在外米軍の売春利用規制
ぼんやりsalonのAPニュースを見ていると、22日付だが"Troops may be tried for using prostitutes"という物々しい見出しが気になった。ふぬけた試訳だが「米軍は売春利用で裁判を受けることになるかもしれない」ということだ。なんかまたやらかしたかとも思ったが、"may be"ということは事件でもあるまいというわけで、記事を読んでみた。ようするに、今後米兵や従軍関係者の売春利用の規制が厳しくなるから、不埒者が裁かれるかもよ、ということだ。
同記事はワシントンポストにも"Anti-Prostitution Rule Drafted for U.S. Forces"(参照)として掲載された。こちらは「米軍向けに売春防止の規制が起案された」とわかりやすい。記事自体のアクセスは、salonと同じ標題のABC"Troops May Be Tried for Using Prostitutes"(参照)が容易だろう。冒頭はちょっと抽象的に書かれている。
U.S. troops stationed overseas could face courts-martial for patronizing prostitutes under a new regulation drafted by the Pentagon.The move is part of a Defense Department effort to lessen the possibility that troops will contribute to human trafficking in areas near their overseas bases by seeking the services of women forced into prostitution.
海外に派兵されている米軍兵士が現地の売春に手を出さないように規制するというのだ。そんなの当然じゃないか、今まで不十分だったのがおかしいというのが一応常識でもあるだろう。ただ、内情を少し知っている人間にしてみると、ちょっと複雑な印象も受ける。私もそのクチなので、なんで今さらという感じがした。
記事を読み進めるとさらに違和感は深まる。
In recent years, "women and girls are being forced into prostitution for a clientele consisting largely of military services members, government contractors and international peacekeepers" in such places as South Korea and the Balkans, Rep. Christopher H. Smith (R-N.J.) said yesterday at a Capitol Hill forum on Pentagon anti-trafficking efforts.
規制の対象者なのだが、米兵以外に軍関係者や和平監視部隊も含まれている。たしかにそこまで規制しないとザル法になる。気になるのは、"in such places as South Korea and the Balkans"、つまり、韓国とバルカン半島諸国と例が挙げられている点だ。バルカン半島諸国といえば、旧ユーゴが含まれていることからもわかるように戦地だったので想像しやすい。問題は、なぜまたここで韓国に言及されているのかということだ。記事はさらに韓国に注目して書かれている。
All new arrivals to duty in South Korea are instructed against prostitution and human trafficking, and the military is working with South Korean law enforcement agencies, he said.
これでは、韓国で米軍相手に売春が頻繁に行われているようではないか。と、ここで失笑しない欲しい。私は本当に知らなかったのだ。それどころか、朝鮮ネタは、日本の隣国なのでどうしても話題は多くなるのだが、もう書くのはうんざりというのが正直なところだ。無意味な誤解を膨らましたくもない。
と言いつつ、なぜ韓国?と思い、Koreaとprostitution(売春)でちょいと検索しただけでわかった。韓国では昨日から性売買特別法が施行されたのだ。先のAPニュースはこれとの関連があるのだろう。
できるだけ邦文のほうがわかりやすいので、そうした記事として朝鮮日報「在韓米軍、基地周辺の性売買根絶へ」(参照)を引用する。
性売買女性の人権保護と性売買強要に対する処罰などを強化した性売買特別法が今月23日施行されることから、在韓米軍も基地周辺の性売買根絶に乗り出したと、星条旗新聞が21日報じた。
米軍と韓国での売春については不要な誤解を招きかねないのでこれ以上は言及しない。
米軍関連とは別にこの性売買特別法についてだが、かなり大規模で徹底したものになりそうだ。私の率直な印象を言えば、規制が成功すればいいだろうとは思う。
私は、気取るわけではないが、売春には関心がない。あるとすれば、それが意外なほど経済効果を持つという点だ。そんなわけで、韓国の売春と経済の関連を少し調べたところ、中央日報「買春売春市場の規模、年間26兆ウォン」(参照)という記事があった。昨年の2月の記事なので最新ではないが、規制法以前の実態としてはそれほど違いはないだろう。
政府が行った調査のまとめによると、韓国の買春売春産業は年間26兆ウォン(約2兆6000億円)台の規模であり、買春売買産業の専業女性がおよそ26万人にのぼる。 今回の調査は、政府が行った初の買春売春産業調査報告であり、民間団体まで含ませたケースとしても全国規模で行われた初の実態調査となる。
26兆ウォンにのぼる買春売買産業の規模は、2001年の国内総生産(GDP)545兆ウォン(約55兆円)に比べるとき、その5%にあたる。また、専業女性数およそ26万人は、満20歳から34歳までの女性(2002年、統計庁)人口の4%にのぼる。
ちょっと信じられない統計だなというが率直な印象だ。
いつもながら他山の石として日本を考えるに、買春売買産業の専業女性は恐らく少ないのだろうとは思う。だが、日本はこうした問題からフリーかというと、現代日本の生活者の実感としてそうでもないようにも思う。あるいは、日本の場合、不倫がバランスしているのかもしれない。
いずれにせよ、米軍と売春の関係については、日本の場合、過去のことしてしまうか、あるいは現在のそうした側面は十分に隠蔽できるだけの経済面での余力はあるのだろう。
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