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2004.07.26

ランス・アームストロングはがん患者の希望

 ツール・ド・フランスでランス・アームストロング(Lance Armstrong)が優勝した。最終日が近くなるにつれ、アームストロングでキマリでしょうっていう雰囲気だったので、あっと驚くニュースでもないし、国内でもベタ記事扱いっぽい。米国でもそれほど大ニュース扱いでもないようだ(これから話題になるのかも)。私はサイクル・スポーツに詳しいわけでもない。ので、ちょっと間の抜けた話になるかもしれないが、彼のがん克服に関心があるので書いておきたい。
 ツール・ド・フランスは、モントローからパリのシャンゼリゼまで163キロを走る自転車ロードレースで(注:この記述はミス。コメント欄おりたさんからご指摘があった。これは最終日のことだけ)、"2004 Tour de France"(参照)を見てもわかるが、まさに名前通り「フランスの旅(Tour de France)」という感じがする。今回は、それまで、スペイン人、ミゲル・インデュラインが持っていた大会5連覇の記録をアームストロングが更新し、史上初となる6年連続総合優勝を達成した。
 優勝者には「黄色いジャージ」が与えられる。と言うと、なんでかなぁ、という感じだが、これが「マイヨ・ジョーヌ(Maillot Jaune)」。この黄色という感じは"Tour de France"公式サイト(参照)を見るとわかるだろう。
 マイヨ・ジョーヌといえば、アームストロングには、「ただマイヨ・ジョーヌのためでなく」という著作があるが、小林尊がアメリカの誇り大食い競争を制したように、米人アームストロングがフランス全土の競争を制覇したということがポイントではない。原題"It's Not About the Bike"(「自転車のためだけじゃないんだ」)が暗示するように、むしろ、がんからの生還がテーマになっている。ツリを引用するとアームストロングの紹介にもなるだろう。


人生は、ときに残酷だけれどそれでも人は生きる、鮮やかに。世界一の自転車選手を25歳で襲った悲劇―睾丸癌。癌はすでに肺と脳にも転移していた。生存率は20%以下。長くつらい闘病生活に勝ったものの、彼はすべてを失った。生きる意味すら忘れた彼を励ましたのは、まわりにいたすばらしい人々だった。優秀な癌科医、看護婦、友人たち、そして母親。生涯の伴侶とも巡り合い、再び自転車に乗ることを決意する。彼は見事に再生した。精子バンクに預けておいた最後の精子で、あきらめかけていた子供もできた。そして、彼は地上でもっとも過酷な、ツール・ド・フランスで奇跡の復活優勝を遂げる―。

 というわけで感動的な話なのだが、この物語のあとで彼は離婚している。人生はなかなか複雑なテイストがある。
 私がアームストロングに関心をもつきっかけとなったは、何年前だろうか、たしか、現在も協賛している製薬会社ブリストル・マイヤーズ・スクイブについてちょっと調べ事をしているとき、この話題の深みを知った。
 現在、Bristol-Myers Squibbは、マイヨ・ジョーヌのアームストロングと協賛して"Tour of HOPE"(参照)を推進している。また、アームストロング自身のこの方面での財団"Lance Armstrong Foundation"(参照)の目的もがん患者への支援だ。端的にこう書かれている。

The LAF believes that in your battle with cancer, knowledge is power and attitude is everything. From the moment of diagnosis, we provide the practical information and tools you need to live strong.
【試訳】
ランス・アームストロング財団は、あなたががんと戦うとき、がんについての知識がパワーとなり、また、がんに向き合う生き方が重要になる、と確信している。がんと診断が下ったときから、私たちは具体的にがん患者に必要な情報と、強く生き抜くのに役立つ情報を提供する。

 財団は機構的にはブリストル・マイヤーズ・スクイブとは独立はしているだろうが、支援も大きいだろう。米国ではがん以外にも各種の難病について、巨大製薬会社は同様の支援を行っている。臨床実験や薬剤市場への意図もあるのだろうが、問題はそれで患者の利益になるかどうかだ。日本では「メナセ」などでお文化の側面はこの言葉に訳語を許さないほど進んでいるが(皮肉)、福祉面での企業活動はよくわからない。なんとなく清貧のNPOという印象があるが、私の偏見だといい。
 アームストロング自身の睾丸がんは、診断時、腹、肺、脳に転移しており、生存率50%とのことだったようだ。そこからの回復は奇跡的というほどでもないのかもしれない。が、私は、そういう「奇跡の生還」といった健康食品的な煽りよりも、むしろ問題なのは、がん患者の社会復帰なのかもしれないと考えるようになった。
 このブログでも書評を書いた「がんから始まる(岸本葉子)」でも、強調されていたが、現在がん患者に必要なのは、5年生存率間の精神的サポートやその後の社会的な偏見を除くサポートの体制だろう。というのも、がんの完治の目安と言われる5年生存率は65%にもなるという。
 米国ではNCI(国立がん研究所)にがん生存者対策局(参照)があるが、先の岸本の本を読むかぎり、日本では厚労省レベルではそうした動向はなさそうだ。テーマが違うよと言えばそうだが、「ブラックジャックによろしく」などでもがん患者のあつかいは、日本のメディアのがん意識に偏向しているように思える。
 どこかにこうした情報をまとめたリンク集ももあるだろうが、がん支援団体Cancercare(参照)も付け足しておく。

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コメント

書き方が難しいですが、seminoma(と推測)は成人でも相当治療成績は高くなっているはずです。これを一般的な癌(例えば乳癌など)の代表みたく言うと誤解を招くのでは。って別に非難とかの意図はありません念為(←死語?)。

投稿: a watcher | 2004.07.26 11:59

本題とは関係ないので、別に良いかなと思ったのですが、一応。
モントローからパリのシャンゼリゼまで163キロを走るのは、あくまで最終日の話で、ツール・ド・フランスは20日間かけてフランス国内を走り回るレースで、毎日のように200キロ近く走って総合成績を競うレースです。一応、物凄く大雑把な補足に変えて。

投稿: おりた | 2004.07.26 13:21

おりたさん、ご指摘ありがとうございました。本文にミスの旨、追記しました。

投稿: finalvent | 2004.07.26 14:16

a watcherさん、どもです。ええ、ご指摘のとおりだと思います。アームストロング自身の客観的な状況から考えれば、象徴的な意味、ということですね。

投稿: finalvent | 2004.07.26 14:17

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