謎の超人間ケリーが暗示するもの
あいもかわらず昭和32年生まれの私は毎週鉄人28号を見てうるうるしているのだが、前回の第10話 「謎の超人間ケリー」では、表面的な回顧のイメージの奥でいろいろ思い出すことがあった。ドラグネット博士の尋常じゃないヘアスタイルはなんとなく覚えているが、この話自体は記憶にはない。なのに、どうにもリアルに感じられるのは、戦争のために改造人間となったというあたりの設定だろう。(だから、たぶん、鉄人28号もあんなに巨大なわけがないのだが…)。
あの時代、なぜかこういう話が多かったように思う。サイボーグ009でも、空爆機と一体化した敵のサイボーグ(薔薇を愛するキャラだったと記憶しているが)とか、手塚なんかにも特殊自動車のパーツとなるためのロボットだとかあった。日本に限らない。キャプテン・スカーレットも似たようなものだ。これってリバイバルしているのか?って、今やったらサウスパークのケニーかよという笑いを誘うだけか。レンズマン(小説のほう)でも、グレーレンズマンではやはり死体から再生する兵士のイメージがあった。SF版七生報国か思う。
今回の鉄人28号の不乱拳博士はそうそうに死んでしまったが、モンスター良久は、アニメではぼかしていたが、あれはヒト胚性幹細胞(ES細胞)とハルク(緑だしな)の連想のキャラだろう。ES細胞が出てくるあたり、意外にリメーク鉄人28号は新しいのかなとも思うが、スティーブン・カーツ(Steven Kurtz)のこととか考え込むと、意外に洒落でもないように思えてくる。が、その話は今日は書かない。
ES細胞といえば、ナンシー夫人による、幹細胞研究の拡大を提唱が気になる。このところ米国ニュースを読んでいてレーガン追悼ものにうんざりするのだが、イラン・コントラ疑惑でもっと叩けないのは、ブッシュの思惑なのだろう。政治の上っ面などどうでもいいことだが、なぜナンシー夫人が幹細胞研究の拡大を提唱しているか。ロイターの「故レーガン元大統領夫人、幹細胞研究提唱者に」(参照)ではこう伝えている。
夫人は、故大統領が自分の手の届かない場所に行ってしまったとし、「だからこそ、(アルツハイマー病で)苦しむ他の家族を救うために、できることは何でもしようと決意した。私達は、これを無視することは出来ない」と語った。
支援者はアルツハイマー病治療の突破口となる可能性があるとしている。
思わず、え?、そんな単純なことでいいのか。ナンシー夫人も●●かよ、と思うが、よくわからない。ご存じのとおり、ブッシュは幹細胞研究に同性愛結婚なみの嫌悪を示しているのだが、そのあたりの背景とか空気がわからない。一応裏としては上院議員有志の動きがある。共同「ES細胞の研究拡大要請 米上院有志が大統領に」(参照)。
【ワシントン7日共同】ブッシュ米大統領が、人体のどんな細胞にも成長できる胚(はい)性幹細胞(ES細胞)の研究に厳しい姿勢を取っていることについて、上院の過半数に当たる58議員は7日、超党派で大統領に対し研究の拡大を求める書簡を送った。患者団体や研究機関でつくる医学研究振興連合(CAMR)が明らかにした。
このあたりがよくわからないのだが、実際のところ米国ではES細胞の研究は進んでおり、日本もその尻馬に乗っているというか、実質的に無宗教な国民性をいいことに適当に進んでいる。たとえば、共同「ES細胞から心筋細胞 信州大が国内初」(参照)。
人体のあらゆる臓器や組織に成長できるヒトの胚(はい)性幹細胞(ES細胞)を心臓の心筋細胞に分化させることに、信州大医学部の佐々木克典教授(組織発生学)の研究グループが国内で初めて成功したことが13日、分かった。
佐々木教授によると研究グループは、米ウィスコンシン大が作ったES細胞を輸入して心筋細胞などに分化させる研究計画を文部科学省で認められ、2003年3月から研究を開始した。
なんだ、それ?という感じもする。市民社会とジャーナリズムはこんな呑気なことでいいのだろうか。
とはいえ、森岡正博のHPにある「ヒト組織・クローン規制法・ES細胞」(参照)も、正直なところよくわからない。この問題はどう考えたらいいのか、という議論と、現実の科学の動向の力学の関連がなにかずれているように思う。この問題はすでに超国家として国連も関与しているのだが、そういう問題なのだろうか?
