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2004.10.08

売春は合法化すべきなのか…

 先日の極東ブログ「在外米軍の売春利用規制」(参照)で簡単に触れたが、先月23日韓国では性売買特別法が施行され、売春斡旋業者や買春男性への処罰を強化された。この産業セクターは韓国では無視できない規模なので、なんらかの社会反応があるだろうという点に関心を持っていたのだが、昨日(7日)、風俗街などで働く女性約2500人がソウル市内の国会前で抗議集会を開いたというニュースを聞いた。彼女たちは「生存権保障」や「2007年までの猶予」などを訴えたらしい。
 国内では日本経済新聞「韓国、性売買春取締新法で女性2500人が抗議デモ」(参照)などがニュースとして取り上げていた。韓国紙では朝鮮日報「売春街の女性3000人が国会前でデモ」(参照)や「性風俗業の職業認定を!」(参照)が詳しい。写真は集会の熱気と組織性を伝えている。帽子の色は出身地を示している。この整然とした組織性にはなにか裏があるのかもしれないという印象は持つ。
 まず誤解をして欲しくないのだが、私は韓国をこうした点で貶める意図はまったくない。また、売春それ自体に関心が深いわけでもない。しかし、私たちの社会の現実は売春やそれに類縁の風俗産業を含み込んでいることは確かなので、そうした社会の視点から無視すべきではないし、知的にチャレンジされている側面もあると思う。そこを少し書いてみたい。
 韓国の規制についてはその実態を私は詳しく知らないだが、私が理解している範囲では、ソウル集会に集合した女性たちは売春婦というわけではなく、広義に性風俗産業に関わっている女性である。というのも、今回の規制法との運用では、むしろ買春側に着目していることと、処罰対象の行為が「性交渉」から「性交類似行為」に拡大されているからだ。基本的に男の側を締め付けてお金の流れを止め、このセクターの産業を断とうとしている。これではこのセクターのサービス就労者はたまったものではないだろう。
 だから、この問題は単純に売春の問題ではない。が、国際的には、売春のあり方として総括され、またその枠内の問題としては、今後解禁の流れにあるように見える。示唆的なオランダの動向である。
 オランダでは、1999年に売春宿合法化案が議会で可決。2000年夏から売春の営業所が公認され、地方自治体への登録制が敷かれた。この立法の背景には、未成年者や不法入国の外国人の強制売春を効果的に規制するには、合法化によるガラス張りがよいとする判断があった。実際、ガラス張りの飾り窓の営業所は日本の江戸時代の吉原のようでもあるらしく、観光名所にもなっているようだ。もっとも、この政策が所期の目的を達していると言えるのかについては現状ではよくわからない。失策だとも言えないようだ。
 ヨーロッパでは伝統的に売春の規制が甘い。売春婦が一人で職業として選択している場合は基本的に合法のうちに入ることが多いようだ。それゆえ、ヨーロッパでの売春の問題は、彼女たちを支配する組織とその規制がまず問われる。売春の裏で操る組織が犯罪の温床になりうるからである。
 また、売春婦自身らによる自主組織の動向もある。売春という動労の権利と納税という点からも重視されてきているようだ。特にドイツでそうした意見が目立つ。今後、EUという形で欧州が統合がさらに進むと、売春規制も実質オランダ・モデルを志向ざるをえないのではないか。
 と、いうのが先進国における売春についての「民度」の高そうな意見といったところかな、とも思っていたのだが、日本の状況を考えると、多少ぶれる。
 日本の場合、敗戦の翌年1946年時点で、GHQ(連合軍総司令部)の指令という上からの直接権力で表向き公娼制度は廃止された。現実には、遊廓地帯と私娼街を特殊飲食店街の「女給」が自発的に行なう売春は黙認された。この背景にはGHQの都合もあるようだ。
 この時点ではまだまだ売春の撤廃にはほど遠く、特飲街指定地域は赤線地帯と呼ばれ、これに対し非指定の私娼街は青線地帯と呼ばれていた。赤線は1957年の売春防止法施行によって廃止された。ちなみに私は1957年の生まれなので、こうした歴史の後の人間だが、子供の頃には赤線・青線といった言葉がまだ生きていた空気を多少知っている。
 その後の日本は、と長い話になりそうなので端折るが、ようするに売春の規制対象となる本番を可能な限り迂回することで性風俗産業が発展し(警察との癒着の結果とも言える)、またかつての売春のニーズは一般社会の側に拡散された。かくして日本では売春の問題が消えたかのようにすら見える。
 だが、なくなったわけでもなく、日本では売春の実態把握がより複雑になっているだけだろう。いわゆる売春はすでに払拭したかに見える日本の性風俗産業だが、最近では対外的には、外国人をこのセクターで人身売買をさせている国のように見るむきもある。そうした視点も失当とはいえないのがなさけない。
 では、日本にもオランダ・モデルが適用されるべきかというと、普通の日本人の感覚としてはそう思えないということだろう。形式的に適用すると実質の対象は外国人だけになってしまうのではないかという懸念がふっと浮かぶ。問題はまさにこの「普通の日本人の感覚」にあるのだろうなとは思うが、どうモデルを建てて考えたらいいのかはよくわからない。

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「社会」カテゴリの記事

コメント

こんにちは、
私も、サービスの内容については興味はないのですが、
従業している側が「好きでしているわけじゃない」はずの、
その根本的理由を放置して、現象的に規制した場合、
隣国に大挙して、輸出されるのではないかと考えています。
TBさせてください。

投稿: おおた葉一郎 | 2004.10.08 10:13

> 従業している側が「好きでしているわけじゃない」はずの、

...何故?

投稿: at | 2004.10.08 14:13

先進国に分類される国での合法化には、エイズ対策という面も
大きいのではないでしょうか。

合法施設なら客にコンドームを必須にさせるといった事も
可能のように思いますし。

投稿: カワセミ | 2004.10.08 21:09

はじめまして、ソットということでよろしくお願いします。
いつも楽しく(いや勉強にというより考えることか)読んでおります。
この「売春」というより性的営業行為は、ないと難しいと思います。
もちろん、そこで従事するかた(女男かかわらず)がいやな場合にむりやり性的商業行為に従事することは反対ですが、
それしか生産手段がない人や(売り手)、それしか性的接触行為がもてない人(買い手)には、非常に重要な仕事だと思います。
私事ですが、Finalvent様と1つしか違いませんが、X1で仕事が忙しくあまり異性に積極的ではない私には、時々(いゃ~時々といいますか)襲ってくるヤリテー感(リビドーなぞ言いません)に対処すると,Do it myselfとか空気嫁(家にはいませんよ)とか色々あると思いますが、世間でスグ女子中高生を買うアホが多いのに対し、自分を律するのが非常に大変です。
なんかアホなことを書いていますが、性犯罪をなくすという観点からも、性的商業行為は必要だと思います。
かといって、それで性犯罪がなくなるわけではないですね。
パパやめて、痴漢、ブルセラ、援助交際。
という標語を胸に、自分と戦っていきたいと思います。


投稿: ソット | 2004.10.08 23:33

>なんかアホなことを書いていますが、性犯罪をなくすという観点からも、性的商業行為は必要だと思います。

売春などの性風俗産業が必要かどうかは、生理学、倫理学、社会学や地域研究などのアプローチから検討できます。
ここでの問題は、より具体的に、それを合法化するかどうかということです。

投稿: どらもん | 2004.10.11 02:27

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