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2004.08.24

中国はもはや食料輸入国

 22日付のフィナンシャルタイムズに"China fears food crisis as imports hit $14bn"(参照)の記事が掲載されていて少し驚いた。話は標題からも推察がつく。試訳すると「中国は食料輸入が140億ドルに及び食料危機を恐れる」となるだろうか。従来食料輸出国と見られていた中国がついに輸入国に転じたことで、またぞろ食料危機だというのである。


China has become a net importer of farm produce, raising concerns at the highest levels of government about the security of the food supply for 1.3bn people as land and water shortages put pressure on domestic grain production.

 驚いたのは、もちろんと言うべきだと思うが、食料危機云々ではない。フィナンシャルタイムズまでそんな話を書くのかということだ。読み進むとレスターブラウンまで出てくる。呆れた。

Lester Brown, president of the Earth Policy Institute and an authority on Chinese agriculture, said recently that as well as importing wheat, Chinese would start buying foreign rice and corn in years to come. A year or two from now, he said, China might be importing “30m, 40m, 50m tonnes” of grain, more than any other country.

 レスターブラウンのこの話については、3月22日の極東ブログ「世界市場の穀物価格は急騰するか?」(参照)に書いた。現状私の考えに変わりはない。
 今回のフィナンシャルタイムズの話の元は、先日の中国の発表によるものだが、ジャーナリズム的にはチャイナデイリー"Crop trade deficit recorded for 1st time"(参照)が注目された。この記事はなかなか含蓄があるのだが、産経ビジネスiなどは浅薄に受け止めていた。ここでもレスターブラウンが出てくるのはお笑いだなと思った矢先にフィナンシャルタイムズも似たようなものだったので、驚いたという次第だ。
 統計的な状況は、産経ビジネスiの記事が邦文でもあり読みやすい。

 中国農業省によると、中国の上期の食糧輸出額は前年同期に比べ10.7%増の106億2000万ドル(約1兆1700億円)。一方、輸入額は143億5000万ドル(約1兆5800億円)で同62.5%増の大幅増となり、輸入額が輸出額を37億3000万ドル(約4100億円)上回った。
 同省統計では、昨年上期の中国の食糧貿易額は7億6000万ドル(約836億円)の黒字。通年でも95年から03年までの9年間の食糧貿易では、年平均で43億ドル(約4730億円)の黒字を記録してきた。
 今年は、上期だけでも食糧貿易額は初の赤字で、このままいけば、通年でも初めて赤字になると予想されている。

 以上は事実としていいのだが、ここから次のオチを導くのは、まいったなである。

米環境問題専門家のレスター・ブラウン氏は約10年前、中国の人口増と食糧生産の停滞から、2030年には2億トンから3億7000万トンの穀物輸入国になり、発展途上国に供給される穀物が不足し、大規模な飢餓状態が起こるなどとの予測を発表し、国際的に大きな論議を呼んだ。中国が食糧輸入国に転じれば、ブラウン氏の予測が現実になる可能性もあり、世界の食糧需給に大きな影響を与えることは必至だ。

 こんなネタから、日本の食料自給が問題なんていうトンデモ話が出てきそうな気もする。石油だの食料だのというのは、ユダヤネタにつぐばかばかしさがある。と、笑い飛ばすものの、それが笑話に過ぎないことをきちんと説明することは難しいかもしれない。
 大雑把にいえば、地球全体の農業生産力が適切に発揮されれば飢餓状態はないだろうということと、飢餓はありうるとしても、局地的に政治の不在で起こるだろうということ。なにより、中国の穀物輸入超過はたんなる経済上の問題、比較優位の問題だということだ。外貨があれば穀物を買うのは当たり前のことだ。
 が、チャイナデイリーにもあるように中国国内での穀物の絶対量の不足もある。このあたりが私の上の世代など食えない貧しさのトラウマ(心的外傷)をもっている人にはきつい。実際、政治上のへまがあれば飢餓がありえないわけでもない。
 楽観論的に言っておきながら詰めが甘くて申し訳ないのだが、まず、この「食料」の正体というか大半は「穀物」である。これは、飼料と油など加工原料だろう。そのまま食うという意味での食料ではない。そして、チャイナデイリーも指摘しているのだが、食物には畜産物も含まれている。

What Cheng reckoned as "unexpected" was the part of the deficit contributed to by trade in animal products.

