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2004.10.12

交通手段と環境についての雑感

 パリのポルト・ド・ベルサイユにある国際見本市会場で第83回パリ・オートサロン(Mondial de l'automobil)が9月24日から昨日まで開催されていた。といって、私は車に関心があるわけではない。沖縄で暮らしていたときは他に交通手段がなく、しかたなく車を使っていた程度である。
 パリ・オートサロンについては、車好きにはさまざまな視点があるだろうが、全体的な傾向として見れば、環境に優しい「クリーンカー」が注目されていたようだ。これには原油価格の高騰といった背景もある。ちょっと驚いたのだが、シトロエンは天然ガスを使う一般向けの自動車を今後開発するとのアナウンスもあった。購入した場合、フランス政府は、自宅用のコンプレッサー設置の経済支援をするらしい。この傾向が普及すれば、フランスでの脱ガソリン化がいっそう進むだろう。
 フランスでは、すでにバスやゴミ収集車など公共の自動車の場合、燃料にエタノールを利用していることが多い。日本でも、京都議定書に定められた温室効果ガス削減目標を達成するためにエタノール混合ガソリン(3%)の使用が昨年8月解禁され、その普及を進めてはいる。先日小泉総理がブラジルに訪問した際も、ブラジルのサトウキビからできるエタノールの輸入の期待を表明している。とはいえ、身近でエタノール混合ガソリンの利用の話は聞かない。エタノールを燃やしてもCO2は出るが、京都議定書の枠組みでは、CO2を吸収して育つ植物が原料ということで排出量はゼロと見なしている。
 京都議定書といえば、これを批准しないアメリカが環境に配慮しないというイメージで見られることもある。が、エタノールの利用の面では米国は先進国だ。「ガソホール」という名称で1970年代から利用され、現状全米のガソリンの約10%がすでにこれに相当している。日本が今後の導入を検討しているエタノール10%混合ガソリン(E10)も米国ではすでに流通している。日本も公共交通や市街の宅配便車などにエタノール燃料を義務づけたらいいようにも思うが、どうなのだろうか。
 パリ・オートサロンでは、電気自動車にも人気が集まった。この分野の技術はご存じのとおり日本が先行している。とはいえ、この技術の適用が日本に向いているのか私にはよくわからない。日本の場合、このタイプの車が快適に走る道路になってないようにも思う。
 米国は電気自動車普及の点でも進んだ面がある。ハイブリッド車利用をアファーマティブに支援するための施策が進められているのだ。有名なところでは、カリフォルニア州のカープールレーンだ。シュワルツェネッガーが知事となるや、45マイル/ガロン(19.0km/l)以上の燃費の車種なら、一人だけの運転でもカープールレーンの走行が可能となった(参照)。
 カープールレーンは、交通の混雑を減らすために、相乗り車を優先するための特設レーンである。2人以上の乗車がないのにこのレーンを走行するとかなりの罰金が取られる。今回のカリフォルニア州の決定は、燃費のいい車なら、半人前という換算なのだろう。
 45マイル/ガロンの燃費をクリアできるのは、現状、プリウス、シビックなど日本車に限定されるので、その点から米国内でブーイングもあるようだが、アメリカというのはこういうのに頓着しない(イチローも優れた選手だから評価する)。こうした米国の動向は、環境重視と交通渋滞解消の施策として十分評価できる。
 カープールレーンでふと思い出したのだが、沖縄にはバスレーンというのがある(参照)。沖縄でレンタカーを運転する前にはバスレーン規制について知っておくといい。知らないとちょっと困ることにもなる。
 沖縄は戦後米軍が鉄道を撤去したため、かなりひどい自動車社会になった。うちなーんちゅは「歩くのなんぎー」とか言って、通勤・通学に一台一人で乗るが一般的。交通渋滞も烈しい。このため、時間制限ではあるがバス専用のバスレーンを設けないとバスの運行ができない。
 沖縄では新設のモノレールも交通渋滞解消というのが建前だがあまり効果は出ていない。沖縄のような土地ではモノレールよりも新型の路面電車LRT(Light Rail Transit)の導入が好ましくその推進団体もあるだが、まったく進展していない。現行の江ノ電並み二両編成のモノレールは開発当初から赤字となることがわかっていたのに、建築は中断できず、代替のLRT推進もできなかった。しかも沖縄では赤字続きのバス会社統合問題でもめ続けている。なんとかしてほしいとも思うが、なんくるないさ、なのだ。おっと、沖縄の話がつい長くなった。
 欧州や米国の交通機関におけるガソリン・セーブの傾向を見ながら、日本でもこうした施策を何か進められないかと思うが、よくわからない。鉄道がこれだけ普及しているからそれでいいのだろうか。
 そういえば、ギリシアでは伝統的にタクシーも相乗りする。しかも、これが、すでに客が乗っているタクシーでも道の途中で停めて、別の客が相乗りでずかずか乗り込んでくる。最初私もびっくりしたのだが、これも慣れるとどってことはない。日本でもできるところからタクシー相乗りを推進すればいいのにとも思う。
 と、特に焦点のある話でもないのでこのあたりで終わりとするのだが、最後にちょっとディーゼル車について。
 欧州ではディーゼル車はクリーンな交通機関と見られている。ガソリン車に比べて燃費が良く、CO2排出量が少ないからだ。日本だと、東京都で規制されたように、ディーゼル車は粒子状物質(PM)の排出のため、環境に悪いというイメージが強い。だが、欧州では、ディーゼル・エンジンの燃焼室内で燃料を完全燃焼させるため、粒子状物質を排出しない技術開発が進んでいるようだ。

