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2004.07.03

日本の高齢者介護問題は外国人看護師・介護士から検討しよう

 朝日新聞社説「介護保険――行きづまりをどうする」を読みながら、高齢者介護問題のことをぼんやり考えた。「ぼんやり」というのは自分が考えがまとまらないこともあるのだが、社説が的を得ていない。端的に、解決策の提言がない。問題は、まず、金(かね)ということだろうか。


 00年度に始まった介護保険はこの4年間で、利用者が300万人に倍増した。なかでも訪問介護や通所介護などの在宅サービスは2・3倍も伸びた。老後の支えの一つとして頼りにされているのだ。
 だが、金は天から降ってこない。当初3・6兆円だった費用は今年度、6・1兆円にふくらむ。3年ごとに決められる65歳以上の高齢者の保険料は、平均月2911円から3293円に上がった。

 当然と言っていいが、保険料の対象は若い世代に向かうのだろう。朝日新聞はこうした問題をなぜ参議院選挙で議論しないのかと責めるのだが、ちょっとタメくさい。年金がボロボロなんだから、ダメに決まっているという現実がある。
 厚労省はどうしようとしているのか。朝日新聞はこう見ている。

 本当に高齢者の自立に役立つサービスに切り替える。介護を必要としないよう介護予防に力を入れる。そうして、できるだけ利用者が増えないようにする。
 特別養護老人ホームなどの施設は、介護だけでなく食事や住居の費用まで保険でみているが、この部分は在宅サービスと同じように高齢者に負担してもらう。
 介護保険の対象を高齢者だけでなく障害者も加え、介護が必要な人は国民全体で支え合う仕組みにする。保険料は高齢者と40~64歳の人だけでなく、新たに20~39歳の若い世代にも払ってもらう。

 よくわからん。
 朝日新聞は介護予防は当然だとしてそれ以上言及していない。私はこの問題にはなにか大きな錯誤が隠されていると思う。そう思うのは、メディアはさも日本人は米国人より健康だみたいな法螺を吹くが、100歳以上の老人の人口や、高齢者の自立という点で、たしか日本は米国にはるかに劣っていたと記憶している。誰かがグルでなんか隠蔽しているなという感じがする。ついでにいうと、アルツハイマー病の統計も日米間でなにか違う。
 次に、食事や住居の費用まで保険でみるのを止めるというのだが、実際上、日本の場合、高齢者介護は子どもが主体になっているはずだ。朝日新聞はわざとなのかそこを最初から無視している。子どもが親の面倒をみろ、と単純に言うのではないが、まず、その支援策から検討されてしかるべきではないのか。
 介護保険と障害者福祉の統合については、金の問題はさておくとすれば、なにが問題なのかよくわからない。
 朝日新聞社説で、なにかまた隠蔽しているなと思ったら、外国人看護師・介護士についてなにも言及していないことだ。関係ない話題でもないだろうに。
 読売新聞系「外国人の看護師や介護士、「受け入れ」申請次々」(参照)をひく。

 政府が地域を限定して規制を緩和する「構造改革特区」の第5次の申請で、全国12の病院や介護施設などが、外国人の看護師や介護士の受け入れを認めるよう求めていることが、30日明らかになった。
 高齢化の進展で、地方を中心に看護師や介護士の不足が深刻化していることが背景にある。政府は外国人労働者の受け入れに高いハードルを設けているが、フィリピンとの自由貿易協定(FTA)の交渉では、フィリピンが看護師と介護士の就労を求めていることもあり、今後、外国人受け入れを巡る議論が活発化しそうだ。

 私の率直な考えを言えば、改革特区なんてまどろこしいことしてないで、さっさと全国レベルで外国人の看護師や介護士の受け入れを推進すればいいと思う。FTAの考えからしてもそうだ。
 この問題は、「ナース・スタイル」というサイトの「"外国人看護師さんの受け入れ"って」(参照)が詳しく諸点を上げていて参考になる。ただ、問題点の指摘は変だ。

 これら賃金面以外でも、看護師1人に対する患者数の多さなど深刻な問題が多数あり、フィリピンでは、海外へ職場を求める看護師があとを絶ちません。
 しかし、この“海外出稼ぎ”は、自国に対する経済貢献である一方で、ある大きな問題を生み出しています。というのは、このままのペースで看護師の海外流出が続くと、近い将来、フィリピン国内の看護師の人材不足という問題が起こってくる危険性があるのです。

 なんだかサヨクの言いそうな話だし、くだらない。まずこの視点はフィリピン政府をばかにしているし、なにより看護師のニーズがフィリピンで高まれば裾野が広がる。
 むしろ提言内に潜む問題が気になる。つまり、「日本語」だ。おそらく、外国人看護師・介護士というとき、日本人は日本語が気になるのではないか。あるいは、またこれを非関税障壁にするのではないか。
 しかし、それこそくだらないと私は思う。フィリピンの看護師を例にすれば、英語は十分できる。とすれば、日本側で通訳の草の根ボランティアが補助すればいいのではないか。こんなものは簡単に解決する。
 いや、と私は逡巡する。本丸の障壁がどこにあるかを私は知っているからだ。ちょっと恐くて書けないけど、自分が入院したり親族が入院した経験者なら、わかるよね。