China's animal products have been long regarded as advantageous in terms of export, Cheng said.

But between January and June, China exported US$1.37 billion worth of animal products and imported US$2 billion, creating a deficit of US$630 million, the customs statistics indicated.


 端的に言えば、中国人が米国などの肉を食うようになったということだ。近代化につれ、食の構造が変化したということだ。それだけのことだとも言える。
 私が気になるのは、米国風の農業、つまり遺伝子改良作物やホルモン漬け畜産といった農業が中国市場を覆うことでもない。これらはある程度しかたがない。そうではなく、自立など所詮不可能な日本の農産物に対して、日本の食文化をどう位置づけるかを模索すべき点だ。曖昧だが、日本の食文化(単にうまいものと言ってもいいだろう)それを維持するにはどうしたらいいか。当然、エコとは関係ない。むしろ文化の問題だ。
 もう一点、気になるのは、中国の農民の問題だ。米国から穀物や畜産物を輸入しなくても、その気になれば中国内で受給可能になる潜在力はあるだろう。そういかないのは農政の問題だ。稼いだ外貨でなにを買っても自由だが、中国という国は実際にはマクロ経済のモデルとなるような国家ではないのではないか。なんだか私のほうがトンデモ説のようだが、マクロ経済的に目に見える部分以外の中国が人口面では巨大であり、それはかなり決定的な社会不安の構造になっているのではないか、という懸念だ。昨今の反日運動などもそうした表出でなければいいのだが。

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コメント

見出し「もやは」になってます

投稿: るう@in short | 2004.08.24 11:02

るうさん、ども。訂正しました。

投稿: finalvent | 2004.08.24 14:48

中国国内の食糧問題では、総量というよりも流通にかかわるロスが非常に大きな問題です。現在、高速道路、鉄道などのインフラ整備を進めているので改善されてはいるでしょうが、90年代末に北京で暮らしていることに聞いた話では生鮮食料品ではうん十%が流通段階で腐ったり、商品価値がなくなったりしているようです。
そこらが改善され、生産地での食品加工技術が向上すれば、今のところは自給に問題はないとか。
しかし、生活水準の向上に伴い、食生活も大きく変化しているようですから、予断は許さないのはたしか。
内陸部の四川省でも海鮮料理がブームですが、あそこだけでも日本の人口と同じです。東シナ海の魚はもう日本へ入ってこないかもしれない。
あまり知られていないことですが、革命後長きにわたって中国の沿岸に大規模な漁礁がつくられてきたらしい。それで東シナ海の魚はそちら側に移動しているというような話も聞いたことがあります(笑)。遠大な構想ですね。魚は自由に国境を越えますから。

投稿: MAO | 2004.08.25 15:21

他の国で飢餓で苦しんでいる国もあるのに、食料問題なんてばかばかしい、という言い方が不謹慎で不快に感じました。

投稿: reason | 2007.12.11 10:13

中国の実情をご存知ないようですね。レスターブラウンアレルギーはいいけれど、ご自身はまったく説得力のない展開に、読んでいて驚きます。こういう見方が世界の危機を進行させるのでしょうか?おそらくこのコメントは削除されるのでしょうね。

投稿: Q | 2008.06.24 21:48

2004年のこの当時はともかく、現今の世界は、中国が高価格の農産物を購入して、低価格の農産物と農産品加工物を輸出してくれないと困る世の中になっています。今後ますますそうなっていくと思います。

私なんかは、炭水化物は水稲主体に摂取して、動物性たんぱく質は豚肉か鶏肉主体に摂取することが世界的に普遍化するのが人類にとって最もよい食生活のあり方の方向付けであると考える者ですが、そのうち、信じられないくらい贅沢な食生活をする人たちが増えないと、世界経済がうまく回らなくなるかも?などとも思っています。信じられない人には信じられないでしょうが。

農産物の最も優れた高付加価値化の方法は、昔から、発酵と醸造であると思われます。中国が、ビールの大輸入国になってくれることは、世界の富裕化の一因となりうると思います。わたしはこの件では冗談など言っていません。

投稿: 農業自由貿易の拡大? | 2008.12.22 09:39

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