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2004.09.09

アフガニスタン大統領選挙雑感

 米国大統領選挙より早い10月9日にアフガニスタンの大統領選が実施される。選挙活動は9月7日から開始され、現在のカルザイ暫定政府大統領が引き続き立候補するのは当然として、各種民族を代表する軍閥指導者も多数立候補している。大方の予想では、カルザイ優位は動かないとしていることもあり、その対抗勢力が結集する可能性もあるといえばある。
 基本的な構図は、アフガニスタンの多数派パシュトゥン人をカルザイが代表し、対抗勢力は、タリバン政権下の反対組織北部同盟ということになる。北部同盟はタジク人の支持と見ていいだろう。自分たちが現在のアフガニスタンを築いたとの思いもある。
 余談めくが、軍事活動以前のタリバンの日本人シンパは、池澤夏樹などが代表的でもあるが、アフガニスタン=パシュトゥン人とも見ていたように、確かにアフガニスタンという国の文化はアレキサンドロスの伝説を嗣ぐパシュトゥン人の文化のようにも見える。彼らは一応に自分たちの古代の誇りを踏みにじったチンギスハーンを忌み嫌い、その系統を引くと見られるハザラ人を嫌う。日本人は現地ではハザラ人に見えるので、パシュトゥン人からは「やだなこいつ」という印象があるだろう。ついでにこのアレキサンドロスの伝説だが、パシュトゥン人のいうアレキサンドロスは、中近東全体に言えることだが、ギリシア・マセドニア王というよりは、ペルシャ王のイメージのようだ。このあたりの古代史の常識は欧米の偏向がかかると分かりづらくなる。
 今回の大統領選挙の重要点は、当初、当選が有力視されるカルザイの副大統領候補の動向と見られていた。カルザイは、7月26日の時点で、北部同盟の最高司令官でもあったタジク人のファヒム副大統領兼国防相(現職)を副大統領候補から外した。このため、NATOを含め、世界がファヒムの暴走を懸念した。この時点のニューヨークタイムズ"Declaring Independence in Afghanistan"(参照)がよくその状況を表している。


Marshal Fahim is currently first vice president and defense minister as well as the commander of Afghanistan's largest private army. Continued partnership with him would have destroyed the credibility of Mr. Karzai's campaign to disarm all the warlords, who protect drug trafficking, undermine Afghanistan's new Constitution and thwart peaceful economic development.

By standing up to Marshal Fahim, Mr. Karzai runs the real risk of an armed challenge. Yet unless he moved now, his authority might have become meaningless in many areas. Nearly 20,000 American troops are now in Afghanistan, and the smaller NATO force is being reinforced for the election. If necessary, these forces should support Mr. Karzai.


 ファヒムは、政争や民族間対立として見れば、パシュトゥン人のカルザイ政権の統一性を阻むことが問題だとも言える。だが、ニューヨークタイムズが指摘しているように、ファヒムは、麻薬取引や軍閥全体の武装解除というアフガニスタンの未来を閉ざす悪因でもあり、欧米社会は圧倒的にこのカルザイの決断を支持した。
 ファヒムを切るというカルザイの決断は、当時の「国境なき医師団」の撤退なども合わせて、状況が悪化すれば、カルザイ支援のためにNATOなどが軍事支援をすべきかもしれないという展開にもなった。
 が、ファヒムはこの国際世論の圧力を受け、表立った対立を避け、タジク人のカヌニ前教育相を支援することにした。賢明といえば賢明な態度だろう。
 大統領選挙で私が気になるのは女性票の動向だ。現在、一千万人を越える有権者登録のうち、その四割を当たり前だが女性が占めている。女性票が大きく中近東の世界で影響力を持つことは、端的に好ましいことだと思う。
 大統領選挙の最終結果判明までは、五、六週間かかると予想されている。正式なアフガニスタン政権大統領誕生は11月になるだろう。

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