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2004.09.15

米国の銃規制法が失効したことの意味

 米国時間で13日、十年間の時限立法として成立していた襲撃用銃器の製造と販売の禁法が期限切れとなり、失効した。正確には、凶悪犯罪の処罰強化を目指した犯罪防止法内の該当条項の失効である。単純に、これで米国で銃器の製造販売が可能になると理解したくなる。日本人としては米国っていうのは野蛮な銃社会だからな、という感じだろうか。私はまずそう感じたものの、なにか違和感が残った。
 この禁止法は民主党のクリントン政権下、1994年に時限立法として成立した。大統領の職にある者なら失効を避け、禁止状態の延長を推進することもできたかもしれないとして、現在の共和党のブッシュ大統領を民主党のケリー大統領候補は「テロリストに武器を手渡すようなものだ」として非難した。それだけ聞けばもっともな言い分だし、日本人にもわかりやすい。なのに、ブッシュ大統領が結果的に推進側に回ったのは、大方の見方どおり、全米ライフル協会(NRA:National Rifle Association)の強力な反対によるものだった。ブッシュが銃規制撤廃の強い信念を持っていたというのではない。連邦議会が期限延長に動かなかったのを、しぶしぶ承認したような形になっているからだ。議会としてもまた大統領としても、300万人以上の会員と潤沢な政治資金を持ち、強力に政治活動を推進するNRAを敵に回したくはないという思惑があったというくらいだ。
 銃規制をしない米国社会というのは困ったものだなというのは、実際のところ普通の米国人の実感でもある。VOA"US Ban on Assault Weapons Set to Expire"(参照)などにもあるように今回の禁止法廃止は米国民の世論とは言い難い。


According to a poll released last week by the National Annenberg Election Survey, 68 percent, more than two-thirds of Americans, support extending the ban, which was signed into law by President Bill Clinton in 1994.

 米国民の68%は禁止法の延長を期待していた。ケリー候補もそのあたりを読んでの反対でもあるのだが、政治プロセスとしては成功していない。タカ派に見られることの多いワシントンポストだが"Staring Down the Barrel of The NRA"(参照)でもそのあたりの政治プロセスをまず問題視している。
 さらに同紙"No Cheers Over Gun Ban's End"(参照)では、やはり銃規制を支持するトーンでより詳細にこの禁止法の撤廃による米国社会の変化を解説しているのだが、その実態を読むと私はなんとも奇妙な感じがした。どもまどろこしい言い方になるのだが、この話をブログのエントリのネタにしようと思ったのは、銃規制の議論というより、このなんか変な感じが自分では重要に思えたからだ。
 その変な感じというのをなんとか自分なりの言葉にしてみると…、米国社会における銃規制廃止を表面的に喜んでいるのは、銃オタクだけのようなのだ。秋葉でフィギュアを物色しているお兄さんのような感じなのである。これで危険な銃が米国社会に溢れるようになるぞ、というより、お兄さんたち「銃のアクセサリー一式が購入しやくすくなるぞ、わーい」といった感じのようだ。というあたりで、私が実際に規制されていた銃について無知であったことが実感された。
 銃に関する感覚は私は多分平均的な日本人と同じなのではないかと思う。そこで私の銃のイメージなのだが、まず拳銃。そして、猟銃のようなライフル銃だ。ところが、米国でこの10年間規制されていた銃というのは、そうしたイメージの銃というより、殺傷力の強い半自動小銃など襲撃用銃器なのである。私のイメージからするとマシンガンというやつだ。英語では、"assault weapons"とある。このassaultもweaponsもごく基本的な英単語なので意味はわかる。ので、訳せと言われれば襲撃兵器とでもなるだろう。が、はて、定訳語があるはずだと思って調べた。英辞郎に「急襲用{きゅうしゅう よう}ライフル、対人殺傷用銃器、攻撃用武器{こうげき よう ぶき}」とあるが、 "military-type assault weapons"では「軍事用攻撃兵器」とあるので、"assault weapons"の定訳語ははっきりしない。
 もちろん、英文を読んでいけば、"assault weapons"がなにを意味するかはわかる。どうやら、トリガー(引き金)を引いてズドーンというのじゃない。ボタンを押せばだだだだだと自動的に弾が出るやつのことのようだ。あれだ、私のイメージでは、こいつは昔のパチンコ。そして"assault weapons"は現在のパチンコだ。
 なってこったと思う。そんなものは規制して当たり前じゃないかと思う。が、このあたりでどうも自分が従来、銃規制として想定したものや実態とかなり違うんじゃないかという嫌な気分になってきた。これってようするに大量の人間をやたらめったら殺すためのまさに兵器なわけだ。
 呆れたなと言いたいところだが、他の関連の英文ニュースを読むと、こんなあきれた兵器を禁止したところで社会学的に見れば犯罪の減少に寄与したものでもないらしい。また、米国とひとくくりにしても州によってさまざまな規制があるため、そのまま銃器が野放図にばらまかれるというものでもないようだ。
 それでも、と、連想したのは、今回のイラク戦争で「活躍」した米国の民兵だ。現代の傭兵とでも言っていい。はっきりと納得できるまで関連資料を読み込んだわけではないのだが、深層では、こうした現代の米国傭兵を"assault weapons"の安易な供給が支えているのは間違いないのではないか。その意味で、今回の襲撃銃禁止法が失効したという米国の時流は、米国の地上戦における傭兵依存と、実は一体の事態だったのではないかと思える。

