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2004.07.14

今週のスケジュールは台湾海峡軍事演習?

 中台関係の緊張が高まりだした。中国という国は国内の権力闘争のために対外的に火遊びをする困った国なので、今回も「またかよ」かもしれない。沢民・フランケン・江が糸を引いているのかもしれない。あるいは、これも米国大統領選がからんでいるのかもしれない。
 時事的な状況は産経系「中国、米軍想定し演習 台湾海峡制空権」(参照)がわかりやすい。


 【北京=野口東秀】中国人民解放軍が台湾海峡の「制空権」確保を重点にするとされる福建省東山島での陸海空統合の大規模演習の時期について十三日付中国英字紙チャイナ・デーリーは今月後半に実施と報じた。天候次第では早ければ今週中にも実施する態勢を整えるとみられる。人員は十万人と最大規模になるようだ。
 北京の軍事筋は、米軍の介入を阻む観点から大陸海岸線から約九百キロ程度の「制海・制空権」確保を視野に入れた演習になると指摘した。

 参考までにオリジナルのチャイナ・デーリーは"Military to hold drills at Dongshan"(参照)。つまらぬ余談だが、ネットが使えるならブログである程度の水準のジャーナリズムは可能になっているという例題にもなっている。
 今回の事態はすでに今月に入ってから各紙で報道されているので、今週かもな、というのが目新しいニュースであるかのようにも見える。つまり、台湾陳水扁総統に対する威嚇でしょうな、という受け取り方だ。間違っているわけでもないのだが、どうもそれだけではない。
 ポイントはむしろ制空権にありそうだ。単純な話、このところの米軍の優位と失敗は制空権に対する強さに由来している。中国側としても、率直に、丸裸にされているなという焦りがあるのだろう。
 ちょっと勇み足のコメントになるかもしれないが、バラバラとした各種報道からは見えてこないが、制空権という含みには、三峡ダムが関与しているようだ。このあたりは、Newsweek"Dangerous Straits"(参照、ちなみに日本版では「中台間に漂う火薬の臭い(6/30)」)がわかりやすい。

But last week it was Washington that dropped the rhetorical bombshell. Buried deep inside a 54-page Pentagon report on China's military readiness, U.S. defense planners speculated that, in the event of a war across the strait, Taiwan might seek to hit "high-value targets" like the prestigious Three Gorges Dam as a way of deterring a Chinese invasion.

 米国ではペンタゴン・リポートに意図的なのか、台湾海峡で戦争が始まれば(余談だが有事というのは嘘くさい言い方だ)、中国の軍事行動を阻止するために、三峡ダムを空爆・破壊するというのだ。やるな、である。
 当然、中国は怒る、というか、これをおおっぴらに言われたら、面子丸つぶれだ。

Predictably, such speculation did not sit well with Beijing. If the dam were attacked, warned Chinese Lt. Gen. Liu Yuan in the state-run China Youth Daily, Beijing's retaliation would "blot out the sky." Liu, who is the son of the late Chinese president Liu Shaoqi, slapped down the Pentagon's suggestion that such a threat could ever stop a war over Taiwan. "It will have the exact opposite of the desired effect," said Liu, who for good measure described the United States as "a prostitute pretending to be a gentleman."

 "blot out the sky"を訳すのは鬱になってきそうだし、ついでに""a prostitute pretending to be a gentleman"の元の中国表現も気になるが、ようはサノバビッチに徹底抗戦するというわけだ。で、ちょっと気になる余談なのだが、この記事の日本語版には、この喇叭野郎劉源が劉少奇の息子だという説明をオミットしている。「おい、ニューズウィーク日本語版、ばかやろう」と言っておく。
 三峡ダムとはいいところに眼をつけたものだ、とブラックジョークを飛ばす趣向はない。率直なところ、「米国、悪い冗談はペプシブルーだけにしろ」という感じだ。三峡ダムがどのような意味を持つかは、「三峡ダム 大プロジェクトが次の段階へ」(参照)を参照されたい。
 というわけで、なにもペンタゴン・リポートのブラック・ジョークが原因というわけではないだろうが、中国側には、戦時には、制空権がなくなり、一気に急所蹴りを喰うのは明か、とは言えるのだろう。もっとも、その戦力維持のためには、台湾の「協力」が重要になる。この緊張を背景に米国の軍事産業はウハウハ(古い)ものだ。
 もちろん、米国を批判するのはたやすい。そして、米国だけ批判して中国を批判しないのは、嘘くさい。台湾も批判から免れない。だが、それで、オイラって平和愛好家だもんね、で、いいのか?
 Newsweekの記事の締めが不気味だ。

And while the focus remains on Taiwan, a senior Pentagon official says there's something "much broader and more fundamental going on." China is seeking "a comprehensive, well-planned, well-executed transformation" of its military capabilities. That's sure to raise fears that the next time bombs start dropping, they won't be rhetorical.

