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2004.08.23

美浜原発事故について、今さらだが

 9日の美浜原発事故について、私は、それが原発特有の事故ではなく、火力発電所などでも起こりうる事故だと知って、まず関心を失った。近年、大工場で事故が多発しているという日本の状況に一つ事例を加えるという程度のものであり、原子力発電だからという問題ではないように思えた。その後、関西電力とその天下り先会社である日本アームのすったもんだについて、これもよくある醜い日本社会の構造だと考えた。しかし、なにか無意識にひっかかる。ので、私が常にそうするようにわかる範囲での初期報道の洗い出しをしてみたのだが、その無意識的なひっかかりはより大きくなってきている。思いと考えがまとまっていないし、この事件になにか隠された真相があると主張したいわけではない。しかし、とりあえず書いておきたい。
 無意識のひっかかりのコアは非常に単純なもので、その事故は偶然なのか、人為的なのか、ということだ。中川昭一経済産業相は12日の記者会見で事故を人災と見ている。この災害は起こるべくして起きた人災という意味で人為的ということには落ち着きそうだ。しかし、私がここで疑問に思っているのはそういう意味ではない。端的に言って、作業員がそこにいたのは偶然なのか、それとも作業員が事故の誘発になんらかの関わりがあるのか。もちろん、私は作業員にミスがあると主張したいのではない。その点は誤解無きよう。事件の大枠は明らかに人災だからである。
 毎度のことながら初動のニュースを追ってみる。事件当時の様子を記者たちはどう想像して描いているのか。読売新聞大阪「美浜原発事故 高熱蒸気、突然襲う 作業着姿で全身やけど 氷で応急処置/福井」(2004.8.10)にはこうある。


福井県美浜町の関西電力美浜原発3号機のタービン建屋内で、九日午後、二次冷却水の蒸気が噴出し、作業員四人が死亡、二人が重体、五人が重軽傷を負った事故。突然、復水配管の穴から流れ出した約140度の熱湯が蒸気となって下にいた作業員に容赦なく降り注いだ。

 蒸気が降り注いだという表現がよくわからない。熱湯が降り注いだというのなら了解しやすい。もちろん、噴出したのは常識的に考えれば蒸気ではあるのだろう。単純なところ、作業員情報から熱湯を浴びたようにも読めるが、よくわからない。同記事には次の描写もある。

 水蒸気は建屋内に充満し、火災報知機が作動。十一人のうち七人は自力で出口まで逃げたが、四人は配管近くで倒れ、耐熱服を着用した関電社員らが担架で外に運び出す。
 二階天井付近の配管に大きな穴が開いていた。配管を包む石こうボードの破片が床に飛び散り、床には熱湯がくるぶしまでたまっていたという。建屋二階は消防隊員が突入するのを躊躇(ちゅうちょ)するほどのすさまじい熱気だった。

 ここではすでに蒸気ではなく熱湯として表現されている。当然といえば当然だが、実際の被害は熱湯ではないのだろうか。
 破裂は二階天井付近ということで、たまたま被害にあったように受け止められる。しかし、勘ぐり過ぎるかもしれないが、検査作業の足組みなども設置していたのではないか。状況は単純にはわからない。
 作業員がなにをしていたかについては、大枠では次のように、検査準備であったとされている。

 作業員が所属する大阪市天王寺区の木内計測が関西電力の関連会社から請け負っているのは、タービンに付いている圧力計や温度計など計測器具の検査で、年に一度のタービンの定期検査に合わせて実施。タービンの温度が下がる今月二十日ごろから、約一か月かけて検査する予定だった。
 同社の曽我唯志・技術本部開発課長は「うちの社員は事故現場に居合わせただけと考えている。想定外の事故で筆舌につくしがたい。若狭支社(福井県小浜市)に対策本部を設け、状況把握に努める」と沈痛な面もちで語った。