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コメント

私の友人がある企業から介護士に外国人を雇う方向でいることを相談されたと話していました。介護、看護の立場から言うとそれは日本の看護界の死活問題だということです。日本の看護士達の行き場は?それより、介護を受ける患者さんはどう考えるか...考えてるんですかね~簡単に、早急に決めることではない問題です。他人が家に入ることさえ拒む患者さんもいるのです。気持ちの問題、言葉の問題、習慣、宗教、文化、等など問題は山ほどあります。早く決めなきゃならないことでもないと思うのですが...

投稿: ひろみ | 2004.07.11 00:29

外国人看護師・介護士の受入基準は特に気になるところですが、日本語能力や国家試験等のハードルの高さが問題ではなく,明確な基準と時期等の設定が求められます。そのハードルを超えられた者に対し資格が与えられるべきですから、送り出す方も安易に考えて欲しくないですね。意思疎通可能な同国人の介護・看護でも問題がでるのですから、想像以上のトレーニングとモニタリングが必要になってきます。フィリピンには650以上の認定トレーニングセンターがあり、首都圏マニラにはその約半数が集中しております。既に日本に向けた介護トレーニングを開始しているところもあります。要は、受入国がそれ相応の受入基準を設定し、送りだし側がそれに合格する人間を何人位つくりだせるかどうかが問題だと思います。

投稿: masa | 2004.07.12 15:13

 知り合いの介護士は、フィリピンからの看護婦受け入れに反対しています。理由は、「現在の介護士の給料が低く(看護婦の5割弱ほど)、看護婦の7割の収入を目標に収入拡大策を検討して実行しているのに、海外から低価格賃金を目当てに看護婦を受け入れると、看護婦の給料が下がり、収入が上がる余地が全くなくなってしまう」ためだそうな。日本人と外国人では労働内容が同じなら給料も同一である、という仮定が成り立つなら、この反対内容は必ず現実になるでしょう。
 全ての問題は、失業と賃金問題に結びついているような気がする今日この頃です。

 アメリカの高齢者の自立関連は、「その自立している高齢者の平均資産」が圧倒的に違う時点で、前提条件が異なる気もしますが・・・。前提条件が違いすぎて、比較しにくいです。

投稿: うみゅ | 2004.07.13 23:44

 政府開発援助(ODA)で具体的にどんな支援をしていけば外国人看護師と介護士の国内への受け入れがスムーズになるのかについて研究しています。
 端的に言うと、今回のフィリピンとのFTA交渉は、例によって農産物の自由化阻止との取引に使われたのです。看護は、国家試験を日本語で受ける必要があることから、シンボルとしての「ミニマム・アクセス」を確保したのですが、それよりも当初4年の在留資格を与える介護士こそが、フィリピンが欲しい「実」なんだと思います。介護福祉士会は、圧力団体としては看護連盟に比べれば小さいし、施設オーナーたちが受け入れを切実な問題として推進して居る点を考えると、今後数百人以上のフィリピン人介護士が入ってきます。ぼくは、南野法務大臣は、危機感を持って法務大臣にはめ込んだと考えています。すでに政府は、20万人程度のスキルのある労働者を日本に送り込むのでしょう。

投稿: baltan | 2004.11.12 03:05

日本での外国人ケアギバー・ナースの就労に国内の現場では大分ナーバスな反応があるようですが、実際私がフィリピンマニラの日本語学校やケアギバー・ナーススクール25校をすべてインタビューした結果を簡単に報告します。
既にフィリピンでは日本にケアギバーで出稼ぎにいけるという認識は大分定着していますが、実のところエンターテイナーまたはそのプロモーターによる宣伝によるものが圧倒的です。また代表的なケアギバースクールでも日本に向けた教育というものは前出の情報とは違って殆どないかあっても日本の情報に乗っ取ったものではありません。
なんというか情報ばかりが空回りしているようです。
また日本とフィリピン政府が協力して現地での教育機関を設立するという話も、フィリピン側の足の遅さもあるのでしょうか?煙さえ立っていない状況です。
これはこちらでの調査機関を使い、私も実際インタビューに回ったのですから疑いようがありません。
現在は殆どが台湾・香港・中東・欧米への需要です。
ケアギバーへのインタビューにおいても日本の介護士の皆さんが指摘されているのと同様に現地ケアギバーは言葉の問題や習慣の違いなどで悩みかなり躊躇しています。お金が全てというわけではないですね。

そして、日本はこういった状況をもっと社会的にもドキュメントとして流すべきだと思います、しかし日本のメディアは視聴率の取れるものしか流さないからなかなかこの隔たりはしばらく解消されないかもしれません。

投稿: はっちん | 2005.06.24 01:18

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