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2004.10.13

ゴードン・ブラウン、その救世主的な情熱

 これはニュースではなくてネタだなと苦笑したまま、凍り付いてしまった。ゴードン・ブラウン(Gordon Brown)英財務相は、私のような冷笑家ではないからだ。彼は本気だ。彼は、重債務貧困国に対する債務返済免除に、IMFが保有している金(きん)を使え、というのだ。
 私は稚拙ながらもおそらく日本のブログとしては最初にスーダン・ダルフール危機に言及したのだろうと思うこともあり、その関連からその後、軽くではあるが「スーダン・ダルフール危機情報wiki」(参照)に関わり、ついでにアフリカ関連のニュースを意図的に読むようになったのだが、先日(9月27日)、この話を、AllAfrica.comインタープレス系"Seize Golden Opportunity On Debt, Groups Urge IMF"(参照)というニュースで見かけた。


Global anti-debt activists are rallying around a call issued by Britain on Sunday that urges the International Monetary Fund (IMF) to cancel debts owed by the world's poorest nations and finance the forgiveness through sales of its own gold.

UK Chancellor of the Exchequer Gordon Brown called for full debt cancellation for the highly indebted nations, adding that his government would put up 10 percent of the cost of the move. He challenged other governments to help finance debt forgiveness.
【試訳】
 英国の呼びかけで債務帳消し国際活動家が奮起した。その主張は、IMF(国際通貨基金)は自らが所有する金(きん)を売却した利益で世界の最貧国の債務を帳消しにせよというものだ。
 ゴードン・ブラウン英財務相は、重債務の完全な債務帳消しを訴え、加えて、英国はそのために10%の支出を行うとした。彼は他国にも債務帳消しを熱心に呼びかけている。


 IMFは、10万オンス、2.8トンの金塊を保有しているが、これが現状、80億ドルと低く見積もられているとのこと。実際に市場に回せば、その6倍にもなるらしい。ほぉという感じだが、この金塊は、米国とドイツが積んだものらしく、その思惑も絡んではくるのだろう。
 この話が気になったのは、日本での関連報道でちょっとひっかかる感じがしていたからだ。私の見落としかもしれないのだが、そして先のニュースを読んでからの印象なのだが、日本国内では、IMF保有の金(きん)については意図的に報道されていなかったのではないだろうか。例えば、日本経済新聞に掲載されたAP・共同系「英、重債務貧困国の債務返済を免除」(参照)がおそらくこの話題を扱っているのだろうと思われるのだが、そしてここに全文掲載はできないものの、IMF保有の金(きん)についての言及はまるでない。

【ロンドン26日AP=共同】英国政府は26日、世界の重債務貧困国に対する一層の債務返済免除を実施すると発表、他国にも同様の債権放棄を呼び掛けた。
 英国は債務国が世界銀行や他の開発銀行に対して負う債務の約10%、重債務貧困国の全債務の7%について債権を持つ。英財務省は、2015年まで毎年各1億ポンド(約200億円)の返済を免除するとしている。

 私の単なる勘違いかもしれないが、なにか意図的な情報操作の感じもする。ま、陰謀論とかは考えないが。
 この金(きん)交換の話は、その後、同じくAllAfrica.com"Finance: Groups Defend Plan to Swap IMF Gold for Third World Debt"(参照)に続く。

Objections by Canada, a major gold producer, may have played a part in the failure of the world's richest countries to adopt a British proposal to use the proceeds from a revaluing of the gold reserves of the International Monetary Fund (IMF) to relieve the debts of the poorest countries.
【試訳】
IMF保有の金塊を重債務貧困国の債務帳消しに充てるという英国提案は、カナダ、及びその他の金産出国の反対によって、富裕国に対する訴えとしては失敗してるようだ。

 これは日本人の常識から言ってもそんなものではないかとは思う。
 ふと気になってこの手の話は左翼的なガーディアンにあるだろうと思ったら、あった。"IMF must learn the golden rule"(参照)である。とすると、当然、右派のテレグラフでもおちょくっているに違いなと思ってみると、やはりある。"Do all these consultants really benefit the Third World? "(参照)だ。保守派の結論は読むまでもないのだが、そのトーンはわずかだが自分の予想に反していた。

For once, Gordon Brown shares his messianic zeal, never missing an opportunity to make an announcement about support for the developing world. Ever more ingenious ways are concocted to raise money - most recently using the value of IMF gold to wipe out debt. The Prime Minister and the Chancellor are, according to Bono, the Lennon and McCartney of international aid.