【追記 同日14:42】
英辞郎に訳語が掲載されていたのを見落としていたので、その部分をリライトしました。また、"assault weapons"については、simbaさんのコメントに補足となる説明があります(参照)。

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「時事」カテゴリの記事

コメント

直感的に書いてますが、先日、子供達の運動会でのこと。今この瞬間、北オセチアのようなテロリストに襲われれば終わりだな、とふと思いました。
で、何をなすべきかをぼーっと考えていて、強力な銃をもつべきでは、という思いにいたって、そこで呆然となりました。
NRAのリアリティって、これに近いのでしょうかね。

投稿: Sundaland | 2004.09.15 08:42

"assault weapons"について、AK47についての新聞記事による知識ですが。
パチンコの比喩でイメージされているのは、おそらく"assault rifle"で、これは「突撃銃」が最もこなれた訳なのではないかと思われます。
"assault weapons"になると、これにサブマシンガンが入るのではないかと思います。サブマシンガンは、定義は知りませんが実際上「拳銃弾を使用する機関銃」です。
要するに、映画「マトリックス」のビル襲撃のシーンで、ネオたちがバッグに入れて持ち込んだ類の物を思い浮かべれば良いと思います。

投稿: simba | 2004.09.15 09:58

simbaさん、こんにちは。有益なコメントありがとうございます。兵器というのは、単に忌避するのではなく、できるだけ正確に理解する必要があると考えています。

投稿: finalvent | 2004.09.15 14:51

『"assault weapons"について「突撃銃」が最もこなれた訳』
ですが、想定された武器は恐らく、ソ連崩壊で安価に出回った「カラシニコフ」だったように自分は記憶しています。

投稿: katute | 2004.09.15 15:59

最近のパチンコも強力で複数発同時に撃つ人もいれば、連射しやすいのもあります。
http://www.rivertop.ne.jp/rivertopsabu/pcinc/slig2.html
やっぱりMade In USAですが、子供のころのおもちゃに比べたらASSAULTIVE、

あっ現在のパチンコとおっしゃったのは、1発4円の玉を自動連射し僕の懐を破滅させるような機器のことでしょうか?すいません。無益なコメントお許しください。

投稿: eda | 2004.09.15 17:17

katuteさん
>想定された武器は恐らく、ソ連崩壊で安価に出回った「カラシニコフ」
上のコメントで書いた新聞記事は実は朝日新聞の連載「カラシニコフ」です。そこでAK47=突撃銃としてあったと記憶しています。
私の銃器の知識は、基本的にタミヤのプラモデルの解説書ベースです。その中でWWⅡドイツ軍の携行武器の中に突撃銃というのがあったのが時代的に一番旧いものと記憶しています。
蛇足ですが。

投稿: simba | 2004.09.16 00:29

"assault weapons"は日本語で直訳すると”突撃小銃”になり米国製のM16シリーズや、ロシア製のAKシリーズもこのカテゴリーに入ります。
"サブマシンガン"はsimbaさんが指し示す様に拳銃弾、俗に言う"9mm"弾っていうヤツを使用します。
アメリカ国内での規制で、フルオートライフル銃(引き金引くと弾が出続ける銃)は販売が禁止されています。ただし、セミオートラウフル銃(引き金を引くと1発しかでない銃)は販売が許可&所持が可能です。ラスベガスでは、フルオートライフルが発砲できる地域なので、ガンショップのシューティングレンジで試し撃ちとかできますよ。