もっとも、じゃ、おまえはどうなんだと問われれば、受精卵を原料とする技術は悪魔的だと思う。そう思うのは、自分の宗教的な心情だし、その心情は、譲る気にもならない。
話が横にそれていくが、ぼんやりと夢想しつつ、この研究で世界の尖端を行く韓国のことも気になった。韓国は米国から突き放されようとしているのだが、この時、トランプ(切り札)となるのは、もしかしたらこの技術か?というくだらないことを、鉄人28号の見過ぎだろうが、連想した。ニューズウィーク日本語版2004.3.3「韓国の格安ヒトクローン研究」が興味深い。
アメリカやイギリス、フランスなどでは、クローン人間づくりに結びつくおそれがあることから政治問題化しており、研究者は身動きが取れないのが現状。そのなかで韓国の研究チームは、着実に研究を重ねてきた。
もっとも、彼らが資金的に恵まれていたわけではない。年間200万ドルにも満たない予算は寄付金や授業料でまかなったもので、大学側はほとんど援助をしていない。政府にいたっては補助金ゼロだ。
研究室も100平方メートル程度の狭いもので、研究員はひじをぶつけ合いながら作業している。「外国の研究者は、今回のプロジェクトにカネを使っていないことに驚く」と、黄は言う。「カネや物がありすぎて怠けるより、不足した状態で苦労したほうがいいときもある」
私の考えは間違っているかもしれないが、ES細胞の研究の基礎は最先端設備ではなく、ロッキーホラーショーのような世界なのかもしれない。とすれば、頭脳さえあれば、どこでも可能なのではないか。
もっとも、韓国が有利なのはどう記事にあるように、不妊症研究が進んでいるからだ。
生殖産業が発達しているため、研究で使う卵子にも事欠かない。黄のチームも、16人の女性から計242個の卵子の提供を受けた。
だが、実験を成功させるうえで最も有利に働いたのは、政府の介入がなかったことかもしれない。
おぞましい感じもするし、こうした動向をつい韓国の文化的な背景に結びつけたくもなるが、そういうことでもないだろう。
不死のバイオ戦士の夢想をSFが描いたのは、冷戦下だった。現在冷戦が終わったが、最終兵器としての核は国家を越えて分散された。と、同時に、バイオ戦死の悪夢も分散されてきているような気がする。気がするっていうだけの話なんだけどね。
| 固定リンク
「生活」カテゴリの記事
- 一人暮らしのキッチン用具(2018.03.15)
- 電子レンジでお茶とか(2018.03.12)
- 最近の文房具屋さんのこと(2016.02.05)
- Chromebookを買って変わったこと(2016.01.22)
- アベノミクスでミートソース缶が減量したのか?(2015.04.09)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
韓国の医学レベル(知る限りではかなーり低い)からすると何か信じられないというか、それって医学ではないのかも。
投稿: a watcher | 2004.06.12 13:47
a watcherさん、ども。彼らも箸を使う文化なので手先が起用だからとかわけのわかんないことも言っているようです(半分冗談)。
投稿: finalvent | 2004.06.12 15:24
おはようございます。
731部隊、連想しましたね。もちろんこちらは「給水部隊」なんですけど。韓国のほうは、全体的に歯止めなくなったかな?
しかしヒステリックな福音なんとか教会多数派でも、キリスト教徒が多いはずですけど、反発ぜんぜん聞こえない様子なのには不思議な感じですね。
投稿: shibu | 2004.06.13 08:44
shibuさん、ども。ES細胞細胞研究は韓国人キリスト教徒(30%だったか)は困惑しているふうはあります。ただ、それにしても、この背景にある人工授精は、日本ではあまり報道されませんが、門柱制度が関係しているのではという感じがしています。
投稿: finalvent | 2004.06.13 18:15