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2004.08.10

消費上向きで100円ショップがなくなる?

 6日のフィナンシャルタイムズに日本の100円ショップの話が載っていた。そんな話も載るのかと思って読んだ。"100-yen shops fall victim to Japan's recovery"(参照・有料)である。記者はMariko Sanchanta。標題は「100円ショップは日本の経済回復の犠牲となる」とあるように、日本の消費経済が回復するにつれ、日本人は安物買いをしなくなったというのだ。


With economic recovery increasingly well-established and deflationary pressures continuing to abate, Can Do, an operator of Y100 shops, is set to close 34 of them by November. Meanwhile, Daiso, the leading owner of Y100 shops, has diversified its product range by introducing items that cost between Y200 and Y300. Y100 shops first appeared during Japan's economic “lost decade”,

 話にさして裏付けがあるわけでもない。昨年11月にキャンドゥで34店舗が閉鎖。ダイソーでは最初のウリだった100円以外に、高額が200円、300円が出てきた、というのだ。が、日本の「失われた10年」と結びつけるような話でもあるまい。
 山本夏彦はよくエッセイで300円は金の内に入らない時代となったと言っていた。先日亡くなったマクドナルドの藤田田は、ハンバーグの価格はタバコ一箱にしろと言っていた。タバコは300円くらい。300円が高額化というものでもあるまい。
 余談だが、タバコの価格の正体は税金なので鰻登りとまではいかないものの、ちょっとした一服の庶民感覚より上昇してきた。それでも、欧米の半額以下なのは、タバコは日本人の福祉的な意味があるからだろう。この話は極東ブログ「たばこという社会福祉(もちろん皮肉)」(参照)に書いた。週刊文春・週刊新潮もいよいよ300円を超えようとしている。恐らく日本の経済は、この300円ベースからワンコイン500円の間を結局のところを税金などが埋めていくという仕組みになるだろうと思う。隠された重税社会だ。
 記事に戻る。日本庶民の財布が緩みつつあるとして高額のモスバーガーが売れているというエピソードがある。

But there is anecdotal evidence that certain companies are taking advantage of the fact that consumers are beginning to open their purses, albeit cautiously. Mos Food Services, a company that operates Mos Burger, the fast food chain, last year introduced a Y610 limited edition hamburger that has contributed to a 2-3 per cent increase in the average spent by each customer.

 610円のハンバーガがよく売れて、総売上に寄与しているというのだ。記事にはないが、モスバーガーもこれに気をよくして今度は880円を出す。「モスが880円バーガー 高級路線をアピール」(参照)だ。

新商品は、昨年8月から販売している高級バーガー「ニッポンのバーガー 匠味(たくみ)」シリーズの新メニュー「アボカド山葵(わさび)」。静岡県の安倍川水系で栽培され、すし店などで使われる本わさびのすりおろしを付け、牛肉やアボカドのうま味が際立つようにした。当初は100店限定、一店当たり1日10食とし、改装の進ちょくに応じて取り扱う店を増やす。

 しかし、当面、これは恐る恐る話題作りということに過ぎないだろう。
 私は、庶民の財布が緩んでいるという実感はあまりない。モスバーガーの事例もフィナンシャルタイムズのエッセーの読みとは違うと思う。簡単でヘルシーな個食(参照)志向だろう。オヤジとタバコを避けて個食したいというニーズではないかな。現状、マクドナルドのほうも経営が持ち直してきているが、こちらは高級化というより基本サービスを向上させているからだと思える。
 財布が固いという実感はある。自分の趣味ではないのだが、夏休みということもあり郊外のファミリー対象の回転寿司に行く機会が増えたのだが、絵皿による値段差がなくなっていた。300円ネタがない。300円でネタを喰うという感覚は戻っていない。300円の寿司ネタは別の、それほど消費に寄与しないセクターに移行しているのだろう。
 100円ショップについても、このセクターが他の小売りに事実上吸収されているからではないかと思う。
 私も先日、ダイソーとキャンドゥで買い物をした。付箋やプラスチックケースなど簡単な文具がそこにしかないためで、特に買いたい商品が100円ショップにあるわけではないし、安いからというのも理由ではない。
 目的のものを買うと、あとはぶらっと面白いものはないかなと見て回る。そういうショップなのだ。ちなみに、なにを買ったか? アクリル絵の具、FMラジオ、韓国製の激辛ラーメン、書道の半紙…あまり意味のないショッピングだった。消費というより、ショボイ娯楽である。

