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2004.09.08

Who are the people in your neighborhood?

 永住外国人の参政権は、どうも物騒な話題になってきているようだ。この件について私には、まるで強い意見はない。というか、書くべき意見はないに等しい。ただ、この問題はそんなホットな話題なのかなという違和感もあり、多少自分の思うことと関連のことを、こんなふうに思う人もいるよ程度の参考例がてらに、ちょっと書いておく。
 私は、地方参政権に限定すれば賛成だ。国政へは反対。そんなの常識じゃないの、というくらいこの問題に疎い。なぜ地方参政権授与に賛成なのかというと、国と地域は厳格に違うし、永住外国人は地方税を払っているのだから、その住民サービスの一環により主体的な関わりをもっていいいだろう、というくらいの考えだ。もちろん、この件だけに絞っても各種反対があるのは、ネットを眺めて知った。というか、反対・賛成は、どちらもなるほどなというくらいには思う。
 私はこの問題をあまり理詰めに考えていない。心情的なものだ。口をついて出るあの歌の心情である。


Oh, who are the people in your neighborhood?
In your neighborhood?
In your neighborhood?
Say, who are the people in your neighborhood?
The people that you meet each day

 訳す必要もないほど簡単な英語。セサミストリートの十八番である。これに続いて、消防士だの歯医者だの、社会を構成するいろいろな人々が出てくるのだが、全部正確に覚えているわけでもないので、歌詞をネットでひいたら、これがなかなかよい(参照)。

Bob: Oh, hi there, little fella.
Anything Muppet #1: Hello.
Bob: Hey, listen, know who you could be if I gave you this little hat and this bag to go over your shoulder?
Anything Muppet #1: I could be a laundry man.
Bob: No, not a laundry man.

 ここで、いの一番にランドリーマン、洗濯屋をもってくるあたり、セサミというのはしみじみいい番組だなと思う。私の誤解もしれないが、ランドリーマンは言葉が通じない移民の仕事の代表だ。日系や沖縄系の一世がよく洗濯屋をやったものだ。
 そういう洗濯屋をする永住外国人こそ私のネイバーフッド、隣人であるのだ。隣人と地域で顔をつきあわせていきていくのが人情ってものじゃないかと私は思う。
 私の思いはその程度のものだ。地域の隣人は等しい、と。
 それでも、日本での永住外国人問題は現状では、実際のところ在日朝鮮人の問題だというくらいのことは、わからないでもない。つまり、この問題は、実質、在日朝鮮人と我々の日本人社会はどう取り組むかという問題なのだろう。
 と、話をその方向に絞ったものの、私の考えはまたしても単純だ。この問題は日本社会が健全なら、在日朝鮮人の一世が死ぬ時代には自然に終わるだろう、ということだ。悪意に聞こえてはいけないがそれまで待てばいいのではないか。
 現状、すでに在日四世の時代であり、そしてそこには在日一世とは違った感性が生まれつつある。単純に言えば、朝鮮系日本人というだけで、つまりは、日本人なのだ。自然に帰化が進むだろう。あるいはそれを促進する施策を進めるべきだろう。
 そうして帰化が進めば、やや語弊があるかもしれないが、琉球系日本人と似たようなものになるだろう。後者のほうが朝鮮系より少ないので対立した形でエスニシティは露出しないし、また、本土歴史とも長い関係があるのでより融合しやすい。それでも、それはより広義には私のように信州系日本人みたいな些細な差異の感覚として、結局は日本に統合されるだろう。
 もちろん、在日一世の問題意識が思想として純化して嗣がれている側面もある。この嗣がれ、リニューアルされた部分の扱いは難しいなと率直に思う。が、取り敢えず、その祖形である一世の感覚はわからないでもないし、そしてこれは歴史のなかに埋没し、消えるしか解決もないように思う。極論すれば、その対立は、どの国民も他国民に害を与えうるものだという一般的な歴史の問題に解消するしかないだろう。日本人にはあまり知られていないようだが、隣国ということでいっても、ギリシアとトルコの歴史など日本と朝鮮の歴史の比ではない。それでも和解の道が開きうる。
 在日一世の問題意識については、「国境を越えるもの 在日の文学と政治」(金石範)が面白かった。

