったことがないが、ハバナの中華街については知っている。もはや古老が残るばかりとなっているのだろうが、彼らに中国本国旅行といった夢のようなものはあるのだろうか。中国本土の縁者とかはどうなのだろうか。なんとなく歴史と人生の交錯するところに思いが引き寄せられる。
 さらにネットを見ていたら、昨年から中国からキューバへの観光が解禁されていることがわかった(参照)。今年1月には最初の観光客があったようだ。"初めての中国人観光団、キューバに到着"(参照)にこうある。

 中国国家観光局とキューバ観光省が昨年の7月24日に「中国公民の自費キューバ団体観光に関する了解覚書」に調印し、キューバはラテンアメリカで初めての中国公民の観光先となった。直航便がないため、キューバを訪れるには、フランス、ドイツ、米国でトランジットしなければならない。この3カ国のなかで、中国公民の観光先として認められているのはドイツだけで、フランスや米国を経由する場合と比べ、越境ビザを取得する必要がなく、旅費も安い

 だが、先日ラジオで聞いた話を思い出すのだが、イタリアやフランスも中国人観光客を今年から大幅に受け入れ出しているらしい。とすると、そうしたなかでキューバの観光メリットはそう多くはないだろう。マカオの取り締まりを厳しくした埋め合わせに、遠いところにコロニアルなカジノを提供する、というわけでもないだろうが。

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コメント

モナコのとかベガスとか、なんでパチンコマージャン流行んないんでしょうね?

投稿: FTOつぶやき | 2004.11.22 22:58

キューバって日本に似た所ありますね……
我が国が中国に征服されたら、ああなるのでしょうか。

投稿: (anonymous) | 2004.11.23 07:21

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