« 米の研ぎ方・飯の炊き方 | トップページ | ミステリーショッピング(mystery shopping) »

2004.06.08

で、イラクの石油歳入権はどうなる?

本文を読まれる前に(040609)

 本文に追記したが、この件(石油歳入権)については、名目上、イラクに委譲されることになった。米国の息のかかる首相に仕立てたこともあるが、どうせ委譲せざるをえないし、また、実質石油施設を守るのは米軍になるのではないかとも思われるので、米国もこれ以上の無理はやめたというわけだろう。

 イラク暫定政権を承認する国連安全保障理事会の新決議案の動向がよくわからない。私の関心がすっかりイラクの石油歳入権に向いているのもいけないのかもしれない。ので、頓馬な話を書くことになるかもしれないが、そのあたりの現状の雑感を書いておきたい。
 日本の報道だけとは限らないがイラクの治安は混迷を窮めベトナム化しているといった話もないわけではない。が、私にはなんだかよくわからない。結局のところイラクの警察機構はサダム統治下に近いものに戻るので、その反発や、この間総崩れになった国境警備をいいことに対外勢力の混入もあるだろうとは思う。一時期懸念されていたサドルのマフディ軍も事実上解体しているようだし、歴史的に見るなら、新しい権力委譲の時期によくあるごたごたのレベルのようにも思われる。
 日本の報道では米軍駐留に関心が向けられ、朝日新聞などは明確には言わないものの、米軍駐留が諸悪の根源風なストーリーに仕立てたいようだが、この件については、現在の暫定政権が米軍駐留を望んでいることから、お話としては浮いてしまう。もともとこの政権は米国の息のかかったものだが、だからといって、他にブラヒミ=国連案がよいというような対案も実際的ではなかった。
 私の関心も多分に陰謀論的な方向にあるのか、米軍駐留は、基本的に石油施設とその歳入の権利のための重石としているだけなのではないかと思う。また、「石油歳入権をほったらかして何が主権委譲かよ、笑わせる」と思っていたのだが、この部分も権限委譲になる方向のようだ。いずれ委譲せざるを得ないのだから、このあたりのごたごたはなんなのか気になるのだが、よくわからない。結局のところ、今回の決議でどの程度石油歳入権がイラクに委譲されるのかが、よくわからない。
 石油歳入権などたいした問題ではない、ということかもしれないが、先日公開された国連案を見ると、いやいやほとんど特記事項と言っていい。
 全文はBBC"Text: Iraq draft resolution"(参照)にあり、石油歳入権は三つの柱の一つになっている。


The revised draft UN resolution on Iraq being circulated by the US and UK at the Security Council:

  • maps out the handover to a sovereign Iraqi government by 30 June
  • provides for a US-led multinational force, with authority to take all necessary measures for security, while setting a date for the end of its mandate
  • grants Iraq full control over its own natural resources while temporarily maintaining international control over its oil revenue fund


 詳細はBBCサイトにあるのと、具体的にどうよ?がよくわからない文章なので、引用は控える。
 叩き台の国連案では、基本的には、石油歳入権はすべてイラクに移るということなのだが、そのあたりが米仏間でどのような扱いになるのだろうか。
 もともと今回の戦争は、石油・食糧交換プログラムを悪用していたフランスやロシア、シリアに対する米国の制裁の意味合いもあり、しかも、このプログラムに関連して、極東ブログ「石油・食糧交換プログラム不正疑惑における仏露」(参照)でも触れたが、国連自体がダーティな存在だった。シラク大統領の名前も堂々と不正疑惑のリストに上がっているくらいだ。なので、陰謀論めくが、今回のブッシュとシラクの会談も実際にはこのあたりのもみ消ししゃんしゃんということなのだろうと思う。
 この問題は基本に返って考えたほうがいい面も多いので、簡素にまとまったForeign Affairs"Iraq Oil"(参照)を見直してみたい。この文書は基本的には明確に書かれているので、私が蛇足を加えるまでもないのだが、気になるところを引用する。

