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2004.10.01

中国のアフリカ資源攻勢

 このところ、ダルフール危機への関心もあって(参照)、アフリカ状勢に関心を持つようになった。なかでもVOA(アメリカの声:Voice of America:参照)にわかりやすいニュースが多いので日々ざっと目を通す。VOAはアメリカ主義のプロパガンダという側面もあるのだろうとも思うが、読み慣れていくとこの分野にも興味が深まるものだ。29日には中国とアフリカの関わりについて、気になる二本の記事があった。どちらも中国の石油戦略に関係している。簡単に触れておきたい。
 一つは"China's New African Oil Ties Create Concerns(中国のアフリカ原油についての提携は関心を呼び起こす)"(参照)という記事なのだが、まず記事そのものよりAP提供の写真が目につく。胡錦濤とガボンのオマル・ボンゴ大統領が握手をしている。2004年2月4日のことらしい。なんだこれ、と思って国内ニュースを見ると読売新聞"中国・胡主席が中東など歴訪へ"(2004.01.27)という記事があった。


 中国の胡錦濤国家主席は26日、フランス、エジプト、ガボン、アルジェリアの4か国歴訪に出発した。国家主席就任後初の中東訪問で、イラク戦争後の国際関係の中で、アラブ重視姿勢を強く打ち出し、将来のエネルギー確保に向けた資源外交を展開する構えだ。

 日本では「中東など歴訪」「アラブ重視」としているのだが、フランスを除けば、これらの国はアフリカである。また、エジプトを除くとガボンとアルジェリアの宗主国はフランスだった。このニュースの続報は見あたらないのだが、イラク戦争という文脈より、これはフランスの息のかかるアフリカ関連の問題だったのではなかっただろうか。
 VOA"China's New African Oil Ties Create Concerns"を読むと、お返しにガボンのボンゴ大統領が中国を訪問し、その際、彼は"military honors"で迎えられている。"military honors"といっても軍葬のわけはない。よくわかんねーな、であるが、特に中国がなぜかガボンに力を入れていることだけはわかる。
 というあたり、ガボンで奇妙な連想が浮かんだ。ガボンと言えば、向こう一年間の国連総会の議長国ではないか…。というあたりでちょっと気になってニュースを見ると、これってどうよ、という感じがした。朝日新聞「安保理改革で国連総会議長が『平和と開発を忘れずに』」(参照)だ。

 第59回国連総会のジャン・ピン議長(西アフリカ・ガボン外相)は22日、朝日新聞記者と会見し、日本が求める安全保障理事会の改革・拡大は支持しつつも、「目的はあくまで平和と開発の達成。改革はその手段に過ぎない」と本末転倒になりかねないことを戒めた。

 あくまでゲスの勘ぐりで言うのだが、これって中国・ガボン・朝日新聞のマッチポンプでねーのか? ま、国連議長国をロビー的に籠絡しているとまでは言わないのだが、中国のアフリカに対するロビー活動には日本はもっと注意すべきなんじゃないのかとは思う。
 VOA"China's New African Oil Ties Create Concerns"に話を戻す。記事は単純に反中国ということではない。当たり前といえば当たり前だが、中国の対アフリカ攻勢は冷戦的な政治イデオロギーの枠で考えず、中国の原油需要という経済面でまず考えようとしている態度が伺える。また、記事では中国のアフリカへの肩入れを、欧米型より好ましいと見ているアフリカ政府筋の印象も描いている。
 が、メインの部分では、アナリストなどの言葉を引いて中国への批判を展開している。

"The Chinese are much more prone to do business in a way that today Europeans and Americans do not accept - paying bribes and all kinds of bonuses under the table," he said. "These are things that have been rampant throughout Africa, particularly in Nigeria, Angola and Equatorial Guinea and to a certain extent Chad and Gabon. I think that it will be much easier for those countries to work with Chinese companies rather than American and European companies that are becoming more and more restricted by this 'publish what you pay' initiative and others calling for better transparency."

 単純にいうと中国筋は賄賂を使っているということでもある。私の印象ではたぶん本当なのだろうと思う、というか、ただ中国国内のやり方を延長しているだけなのだろう。こうしたことが本当ならそれだけでも問題といえば問題だが、些末なことだとも言える。中国の投資が直接アフリカ諸国の政府に向いてしまうことのほうが問題だろう。

But other analysts, such as Thalia Griffiths from the London-based Africa Confidential newsletter, fear doing business with China will make African governments more corrupt. She says China is paying with large sums of advanced credit or loans for infrastructure development, making it more difficult to ensure that oil revenues benefit the people of the countries that produce the oil.

