ナウル、冗談ではない
少し前の話になる。今月5日のことだが第35回太平洋フォーラムがサモアの首都アピアで開催された。様子はBBC"Pacific Forum opens Samoa talks"(参照)などがわかりやすいだろう。話題の中心はここでも触れられているように国家破産に貧しているナウルだ。
On Friday, an appeal was made for help for the nearly bankrupt island of Nauru, on the brink of financial ruin.Corruption, economic mismanagement and dwindling stocks of phosphate, its main export, mean that Nauru risks becoming a "failed state", said Cook Islands Prime Minister Robert Woonton.
"I hope the bigger countries will look very sympathetically toward the needs of these islands before it becomes a multimillion dollar exercise like the Solomons," he said.
ナウルは1万6千人ほどの小国だが、今回のアテネ・オリンピックにも代表選手を送っているように国家として独立している。1999年には国連にも正式加盟しているので、台湾・中国外交のターゲットにもされた。
詳細は外務省の「ナウル共和国」(参照)と言いたいところだが、重要な情報がわざとらにオミットされているのと、内政についても正確な情報ではあるのだがなにがなんだかわからない。むしろ、ナウルを知るにはブログ「適時更新」の「ナウルの記事のまとめ」(参照)がわかりやすいかと思う。お笑いテイストで書かれているのだが(というかお笑いテイスト以外には書けない対象かもしれないのだが)、ナウルという国の現状の問題は掴めるだろう。きちんと手短にまとめた情報は、BBC"Country profile: Nauru"(参照)及び"Timeline: Nauru"(参照)にある。
ナウルは、もともと燐鉱石の国家資源を有効に島民に配分していけばなんとかやっていけた国なのかもしれない。が、同規模の日本の地方自治体でも似たような傾向があるのだが、ナウルもその資源枯渇とともに迷走を始める。国家の指導者が誰かもよくわからない。それでも一応、国家であることを建前に、パスポート販売やタックスヘブンを始めてしまったので、ウンコに銀蠅が群がるように(という光景を最近見なくなたと思うが)悪が群がった。アルカイダ資金がプールされていることも判明しアメリカは怒った。テロリストや犯罪人もナウル国籍を偽造に使った。
と、言うような話は日本には関係ないのかと思ったが、ちょっと調べると、あらま、そうでもない。「資産家宅を狙った緊縛強盗事件、男2人を再逮捕」(参照)によると、関東地方の4都県で2003年末から相次いだ資産家宅を狙った緊縛強盗事件の犯人がナウル国籍だった。
再逮捕されたのはナウル共和国籍で千葉県市川市市川南4、無職、デイビット・カイピン・チェン(35)▽中国籍で同県船橋市海神1、同、余強(35)の両被告=いずれも強盗罪などで起訴。調べでは、チェン容疑者らは3月12日午前4時ごろ、ほかの7人と共謀して板橋区大山町のビル管理業の男性(60)方に侵入し、室内にいた男性ら4人を粘着テープで縛り、現金約245万円と約3000万円相当の貴金属を奪った疑い。
おやまという感じだが、このあたりは組織的に展開していたのだろう。
都合のいい国なので、難民もやってくる。北朝鮮難民も経由したようだ。が、最大の問題はアフガン難民だ。しかも、アフガン難民がナウルにやって来るというのではなく、オーストラリアにやってくるのをゴミ箱よろしくナウルに押し付けてきた問題だ。先のBBC"Timeline: Nauru"にはこうある。
2001 August - Australia pays Nauru to hold asylum seekers picked up trying to enter Australia illegally.2002 June - Nauru holds some 1,000 asylum seekers on Australia's behalf. President Rene Harris says Canberra's promise that they would be gone by May has been broken.
この状況は非人道的ではないかということで、昨年末から今年の初めにかけて収容されているアフガン難民はハンガーストライキを始めた。読売新聞2003.12.18「足止めアフガン難民、豪移住求めハンスト 赤道上のナウルに2年」を読むに、悲愴である。
難民支援団体や豪移民省によると、ナウルの収容施設には、女性や子供を含む二百八十四人の中東からのボートピープルが生活しており、このうちアフガン人二十三人とパキスタン人一人の計二十四人がさる十日、ハンストを始めた。このうち四人は自分の唇を縫い合わせた。十七日までに十一人が脱水症状などで病院に運ばれた。
ハンストは収束したがオーストラリアの態度は変わっていない。という情報だけ書くとオーストラリアはひどい国だという印象を与えるが、私の考えでは日本のほうがもっとひどい。オーストラリアはなんだかんだ言っても、政治難民の受け入れを全体では緩和している。むしろ、オーストラリア政府としてはこの件をテロ対策の一環として扱っていたのだろう。
ナウルをどうしたいいのか? 太平洋フォーラムが示唆するように支援するしかないのだが、支援は実質的な独立の放棄になるだろう。
今朝のNew Zealand Herald"Nauru learning to live without wealth"(参照)は、日本人にしてみるとなんだか植民地政策のように見えないでもない。ABC News"Nauru urged to reconsider its independence"(参照)はもっと露骨だ。独立なんかやめなさいということだ。
しかたがないのだろう。ナウルは特例とも言えるが、こうした傾向は他にも及ぶだろう。国家とはなんだろうなと思う。というほどでもではないが、宮古など文化的にはすでに独立国。だが、名目的に独立することは無理だろう。え? どこから独立? 日本、沖縄?
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コメント
>宮古など文化的にはすでに独立国。だが、名目的に独立する
>ことは無理だろう。え? どこから独立? 日本、沖縄?
8月15日以降、米軍占領までの8日間に「八重山共和国」が実在したそうですね。
http://www.melma.com/mag/39/m00111839/a00000002.html
伊豆大島では「大島共和国」もありました。
http://www.tokyoislands.com/yamatokan/special/okami.htm#cnstitution
投稿: スルッとKANTO | 2004.08.20 19:28