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コメント

最近、ヤマト運輸や生協辺りがLPGトラックを大量導入してます。韓国ではLPGの路線バスが走っているとか。
LPGは結構昔からタクシー用の燃料で使われていたから、LPGスタンドもそれなりにあるので補給の面では困らない「クリーンカー」だと思います。

ディーゼルに関して言えば、欧州では高速道路で長距離走行する機会が多いのに対して、日本は低速でゴー・ストップを繰り返す上に、住宅街にも大型トラックが乗り入れるような環境だから、悪者扱いにされても仕方がないじゃないでしょうか。
現にヨーロッパメーカーも低速走行時の排ガス規制のクリアが難しいから、日本にディーゼル乗用車を投入するのに躊躇っている面もあるようですし。
http://response.jp/issue/2004/0927/article63913_1.html
ただ、日本でもボッシュが乗用ディーゼルエンジンの啓蒙イベントを定期的に開催しています。
http://response.jp/issue/2004/0615/article61251_1.html
http://response.jp/issue/2004/0616/article61294_1.html
http://response.jp/issue/2004/0618/article61339_1.html
また、ディーゼルエンジンの低公害化に不可欠な燃料からの硫黄分の低減化も、東京都の音頭とりで石油供給者側が来年から前倒しで出荷を始めるという話もあります。
http://www2.kankyo.metro.tokyo.jp/jidousya/diesel/
http://www2.kankyo.metro.tokyo.jp/jidousya/oil/s10/
http://www.paj.gr.jp/html/data/eco/lowsulphur.html
日本ではミニバン・SUV系のディーゼル比率が高かったので、ディーゼル乗用車の復権はそこから始まると思います。

LRTに関しては、いくら推進団体が頑張っても行政や運営会社、住民側に熱意がないのなら実現は難しいでしょうね。
岐阜市内の名古屋鉄道の路面電車みたいに、住民から廃止しても構わないなんて意見が出るようなところではなお更でしょう。
フランスの会社が運営引継ぎに名乗りを上げたそうですけど、果たしてうまく行くのでしょうか?
それに、LRT推進派ってあまりにも感情的になりすぎな面もあるようですが。
http://jns.ixla.jp/users/tetuwota492/
http://www.geocities.jp/gihugihu2004/

投稿: ( ・∀・)つ〃∩ ヘェーヘェーヘェーヘェーヘェー | 2004.10.12 16:44

LRTの導入が進まないのは沖縄だけでなく日本中どこでも同じですが、やはり最大の理由は車線が減って渋滞が酷くなることに対するドライバーの反発なんでしょうか。

投稿: Baatarism | 2004.10.12 16:59

公平を期して、鉄道ファンの方が作られた岐阜の路面電車の現状のサイトを紹介しておきます。
http://www.tawatawa.com/minoibi/
2chの運輸交通板のスレッドを見ましたけど、不毛な論議が続いているようで…
http://society3.2ch.net/test/read.cgi/traf/1090676230/l50

投稿: ( ・∀・)つ〃∩ ヘェーヘェーヘェーヘェーヘェー | 2004.10.12 17:32

>Baatarismさん

それもあるでしょうが、最大の問題は他の地域の成功例をそっくり猿真似しても、住民ニーズに合わなければ成功は難しい事だと思います。
多額の公費を投入し、マイカーに対する規制の不利益に対する見返りが少なければ、反発だって大きいでしょう。
地元の路線バスがそうなんですが、利用者の減少と減便・路線廃止の悪循環繰り返している旧態依然の公共交通よりもマイカー利用が増えるというのは、ある意味市場原理の結果なのでしょう。

東京の武蔵野市が100円均一の住宅街に入り込むコミュニティ・バスを走らせるとき、コンサルタントに依頼して主な利用者層である高齢者の実態観察とグループインタビューで意見を聞いたりして住民の本音を調査して検討を重ねたと聞きます。
#これだけで、NHK・プロジェクトXの番組が出来そうな物語があるようで。
他地域の成功を真似るだけでなく、その地域の事情に合った交通機関を開発しないと駄目なんじゃないでしょうか。

投稿: ( ・∀・)つ〃∩ ヘェーヘェーヘェーヘェーヘェー | 2004.10.12 18:31

原油高が続いていますが、この状況、何年か継続しないものですかね?代替エネルギーのペイするレベルが近づいてくれば、地域によってはまとまって導入することも可能でしょう。この付近の投資は数十年に一度というスパンなので長いほうがいいですね。

GNPあたりのエネルギー消費は、日本に続いて近年の欧州で減り、さらに数十年遅れで北米で減り、21世紀半ばの石油の消費量は相当少なくなるという予測を聞いたことがありますが、実際はどんなものでしょうね?