 訳すほどのことはないのだが、気になったのは、"his messianic zeal"(救世主的な情熱)という表現だ。そうだ、これだなと思ったのだ。冒頭、苦笑したまま凍り付いたのは、ゴードン・ブラウンの、まさに救世主的な情熱だ。こいつ、本気でマジなんじゃないか。なんだか、クロムウェル(Oliver Cromwell)をふと連想してしまう。
 重債務帳消し運動は、9.11以前には坂本龍一などもわいわいやっていたように、けっこうわかりやすいお話だった。これがまさに坂本的わかりやすさで、9.11後に「非戦」とかに流れて、あれ、以前何してたっけ的軽さに消えてしまったみたいだが、この問題は、そうした表層的な国際政治のポーズを抜きにしても、大筋の方向としては、債務帳消し以外の選択などない、と私は考えている。つまり、問題は、どうするかの次元であるわけだが、どうしろと言ってもねぇ、ぷは、みたいにお茶を濁していたのだが、ゴードン・ブラウンはそういう方法論を問うという点では、正攻法で、ずどーんと打ち込んできたわけだ。
 もっとも、言うまでもないことだが、重債務帳消し運動も、単に「救世主的な情熱」で動いているわけはなく、IMFを巡った各種の政治団体の思惑というのがある。そのあたりは、すでにこってり語られてもいるわけなので、私が言及するまでもない。
 私としては、この問題は、日本の国策として、中国のアフリカ攻勢への骨抜きのように推進すればよかろうなとも思う。という点で多分に特定のイデオロギーのもとにはあり、善意とはほど遠い。それでも、世の中、本気マジなやつっているよなと思う。感動するというか、あきれる。

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コメント

貧乏な「国」への債務帳消しなんて美談めいて聞こえますが、
尻ぬぐいするのはお金持ちの「国」であって
結局めぐりめぐってその国での課税と同じですよね。
さんざん第三世界で美味しい思いをした多国籍企業にとっては
世界的な資金循環が止まらなければいいだけであって
そういう構造を温存したまま徳政令を発するのは
多国籍企業丸儲け。
ついでに左前の英連邦丸儲け。
てな、ずうずうしい話な気がしますけど。

投稿: あすく | 2004.10.13 12:31

本気マジなヤツには敵わない、もののけ姫の主人公を思い出しました。関係なさすぎですいません。結局返せないお金は債務帳消しするしかありません。不良債権処理ですよね。

投稿: hasenka | 2004.10.13 12:59

IMFの運用方針は、「大東亜共栄圏」の話とも絡んできますし、もっと関わっていかないダメだと思うのですけれど・・・ねぇ。

投稿: naruse | 2004.10.13 17:13

こんにちは、私のブログのほうにこちらのリンクを貼らせてもらいました。トラックバックさせてきたいただきます。

投稿: ガワ氏 | 2006.05.21 11:12

こちらの記事を参考にして、ウィキペディア「ジュビリー2000」に情報を追加させていただきました。ウィキペディアにはこちらを参考にしたとは書けませんので、この点はご容赦願います。

投稿: ゴンベイ | 2008.03.20 23:12

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» ゴードン・ブラウン氏について [シェフィールド便り]
昨日は、ヨーク大学にて現在イギリス財務省にて働いていらっしゃるT氏のお話を聞く機会を得た。日本財務省からの出向という形で3年ほどイギリス財務省で働いていているT氏は、そのため両方の財務省について知悉しておられる。よって講義は「日本と英国の政治、行政の比較」と主題を打ち、T氏の実体験を交えた英国の行政スタッフの現状を軸に、日本の行政スタッフ(すなわち官僚)を取り巻く環境との比較、今後へ向けての提言などを盛り込んだものであった。 此処で、英国財務省と聞いてイギリスの政治を知っている方はピンとくるかも知れ... [続きを読む]

受信: 2006.05.21 11:14

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