 中国がアフリカ各国の政府に貸し付けをしてその返済に原油が充てられるという構図だ。言うまでもないがこの構図は欧米が批判できるものではない。が、それでいいわけでもない。また、日本からの中国援助が直接的ではないにせよ、余剰として結果的にこういうところに流用されているのも気持ちのいいものではない。
 それでも敢えて言えば、誰がアフリカ原油にどのように関わって投資しようと、原油が商品として国際市場に回されるなら、日本の国益にはまるで問題ない。逆に言えば、そうではない傾向があるかもしれないこと、つまり、市場を迂回した原油の流通がありうるなら、日本の死活問題となる。
 もう一点のニュース"China Looks to Southern Africa for Resources(中国は南方アフリカの資源に着目している)"(参照)では、中国が現在石油を含め鉱物資源を求めて南方アフリカに攻勢をかけているようすをさらっと描いている。こちらは中国自体の問題を扱っているわけではないのだが、次のようなアフリカ研修者からの指摘にちょっとはっとする。

"Industrializing economies such as the Chinese economy, the Indian economy which are huge consumers of steel for example, of steel products, ferroalloys and the like, depend to a significant extent on getting these inputs from South Africa, ferrochrome, ferromanganese, ferronickel, as well as iron ore, as well as other precious and near precious metals," he says.

 中国と限らずインドも鉄資源などを求めてアフリカに攻勢をかけるようになるのだろう。
 ふと、華僑と印僑という言葉が頭をよぎるが、このタフな商人がたちがレベルアップしてくるのだろうか。国家レベルではまた違った様相になるだろうか。
 印僑の活動はアフリカの歴史と深く関わっている。その分、インドがそうした人的なチャネルを国家の経済活動に利用しないわけもないだろうと思う。
 中国やインドの対アフリカ資源を目指した活動は今後さらに活発になるだろうが、華僑・印僑といった商取引ではなく、そこには国家レベルの開発事業が関係している。当然プラント技術なども深く関わってくるはずだ。とすると、この動向はそう遠くなく日本にとっても向こう岸の風景ではなくなってくるだろう。

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「時事」カテゴリの記事

コメント

いつも読んで啓発されています。

military honors というのは、例の儀仗兵の出迎え儀式ではないでしょうか。

中国がアフリカに資源を求めるのは当然の経済行為でしょう。日本も商社レベルで、あるいはODAと絡めて、やって来ていると思います。これからは、資源を求めて中国とぶつかることが多くなるでしょうね。日本の商社だって、賄賂の必要なところには、普通の商行為としてやっていると思います。

投稿: アクエリアン | 2004.10.01 15:02

いつも興味深く拝見しています。さて、アフリカ情勢に関しては私も一家言あるので投稿させて下さい。

えーそういえば、VOAを読まれるのなら、ル・モンド・ディプロマティーク
(http://www.diplo.jp/index.html )
あたりも読まれると興味深いのではと思います。例えば下記記事なども、色々と示唆に富んでいるのではないでしょうか。

アフリカにおける米国の軍事政策再編
http://www.diplo.jp/articles04/0407-2.html
やはりというか、ガボンとアンゴラが重要視されている感はあります。

にわかに注目のアフリカ産油諸国
http://www.diplo.jp/articles03/0301-4.html
「赤道ギニアへの攻勢」は、例のサッチャー息子のクーデター未遂事件と絡めて読むと面白いですね。例の事件の出資者は、具体名は失念しましたが英系石油資本だったと思いますが、既に米系ががっちり押さえこみに入っている場所ですし、簡単に転覆とはいかなかった模様です。
また、これら上記の記事にはサントメプリンシベという国が再三出てきますが、その国は人口十九万人のギニア湾に浮かぶ島国に過ぎません。が、つまりそれは、油田地帯の真ん中にポツンと佇む小島ということでして、地勢的に最重要の場所だったりします。

また、以下はギニア在住で周辺情勢に詳しい斎藤清さんのギニア湾レポートです。ややブッシュ政権に対して辛辣な面があります。
ギニア湾-もう一つの湾岸石油戦争
http://www.yorozubp.com/0308/030804.htm

他に、赤道ギニアの石油に関してこういうのも。googleのキャッシュですが。
赤道ギニアの石油利権データ
http://www.google.co.jp/search?q=cache:wkypfdGWCv8J:csx.jp/~gabana/Zaakan/hibi0408/R-Guinea-oill-data0408.htm+%E8%B5%A4%E9%81%93%E3%82%AE%E3%83%8B%E3%82%A2%E3%81%AE%E7%9F%B3%E6%B2%B9%E5%88%A9%E6%A8%A9%E3%83%87%E3%83%BC%E3%82%BF&hl=ja&lr=lang_ja

