ODA(政府開発援助)についてのよくある話とシラク商売人
Japan Timesの昨日のオピニオン欄に掲載されていた"ODA looks wasted on China(中国へのODAは無駄遣いみたいだ)"(参照)が面白かった。三つの点から日本のODAの見直しを提言したものだ。標題通り中国向けODA批判が際だっていた。
中国向けのODA(Official Development Assistance:政府開発援助)については、もうその役目を終えたという意見は多い。特に中国は軍事費が毎年10%ずつ増えているわけだが、そんな金(かね)どこから出ているのか。昨年は中国に円借款として日本は967億円を投じているわけで、それが軍事費の潤沢につながるように見えるのもおかしな話だ。
Japan Timesでも、この問題は2点目の課題しとて取り上げられていた。
Second, Japan should strictly observe the principles of its ODA charter by suspending or reducing aid to countries that contravene them. China clearly flouts the principles as it is increasing military expenditures and has produced weapons of mass destruction and missiles.
【試訳】
二点目に、日本はODAの原則を厳格に守り、これに違反する国への援助を削減すべきだ。中国が明確にこの原則を踏みにじっていることは、増大する軍事費や、ミサイル、大量破壊兵器の製造といった点からもわかる。
しかし、重要だなと思ったのは、一点目のほう。ODAの金(かね)をアフリカに回せというのだ。
First, Japanese ODA should now be focused on Africa and other non-Asian regions. Asia, which has received 50 to 60 percent of the aid, has achieved fast economic growth.
【試訳】
一点目は、日本のODAは今後アフリカと非アジア地域に焦点を当てるべきだ。アジア諸国は現在ODAの50%から60%を得ているが、すでに急速な経済成長を遂げてきている。
このところ私もアフリカ問題に関心を持つようになったせいか、日本政府のこの分野での立ち後れには戸惑うものがある。日本の企業や民間援助では違うのかもしれないが、EUがスーダン・ダルフール危機鎮静のために、アフリカ連合(AU)に1億ドル以上拠出しようとき、日本はなにやってんだと苛つく(参照)。これに対して日本はというと、国連諸機関2,100万ドルの拠出の予定だというのだ(参照)。はぁ?
ついでに三点目はNGOとの連携がうまくいってないということ。それもそうだろう。この話は省略。
話の焦点を中国に移すのだが、先日のシラク仏大統領ご一行様(仏企業トップ50名ほど)の中国商談の旅もあきれた。8日から5日間の旅で、40億ユーロ(約5400億円)の契約をまとめた。たいしたセールスマンである。あ、salesmanじゃなくて、vendeur? 中国の死刑制度についてはどう考えているでしょうね、シラクって。政治家じゃなくて、あきんどってやつかな。
読売新聞(2004.10.13)「中仏大接近、シラク大統領が中国で“商談の旅”仏企業40億ユーロ規模契約」ではこう。
中国の国営新華社通信などによると、仏エアバス社は大型旅客機計二十六機を中国東方航空などに販売する契約を結んだ。また、仏重電大手のアルストム社は、時速二百キロを出せる高速鉄道車両六十編成のほか、水力発電タービンなど合計10億ユーロ(約1350億円)の契約を結んだ。
このほか、仏石油大手のトタール社は、石油大手の中国中化集団とガソリン小売りの合弁会社設立で合意し、北京、天津などで、ガソリンスタンド二百店を展開する計画という。
それでも、北京―上海高速鉄道とエアバスA380の売り込みには失敗したのだそうだ。成功してたらよかったのにと皮肉も言いたくなる。
現状、こうした中仏の動きは、米国大統領選挙への牽制もあるのかもしれない。武器輸出についてもあらためて賛意を表明。これについては6月以降、EUでは、フランスが主導になって、対中武器禁輸の解除に向けた検討に入っていた。ブッシュ政権は、そんな事態になれば、NATOもやめるぜ、EU向けの軍事技術供与を停止するぜ、と脅した経緯もある。
米国がケリー大統領になると各国との協調とかいう名目でEUに擦り寄るだろうから、こうしたEUっていうかフランスの行動はさらに露骨になるだろう。
うがった見方をすれば、EUのダルフール危機鎮静のためにAUへ拠出するというのもフランスの米国封じという意味合いがあるだろう。中国のスーダン利権への配慮もあるかもしれない。しかし、それはそれでダルフールの人々の平和が維持できればいいのであって、この点については結果オーライではある。
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コメント
私の夫はドイツ人ですが、シラクのユダヤ人に仕事上助けられ、その上スイスの銀行を紹介してもらったそうです。流浪の民はお金の流れも読めるのですね。下手をすると日本の銀行の資金は枯渇してしまいます。
投稿: notti | 2004.10.26 17:35