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2004.07.29

ファーストレディー候補曰く、「お黙り!」

 大統領候補であるケリー上院議員のテレーザ夫人が失言をした、というニュースが米国でちょっと話題になっていた。日本での報道を見ていると、なんとなく、ブリトニー・ズピアーズ(Britney Spears)とかアブリル・ラヴィーン(Avril Lavigne)の放言みたいな小ネタっぽい印象にも思える。朝日新聞系「ケリー夫人、思わず『失言』 保守系紙記者に」(参照)ではこう伝えている。


 ケリー上院議員のテレーザ夫人が、新聞記者に「くそくらえ」(shove it)と発言したことが米メディアで大きく取り上げられている。テレーザ夫人は歯にきぬ着せぬ物言いで知られており、ケリー氏は「気持ちを適切に話したのだと思う」と弁護しているが、ケリー陣営は26日からの党大会で敵対的な選挙運動は展開しないという方針を打ち出したとあって、注目を集める結果になった。

 話は、ケリー地元ペンシルベニア州の代議員の会合で、彼女が非米国的ななんたらという曖昧な発言をした際、朝日新聞の言うところの「同州の保守系紙」(実際は"Pittsburgh Tribune-Review")の記者が彼女に「非米国的とはどういう意味か」と問いただしたところ、怒った彼女は、先の発言に及んだというのだ。
 とうのPittsburgh Tribuneのニュース"Teresa Heinz Kerry tells editor to 'shove it'"(参照)をひいておこう。

Her answer prompted the following exchange:
Trib: "What did you mean?"
Heinz Kerry: "I didn't say that. I didn't say that."
Trib: "I was just asking what you said."
Heinz Kerry: "Why do you put those words in my mouth?"
Trib: "You said something about 'un-American activity.'"
A Kerry campaign worker attempted to stop the questioning.
Heinz Kerry: "No, I didn't say that, I did not say 'activity' or 'un-American.' Those were your words."
She walked away, paused, consulted with an associate and returned to this editor.
Heinz Kerry: "Are you from the Tribune-Review?"
Trib: "Yes I am."
Heinz Kerry: "Understandable. You said something I didn't say -- now shove it."

 ちょっとむちゃくちゃん、という感じもする。
 朝日新聞系ではもう一つ「米民主党大会、『暴言』のケリー夫人が締めくくり」(参照)があるのだが、なんか変だ。

新聞記者に「くそくらえ」と発言する様子が全米に放映されるなど、歯にきぬ着せぬ物言いがファーストレディー候補として批判を浴びることも多いが、米メディアはとりあえず、この日は「合格点」をつけた。

 朝日新聞、そういうまとめでいいのか? 私の印象では、朝日新聞、随分とケリーに肩入れしているな、である。私は、ブッシュもケリーも支持しないし、争点の少ない米大統領選挙にあまり関心はない。
 問題は、「くそくらえ」(shove it)の語感でもある。先のPittsburgh Tribuneのニュースでは、この「事件」の当初の印象をこう書いている。

The Sun reporter, Washington correspondent Julie Hirschfeld Davis, thought Heinz Kerry had said only "shut up." But a review of a videotape shot by WTAE-TV confirms Heinz Kerry used the phrase "shove it."

 朝日新聞はどういう意図かわからないが、「くそったれ」と訳しているが、ネイティブが「shut up」と勘違いしたように、状況からもわかるが、「お黙り!」という意味合いがある。
 このあたりの解説はないかとちょっとぐぐったら、あった。「過激で笑えるムービーレッスン『言ってはいけない英会話』」(参照)である。このページの「電車の中で携帯電話を使い続けている人がいた時」がそれだ。

"Turn it off, or I'm gonna shove it up your ass."

 日本語でいうと、「カマほったるか、われ」だろうか。shoveの語感だと「ぶちんだるわい」かも。それでもテレーザ夫人は"up your ass"を略しただけお上品かもである。余談だが、assは「しり」とよく訳されているが誤訳だと思う。じゃ、正解はなんてちょっと言えないのだが。
 などと書きながらちょっとこ汗をかくな。
 この手の口語は、米人とつるんで遊んでないとなかなか身に付かないものだが、って身につけてどうする。あるいは映画でもわかるか。ま、普通はわかんなくてもいい。ただ、「過激で笑えるムービーレッスン『言ってはいけない英会話』」の「信号無視した歩行者を轢きそうになった時」の"Get out of the way!"(あっち行け)は覚えておくといいかも。米軍基地内でコーラ持ってうろうろしていると、銃口向けられて言われるかも、だから(ってそんなこと普通しないか)。
 こういうとなんだが、米国というのは階級社会なので、その世界を覗き見るにはなんらかのツテなりがいるし、率直に言って日本人は、韓国人より差別が少ないかくらいの扱いなので、あまりああいう世界を覗く人は少ないかもしれないが、それでも、あれはすごい世界だ。身だしなみもだがLanguageもきびしい。Languageというのは、「話し方」という意味だ。「言語」じゃないよ。丁寧語がきびしい世界なのだ。あの世界を思うと、テレーザ夫人の今回のインパクトがわかるだろう。
 朝日新聞は取り繕っているが(産経新聞もそうだが)、今回の失言は、彼女も発言撤回をせず、むしろ、リベラルの印象を強めるという方向に出た。これで、福音派はすべて敵に回したようなものだし、上流階級も眉をひそめている。
 とま、なんか批判みたいだが、私は、この件で、彼女が好きになったな。単純な話、私は藤原紀香でもそうだが慈善家が好きだからだ。慈善家って、偽善ぽく見えるが、これをマジでやるには、強い信念が必要だ。それに、私が使うケチャップはハインツだしね。

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コメント

この人は確かに思ってることは人の目をおそれずに言っちゃう人だという印象です。それも、不注意で言うのではなく、確信犯的に言う。誰それの夫人と言うだけでなく、自分でも慈善家としてやってきた自信があるのでしょう。昨日の演説でも、批判をユーモラスに、しかし決然とかわしていました。該当の箇所を引用します。

"My name is Teresa Heinz Kerry. And by now I hope it will come as no surprise that I have something to say. Tonight, as I have done throughout this campaign, I would like to speak to you from the heart.
(中略)
I have a very personal feeling about how special America is, and I know how precious freedom is. It is a sacred gift, sanctified by those who have lived it and those who have died defending it. My right to speak my mind, to have a voice, to be what some have called ”opinionated,” is a right I deeply and profoundly cherish. And my only hope is that, one day soon, women — who have all earned their right to their opinions — instead of being called opinionated, will be called smart and well-informed, just like me."

「こんなに批判されるのは私が女性だから」とフェミニズムの問題にしたのは、非常にうまい答えですよね。これで、アメリカの女性の7割は同情するでしょうから。
 それから、"shove it" という表現ですが、"shove it up your ***" とはやはり差がある気がします。テレビのコメンテーターからアナウンサーまで、男女無関係にみんな "shove it" って口にしていましたからね。一方、チェイニー副大統領が上院議員に向かって F-word を使ったというニュースがありましたが、この単語はテレビでは口にできませんから。もちろん、男女の差もありますから、女性にとっては乱暴なことばには変わりはありませんが。(テレーザ夫人を含め)英語を外国語として学んだものにとって、こういうスラングのニュアンスは一番難しいです。

投稿: むなぐるま | 2004.07.29 11:15

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