 中国の軍部の中核部で本質的な変化が進行中だというのだ。"they won't be rhetorical"は、「洒落じゃすまねーな」と訳そう。私もこの印象を持っている。単純に自己を平和主義者として、軍事を批判するだけでは、おそらく徹底的に無力、という事態の進行が、そこにあるのだと思う。
 批判されるのを覚悟していえば、火遊び好きで、事態によってはカタストロフィックに統制が取れなくなる巨大国家中国を思えば、台湾の、当面の軍事強化は避けられないだろうし、並行して、中国の民主化をもっと推し進めなくてはならないのだと思う。

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コメント

確かに悪い冗談ですな。

軍事的な常識では「上陸作戦」というのはリスクがむちゃくちゃ高いオペです。

え、WW2ではAXISはD-DAYでもANZIOでもチュニジアでもそしてもちろん沖縄でも硫黄島でも成功させたじゃないかって?

確かにそうです。但し、それは成功させるためにありとあらゆる努力をしたからであって、例えばもしD-DAYが失敗したら(そのリスクは0では無かった)ヨーロッパの戦争は3年は長引いていたでしょうし、沖縄にしてもアメリカは上陸作戦を立案するのに周到なプランを練っていたのはfinalventさんもご存知の通りです。

それをあの上陸揚舟艇も満足にそろっていない中国軍が制空権を握れる可能性は0に近い上に軍事衛星やU-2で完全に察知されている中「上陸船団」を送り出す?一隻残らず台湾にたどり着く前に沈みますな。

洒落じゃすまないのはアメリカじゃないですよ。そんな演習アメリカにとってはブラフにもなりません。

投稿: F.Nakajima | 2004.07.14 22:07

F.Nakajimaさん。
>上陸揚舟艇も満足にそろっていない中国軍
だからこそ焦っているのでしょう。
中国サイトでも先日、いわゆる中国版海兵隊の演習風景を写真入で誇らしげに紹介していましたよ。
中台共々北京オリンピックがタイムリミットとしているのは間違いないでしょう。
中台有事にしろ日朝有事にしろ、事が起ころうが起こるまいが儲かって笑いが止まらないのはアメリカな訳ですなぁ。

China takes war lessons from US
http://english.aljazeera.net/NR/exeres/FE01E911-7A9A-4EB8-B3BE-8ADC6C803A6E.htm

また、中国が一番気にしている事は、台湾海峡有事の際に日本が介入するのか?という事。

日本軍隊は台湾海峡危機に介入するか
http://news3.xinhuanet.com/mil/2004-07/13/content_1595466.htm

今までもこれからも、日本は本質的な独自外交を行う事なんてありえないのでしょうよ。

「日本抑制は米の利益」 故ニクソン元米大統領、中国に明言
http://www.rosenet.ne.jp/~nb3hoshu/JnoyokuseiBnorieki.html

投稿: usam | 2004.07.14 22:39

中国の民主化ってのは、当然経済特区の発展によるものだろうが、
なんとも眠たい話だ。
商人の力が強くなって、支配階級の力が弱くなる、あれれ。
何百年前の話だよ。
今はいうなれば絶対王政か、いや知らんけど、言って見ただけ。

投稿: せつな | 2004.07.15 02:47

この演習って、東シナ海や南シナ海の海洋資源確保とも絡んでるんだろうねえ。
このタイミングでやるということは、日本の海洋資源調査に対する牽制の意味もあるのかな。

投稿: Baatarizm | 2004.07.15 10:12

中国の全面譲歩以外、紛争回避策がなくなりつつある今日この頃。
第三次世界大戦は確実に迫ってますな。

いずれにしても、本格的な米中対立は北朝鮮崩壊後でしょうけど。

投稿: ポリコン | 2004.07.15 11:28

参照されていた「中国情報局」には、別に以下のような記事も

「三峡ダム:核攻撃も想定して設計、対応に自信」 2002/11/08(金) 02:25:54
http://news.searchina.ne.jp/2002/1108/national_1108_001.shtml

投稿: uiui | 2004.07.15 13:43

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