 日本が戦後の責任をもつということは、たんなる戦争責任ではなくて、これは人間の問題なんです。自分たちが支配し、相手の自分というものを否定し、他者たらしめたころからね、人間的に責任をもたなければならない。日本の政府は責任をもたないから、われわれ在日朝鮮人は他者的な存在から自分の存在になるためにやってきている。それを常に意識させるものが、日本の差別とかいろんなことなんです。何十年も日本に生きて、日本の国籍を取らないなんて、そんな馬鹿がどこにいますか。日本人はやっぱり分からないんだ、これが。冗談ですが、日本から天皇制がなくなれば私も帰化いたしますよ。その時私は世の中にいませんけれども。

 彼が私にじかにこれを話すなら私はじっと聞くだろう。ブログのコメントだと、さてご本人は本当に在日一世なのか確認しづらいので困惑する。それとは別にその見解をどう思いますかと問われれば、私の意見はまったく賛成しない。その理由を述べる前に、金石範の冗談が気になる。
cover
国境を
越えるもの
 冗談は、「天皇制がなくなれば」という仮定なのか、彼自身が歴史の流れに比してそれほど余命がないというユーモアなのか、そのどちらかなのかわかりずらい。ただ、心情的には前者だろう。そして、それはこの前半と合わせれば、天皇制こそが日本の他者差別を生み出しているものだと言いたいのだろうと推測できる。たぶん、そうなのだろう。
 天皇制とは社会制度というより、まず日本国憲法の規定だ。憲法という社会契約が結べなければその国民ではない。この規定をいつの日か日本人の総意が改変するかもしれないが、それは他国の人の問題ではない(外側から問われる課題ではない)。しかも、単純に制度としてみるなら、天皇が直接社会差別を生み出しているわけではない。それらは思想なり社会学的な分析の産出であって、日本の法はその差別を否定する。
 それでも、日本社会には根深い差別があるのを私も感じる。そしてその意識が在日に強く表れるのもわかる。だが、私はその差別への感受の意識は当の日本人にも同質だろうと思う。阪神大震災では政府(村山政権)の対処のまずさの責任も問われず多数が殺されてしまった。そこにも無責任がある。
 セサミの先の歌は最後にこう締める。

The trash collector works each day
He'll always take your trash away
He drives the biggest truck you've seen
To keep the city streets all clean

 ゴミ収集人は私たちの隣人、彼らの仕事で街がきれいになっていくというのだ。
 日本人である私たちは、そう思っているだろうか。ゴミ収集人を内心差別しているのではないかと糾弾するのではない。社会のすべての仕事を等しく隣人と見ているのだろうかと思うのだ。これは金石範のいう「人間の問題」に広義に開いて問うべきだろう、彼の意図とは矛盾するかもしれないが。

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コメント

国政選挙を支えているのは、地方議会の議員。県議会、市議会、区議会、町・村議会議員etc。
土台を「獲得」すれば、国政への影響力は極めて多きいものと考えられ、また地方自治体の予算は莫大なものがあります。
オリンピックの開かれたギリシャの軍事予算は99年で38億ドル。米ドルを100円というあえて少なめに見積もって、3800億円。(99年は124-101円前後)
東京都の年間予算は1兆円を超えます。
地方議会獲得の魅力はそういうところにもあるのかと思われます。東京都は北朝鮮と「粉ミルク外交」などというものを民主党を中心に行われました。また各地の地方議会からも「北朝鮮支援」等がなされています。
朝日新聞紙面委員、故 芦辺信義東大教授の影響がボディーブローのように効いてきたという感じです。

投稿: kita | 2004.09.08 12:41

在日韓国人・朝鮮人問題というのは基本的に不法占拠問題と差別利権なんだと思います。行政の弱腰により再開発が遅れている都市の駅前は少なくありません。

投稿: (annoymous) | 2004.09.08 13:33

帰化すれば参政権は得られるのに、なぜ帰化しないのか?
例えば生活保護が受けられる基準が帰化してしまうと、とたんに厳しくなります。
欲しい物(日本人に比べての特権)は全て欲しい、参政権もよこせを認めてしまってよいのでしょうか?
▼平14生活保護
人数=124万人→日本人78万人、在日46万人
金額=1.38兆円→日本人3800億円、在日=9000億円
▼平15生活保護
人数=152万人→日本人95万人、在日57万人
金額=1.52兆円→日本人4600億円、在日1兆600億円
今回ふれられている地方税も彼らは朝銀の特別決算で、ほとんど払っていないのですが。