以上、石油利権の事を書き込みすると叩かれる傾向にある極東ブログのコメント欄ですが、アフリカ情勢を語るのなら知っておいて損はないだろう事柄についてのリンクを挙げてみました。

投稿: 一愛読者 | 2004.10.01 17:48

知り合いのアメリカ人に聞いてみましたが分からないそうで。
多分アクエリアンさんの言うような儀杖兵の礼砲などのことと
推測します。特に深い意味はなさそうです。

投稿: 猿小玉 | 2004.10.01 17:50

せっかくですので、以下もついでに投稿させて下さいませ。

そういえば、アメリカや中国ばかりでなく、日本も緊急性を認識しつつ微妙に動いている様です。以下は西川公也氏のインタビュー(時評 2003 5月号 http://www5.ocn.ne.jp/~kouya/katudou.htm#25)より

> 新しいエネルギー供給国の開拓
>
> ーーー最近、赤道ギニアやガボンなど西アフリカ諸国を訪問したと聞きましたが。
>
>  両国とも三年前に産油国になったばかりの、資源開発に関する大きな可能性を秘めた国々です。なにしろ日本の石油はその八六%を中東に依存しており、中東の情勢如何によって供給体制が左右されかねないという非常に不安定な状況にあります。それゆえ、これまで交流の無かった地域を新たにエネルギー供給の地として開発することは喫緊の課題でもあるのです。赤道ギニアでは日本の要人として彼の国へ訪問したのは私が初めてでした。現地ではンゲバ大統領にも会い、先方も日本と友好関係を結びたいと語っていましたので、まさにこれからです。赤道ギニア沖は世界最大級の石油埋蔵量とも言われており、私は例え技術的に困難でも、これらの国々でぜひ涸れない井戸を掘りたい。
>
>  その点、アメリカの抜け目無さも実感した訪問でした。五年ほど前、大統領が独裁制だとして大使館を引き揚げたのに、同国から石油が出るやいなや今では巨大な大使館を作っている。また石油メジャーが相次いで進出するなど、その変わり身の早さには驚くばかりです。
>

行動が早いというのは素晴らしい事だと思います。

さて、賄賂や賄賂に準ずる行為に関してですが、これは商売を普通にしていれば、程度の差はありますが、どの国でもどの業界でもどの機関でもある程度は普通にある事で(雇い主から充分すぎるほどたっぷりお給料を貰っている人なら別ですが)、暗黙のルールと言ってもいいかもしれません。善悪は別にして、商売なり交渉事をしているのなら当たり前の事です。

で、話は戻ってアフリカでの石油・鉱物戦争に関する私見ですが、結局の所これらは各国政府と各資本間がそれぞれに結びつきつつの単なる石油・鉱物資源争いに過ぎないので、特定の陣営に対して善悪という尺度で語るのはナンセンスだと思っています。―自分や親類や友達が、アフリカのどこかの紛争で殺されたり傷ついたりしたとか―或いはシェルやテキサコやシナジーなどから仕事を貰っている―等の事情がある人は語る権利があると思いますが。

旧宗主国(主に仏ですね)や中国やレバノン商人が経済的支配権を持っている地域(主にギニア湾岸です)に米政府が割り込んでいくやり口が少々強引すぎるので反感を買うきらいはあるにせよ、日本はそのアメリカにくっついて市場から石油を調達するしかないわけですし、日本にとって米系資本が石油を支配するのは悪い事ではないと私も思います。その点はfanalvent様のご意見と同感です。中国は市場に流しませんから、それは中国にとっては良い事ですが、日本にとっては困りものですよね。

ただ、石油資本に骨の髄まで支配されてしまって、化石燃料に代わる代替燃料の開発や実用化が意図的に遅らされているとしたら頂けないかなと。それくらいです。

投稿: 一愛読者 | 2004.10.01 17:59

萬晩報は筆者によって視野が狭いと感じられるコラムもままありますが、たまに良質なものがありますね。いわゆる石油利権云の議論は中東ではなくこういう地域に適合するのでしょう。

そして結局のところ市場価格より高く買うので便宜を図れ、に帰着するのではないでしょうか。またしばしば国連で「票を買う」行為とセットだったりするのでややこしいです。

それと米国に関しては、アフリカ各国から米国に留学し、本国に帰還したエリートがアフリカ政界で勢力を強める時代になってきたかなと思うのですがどうでしょう。

投稿: カワセミ | 2004.10.01 22:09

詳細なコメント各種、ありがとうございます。特にル・モンド・ディプロマティークは勉強になりました。この分野、ジャーナリスティックな観点を越えて今後もワッチしてみたいと思います。

投稿: finalvent | 2004.10.02 16:33

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