« ゴードン・ブラウン、その救世主的な情熱 | トップページ | [書評]あなたは生きているだけで意味がある(クリストファー・リーヴ ) »

2004.10.14

外国語を学ぶと脳がパワーアップするだとよ

 東ドイツの極右勢力の話なんかするより、これだよね。外国語を学ぶと脳がパワーアップするだとよ。洒落? いやいや、ネイチャー誌の最新号に掲載されている"Neurolinguistics: Structural plasticity in the bilingual brain"(冒頭・参照)の話。


Humans have a unique ability to learn more than one language -- a skill that is thought to be mediated by functional (rather than structural) plastic changes in the brain. Here we show that learning a second language increases the density of grey matter in the left inferior parietal cortex and that the degree of structural reorganization in this region is modulated by the proficiency attained and the age at acquisition. This relation between grey-matter density and performance may represent a general principle of brain organization.
【試訳】
人間にはその固有の能力として複数言語を学ぶ能力がある。この学習能力は従来、脳の物質的な構造によるのではなく、その機能の可塑性によって達成されると見なされてきた。だが、私たちは、外国語学習によって下頭頂葉皮質の灰白質の密度が増加することを見いだした。つまり、この部分の脳の物質的な構造は、外国語習得によって達成された能力のレベルに見合った状態で再編成されている。この灰白質の密度と外国語能力の関係は、脳の一般的な原理をも表しているのだろう。

 な、なるほど、外国語がぺらべらできるやって脳自体が違うんだな、と納得していただけましたでしょうか。
 っていうか、日本のメディアでの情報だとそういうのってすでに当たり前みたいに言われてるが、脳の学問では、機能と構造というのをかなり厳密に分けていて、いわゆるところのゲーム脳とかメール脳とかいうお笑いは機能の話にすぎない。脳の構造、つまり、物質的な意味での脳ミソが、まるで筋肉みたいにもりもりするっていうのは、それはそれなりにネイチャーが取り上げるに足る研究ではある。
 「筋肉みたいに」というのは悪い冗談止めろかと思いきや、これをニュース扱いしたBBC"Learning languages 'boosts brain'"(参照)も使っている。

They found learning other languages altered grey matter - the area of the brain which processes information - in the same way exercise builds muscles.
【試訳】
研究者たちは、多国語を学ぶことで灰白質(情報を処理する脳の領域)が、筋トレで筋肉が付くのと同じように変化することを発見した。

 脳学者にしてみると今回の研究の意義は、むしろ、「a general principle of brain organization」にあると思われるが、一般的には、外国語を学ぶと脳がパワーアップするみたいに受け止められるだろう。面白そうなネタだし、このネタだと広告もちゃんと付きそうだし。
 BBCのニュースを読むと今回の発表では、よく言われる言語習得の臨界期についてもある程度意識されていることがわかる。というのも、こうした外国語の習得による脳構造変化は幼い時点でバイリンガルになった子供に顕著らしい。この手の話もまた日本では外国語の幼児教育の必要性とかに化けるのだろう。研究者に次のようにコメントさせている。

"It means that older learners won't be as fluent as people who learned earlier in life.

"They won't be as good as early bilinguals who learned, for example, before the age of five or before the age of ten."
【試訳】
 今回の結果から、ある程度の年齢に達したら、幼いころに外国語を習得した人ほどぺらぺらになるというわけにはいかないことがわかるでしょう。
 五歳前とか十歳前にバイリンガルになっている人と比べると、それ以上の歳の学習者が同等に上手になることはないでしょう。


 それじゃあんまり、というわけで、CBS"Being Bilingual Boosts Brain"(参照)では、お慰みのコメントも加えてくる。

Of course, while it might seem easier to pick up a second language as a child, it's still possible to do so as an adult.
【試訳】
もちろん、子供のほうが外国語を習得しやいようだとは言えますが、成人だって可能なんですよ。

 ま、がんばってくれ。私もかんばる…ってなんのこっちゃ。
cover
100 Words
Almost Everyone
Confuses & Misuses
 BBCのニュースでは話のオチに、外国語が話せるイギリス人労働者は十人に一人。そして、2010年には小学校で外国語教育を導入するということを加えている。EUでは多国語が重視されるという含みなのだろう。
 さて、外国語の幼児教育について、おまえさんはどう考えるのかと問われるなら、実は関心ない。デーモン小暮は幼児期に英語の環境にいたためバイリンガルなのだが、彼は、たしか、余の話す英語はお子ちゃまの英語なのである、とか言っていた。そうだろうと思う。知的な意味を担わせた英語なりを使いこなすのは、アメリカ人の英語ネイティブでも語彙を増やす必要があり、これにけっこう苦労しているものだ。英語ネイティブでも英語は難しいのは、"100 Words Almost Everyone Confuses & Misuses (The 100 Words)"とかでもわかる。
 それと今回の研究は印欧語内の言語なので、日本語と英語のように離れた言語で一般的に成り立つのかかなり疑問かな。

|

« ゴードン・ブラウン、その救世主的な情熱 | トップページ | [書評]あなたは生きているだけで意味がある(クリストファー・リーヴ ) »

