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2004.09.28

「郵政民営化実現内閣」というのだが、なにが本当は問題なのか

 昨日第二次小泉改造内閣が発足。自民党三役も一新させた。率直に言っていよいよ小泉も本気かなという印象はある。自民党総裁の任期は三年、そして自民党の党則によって総裁の連続三期の在任を認めていないから、彼が首相でいられるのは二〇〇六年九月まで。泣いても笑っても欠伸をしてもあと二年だけ。この間、国政選挙もない。避けがたいはずの増税もこの二年は凍結という暴挙を国政・国民に飲ませたから、ポスト小泉のババを踏むヤツにはかなり胆力が必要となるだろう。
 小泉本気は、郵政民営化法案を来年の通常国会に提出して成立させることだ。その意味で、彼自身が言うように「郵政民営化実現内閣」ではあるのだろう。
 が、今朝の新聞社説を見渡すと読売新聞と日経産業新聞が当たり前にその点を書いているものの、朝日新聞と毎日新聞は党幹事長となった武部勤に奇妙な難癖をつけることを先行させていた。確かに武部が指揮したBSE対策は結局のところ国際世界の失笑を買うもののとなったにせよ、彼が失墜させられたのは農水省と農水族議員の癒着を着るべく行政介入を行おうとし、農協にまで手を入れようとしたからだ。話を端折るが、ようするに、朝日新聞と毎日新聞の武部クサシは反動。ということはもうちょっと裏がありそうだ。が、ここでは触れない。
 当の問題である郵政民営化なのだが、この話は以前にもこのブログで書いた。要点は、郵政が握っている第二の国家予算とも言える膨大な資金を恣意的に財投に回すのではなく、国民のコントロール下にせよということだ。が、再読を促すほどの内容でもない。
 現時点で、なにが問題なのかとあらためて問い詰められると、正直なところ、すっきりとはわからない。一応、財投機関債の制度は出来ているので、郵便貯金が財投に直接回ることはない。が、この債権の運用は財務省の小手先で決まっているので市場を介して国民がコントロールするというのにはほど遠い。そこで、一気に根本の郵貯を解体せよというのならそれはそれで話は分かるし、フィナンシャルタイムズなどを読むに対外的にはそのように受け止められてはいるようでもある。"Privatising post"(参照)ではこう指摘している。


It is astonishing that an institution that controls assets of about Y400,000bn - the equivalent of $3,660bn or roughly equal to the US federal public debt - can continue to operate in the murky and inefficient fashion of the Japanese post office. A combination of mail service, insurance company and savings bank, it has become notorious for acting as something close to a slush fund, channelling the savings of Japanese households into politically motivated white elephant construction projects at the behest of scheming LDP bosses.

 対外的には日本の郵政とはこのように見えているのだ。つまり、世界経済の懸念材料とも言える米国政府の赤字三兆六六〇億ドルに匹敵する四百兆円を自民党が左右しているというのだ。ちょっと数値の桁に脳髄がしびれる感じがするが、それに比べると一億円程度の不正で橋本派を揺さぶっている図というのは、陰謀論的に言えば、小泉側の今回の内閣の地ならしだっとしか思えない。
 問題は、では、この資金が自民党の利権から国民に取り戻せるのかというと、そこがよくわからない。そうではないようだ。どうも単に官僚コントロールになるだけのようでもある。だとすると、小泉改革、つまり、郵政民営化とはなんなのだろうか、それがよくわからない。そう、よくわからないのはそこだ。このあたり、すっきりとわかる方がいたらトラックバックなどで教えていただきたい。
 ついでに言えば、財投の資金源は郵貯だけではない。年金のなぜだかわからないけど膨大にプールしてあるれいの積立金も財投に使われている。このあたり、結局、全部国債に化けて、円維持のための操作として米国に投資されているのだろうか? なんかあまりの無知で失笑を買いそうだが、問題の根は郵政だけではなく、ようは、財投可能な資金の制御の問題だと思える。
 郵貯以外に、郵政民営化には、郵便事業と保険事業がある。これらも郵政民営化ということでコミになっているが、端的に言って、郵便事業は国がやるべきだろう。逆に保険事業ななぜ国がやっているのか、歴史的な経緯ということを除いた現代的な意義としては、理解しづらい。
 この点、先のフィナンシャルタイムズの記事だが、もう一点、日本人が好きな段階的な解決(phased transition)に疑問を投げている。

