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2004.09.16

女王陛下、英国大使の野上義二でございます

 9月11日の閣議決定で、折田正樹英国大使の勇退の後、前事務次官の野上義二が駐英公使となった。野上義二? 思い出すこと二年前、NGO排除問題で世間を騒がせてくれた、あのヒゲだ。「ヒゲをそったらどうだ」と当時経済産業相の平沼赳夫が苦言を呈した、あのヒゲの男である。ここに一人のヒゲの男が再び立ちがあった。
 当時を思い出そう。2002年1月東京開催のアフガニスタン復興支援会議の際、外務省が一部の非政府組織(NGO)の出席を直前になって拒否した。真相は鈴木宗男が外務省に一部NGO排除を働き掛けていたことだった。外務省の最高責任者田中真紀子元外相は国会答弁できちんと真相を明言した。が、だ、にも関わらず、野上義二事務次官(当時)はこれをまっこうから否定した。どっちが本当だ?ということで国会は紛糾した(「国会バトル 田中氏/鈴木氏 参考人質疑、真っ向対立」・参照)。
 なさけない話だった。というのも、次官というのは補佐が仕事。外務省なら、その最高責任者田中真紀子元外相を補佐するために給料が与えられている。大辞林にも次官というのは「国務大臣を助け、省務・庁務を整理し、内部部局の事務を監督する一般職の国家公務員」とある通り。分をわきまえろよ、サーバント、というのが常識だし、国際的にもそう見えるものなのだが、なぜか、日本では喧嘩は世間を騒がした双方が悪いってことにして、「ここは野上義二”しばし”収めておけよ」と小泉首相は田中外相、野上次官の両氏を更迭した。外務省としては、うるさいおばはんと差し違えたということで85へぇ、金の脳を送ったという(これはウソ)。
 更迭後、野上義二は、座敷牢こと官房付に入れられた。甘甘の処分である。他省庁だとフツー局長までやって更迭されれば退職なんだけどねぇ、の声も伏魔殿には届かない。更迭後も専属の公用車が与えられていたのだが、ちくらりちまったよ、ということで、それは廃止。もっとも更迭といっても退職金はがっちり8500万円ナリ。え? そのくらいは当然でしょ。少ないくらいでしょ、当然ですよ。
 座敷牢にも長いさせず、2002年9月に、野上義二は英国公使に任命され、英国の調査研究機関「王立国際問題研究所」の上席客員研究員として中東問題を担当した。給料は外務省から出たのだが、それがいくらかは公開できないとのこと。それにしても、やっていることが中東問題かよ、とも思うが、ま、さして世論への影響もないからよいか。不善をなさぬには閑居がよろしい。
 もっとも、元レバノン大使天木直人は、国防総省の中堅幹部がイスラエルのスパイだったという話の余談に、愉快なエピソードを書いている(参照)。


因みに日本にもイスラエル諜報機関が入り込んでいる事は間違いない。その手先の一人が今度駐英大使になる野上義二元外務次官であるという情報がある。その真偽は確認しようもないが彼が米系ユダヤ人とのパイプが太いことを自慢げに同僚に話していることは事実である。
 そういえば彼が外務次官のときイランの外務次官に「イスラエルとパレスチナの紛争からイランは手を引いてほしい」という驚くべき話をしていたのを思い出す。日本はあまりにも国際政治の裏取引にナイーブである。それとも自らそれに取り込まれているのを自覚しているのであれば何をかいわんやであるが。

 さすが天木直人である。さすが笑話である。わっはは、次、行ってみよう!
 というわけで、一般常識からすれば、次官経験者の公使への降格は前代未聞なのだが、これはただの伏線。ニコポンスキーの正体は敷島博士だし、野上義二は伏魔殿の守り神である。
 さても、頃合いもよし、残暑も引いてくるであろう。日本の国民はもうすっかり野上義二を忘れたころだ。王立国際問題研究所の成果なんてものもありゃしない。文藝春秋もこの間、どうでもいいことで宿敵田中真紀子を叩きまくってくれたし、父親が米国の陰謀で失墜させられたのと同じで、世間的にはもう田中真紀子が出てくる目もあるまいて、と、いうわけで、さて、野上義二に外務省官僚の最高の地位に据えてやろうか、ということで、今回の決定となった。
 さすがに疑問の声は上がった。あのさ、外務省改革ってどうなったわけ?である。現川口順子外相の私的懇談会「変える会」では、機密費流用事件など一連の不祥事をめぐった提言で、通常の省庁にならって「次官を最終ポスト化する」としていた。つまり、「次官経験者は大使に就任させない」として、次官経験者の大使転出の禁止を提言していたのだ。が、いきなり反則。それってどうよ、なのだが、小泉純一郎首相曰く、「人事になると人それぞれ見方がありますから。適材適所、そう思って起用した」。またしても人生イロイロである。
 8月31日にこのルール無視をただすべく衆院外務委員会の米沢隆委員長が異例の反対声明をあげたが消えた。田中真紀子も虚しく吠えた。講演で「スキャンダル、問題が起きたときの次官で鈴木宗男元衆院議員の長い友人。(起用は)イギリス人、日本人に対し侮辱だと思う」と批判した。
 田中真紀子に言わせるところの侮辱を受けたところのイギリスの反応はどうかというと、早々にテレグラフでは"New ambassador an 'insult' to Britain"(参照)を掲載。標題は「新大使は、英国への『侮辱』」である。