投稿: カワセミ | 2004.10.12 19:46

>欧州ではディーゼル車はクリーンな交通機関と見られている

これは欧州で流通している軽油の方が硫黄分がずっと少ないためですね。そのため、日本の軽油を使うといくら頑張ってもすすetcが出ます。欧州メーカーが手持ちのディーゼルを日本で使えないのもそちらが主因だったはずです。

その意味で、これは自動車行政というよりも石油行政の問題ですね。随分前から日本の軽油の問題は指摘されていたのですが、最近都知事がメスを入れるまでは放置されていました。石原都知事はいい仕事をしたと思います。

投稿: 馬車馬 | 2004.10.12 21:20

> 随分前から日本の軽油の問題は指摘されていたのですが、
> 最近都知事がメスを入れるまでは放置されていました。
> 石原都知事はいい仕事をしたと思います。

日本でもディーゼル燃料から硫黄分を抜こうと言う動きはある。
もちろん技術的に可能である事は広く知られているし、
コスト的にもディーゼル燃料の価格メリットを帳消しにしないレベルで可能らしい。
これが実施出来ればディーゼル車はガソリン車以上のクリーンカーになる。
(と言うか欧州では元々そーゆー認識らしいが、)

だが、分かり易い悪役を求める都知事殿は耳を貸さなかったと言われている。
やらないよりはマシなので、都知事殿は評価されるべきだとは思うが、
都知事殿はディーゼル車の排ガス問題にメスを入れたのであって、
「日本の軽油の問題」にメスを入れたわけではない。
混同されぬよう。

投稿: at | 2004.10.13 11:46

はじめまして。(環境問題と、省エネに関心あり、コメントさせていただきます。)

日本でも、CNG車と家庭用のCNGコンプレッサーが、各社から市販され、購入者に補助金が交付されますが、それでも、どちらも高価で、とても個人で買えるもんじゃないですね。フランスでは、どの程度の価格なんでしょうか。
それから、北京のバスも、CNGの新型が走ってると聞きました。CNG車って燃費はどうなんでしょうか。??

日本の酸性雨、平均pH5.あれば良いほうみたいですね。雨量の多い、大台ケ原などでは、すでに森林の破壊かなり進んます。瀬戸内の船舶重油による硫黄酸化物による松枯れも、だいぶ以前から深刻ですね。中国の経済発展、日本の土壌にとってシリアスなものがあります。早く、化石燃料に替わる、太陽電池と、水の光分解触媒の効率上がるように、皆で祈りましょう!

>欧州では、ディーゼル・エンジンの燃焼室内で燃料を完全燃焼させるため、粒子状物質を排出しない技術開発が進んでいるようだ。<

↑上の記載、ディーゼル・エンジンファンとしては、耳寄りな情報です!Oh.
いすゞが、ポーランドエンジン工場で、ツインカム&ターボ ディーゼル エンジンを製造しているので、本当でしたら、取り寄せますです(^^)。

投稿: (U-1) | 2004.10.13 23:37

上のコメント、名前を入れそびれました。

投稿: U-1 | 2004.10.13 23:48

atさん、すいません、もう少しちゃんと書くべきでしたね。

おっしゃるとおり、現行の500ppmから50ppm(欧州基準、というかドイツ基準)まで硫黄分を低下させる技術はありました。それが採用されてこなかったのは、ひとえにコスト増を嫌がる軽油のユーザーサイドからの反発にあったわけです。

そこで、都知事は排ガス規制を敷いて軽油のユーザー(運輸業他)を黙らせた上で、2004年度(うろ覚え)から軽油の硫黄分を50ppmまで低下させる法案も通しています。それに周りの県が呼応して、最終的に政府も近い将来(確か2005年度)の50ppm規制の導入を決定したはずです。

まず運輸業者に「フィルターの導入か、低硫黄軽油の導入か、どちらにしてもコスト増」という状況を作って外堀を埋めた上で軽油に対しても規制を敷いたわけです。この一連の政治プロセスについて「いい仕事」だったな、と評価したのですが、すいません、舌足らず過ぎましたね。

しかし、「クリーン」というには10ppmまで下げる必要があるはずで、2007年度あたりには10ppm規制も発動するはずなんですが、そのための技術って実用化されてるんでしょうか?聞いたことないんですが・・・

投稿: 馬車馬 | 2004.10.14 00:55

ディーゼルの排ガス対策として、日産当りがコモンレールの開発に成功したと何年か前に聞いた事があったんですが、それでどうにかなるものでもないのですな。
たしか、この分野ではボッシュが圧倒的に強いとか。
どこぞでは、10年前に比べて、パワー2倍、燃費半分、排ガスは一割まで減少と聞いたんですが、サッパリ足りないみたいですねぇ。

投稿: おきゅきゅきゅきゅ~ | 2004.10.15 17:32

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漏れの記憶が定かならば、沖縄に戦前引かれていた鉄道って言っても軽便鉄道だったと思うし、撤去された理由が鉄材の戦争供出とかそういう理由だった気がするが [続きを読む]

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