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2004.11.02

米国大統領選挙の行方

 たかがブログじゃんか、標題は「私はブッシュが再選すると思う」にしようか、と思いつきのまま放言にしたい気持ちもあったのだが、文章にするとそれなりに言葉を紡いでいくスジみたいなものが必要になりうまくいかない。話スジ立てとしては、私がブッシュを外国の大統領であれ支持するのか、それとも、客観的に見るとブッシュが勝ちそうだよ、というののどっちかになる。両方が揃うと単純でよいのだが、私は台湾の総統選挙の時の陳水扁支持とは違い、強くブッシュを支持してるわけでもない。状況を冷静に見て、ブッシュ勝利の線が見えるかというと、見えない。というわけで、たるい話を手短に書いておく。
 各種の全米世論調査は日本でも報道されているように、拮抗した状態だ。どちらかの陣営が頭一つ出ているようならここから単純に動向がわかるが、現状では各調査でばらつきも大きく、差があっても誤差範囲にしか見えない。大方の言うように世論調査的にも接戦になっている。
 大づかみの世論調査を州ごとに分けていくほうが予想しやすい。米国大統領選挙は米国国民の投票が公平に反映するものではなく、各州ごとの選挙人というのを獲得するという奇妙な方法を取っているためだ。基本的にまず州で勝敗がどう決まるか、そしてその州で何人の選挙人が獲得できるかということが重要になる。
 各州の状況だが、話を単純にすれば、大半の州では実質選挙戦は終わっており、ブッシュかケリーかは固まっている。未決なのは、スイング(揺れている)州と言われる二、三の州だけで、現状では事実上オハイオ(OH)、フロリダ(FL)、ペンシルベニア(PA)の三州が問題になっている。この三州の動向で大統領が決まると言ってもよさそうに見える。他に拮抗しているニューメキシコとニューハンプシャーもあるが両方の選挙人をゲットしても9人なので、この三州ほどの影響力は持たない。が、先の三州でブッシュとケリーのばらつきがあると重要性が増す可能性もある。
 予想サイト"Electoral Vote Predictor"(参照)を見ると、三州ともケリー側に揺れている。なので、このサイトではケリー298対ブッシュ231と最終的にはケリーの大勝を予想している。
 少し情報が古いと思われるニューヨークタイムズの予想(参照)ではペンシルベニア(PA)はケリー側として、スイング州をアイオワ(IA)、ウィスコンシン(WI)を入れている。この点の確認を兼ねて"Electoral Vote Predictor"でペンシルベニア(PA)での推移を見ると、8月ごろまでは比較的ケリー優勢だったのがその後の揺れははげしい。アイオワ(IA)とウィスコンシン(WI)も基調としては拮抗したしているようすが伺われ、現時点での安定した傾向は見られない。こうした点からすると、アイオワ(IA)、ウィスコンシン(WI)の2州もニューヨークタイムズのようにスイング州に換算してよさそうだ。
 前回大統領選挙の経緯(参照)からすると、ブッシュ支持はハイオ(OH)、フロリダ(FL)の二州のみだが、それでもアイオワ(IA)とウィスコンシン(WI)は前回もスイング州だったので、基本的な共和党対民主党の傾向でこれらの州の傾向がわかるわけでもない。
 選挙当日の動向は民主党に揺れる傾向があるとも言われるが、今回の選挙は前例のない選挙とも言えるので、そうした過去の傾向は当てはまらないだろう。
 スイング州がばたばたとブッシュに揺れれば、ブッシュが大勝となる可能性もある。なかなか読めないぞというところだろう。特に、フロリダ州(FL)は前回同様重要にならざるをえないようすがすでに見える。
 こうなると、やっぱ、最後は裁判所で決めましょうというジョークが出そうだが、はたしてそうなのか。私の感じとしては、実は、見えないファクターでバタンと決りそうだ。
 世論調査的な動向は、実は、いくらやってもそのスジのプロのほうが上得手。こんなへっぽこブログで偉そうにするまでもない。ので、搦め手で考えるのだが、そのポイントはなぜオクトーバーサプライズが無かったのだろう?ということだ。終盤になってビンラディンがブッシュ応援に駆けつけたりしたのだが、これもそれほどブッシュのメリットにはなっていない。
 現在懸念されているサプライズはブッシュの都合が悪くなったときの投票中止という措置だが、フロリダ(FL)などスイング州でどかんと無ければこのまま、結局、無かったねぇ、陰謀論っていのも無理目過ぎ、ま、お茶でも…ということになる。そうなるのではないか。
 すると、ブッシュ陣営の選挙のプロはこれで勝てると理解していたということになる。確かに9月以降のスイング州の動向を見ると、ブッシュが勝てそうな推移でもあったので、下手を打ちそうなヤバイ手は出せなかったのだろう。ケリー陣営のほうが結果的にCBSで下手を打ったのは案外ブッシュ側をびびらせたのかもしれない。
 ブッシュ側の見えない勝ち目ファクターは…、ES細胞研究の宗教がらみか、銃規制問題かと考えるにそれらがスイング州への動向を決めるとも思えない。とま、つい冷静に考えると、ブッシュの目は弱すぎかなと思う。
 私自身は言うまでもなく弱くブッシュを支持している。ANYONE BUT BUSH!(ブッシュ以外なら誰で可)といったヴェトー(拒否権)というのでは弱いと思う。英国紙テレグラフは"Bush must be allowed to finish the war on terror(ブッシュにテロとの戦いを貫徹させてやろうじゃないか)"(参照)と言っているが、心情的には私はそんな感じだ。イラク統治は失敗したが、他の面ではブッシュもなかなかの線だったじゃないか、と思う。

