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2004.10.10

オーストラリア総選挙はイラク派兵支持の保守連合の勝ち

 昨日オーストラリア総選挙があり、ハワード首相ひきいる与党・保守連合が野党労働党に勝利し、継続して四期目となる政権を担うことになった。事前の予想では、接戦とも伝えられていたが、蓋を開けると意外なほどあっけなく決まった。保守層は今朝も安心してパンにベジマイトを塗ることができただろう。

cover
ベジマイト
 オーストラリアは日本同様追米的にイラク戦争に荷担していることもあり、今回の選挙は国際的にはイラク戦争との関連で注目されていた。が、今朝の日本の新聞各紙では社説で扱っているものはなかった。
 選挙前のテロの危険性も注視されていた。労働党はイラクからの撤兵を公約としており、ちょうどスペインでの大規模テロの前夜と似た状況とも見られていたからである。テロについては、先日ジャカルタではオーストラリア大使館を狙ったと見られる爆弾事件は発生したものの、オーストラリア本土では現在のところテロはない。イラク派兵の部隊でも死傷者は出ていない。この事実は、ある意味で不思議なほどとも言えるのだが、日本も似た状況である。
 ハワード政権続投により、イラク派兵850人の駐留は継続される。当然ながら、今回のハワード陣営の勝利は、米国大統領選挙でもブッシュ陣営に好材料となる。一昨日の大統領選挙討論会でもケリー候補は米国は国際的に孤立したと主張していたが、これでオーストラリアと日本からは強い支持が得られたことになるからだ。また、健康に不安な点もあるものの、イギリスのブレア首相へも来年の総選挙について続投支援になった。日本ではあまり報道されていないが、ブレア首相はスーダン・ダルフール危機に対して、大国としては初めての要人としてスーダンを訪問しその政府に公式に圧力をかけているが、こうした活動も英国内では政局の関連と見られている。
 イラク政策以外では、ハワード政権続投により、米国としてはアジア・オセアニア地域の安全保障の政策がやりやすくなった。日本とオーストラリアという大きな拠点が維持できたからだ。すでにシンガポールには米軍を置いているように基本的に親米であり、先のインドネシア選挙でも親米的なユドヨノ政権となったことも米国には有利となる。むしろ、問題なのはマレーシアかもしれない。石油がらみでどうも奇妙な動きをしているようでもある。
 対外的には重要な意味を持つオーストラリア総選挙だったが、オーストラリア国内ではイラク問題はあまり論点とはなっていなかった。もともと英国連邦の構成員であり、最近では米国映画界でオーストラリア人の活躍が目立つように米国との関係が深い。イラク派兵だけを単独の問題としてとらえるという視点は立てづらい。
 言い方は悪いが、今回の選挙結果は保守層の最後のあがきとなる可能性もある。当初接戦も伝えられていたように、ハワード首相ひきいる与党・保守連合への批判は大きい。世代交代へ声もある。ハワード首相が65歳であるのに、労働党のレイサム党首は43歳というのは世代交代のアピールもある。さらに、オーストラリアの世代の問題には、英国連邦というオーストラリアのありかたに対する反発も強い。現状、オーストラリア国民の若い世代を中心に七割もが英国連邦からの離脱を支持している。
 現状、オーストラリアは国旗を見てもわかるが、英国連邦の構成員であり、エリザベス英女王を元首とする立憲君主制である。その意味あいは象徴的なものでしかないとはいえ、レイサム党首率いる労働党は、この体制への反発を見込んで、今回の選挙では、共和制移行の是非を問う国民投票を公約していた。
 共和制移行については、1995年の労働党政権時代、キーティング前首相が2001年までの実施を目指し、1999年に憲法改正案が国民投票にかけられたが、賛成45%、反対55%の小差で否決された経緯がある。もっとも、これは共和制のシンボルとも言える大統領選出方式を、現状に近い形で議会の3分の2の賛成で選ぶ間接選挙にしたためでもある。
 今回立憲君主制支持派で趣味はクリケットというべたな英国志向のハワード首相が続投ということで、表面的には共和国移行問題は据え置きになったかにも見えるが、10年スパンで見れば、共和国移行は避けられない。保守党側もすでにその動向は織り込んでいるが、ヘタを打つ可能性もあるだろう。
 次回以降の選挙については、オーストラリアの選挙制度が労働党に有利に作用する可能性もある。オーストラリアでは、選挙区の全候補者に有権者がお好みの順位を付けるアンケートみたいな方式になっており、第一位得点を過半数を取った候補者が当選する。過半数が得られなければ、支持されていない候補の票が対立票として二位の候補に配分される。なぜ?といった感じでもあるが、それを言うなら米国大統領選挙もけっこう奇妙なものだ。
 この選挙方式は、対立票が重要になる。そこで第三政党が注目される。オーストラリアではドイツほどではないが、緑の党の支持者も少なくないので(少なくとも米国大統領選挙でラルフネーダーを支持する人よりははるかに多い)、この傾向が今後のオーストラリアの動向の鍵を握るかもしれない。英国でもそうだが、今後、世界は二大政党化というより、キャスティング ボート(casting vote)を握る第三政党が重要になる可能性があるのだが、自らのその可能性を窒息させている某国の第三政党もある。
 経済的な不安材料もある。比較的好調な国内経済がハワード首相を支持していたともいえるが、これは世界的な低金利で行き場を失った資金がオーストラリアに流入していたとも見られる。日本は事実上のゼロ金利、米国はついこないだまで実質マイナス金利、ユーロ圏は2%程度、というなかで、豪州準備銀行(RBA)の政策金利は5.25%だった。世界経済が回復すれば金の流れが変わるだろう。

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コメント

かなり脱線するのですが、日本人が欧米人よろしく早期リタイヤ後、オーストラリアやNZで隠居生活を送るのは死ぬほどダサい気がする。ああいう恥かしい白人追従はもうやめたほうがいいなと。
富裕層の知性やセンスが問われてるのに。

昔ほどではありませんが、それなりにまだ流行ってるし。

後に白人も羨む日本人ならでは海外リゾート開発なんてできないもんですかね。俵屋や癒しなどなどノウハウやコンテンツは十分あると思うし。

投稿: nom | 2004.10.10 13:19

それを白人追従と呼んで良いのか。
ずいぶん単純だ。
変に意識し過ぎだと思うが。

南国とかリゾートのイメージが強いのと
わりかし社会が安定している国というと
そこら辺がでてくるのでは。
まあ、日本に住んで、出来るだけ国内で金を
回して欲しいものではあるが。

投稿: (anonymous) | 2004.10.10 19:44

日本にも楽隠居というものがありました。

正直、好きなことやって遊んで暮らしたい。

投稿: むにゅう | 2004.10.10 21:49

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