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2004.11.20

[書評]45歳、ピアノ・レッスン!―実践レポート 僕の「ワルツ・フォー・デビイ」が弾けるまで(小貫信昭)

 標題のとおり、まったくピアノを練習したことがない45歳の中年男が、ジャズのナンバーが弾きたくて、ピアノのレッスンを始めたという話。

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45歳、
ピアノ・レッスン!
 著者小貫はこの本を執筆した2004年5月の時点で47歳。私と同い年なのである。始めたのが45歳。実は私も45歳のときからピアノの練習を始めた。だから、この本を見たとき、あれ?と思った。
 本の釣りにはこうあるように、彼の場合は、いちおうこの企画が仕事ではあったようだ。

理屈をコネるのは得意だけど、めっきり最近腰が重い。そんな時に「ピアノを習って、その奮闘記を書いてください」と依頼が…。楽器を初めて習うところから「ワルツ・フォー・デビイ」が弾けるまで、45歳の実践レポート!

 仕事だからとはいえ、実際にピアノが弾けるようになりたかったのは確かだ。まえがきにこうあるのは本心だろう。

 でも、ピアノじゃなかったら、やってなかったかもしれない。ギターとか、フルートとか、和太鼓とかだったら、断っていたと思う。理由は簡単。「もし弾けたら、カッコいいだろうなぁ」と思う楽器は、ピアノをおいて他にはなかったからだ。

 まず、書籍として見て面白いか、なのだが、ライターさんというだけあってさらっと読みやすく、面白く書いてある。が、もうちょっと実戦的な練習のヒントが多いといいなとは思った。例えば、個々のレッスンの再現のようになっている教本的な構成だったら、役立つのに…と。
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ピアノスタイルVol.6
 それでも、実際に同じようにピアノレッスンを始めてみると、細かいところで、そーなんだよね的に同意する点は多い。話はピアノの購入の手ほどきから書かれている。彼はこの本の企画がヤマハだったこともあり、「P-120 YAMAHA ELECTRONIC PIANO」を購入した。この機種はアマゾンでみたら「在庫切れまたは製造中止」とあった。価格は168,000円。このクラスだとそんな感じかなと思う。他のショップをあたると12万円くらいである。音の良い最近の電子ピアノについては、カタログ代わりに「PIANOSTYLE Vol.6」など、「ピアノスタイル」の最新刊を買うといいと思う。バックナンバーによっては初心者向けの紙上レッスンなどもある。
 私はとにかく運指ができたらいいなと思って、「CASIO CTK-571」を買った。これもすでに製造中止。後継機種は「CASIO キーボード(61標準鍵) CTK-591 シルバー」のようだ。音もタッチもたいしたことはないが、運指のレッスンには向いている。私は小貫のように先生につくことはしないで、ひたすら指示された通りの運指だけをやった。
 やればできるものである。この本では、次の3曲のレッスンがメインになっているが、私も、バッハ「主よ、人の望みの喜びよ」が弾けるようになった。

  • サイモン&ガーファンクル「明日に架ける橋」
  • バッハ「主よ、人の望みの喜びよ」
  • ビル・エヴァンス「ワルツ・フォー・デビイ」

 カシオの電子ピアノに入っているバッハ「主よ、人の望みの喜びよ」は小貫のとは違ったアレンジでどちらも、一般にピアノで弾かれているマイラ・ヘスの編曲にはほど遠い。が、私の譜のほうがちょっと複雑かな…といってお聴かせするほどではないが。
 小倉も書いているが、やさしいアレンジであってもバッハが弾けるというのは、なにか魂に喜びのようなものを与える。私はちょっとばかりクラシックギターも弾くのだが、やはりバッハは美しい(バッハのギターアレンジ譜もある)。

 バッハに決まった。やるとなったら、決断が早い。
「でもバッハといっても、主に三つくらい、違うタイプの曲があるんですよ」
 マナミ先生は、即座に弾き始めた。
(中略)
ちなみに、先生が弾いてくれた三つのパターンというのは「メヌエット ト調長」と「プレリュード第一番(五つの小さなプレリュードより)」と「主よ、人の望みの喜びよ」ということだったらしい。

 で、私は「メヌエット ト調長」も弾ける。すでにピアノが弾ける人には失笑ものだろうが、この曲は二、三か所短いのだけど、右手と左手が違うメロディーというか流れを形成する部分があり、こんなもの両手で弾ける日がくるのかと思ったが、できた。できてみると、左右の手が歌っているようで楽しい。小貫も「忙しい両手が快感に!!」と書いているがそんな感じだ。
 「主よ、人の望みの喜びよ」はもともとピアノやハープシコード用の曲ではないが、「メヌエット ト調長」は厳密にはバッハの作品ではないものの、バッハが後妻に与えるべくその名を記した「アンナ・マグダレーナ・バッハのためのクラビア小曲集」なので教本らしい良さがあるし、クラビコードを意識しているせいか、ペダルもなしで(たぶん)いい気軽さがある。
 そう、電子楽器だとペダルとかけっこう問題でもある。こうした点も配慮してなのか、この本で、小貫は電子楽器ではないグランドピアノも弾いた体験を書いている。
 私も少し弾けるようになったので、アップライトピアノだが借りて弾くことがある。鍵盤が重いのだね。すごい力がいる。それでも、物を叩いて出る音というのはいいし、カシオのちゃっちい電子ピアノと比べてはいけないが、音の表現力はまるで違う。
 超初心者のピアノについては、他にもいろいろ思うこともあるけど、これもまたいずれ。

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コメント

グランドピアノを弾けるときがあったら、ぜひ用意してほしいものがある。それは、オルゴール。音響箱がついていない手動回転式。そう、金具しか見えない、あれ、握りきれる大きさの。オルゴールをもってグランドピアノの下に入る。上を見上げると共鳴版がある。そこにオルゴールをあてて、ゆっくりとオルゴールのレバーを回転させる。これで、ピアノの仕組や美しさの秘密が実感できて、自分のテンポで好きな曲を聞ける。まず、ビックリするよ。

投稿: 野猫 | 2004.11.20 08:47

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