 ここでもまた失礼な勘ぐりのようだが、「うちの社員は事故現場に居合わせただけと考えている。」という言明は、作業員の関わりを極力排除したいという意志が当初から明確になっていることがわかる。
 私はこの事件になにかひっかかりがあると感じた、その感覚のコアをもう一度見つめ直すのだが、そこに「絵」が見えないということがある。そして、ふと、従来の原発事故は絵(映像)として報道されていたことに気が付く。今回、事故後に撮影されたビデオが存在しているのだが、それは人道的な配慮から報道の対象にはなっていないようだ。なにより、それは事故後のビデオだ。と思いを進めるととき、なぜ事前の映像が存在しないのかと思い至る。私は無茶なことを言ってはいないと思う。関連資料をざっと見ていて、「美浜発電所だより」の「第4回アトムカップゲートボール大会を開催」(参照)にこういう記事がある。

11月9日(日)21時37分、美浜発電所2号機の調整運転中における加圧器スプレ配管ベントライン閉止栓からの水漏れに伴い点検のため原子炉を手動停止しました。
[発生状況]
 7時頃     監視カメラにてほう酸の析出を確認
 7時頃~9時頃 約4分に1滴程度の水漏れを確認
 13時     加圧器スプレ配管ベント弁のシート漏れと判断プラント停止をして点検を行うことを決定
 14時     出力降下開始
 21時37分  原子炉手動停止

 監視カメラが異常を捕らえ、それにより点検のため原子炉を手動停止したのだ。私の疑問は単純である。今回の事故現場には監視カメラはなかったのか? なかったのかもしれない。しかし、その言及は報道にはない。
 作業員はなにをしていたのだろうか。先の記事中、「タービンの温度が下がる今月二十日ごろから、約一か月かけて検査する予定だった。」とあることから、本来なら検査は、さらに10日後ではなかったのか。
 毎日新聞「美浜原発事故:配管破損、腐食が原因か」(参照)では、検査日を14日ごろとして識者から次のコメントを掲載している。

 死傷した作業員は14日から始まる予定だった定期検査の準備中だった。NPO(非営利組織)「原子力資料情報室」の伴英幸・共同代表は「検査期間を短縮し、原発の稼働率を上げるため、通常運転中に、あらかじめ準備できる作業をさせていたのだろう。安全性より経済性に軸足を置く電力会社の姿勢の表れで、原発のあり方が問われる」と指摘する。

 原子力資料情報室伴英幸共同代表の指摘は、故人平井憲夫原発被曝労働者救済センター代表の指摘を連想させる。平井憲夫は原発の点検工事をコミカルにこう描いている。

 稼動中の原発で、機械に付いている大きなネジが一本緩んだことがありました。動いている原発は放射能の量が物凄いですから、その一本のネジを締めるのに働く人三十人を用意しました。一列に並んで、ヨーイドンで七メートルくらい先にあるネジまで走って行きます。行って、一、二、三と数えるくらいで、もうアラームメーターがビーッと鳴る。中には走って行って、ネジを締めるスパナはどこにあるんだ?といったら、もう終わりの人もいる。ネジをたった一山、二山、三山締めるだけで百六十人分、金額で四百万円くらいかかりました。
 なぜ、原発を止めて修理しないのかと疑問に思われるかもしれませんが、原発を一日止めると、何億円もの損になりますから、電力会社は出来るだけ止めないのです。放射能というのは非常に危険なものですが、企業というものは、人の命よりもお金なのです。

 たしかに、原発をできるだけ止めないで点検しようとすることが問題の背景にはあったのだろう。
 しかし、それだけなのだろうか。

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「時事」カテゴリの記事

コメント

そうだ。
あとの映像があって、あのタイミングで
前部分がないわけがない。

って、いつも「点検・調整・修理」のときに
映像があるのか?
んでもって、都合のいいとこだけ映すのか?
確かに疑問。
なにが変なんだろう?