Their preferred solution, a phased transition, would allow the post office's insurance and savings arms to offer new products such as commercial loans while still being privatised. That is a recipe for an inefficient state-backed institution, with an unfair advantage from its government guarantee and tax-free status, stealing custom from private banks and insurers. It is, rightly, being resisted, particularly by foreign companies that have fought hard to enter the Japanese market.

 つまりその時間稼ぎが日本国内の利権確立の猶予じゃないかというのだ。それはあまりに対外的に不公平だというわけだ。
 それももっともなことだが、いわゆる目に見える形での外圧、つまり米国からの圧力はこのところ少ないので、その面からの解決はたぶんないだろう。米国は現在国際的には孤立を深めているので、どうしても政治的・経済的に日本の支援を必要としてる。
 というか、政治、経済、そして軍事の面で、日米が一蓮托生化している感じがある。どうも陰謀論めいていけないのだが、米国の思惑としては、日本の国富を日本の国民が還元するしくみより、官僚コントロール下に置いて国家レベルで米国に都合のいいインタフェースができたほうがありがたいのではないだろうか。

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「時事」カテゴリの記事

コメント

民営化の狙いは利権を財務省の管轄下におくこと…というのはうがった見方でしょうか。

投稿: Groove | 2004.09.28 11:26

> 利権を財務省の管轄下におくこと
 を目的とするのは、大蔵族としては正しい行動かもしれませんがねぇ。

投稿: shin-ohara | 2004.09.28 11:49

勉強させていただいております。
郵政の民営化とは郵政財源の民営化を指すと思われます。
銀行はともかく郵便局は潰れないという神話がありますが
郵便局も潰れる可能性が増えたと読めると思います。
また、400兆円もの財源をパー、つまりどこかへ流すのが
目的と考えるのが普通と思われます。
それを担うのが竹中平蔵氏。
小泉首相がわざわざタイミングよく米国へ向かったのも
新内閣の承認を得る為だったのでは?
乱筆乱文失礼いたしました。

投稿: ふじりん | 2004.09.28 13:13

finalventさん、こんにちわ、

郵貯の解体というのは要は財投の問題、しかもどの官僚がどのようなパワーバランスを取るかという議論のような気がします。失笑を買うだけかもしれませんが、今後財投や財政の問題で非常なインフレが起こったらどうなるか某所で議論しました。米国と日本がいかに緊密(?)な関係になっているか少々背筋が寒くなりました。

非常に無責任な議論ですが、どれだけ円がさがれば国の借金がちゃらになるかと計算してみます。

http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/special/47/naruhodo131.htm

>米国債などが増えて外貨準備高は2月末で約7800億ドル(約86兆円)に達したが、政府短期証券発行残高も80兆円前後に膨らんだ。

今年、3月の段階で↑のような状況のようです。であれば、短期証券というのは円で調達しているので、円がさがればそのまま莫大な為替差益がうまれるということ。 為替差益で国の借金を埋めるという無謀なことをせざるを得ない状況が生まれるとしたら、↓のようになります。

800兆円-(86兆円×X-80兆円)=0

と置くと、式からx=約10倍になるので、現在1ドル110円近辺の相場が1100円くらいになれば国の借金が消えます。でも、元をたどればほとんど輸入品によって暮らしている我々の生活水準は単純に10分の1になるということでしょうか。

ただし、今金利が上昇傾向なので、円が下がる前に金利だけがあがってしまえば、国債の借り換えができない、政府短期証券の借り換えが出来ないなどの財政のクラッシュが起こる可能性があがります。まあ、この場合もやはりまっているのはインフレかとも思います。

