イラク警察と自衛軍は米軍の指導下に置かれる
どう理解していいかよくわからないのだが、AP系"U.S. General: Iraq Police Training a Flop"(参照)が気になるので、簡単に触れておきたい。
話は、これまでのイラク統治のミスは米軍が十分にイラク警察(自衛軍)を訓練・統率してこなかったからだ、というもので、今後はこの点(指導)が改善されるらしい。
話は同時にファルージャ掃討の失敗についての嘘臭い弁解にもなっている。それにしても、イラク警察(自衛軍)を米軍が訓練という形であれ介入していくというあたりは、やはり気になる。
``It hasn't gone well. We've had almost one year of no progress,'' said Army Maj. Gen. Paul D. Eaton, who departs Iraq next week after spending a year assembling and training the country's 200,000 army, police and civil defense troops.
``We've had the wrong training focus - on individual cops rather than their leaders,'' Eaton said in an interview with The Associated Press.
イラク統治の失敗点は米軍が個々の警備員の教育に焦点をおいたためで、もっと指導層を教育すればよかったのだ、と米軍がほざいている。そして、その論理で、ファルージャ掃討の失敗は指揮系が米人だったからだろう、としているのだが、APのこの記事では、一応「そうでもないっしょ」的な指摘も含まれている。いずれにせよ、米軍のミスはミスだ。
現在の問題は、こうした米軍による、イラク人への軍事指導が必要になるという状況だ。
朝日新聞社説やNHK「あすを読む」などは、イラクの治安回復にはさっさと米軍駐留を止めるか権限を限定せよと無責任に言い放つのだが、常識的に考えても、そんなわけはない。イラクが一丸となって反米的な態度でいるわけでもないのだ。朝日新聞やNHKなどが好む「イラクの人たち」というのは、クルド、スンニ、シーアと利害が分裂し、しかもそれぞれに民兵という私的な暴力が組織化されているので、これを国家側に統合するにはそれなりの軍事力が当然必要になる。そして、それが暴発しているのは、それを抑えるための、国家側の力が自前では足りないとみていいだろう。
8日のことだが、イラク暫定政府のアラウィ首相がバグダッド郊外の製油所で従業員ら向けに、石油歳入権が委譲されたと宣言し、石油施設を防御する特別の部隊を創設したと言っているが、そういう高度の軍事力が魔法の杖でほいっと出てくるものでもあるまい。彼がイラク主権移譲後も多国籍軍必要だとしているのは、なにも米国の傀儡政権だからとするのはうがちすぎだ。国連もそのあたりを汲んでいると見ていい。先の記事ではこうある。
As U.S. occupation leaders prepare to hand power to an Iraqi government in less than three weeks, Iraq's own security forces won't be ready to take a large role in protecting the country. A U.N. Security Council resolution approved Tuesday acknowledges Iraq's lack of a developed security force and provides a continued multinational troop presence until 2006.
多国籍軍の形であれ、国連も2006年までは駐留を認めざるをえないとしている。ここでフランスなどがNATOの盟主気取りでいるなら、結局米軍の任務は重くならざるをえない。
以上のように書くと、私がさも米国よりの意見に見えるのだろうと思う。しかし、私としては、誰かがイラクの治安をサポートしなければ、むしろ、その間にイラクの国軍は米軍の事実上の指導下におかれるようになるだろうということを懸念しているのだ。
いずれにせよ、イラクの警察組織や自衛力としての国軍が整備されることで、時事上の膨大な雇用が生まれ、そこに石油歳入を投入することで富みが配分されるという構造になるように思われる。そして、それは、国家が機能しなければ、石油の地域的な偏在を通して、クルドとシーアに対するスンニ側の潜在的な対立を強めることになるのではないか。
日本の貢献というのがあるとすれば、イラクの非軍事的な事業の拡大を促進するべきものであり、そして、そのためにも自衛隊の関与は欠かせないように思う。
ただ、イラクに主権が委譲された後も「イラク特措法」なのか、というあたりがよくわからないが。
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コメント
皆さん、こ難しい事を書いているように思うのですが、私達の国は
連合国に負けて依頼、戦前のような本当の独立国家ではなくなった訳で。その上、アメリカの意図や、仏独の思惑なんか、判る訳が無い訳で、全て、推測でしかなく。何処までも、推測、推量を前提として、語らねばならず、そうなると、整合性みたいなものには、やたら強く
なる訳で、データが正しければ、日本人が一番、論理的整合性における権威になっちゃううんじゃ無いかと思う訳で、中国なんかその点、ウソばっか、インプットするから答えを誤るわけで、それが一番、今は恐い。のだ。
投稿: ji-ku | 2004.06.26 19:06