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コメント

いつも見てます。ちょっとおりこうになれる気がします。またお邪魔します。コメントになってないですがすみません(>_<)

投稿: luv2u0609 | 2004.08.10 18:25

すみません、なぜかいっぱいはいってしまいました(T_T)

投稿: luv2u0609 | 2004.08.10 18:27

財布のひもがゆるんでると言うより、貯めた金を
一点豪華主義で使ってるだけのような気がします。
見栄やファッションなど、高い物を身につける、
使用することで生まれる「かっこよさ」を、求める一面もあると思います。
(ソースタイン・ベブレンの言う顕示的消費)
これからは、極端に高いものと極端に安いものと
両極化していくのではないかなと思います。

投稿: Arista | 2004.08.11 01:30

上記のコメントに同意します。
1点豪華主義までいかなくても、少々高くても長く大切に使えるものを購入し、一方日常使いのものはあくまで安く済ますという消費パターンは、そのまま私です。
100円ショップですが、最近はほとんど行きません。理由は「意外と高い」からです。量と金額から換算すると割高な場合もあるので、安い買い物をしたいときは量販店のほうがお得。初めは100円で買えるものの豊富さを楽しみつつよく通いましたが、安かろう悪かろうもかなり経験しました。私の結論としては「100円で買えるものの範囲はあくまで狭い」です。
個人的な感想として、贅沢感を味わう(財布のひもが緩む)消費は、ものの購入ではなくてサービスに変わりつつあるのではないかなと感じています。外食もサービスといえばそうですね。

投稿: あさ | 2004.08.11 12:09

・100円ショップで自転車のワイヤーキーを買ったら、鍵が折れて大変なことになりました。

・ささやかな、というよりみみっちい「贅沢感サービス」
http://simon.txt-nifty.com/blog/2004/08/1.html
笑ってやってください。

投稿: さいもん | 2004.08.11 16:22

はじめまして。
わたしにも景気が回復しているという実感はありません。
確かに細切れ雇用は増えましたが、正社員からバイトまで給料も保証も削られる傾向はやみません。YAHOOのニュースでも、大学生が書籍代を減らす、各家庭が食費を削る、激しい労務管理で自殺や精神障害が増えているといった統計的データが紹介されていたのを覚えています。
100円ショップの売り上げが落ちたのだとすれば、理由は次の3つのうち1つ以上だと思いますが、いかがでしょうか?
1.低所得層や失業者は、100円ショップの買い物すら重荷になってきた。(そういえば大阪で母子家庭の親と子が餓死したとの報道もYAHOOで見たことがあります。)
2.スーパーなど他の小売が100円ショップ化している。100円前後の商品をそろえている。
3.上のコメントにもあるように、100円ショップは「安物買いの銭失い」だと多くの人たちが同時に実感しはじめた。実際、わたしの買ったバレッタ(髪かざり)はすぐに壊れた。ブックオフで買った本のシールをはがすために買ったスプレーは効果が薄く、水を切り吹きするのと大差なかった。弟の買ったキーホルダーはすぐに飾りの部分がもげてしまった。また野菜や果物は鮮度が悪く、香りが抜けており、まずい。かといってカンヅメや冷凍食品は中国の農産物が使われており、体によくない。
なので、景気回復というのはちょっと違うと感じるのです。

投稿: ぱれー | 2004.08.29 21:11

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