中国事件報道の奇妙な後味
中国陝西省銅川市の陳家山炭鉱で28日朝ガス爆発があった。その後の続報はどうなっているのだろうかと気になったが、あまり国内ではニュースがないように思えた。このエントリを書いているのは30日になったばかりの深夜なので、夜が明ける頃には報道も変わっているのかもしれない。
現状、ざっとネットを見渡してみた。まったく続報ないわけではないが、少ない。29日夜7時の共同を産経新聞"火災発生後も採掘命令 中国の炭鉱事故、生産優先か"(参照)が事件を伝えてはいる。
中国紙、京華時報は29日、中国陝西省銅川の陳家山炭鉱で28日起きたガス爆発事故について、爆発の約1週間前から一部で火災が起きていたのに採掘を停止しないなど、経営側の生産優先姿勢が事故の背景にあったとの見方を伝えた。
たしかにそういう背景はあるのだろう。しかし、問題は被害の状況だ。29日昼のCNNジャパン"中国の炭鉱事故、死者25人に 141人不明"(参照)では141人を不明のままとしている。
中国国営新華社通信によると、陝西省銅川市の陳家山炭鉱で28日朝に起きたガス爆発で、死亡が確認された作業員はこれまでに少なくとも25人となった。坑道にはまだ141人が閉じこめられているという。
Googleで現時点の最新ニュースを英語圏で探すとInternational Herald Tribune"'Absolutely no hope' for 141 miners in China"(参照)があり、すでに事態は最悪となっているようだ。
CHENJIASHAN MINE, China - The 141 miners trapped inside a mine in northern China following a gas explosion have no chance of survival and are presumed dead, a local Communist Party secretary said Monday.
おそらく誤報ということはないのだろう。外電ではすでにこうした流れになっているので、30日朝刊にはこの悲劇が掲載されることになるのだろう。
情報統制の強い中国でもあるとしても、日本国内ではこのニュース報道が遅いようにも思われる。もっとも、そう時間を争って伝えるべきことでもないのかもしれないし、もともと、事件当初から絶望視されていたのかもしれない。それでも、この間のこのニュース報道の流れは奇妙に心にひっかかる感じがする。
話は変わる。爆破事故のニュースの続報を見ているうちに、時事で奇妙なニュースをたまたま見つけた。"学食への不満爆発=四川大学で騒ぎ-中国"(参照)である。時事は、29日付香港紙太陽報をソースとしているのだが、四川省成都市四川大学で26日夜、学生によるある暴動が発生した。
学生食堂の管理者が飲酒運転の末に起こした当て逃げ事故に対して、学生約1000人が抗議に集まり、管理者の車をひっくり返すなどの騒ぎに発展した。学生食堂のメニューやサービスが極度に低下したことへの不満も背景にあるという。
学生たちのやんちゃな大騒ぎなのかという印象も受ける。そりゃ、不味い食事を食わされる身にもなってみろ…といったのんきな感じもしないではない。そうなのだろうか?
別系でニュースにあたったのだが、国際ニュースとするには些細なのか、国内でもまた英語圏でもこのニュースは見あたらなかった。
そういえば、Googleは中国語にも対応しているのだと思ってサーチしていくと、いくつかこのニュースを見つけた。"四川大学…事件"(参照)には写真があるのでわかりやすい。自動車の壊れ具合をみるとけっこう派手にやったなという印象がある。
私は中国は読めないので、またもそういえば…と思い出し、Exciteの中日翻訳(参照)にかけてみた。ある程度意味は通る。
その後キャンパスの保安と公安はうわさを聞いて出席して秩序を維持して、学生にやじ馬見物をするのはますます多くて、運転手に謝るように求めて、そして警官と保安と口論になっておしてぶつかって、場面の混乱。その中に甚だしきに至っては銃を抜いて警報を発する公安があって、しかし学友の情緒はますます感動して、そして打つ事を起こす車を解体して、打つことを始める。その間そして大きな声で叫んで校長の謝和平に出てくるようにと学生の対話求める。夜明け方の2時43分の頃まで、加害者の運転手は車のドアを開けて、別の1台の車の上で逃げることを企む。やじ馬見物をする学生は形が直ちに前に出て遮ることに会って、そしてと公安はおしてぶつかる。
1000人を抗議行動に集合させたというより野次馬がどっと集まって、集団ヒステリー状態になったようだ。2chでいうところの祭というやつ、にしては威嚇発砲なども必要としたようだ。
事態はそれなりに短時間で収拾がついたという点で偶発的な事件ではあったのだろう。特に国際ニュースとするほどのものでもないとも言える。それでも、昨年の西北大学の騒動などを思い出すになんとも嫌な後味が残るニュースではある。
そして、このニュースを知ってしまえば、奇妙な余韻と中国の現状にそれなりに思いを巡らすのだが、知らなければ知らないで過ごしていたのだろう。
今回のこの小競り合いが中国内で報道されたのは、おそらく先日の四川省の暴動が念頭にあったのかもしれない。11月9日の東京新聞"四川でも10万人暴動"(参照)では次のように伝えていた。
中国四川省の雅安市漢源で十月末以来、ダム建設による立ち退きに反発する農民ら十万人規模の暴乱が続き、人民解放軍が鎮圧に乗り出した。香港紙などによると、八日までに農民と警官の四人が死亡、百人が逮捕された。中国では重慶市や河南省でも大規模な暴動が発生したばかり。貧富の格差や役人の腐敗に対する不満が各地で爆発しており、胡錦濤政権は重大な試練を迎えている。八日付香港紙、太陽報は「建国以来最も深刻な農民暴動」と報じた。一万人規模の武装警察に加え、正規軍も鎮圧に投入された。これに対し七十歳すぎの老人らが「決死隊」を組織し、「私を殴り殺せ。死ねば立ち退かなくてもいい」と叫んでデモを続けている。
文章を追っているととんでもない事件のようにも思えるが、率直にいって、それほど実感はない。この手の中国報道のありかたによるような気もする。代わりにウクライナ状勢は緊迫感を持って日本でも伝えられている。
伝達とリアリティに変なズレのようなものを感じる。ダルフールで日々1000人の人々が死んでいくとも言われるが、そうした話にも率直なところリアリティはそれほど感じられない。
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