投稿: 極東ブログに期待しています | 2004.09.08 16:01

セサミの歌を聴いたり、ホームドラマを見たりすると逆に、アメリカが抱えている様々な問題の深さに思いを巡らしてしまいます。

投稿: atl | 2004.09.08 16:04

帰化すれば参政権は得られるのに、なぜ帰化しないのか?
答:アイデンティティを失うと感じるから。

投稿: katute | 2004.09.08 16:11

> この問題は日本社会が健全なら、在日朝鮮人の一世が死ぬ時代には自然に終わるだろう、ということだ。
これが有り得ないから問題なのではないでしょうか?
平和条約国籍離脱者等入管特例法により在日朝鮮人は四世だろうが五世だろうが特別永住者という特権を享受できます。

投稿: sb | 2004.09.08 17:22

sbさん、こんにちは。ご指摘の点はちょっと舌足らずでした。在日の永住権が一代ではないのは知っています。私の意図としては、一世が死ぬ時代になれば、帰化への抵抗感がもっと減ってくるだろうということでした。

また、「在日一世の問題意識が思想として純化して嗣がれている側面もある。この嗣がれ、リニューアルされた部分の扱いは難しいなと率直に思う」と書いたのは、意図的に二世、三世が帰化されない面への補足でした。

しかし、現状の在日朝鮮人の問題はすでにこの次元にシフトしているのでしょう。その意味では、エントリはちょっと見通しが甘いとも批判を受けるかと思います。

ただ、甘いついでに言うと、三世、四世の大勢はやはり帰化の方向に進んでいるかと思います。悪い言い方をすると、在日であることを存在根拠として語られるかたが目立つだけでは、と。(そして、これに違和感が出てくるのは、他のコメントを読ませていただいてもわかるのですが、しかたないのだろうと思いますね。)

投稿: finalvent | 2004.09.08 18:48

 一世から三世、四世に至る意識の変化はその通りなのではと思います。彼らが敢えてルーツを辿り返したとしても、それは過去の再創造であって、自分用にカスタマイズしたものでしかないし、ルーツとの本質的な繋がりは最早持ち得ないところまで来ているような。
 しかし、そうすると今度はこちら側が帰化した人を本気で「日本人」として扱う気があるのかどうか、という問題になるんでしょうね。「隣人」とも絡みますが。施策の次元では、○○系と××系を並列するところまでは出来るし、それがあるいはマイノリティ側の意識を誘発するかもしれない。でも、マジョリティの意識の問題は施策の基盤であって対象ではないし、と。既に、琉球系のようにはいかないことをここに並んでいるコメントの中身が自生的に証明しているような気がします。

投稿: ânon | 2004.09.09 02:30

>しかし、そうすると今度はこちら側が帰化した人を本気で「日本人」として扱う気があるのかどうか、という問題になるんでしょうね。

それはあるでしょう。そして現在その状況は未だかつて無く悪化している気がします。

finalvent氏のおっしゃることは確かにそう、三世四世なら嫌な思想の影響を受けていない方々が大勢いる。しかし逆に彼等ならではの思想を形成し、在日というものをおかしな方向に持ってこうとしている方々も存在するし、大抵そういうのは在日人を煽っているという当然の行動をしている。

私には双方隔たりがありすぎると思うし、だったら焼き払っちまえというようなアホな感情だってある。今のところ。

投稿: kurogane | 2004.09.09 03:15

以前までは、日本に何人が来ても、来日後どのように振舞っても良いと思っていた。多様性こそ最も重要な事と思っていたためです。

しかし、ジムロジャーズの本を読んで考えを改めました。少なくとも、死ぬまで定住するつもりなら日本語を学び、文化的にある程度溶け込んで貰わなければならないと思うようになりました。

