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2004.08.01

夏は冬瓜

 スーダンに武器を流している国のことを少し調べていくうちに気が滅入った。適応障害について調べていくうちにもっと気が滅入った。シリアスな話なんか書くんじゃねーとGoogle AdSenseに言われているようでもある。食い物の話でもするかね。さて、最近なんか食い物忘れているよなとつらつらと思うに、冬瓜である。
 沖縄に暮らしていた頃、この季節、必ず冬瓜を喰う。三日に開けず喰う、というほどでもないが、よく喰う。
 内地に戻ってからは冬瓜すら見かけない。いや、そうでもない。あれだ、切って売るなよな、である。と言っても空しいか。内地の家庭では、まるごとじゃ喰いきれないものな。
 と、もしかすると、冬瓜というものを見たこともない人も増えているかもしれない。もしかして、「冬瓜」も読めないとか…。なぜこの字を当てるかとか……ま、そんなことはどうでもいいか。知識より先に喰うこった。
 沖縄も核家族化が進み(少子化も進んでいる)、スーパーなどでは冬瓜を売ってないところもある。が、ちょっと田舎っぽいところのマチヤ(小売り)みたいなところではごろっと売っている。でかい。欧米の西瓜のように楕円形で、でかい。フットボールより、でかい。そして、すごい重い。まじかよというくらい、重い。あれが伝統的な沖縄の家の台所の隅にごろっと置いてある。やぁ、っていう感じだね。わらび(子供)はこれをかならず、よいしょよいしょとか言って持ちたがる。無理だって。
 冬瓜は、沖縄では「すぶい」とも言う(「とも言う」というのは沖縄的だな)。「しぶい」が語源とも言われているが、まさかね。私が暮らしているときは、「とうが」とも言っていた。「ん」が脱落していた。なぜかわからない。
 調理法は…とネットを引くといろいろ出てくるのだが、なんかポイントがずれているような気がする。山本彩香「てぃーあんだ」をめくってみたら、冬瓜は載っていない。料理のうちに入らないでもなかろうと思うが…というわけで尚弘子「聞き書き 沖縄の食事」の索引を見ると、なんか変。めくっていくと、索引漏れで各所に記載がある。なーんだ。


とうがんはほかの野菜と違ってもちがいいので、収穫したあとは、家の後ろの太陽の当たらない涼しいところに並べて貯蔵する。諸行事のときやお祝いごとのあるときに、こんぶといっしょに豚肉の汁で煮て食べる。また、生でも食べる。

 うまい記述だ。たしかに冬瓜の基本は、いわいむん(お祝い料理)である。もっと重要なのは、昆布と豚肉の汁で煮るという話だ。
 脱線で、しかもこんな話するとちょっと嫌われるだろうなと思うが、ちょい覚悟して言うと、えー、おまえだってそうだと言われるかもしれないがだな、えー、内地の人間が「沖縄そば」のどこがうまいとか言う話題は、大嫌い。うちなーんちゅも、どこどこのそば(すば)がうまい、という話が好きだが、これもおいおい、と思う。
 沖縄そばというのは、昭和初期頃内地から入ってきた支那そばをまねしてできた食い物だ。「そば」の呼称は「支那そば」に由来する。支那そばって、うまいなとうちなーんちゅも思ったのだろう。そして作れないかと思ったわけだ。
 麺の腰を出すのに鹹水はない。だから、ガジュマルの灰の上水を使った。麺を細く切るのはむずかしいので太くなった。出汁は…そう、沖縄で出汁といったら昆布と豚肉の汁しかない(塩で調味する)。それに入れる。できあがり。これが沖縄すばというものだ。
 そこから出汁はかつおがあったほうがうまいので足す。トッピングがないのは寂しいのでかまぶく(蒲鉾)をのせる(内地の現在の蒲鉾とは違う)。三枚肉をのせる。ということだ。そういうものなのだ。これは、アーリオオーリオと同じで、外で喰うようなものじゃない…脱線、長すぎ。
cover
カツ代が聞く、
九十一歳現役台所
 で冬瓜なのだが、ようは出汁で煮るというだけのこと。沖縄料理の出汁は昆布・豚・カツオしかないから、それで煮るだけ。煮くずれないように煮るだけ、と言いたいところだが、冬瓜は一旦下ゆで(水煮)する。それから出汁を含ませる。汁が料理だとも言える。もちろん、バリエーションはいろいろあるけど、基本はそれだけ。同日追記。ちょっと気になってうちなーんちゅに訊いてみた。下ゆでなんかしない、それと、肉を煮るとき泡盛を入れてね、とのこと。なるほど。
 それで話もおしまいなのだが、冬瓜というのは、本土の人も夏場に普通に喰う食べ物だったなと思い出す。そういえばと書架を見ると「カツ代が聞く、九十一歳現役台所」がある。明治38年生まれの秋山千代さんはこう言っている。なお、先生と呼ばれているのはカツ代先生である。

あの、先生、冬瓜は「夏の腹薬」っていうんですよ。夏に煮るのね。これね、今日は鶏の挽肉と煮ましたけど、エビと煮てもおいしいんですよ。…


冬瓜というのは、だいたいやわかくして食べるものですから。鳥じゃなくてもいいのよ。油揚げと煮てもおいしいの。それから「なまり」がおいしいの。「なまり」ってお魚があるでしょ。

 というわけで、東京でも昔から喰っていたものだった。なお、作るかたにいらんお節介だが、油揚げは必ず湯通ししてくれ。
 以前、NHKのドラマほんまもんで夕顔を冬瓜の味の違いがわかるかというシーンがあったが、京料理でも当然、冬瓜使う。もっとも、夕顔を冬瓜を比べるか、ドラマ? 私は宇治で喰った京料理の冬瓜は忘れらないほどうまかった。食い物と限らないが私は京都市内より宇治のほうが好きだ。
 夕顔についてもちょっと思い出がある。信州の思い出だ。またね。

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コメント

冬瓜大好きです!
実家(大阪)では両親が家庭菜園で作っていました(今もかな?)父の生まれ故郷が奄美諸島なので。
うちは、作り方は昆布とカツオと豚肉までは一緒ですが、味付けに白みそ使っていました。ほかに甘めのあんかけ風にもしていましたね(邪道?)
実家を離れてしばらくたつので、冬瓜を食すこともなかったのですが。
また久しぶりに食べてみようかな。。。

投稿: wakasiyo | 2004.08.01 15:20

 冬瓜を店で買う感覚はないですね。女房はあまり使わないけど実家の母は、この時期よく料理してくれました。(昨日食った。)
 もーい(赤瓜)も夏場の野菜として、よく食べてました。(過去形なのが、なんか変ですが)
 苦瓜は、今やゴーヤーとして全国区になり、なんだかなぁって気もしてきますが。
よく分からんコメントで失礼しました。

投稿: やんばる原人 | 2004.08.01 16:04

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受信: 2004.10.25 06:05

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