投稿: dona dona | 2004.08.23 19:01

もっともらしく穿つなら、点検報告書に記載したくない作業をしていた、あたりでは。具体的にはわかりませんが。

投稿: Sundaland | 2004.08.23 19:52

問題の箇所の点検漏れは以前から指摘されていたとの事だから、
そこをこっそり(規定の点検の前に)点検しようとして、
その弾みで「ドッカン」なんじゃないのか。
そして、その点検は炉を止めて行うルールだったんじゃないのか。

なんて勘ぐっちゃいます。

投稿: at | 2004.08.23 20:10

こんにちは。今回のエントリーの中で「 近年、大工場で事故が多発しているという、
日本の状況の一つ事例 」という一文に、逆に別の意味での懸念を感じました。
プラント管理能力の衰退、という問題もアレですが、それはさておいて
事故発生前後の大陸・半島関係の事象とか、事故直後の不可解な情報の錯綜とかを、時系列で
照合してゆくと、まぁ穿ったキワモノ的な見方かもしれませんが、監督官庁とはいえ、中川氏が
「人為的」といったのが、何か二重の意味を含んでいるように思えました。
(沖縄のアレともどこかで繋がっているような気もするし・・・オイオイ汗)
それにしても、環日本海という地政学的な尺度で見ると、何故、美浜・敦賀とかの微妙な場所に、
あんなに原子炉がニョキニョキ建っているんだかw

投稿: uiui♪ | 2004.08.24 14:04

関西電力会長がらみの関西経済界のきな臭い事情もありそうですが。


投稿: kep | 2004.08.24 14:23

密閉された配管の中を加圧して循環させていれば140℃の熱湯、
管が破れ外気に触れれば140℃の蒸気になるのだと思われます。

投稿: M | 2004.08.24 14:53

>Mさん
二次側で、タービンを抜けた後の断熱膨張した蒸気だったら140度で熱湯にはならないはず。腹水した後だったらそんなに温度は高くないはずだし、やっぱ蒸気だったんじゃないかな?

投稿: ななしさん | 2004.08.24 18:18

トラックバックの先に

『「2次系給水管」の部分で起こった配管の破裂であり、140度でしかも9気圧の熱湯が通るパイプ』

ってありますね。失礼しました。

投稿: ななしさん | 2004.08.24 18:34

ども。追記的な情報ですが。

「関電の発表でたらめ」 美浜事故で専門家が批判
http://news.goo.ne.jp/news/kyodo/shakai/20040818/20040818a4350.html
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 関西電力美浜原発の死傷事故を受け、東京都千代田区で18日開かれた市民グループの緊急集会で、反原発運動に取り組んでいる槌田敦・名城大教授(物理学)が講演し「関西電力は事実を発表しておらず、原子力保安院もそれを容認してしまっている」と批判した。
 槌田教授は「関電側は蒸気漏れと言っているが、事故は配管の破裂で漏れたのは熱水。事故をなるべく小さくしようとしており、発表はでたらめばかりだ」と指摘。
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投稿: finalvent | 2004.08.24 18:40

配管の断熱材が、蒸気噴出で剥がれたのか、点検作業の準備として断熱材をはがしたのか? ここがはっきりすれば。
また肉厚0.6ミリで通常の状態で配管が耐えられるのか?という事も専門家はどう見ているのでしょうか?

投稿: itten | 2004.08.24 19:56

火力発電所でも起こりうるから、原子力発電だからという問題ではないように思った、というのは、すでに情報操作に乗せられているように思います。物理的にはそうかもしれませんが、それ以外の事故を引き起こしたそれをとりまく原発特有の環境を無視しているからです。
でも、そのことなどがひっかかりとして知覚され、「たしかに、原発をできるだけ止めないで点検しようとすることが問題の背景にはあったのだろう。しかし、それだけなのだろうか」というところまでたどりついたのでしょうね。

投稿: な | 2004.08.27 02:00

風が吹くとき、何人かの技術者は一瞬にして命を失った。しかし、ガイガーカウンターは反応しなかった。イギリスの人々には東洋の神秘とも思えるのではないかと考えてしまう。腐食を予測しうるだけの技術を持った技術者が中に入っていったら事故が起きた。原子炉はダイアナのように“Leave Me alone."と言っているかのようだ。原子炉が拒否を示した予兆はなかったのか。nuclearは神の力という人もいる。神に挑むのは勇敢といえるのだろうか。しかし、原子力なくしてサイバーシティは存在しない。Shall God Bless them. Amen.

投稿: よー | 2004.08.29 15:04

美浜原発の最新ニュース

http://ggtms.com/p/gpmihama.html

活用いただければ幸いです。

投稿: ガイガータイムズ | 2011.07.23 10:26

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