The promotion of a controversial bureaucrat to become Japan's ambassador to London is "an insult to the British and Japanese people" the country's former foreign minister said yesterday.

Yoshiji Nogami, whose appointment was made official yesterday, was sacked as deputy foreign minister two years ago after he clashed publicly with his then boss Makiko Tanaka.


 と威勢がいいが田中真紀子に沿っているだけで記事は尻つぼみ。いまいちイギリスでは盛り上がらないのかと思ったら、今週の日本版ニューズウィーク「外務省人事は笑えない喜劇」で同じくコリン・ジョイス君が執筆していた。以前日本版ニューズウィークの仕事をしていたよしみの寄稿か。こっちはちょっと毒が強い。

 テレグラフの編集者たちは私に聞いた。なぜ外務省は野上のためにそこまで便宜を図るのか。ほかに適任者はいなかったのか。ほかに希望者はいなかったのか。考えつく唯一の説明は、田中と差し違えた野上の「功績」に報いる人事だった、というだけだ。

 そ、それだけ。
 しかし、野上義二が優秀な人材であることはテレグラフの記事にも書いてある。

Mr Nogami, who speaks excellent English and has a British wife, is said to have a "lively mind" by western diplomats in Tokyo. A Japanese diplomat added: "He's a very good man. He has great experience in foreign affairs."

 イギリス人の妻を持ち、英語も堪能だ。英語が堪能というのはいいことだ。というのも、外交の英語は難しいものだ。
 そういえば、2001年のこと、外務省が、業者の水増し請求を利用した裏金づくりと職員処分についての最終報告を出した際、当時次官の野上義二は、与党幹部への事前説明に回った。裏金の総額は二億円を越える。一億六千万円は使い切った。野上と与党幹部は次のように話し合った(読売新聞2001.12.09)。

 与党幹部「ホテル宿泊券なんかもらっても、生活の足しにならんじゃないか」
 野上「実は、金券を換金して使っていたようです」
 与党幹部「それは立派な横領だ。刑事告発しないのか」
 野上「捜査当局は立件は難しいと言ってます……」

 野上義二、日本語でもこれだけの弁が立つ。英語も堪能だ。仕事もできる。
 この裏金づくりには後日談がある。さすがに世間に申し訳がないというので外務省が一丸となって弁済の寄付を募った。このとき、最高額を出したのが、野上義二である。その意欲で二億円の弁済のうち五十万円が埋められ、外務省に今なお語り継がれている。

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コメント

>英国の調査研究機関「王立国際問題研究所」の上席客員研究員として中東問題を担当した。

野上氏は本来アラビスト(アラビア語専攻――キャリアからは毎年1人しか出ないので中国語のように「スクール」とは呼ばない)で、権威あるRIIAで中東問題を担当することが決まった時に相当喜んだとのことです。本人にとっては閑職ではなかったのかもしれません。

天木氏については・・・人格的にかなり問題ありとの評を聞いたことがあります。米国の某総領事時代に本人に会った人の話ではあまりの傲岸不遜ぶりに開いた口が塞がらなかったとか。ま、どちらも伝聞ですので真偽の程は分かりませんが。

投稿: だい | 2004.09.17 11:21

なんだこの最悪なエントリーはw
天木がどうしようもないことぐらいわかるだろう。普通の感覚ならあんな悪口だけの中身がない暴露本書かないって。。田中真紀子もたんなるひすてりーおばちゃんじゃん。ああいうの小学校の教師によくいたよ。親の意向を傘に着てるだけ。

投稿: lucky | 2005.08.21 23:54

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