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コメント

このブログは面白いと思います。「Bush must be allowed to finish the war on terror」はバカな表現だよね。「Americans must be allowed to finish Bush]の法がいいですよ。

じゃ、また。

ファニーより

投稿: ファニーテレット | 2004.11.02 11:37

ファニーテレットさんへ

おわかりでしょうが、「Americans must be allowed to finish Bush」
と「Bush must be allowed to finish the war on terror」は、言っている内容がそもそも違うので表現の善し悪しの問題ではありません。

そもそも英国紙テレグラフが用いた表現ですから、finalventさんに指摘しても仕方ありませんよ。

私自身はブッシュ支持というわけでもありません。集計で不正がなされないかどうかの方が気になります。いずれにせよ訴訟合戦になりそう。

投稿: (anonymous) | 2004.11.02 13:05

昨夜(11/01JPN)のNYタイムズでは(B227-K225)だったわけで、逆転したわけですね。といっても残りは僅か。NYタイムズはKの支持だったわけだから、意図があるのかないのか・・

しかし、まだパンチ穴方式が出回っているようだし、最後はまたフロリダ州から裁判所行きとかなるのかな・・・

ご指摘のように、Bがちょっと有利という感がある時に、カードを使わなかったのは、「有利なときには勝負に出ない」という法則によるのでしょうね。

私も、もはやBの方がちょっといいという程度なのですが、最大の興味といえば、Kが勝った場合、小泉首相がどうやって豹変するかですね。まあ、うまく立ち回るとは思うのですが。

投稿: おおた葉一郎 | 2004.11.02 13:11

"Americans must be allowed to finish Bush"
選挙不正のニュースが多くて、"even not allowed!"になってしまいやしないか心配です。

Bush再選、もしかしたら今一瞬は良いのかもしれないけど、先のことを考えるとBushで良いわけないと思うのですが。

投稿: rcarlos | 2004.11.02 18:09

finalventさん、おはようございます、

選挙もきまったようですね。ご指摘のおりohioがかなり問題になりましたが、Kerryがいさぎよさをみせたのですね。

結果がでたところで、お聞きしたいのが、赤と青にぬりわけられている地図を見るとちょうどDCあたりを境にして北と南にきれいにわかれているように感じます。もしかして、大統領選挙をめぐる共和党と民主党という対立軸っていまだに南北戦争をひきずっているのではないだろうか?、という感じがしてきました。Swingしているのは、どちらかというとあとから米国に加盟した州のようにも思えます。

ご教授いただければ幸いです。

投稿: ひでき | 2004.11.04 06:54

>ひできさん

伝統的には「北部=共和党、南部=民主党」の図式でした。南北戦争の時の大統領リンカンは共和党でしたからね。戦争終結後1世紀ほどは南部諸州は共和党の浸透を全く許さない、民主党にとっての金城湯地(いわゆるSolid South)だったことが知られています。

この状況が変わったのは1965年の公民権法の制定からです。この法律を署名したとき、時のジョンソン大統領は「これで南部は共和党のものとなる」と呟いたと言われてます。南部人の意思に反し黒人の市民権を認めたことで、民主党は南部の白人を敵に回してしまいました。それに上手く乗じてきたのが共和党で、元々は北東部財界の党であったのが中西部・西部の保守層が力を付けて来たのと相まって南部を基盤とすることに成功しました。(逆にかつては民主党内の一大勢力であった南部選出の保守的議員たちは時と共に姿を消してしまいました。)

大雑把ですが以上、状況の要約でした。

投稿: だい | 2004.11.05 03:06

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