投稿: ひでき | 2004.09.28 13:17

>でも、元をたどればほとんど輸入品によって暮らしている我々の生活水準は単純に10分の1になるということでしょうか。

輸出による収入が10倍になることと日本が貿易黒字であることを考慮すれば、生活水準は上がります。
インフレで困るのは金持ちなわけだから、一般国民は危惧する必要はないし、むしろ若者は自分たちの将来の負担が減るわけだから、歓迎したいですね。
さっさとインタゲして借金をチャラにしてほしいですよ。

投稿: プリン | 2004.09.28 13:44

世間一般やここのレスでもそうなんですけど、なんか円建て赤字国債を、主婦のサラ金債務のように扱われてますが、それはかなり違うと思う。
もちろん累積財政赤字は問題なんですが、問題の本質は財政赤字体質であり、短期的に重要なのは安定消化の筋立てであって、「インフレで今すぐチャラに!」とかそういう話ではないと思うんですがね。
インタゲってのも、そういう目的にやるもんじゃないし。

投稿: nom | 2004.09.28 15:25

>安定消化の筋立

そのために日銀はわざと金融緩和を渋ってるの?
国債は不況が続く限り、買い手は見つかるでしょうからね。

投稿: (anonymous) | 2004.09.28 17:29

>このあたり、結局、全部国債に化けて、円維持のための操作として米国に投資されているのだろうか?

この前の巨額為替介入のために発行された政府短期証券(FB)の消化に、郵貯や年金積立金が使われたかどうかが問題でしょうね。
郵貯や年金積立金は財政投融資には使われても、政府短期証券には使われてないと思うのですが。

投稿: Baatarism | 2004.09.28 17:49

>米国の思惑としては、日本の国富を日本の国民が還元するしくみより

日本人が貯金よりも海外投資に資金を回すようになれば、
海外:ビジネスの資金を得られてウマー
日本:投資で利益を得られてウマー

という状況を作りたいのではないかと、下のBlogを読んで思いました。

19世紀のイギリスも、20世紀のアメリカも、外国への投資をすることで隆盛し、逆に外国から投資を呼び込むことで繁栄を維持してきました。(中略)おかしいのは巨額の介入ではなく、巨額の富を積み上げながらも、それを巧く働かせることを躊躇(ためら)う内向きなマインドではないかと思うのです。
http://blog.livedoor.jp/takahashikamekichi/archives/6952232.html

投稿: gwaihir | 2004.09.28 17:53

郵政民営化の一番の目的は、特殊法人等に流れている資金を監視できるようにしましょうということだと思います。(今のままだと、どこにどれだけ流れているのかわからないらしい)
そして、その特殊法人に官僚が天下りしているというのを、TVで見た覚えがあります。
一応、調べてみました。

 特殊・認可・公益法人の“三法人改革”が焦眉の問題となったいま、一般会計とともに補助金などの交付金を“三法人”に出しているのが特別会計だ。国所管公益法人の場合、総額3700億円(98年度)近い補助金の約三分の一が特別会計から支出されている。特別会計はいわば、郵貯、年金、簡保など財政投融資資金の受け手である一方、“三法人”への資金供給者なのだが、その資金の流れは情報公開されていない。

NAGURICOM [殴り込む]/北沢栄
http://www.the-naguri.com/kita/kita33.html

投稿: hiro | 2004.09.29 00:34

>インタゲってのも、そういう目的にやるもんじゃないし。

別にインタゲをすれば今すぐチャラになると思っているわけではないのですが。
問題の本質はデフレだと思います。
デフレだから、借金が増えてしまうということ。
インフレにすれば、名目税収が増えて、財政赤字も減るから、好況になったからといって国債が消化でいなくなるわけでもないし。
アメリカが得する=日本が損する、政府が得する=国民が損すると思い込んでいる人が多い気がする。実際はそうじゃないのに。

投稿: purin | 2004.09.29 13:27

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