投稿: ben | 2004.09.16 10:22

軍用銃スタイルの半自動火器の俗称が"Assault Weapons"です。コメントを見る限り本来の条文にもあたられているようですが、拡大解釈されるのはどうかと思います。benさんが触れられているように、フルオート可の銃はもともと規制されており、1994年の法における"Assault Weapons"は分離式のマガジンを持ち下記条件に2つ以上当てはまるライフル(当然半自動)を対象としています。
・折り畳み、もしくは伸縮式のストックを持つ
・ピストルグリップ
・銃剣ラグ
・フラッシュハイダー(消炎器)
・グレネードランチャー

一見関係ないように見えるフラッシュハイダーが規制されたのは、多くの軍用ライフルのそれはNATO共通規格の外装式ライフルグレネード(弾体に銃身を差し込んで撃つ)を使用できるように外形が22mmに統一されており、それが民間向けバージョンでもそのまま踏襲されていたからです。その為フラッシュハイダー=グレネードランチャーとされたのですが、これは簡単に追加加工出来る程度のものであり、果たしてどれだけ意味があるのかは疑問です。そもそも弾薬が入手できないとどうしようもないものですし。

"Assault Weapons"という刺激的な表現は見た目の印象からマスコミか政治家辺りがつけたのではないでしょうか。"Military-style semi-automatic firearms"より遥かに視聴率や票が取れると思います。

ちなみに"Assault rifle"は一般的に短小弾と着脱式ボックスマガジンを使い、自動・半自動を切り替えて射撃できる小銃のことを指します。語源はドイツ(というか総統)がそういった銃を"Sturmgewehr"(突撃銃)と名づけたことによるものですが、"突撃"という単語に関しても当時のドイツは何にでも付けていた(突撃砲・国民突撃兵etc)ので、威勢のいい言葉以上の深い意味は無いと思います。しかも歴史や開発経緯、実際上においても厳密な区分は不可能でかなり大雑把なカテゴリーです。その証左に本家ドイツはもとよりほとんどの国での制式名称は単に小銃ないしは自動小銃であり、AK47の"A"も英語でいう"assault"ではなく"automatic"であり、カラシニコフ自動小銃モデル1947という意味です。"突撃銃"と冠されているのは語源となったドイツのStg44の他にはスイスのStgw57(フルロード弾を使用するので定義上はAssault rifleとはいえない)、Stgw90程度しかありません。

投稿: matsu | 2004.09.16 19:30

>・折り畳み、もしくは伸縮式のストックを持つ
>・ピストルグリップ
>・銃剣ラグ
>・フラッシュハイダー(消炎器)
>・グレネードランチャー

これらが二つ以上当てはまる銃器の所持がおっけーになったと。それなら銃オタクも大喜び、というのは納得できます。オタクが喜んでいる限りは実質的な害はないような気が。折りたたみストックとピストルグリップの組み合わせで、ライフルを隠し持つことができるようになった、というのがちょっと危ないかもしれませんが。

投稿: jouji | 2004.09.18 10:32

日本では不幸なことに狩猟、射撃等スポーター目的外に製造銃器の、アサルト的な機能構造を持つ軍銃、対人、攻撃、応戦装置、国際野生動物保護の為の多発連射銃等目的に製造された銃器類及び6発以上の少多発弾弾倉は民間所持が禁止されているのだよ。

しかしスポーツ射撃熱狂家もピストルグリップの規制にしか反対しないのはどうかと思うぞ。
http://www.shootingtips.com/NewFiles/article/Revised%20German%20Gun%20Control/RGerman%20Gun%20Control.html

投稿: sdgr | 2004.10.03 01:50

アメリカという国は人の命よりもお金が大事な国ですね。多くの人が銃の凶弾に倒れても銃を禁止しない、かえって禁止しようとする勢力に対して、脅しと賄賂を持って政策をねじ曲げようとする。日本にも銃が流れ込んでいるようです。国民の意識をさらに高め銃の流入を防ぐ必要があるでしょう。また薬物汚染に関しても同様でしょう。すべてにアメリカの後を追って行く愚は避けなければなりません。

投稿: tg | 2004.10.13 17:43

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