「雑記」カテゴリの記事

コメント

国語で、ヒヤリングをする能力を高める方がいいかもしれない。
それから、例えば、極東blogの一エントリーを全文を読んで、
著者が納得できるように、要約できる技術を身につけるのも大きい。
あとは、丁寧に書いたり話せたりする技術。
世の中の人は、ですますで書いて、「お」をつけて、
「お話します」と書けば、礼儀にかなっていると勘違いしている人もいたり?

最後に、どんなことでも何歳になっても学べば脳はパワーアップすると信じたい。ただ、日常生活に役立たないなら、いずれその部分は繰り返し履修されないから、一時的にパワーアップしても…

投稿: 野猫 | 2004.10.14 16:55

こんばんは。興味深い話題ですね。
私は、ポルトガル語とスペイン語、イタリア語、フランス語、それに沖縄弁と、ヤマトン標準語を話すブラジル人に会ったことがあります。別に、外語大を出た訳でなく、母方の祖母がイタリア系で、父方の祖母がスペイン系で..夫がウチナンチュで、仕事が看護婦でと...と単なる家庭、職場環境などから自然に覚えてしまったそうです。
また、友人のマレーシア系華人も、広東語、福建語、客家語、北京語を解します。これもレストランで働くうちに自然に覚えたのだそうです。いろんな言葉で仕事をするのはとても楽しいそうで、こうした人たちは、とてもエネルギッシュで、どこか馬力も違います。
北米を旅した時も、民族系レストランのオーナーが、日本語で話しかけて来て、「世界を回って、お金をためて一等地に店を出したと。」言う人に三度、会いました。
要するに、生活環境と、人間に内在する、「似ている」ことに対する好奇心などを刺激してんじゃないでしょうかね。
日本語とかけ離れた、英語なんかではどうかな?日本語を学ぶ英語圏の人は、遠い言語だと苦しそうに、よくため息ついてます。

投稿: u-1 | 2004.10.15 00:17

上の続きです。
こうした人たちの話の特徴は、肉親との幼少時代の優しく楽しい思い出とか、職場の仲間や、気心知れた客との陽気なやり取りの面白さとか、いろんな国での苦労話やら、今となっては笑える失敗談など、悲喜こもごも思いでを、感情豊かに話をしてくれることです。こうした条件の方が、人の脳を活性化させていると思います。
一方、日本人が世界で一番英語下手で、かつ投資額も多いのは何なんでしょうね。学校で、上と逆の環境があるんじゃあないでしょうか。
外国語が即、脳を活性化するというものではなく、人に内在する何かが、こうした能力も伸ばしてるんじゃないでせうか。

投稿: u-1 | 2004.10.15 00:42

言語に関して言えば、話して聞く音声と、
読んで書く文字に関しては区別した方が良いのでは?
話している内にある程度慣れる音声とは違って、
書くのは訓練が必要ですし。

投稿: (anonymous) | 2004.10.15 11:11

レスどうもありがとうございます。
ご指摘のとうり、読み書き本当に大切だと痛感しております。
と言いますのは、こちらにいる「国際大」の米人教員ですが、口だけは達者ですが、日本語、書けません。長年、程度のよろしい学生ばかり相手にしてきたためか、会話に若い人たちの言い回しが出てしまい、時々、良識を疑われています。本人は気が付かない様ですが、こちらはギョッしてしまいます(^^;)V!これも、耳学問のせいですね。 

友人たちの方は、「外国語の書くほうは、一ヶ国語だけ、しっかりやれれば十分。」との事でした。

投稿: u-1 | 2004.10.16 03:13

> それと今回の研究は印欧語内の言語なので、日本語と英語のように離れた言語で一般的に成り立つのかかなり疑問かな。

ウラル語圏のフィンランドでは成り立ってる。

投稿: gurigurico | 2010.08.05 13:52

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 外国語を学ぶと脳がパワーアップするだとよ:

« ゴードン・ブラウン、その救世主的な情熱 | トップページ | [書評]あなたは生きているだけで意味がある(クリストファー・リーヴ ) »