ジムロジャーズの本の極一部に書かれた事(アメリカについてだが)、無理やり要約すると、
・共通の言語のみが国民をつなぎとめる。
・歴史的な事実として、分離主義は経済が困窮に陥ってくるとき必ず生じてくる。
・もし、一部の人たちが自分の国の言葉のみを子供に教え、自分の国の文化に自覚をもたせ、固まって住み、メディアを持ったらどうなるか。分離主義運動が開花する。
最後のは他文化を容認することを通じて、計画的でなくとも事態はそのように進むと述べている。
これは、アメリカとメキシコの絡みで、アメリカでスペイン語のみ話せる人が増えていって、アメリカが経済的に落ち込んだら…、メキシコから奪い取ったカルフォルニアあるし…、ってとこで書かれていた事です。かなり乱暴に要約してあるので、意味不明だとしたらすみません。

日本ではありえないと思いますが、将来帰化しないでずっと定住している外国人が多くなり、彼らの通う学校では自国の言語しか習わず、彼らは日本語を喋れない。日本語を喋れなくても生活できる環境ができている。そして、投票権を持っていたら。
考えるだけでも、恐ろしい。
将来的に、日本に移民は必要になると思うし、移民については賛成だが、国籍と教育だけはしっかりして欲しい。

ジムロジャーズがこの内容を書いた項の、終わりの言葉が色々な意味で考えさせます。
「政治家はいつも短絡的な票集めのために、私たちの運命を売り渡してしまう。」

投稿: scissor man | 2004.09.09 03:28

すみません。議論に参加するために次の情報が得られるリンクなどあれば教えてください。
「永住外国人(X国人)は、X国に対して納税、参政権、徴兵義務などがあるのか?また、日本人がX国において永住外国人であった場合にはどうなるのか?」
憶測で話をしてしまうと、まずいと思いまして勉強したいと思います。
在日朝鮮人の中に北朝鮮の国会議員がいるのと、韓国の兵役逃れなどで戦後密入国してきた韓国人がいる事などは知っています。

投稿: 教えてください | 2004.09.09 10:48

まず、国政は駄目だが地方参政権はOKというのは甘すぎると思う。
国政の基盤が地方にあるというのが日本の政治構造だ。
地方政治を握らせたら国政に参与したも同様になる。

民団はそれをわかっているからこそ戦略的に「地方参政権」を目標にしている。
それに「税金を払っているから」という理由なら国政参政権だって認めるべきだ。
地方と国政を区別する根拠は乏しい。
地方自治拡大の時代でもあるし。

問題は外国に忠誠を誓っている外国人に日本の政治への関与を認めるかどうか、という一般論で、
「朝鮮人だから特別」という話ではない。
国際的にも歴史的文化的に特殊に融合していない外国の国民に参政権を与えた例はない。

それにほぼ意識が日本人と同じであるなら、そもそも一般の朝鮮人は参政権を欲しいのかすら疑問である。
「在日朝鮮人」の減少に悩む「民団」という既得権団体の延命策に過ぎないのではないか?と私は考えている。

また良い悪いは別にして天皇陛下の存在そのものが日本の国柄を規定している。
その存在を否定しておいて日本国籍をとりたいというのは、
日本国を否定するが日本国籍は欲しいと言っているに過ぎない。
そのような日本人はいてほしくない。
天皇制否定は韓国人の多くがクリスチャンであることも関係あるだろう。

投稿: あすく | 2004.09.09 11:46

いて欲しくなくても(旧憲法のころから)いるのが天皇制反対者。彼らを日本人でない、という根拠はどこにあるのだろうか?

投稿: synonymous | 2004.09.09 13:23

「教えてください」さん、どもです。この問題はまず結論ありきのサイトが多いようで、知識を提供するに適したところを私などは知りません。どなたかご存じのかたもあるかもしれません。ちなみに、sbさんのコメントにありました「平和条約国籍離脱者等入管特例法」ですが、これをキーワードにGoogleなど検索すると関連情報がいろいろ得られるかと思います。

投稿: finalvent | 2004.09.09 13:34

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