現在、イラクの石油産業に関して実際に意思決定を行っているのは誰か。
 日々の業務に関する決定はイラク人、特にタミル・ガドバン石油相代行とサダム・フセイン政権下で石油輸出を独占管理していたイラク国営石油公社(SOMO)の上層部が下しているだろうと石油産業の専門家は考えている。また、シェル石油の元社長兼CEOだったフィリップ・キャロルがイラクの石油省のアドバイザーを務めている。エネルギー産業に関する情報を提供するエネルギー・インテリジェンス社のシニア・エディターであるカレン・マツシックによれば、アメリカのイラク戦後復興計画では、キャロルはイラクの石油産業を監督する国際委員会の委員長を務めることになっていたが、最近になって連合軍はその構想を捨て、イラク国民自身に石油産業を管理する大きな権限を認めることにしたようだ。

 冗談ではないつもりだが、明確に曖昧な状況が描かれている。問題の石油歳入権だが、こうある。

安保理決議一四八三では、イラクの石油収入の利用に関して、どのように定めているか。
 安保理決議では、すべての石油収入はイラク中央銀行内に新設されたイラク開発基金に預けられ、イラク暫定統治機構との協議を行った上で、米英が管理することになっている。現在のところ、イラク暫定統治機構はイラク統治評議会のメンバー二十五人で構成されている。石油収入は「不透明な形で使用してはいけない」とされており、以下の目的でのみ使うことが認められている。

  • イラク国民の人道的救済
  • 経済復興とインフラの修復
  • イラクの継続的な武装解除
  • イラクの文民による統治機構の費用
  • 「イラク国民の利益となる他の目的」


 これが今回どの程度まで暫定政権に委譲されるのだろうか? そこが知りたいのだが、よくわからない。
 また、結局、イラクという国家は石油歳入の再配分機構としての期待から成り立っているというのが本音なのだから、そのあたりも重要だ。が、Foreign Affairsはどうもばっくれているようだ。

将来、イラクの石油収入の一部がイラク国民に分配される可能性はあるのか。
 イラク暫定占領当局代表のポール・ブレマーは何度も石油からの利益をイラク国民に分配する信託基金を作るよう主張してきた。この方式のモデルとなるのはアラスカで行われているものだ。アラスカでは石油収益の一%を小切手の形で六十三万人の住民に直接配分している。去年、アラスカの住民は一人あたり千五百四十ドル受け取った。しかし、石油専門家の中には、イラク国民が二千四百万人もいることを考えると、少なくとも短期的にはこの方式はイラクでは実行できないだろうと指摘する者もいる。イラクの政治状況は依然として混沌としている上に石油売却からの利益は限定されているのに対し、分配金に対する需要ははるかに大きい。たとえ二〇〇四年に百四十億ドルという連合軍のもっとも楽観的な予測に沿った石油産出が可能になっても、ブレマーが推定した千億ドルというイラク再建費用全体にはほど遠い。

 Foreign Affairsのこの問題設定自体がよく理解できない面がある。どう転んだって歳入を直接イラク国民に配分するわけはないと私は思う。また、近未来的な歳入についてはこう述べるしかないのだが、この説明は潜在性に対する過小評価を誘導しているのではないか?
 むしろ、これから米国が意図するのは、マチ金のように、イラクの石油をがっちり世界経済のかたにはめることで、その点はつい陰謀論的にハリバートン社やチェイニーとの関わりなどについても言及したくはなるだろう。が、私の考えでは、それはただハリバートンがでかいだけというだけに思われる。
 イラクが今後、奇妙な形でのアラブ主義なり国粋主義的な形態を取らないためにも、世界市場にはめ込んでしまえ、というのはしかたがないのだろう。それが新しいかたちでの帝国主義だといえばその通りなのだが、昔の帝国主義の歌で批判できる問題とは様相が違う。
 いずれにせよ、当初ネオコンが想定していたようなある意味で純粋な政治性というものはなく、世界経済の仕組みがこうなってること、つまり、石油の市場の安定性がかなり至上命題に近い現状、米国はその国益といった近視眼ではなく、イラクをかたにはめるしかないのだろう。そう思う。

追記(040609)
 石油歳入権な名目上イラクに委譲されることになった。とりあえずはメデタシ。もっとも、お目付役は付く。詳細はBBC"Key points: UN resolution"(参照)。


Oil profits
 The Security Council notes that, upon dissolution of the Coalition Provisional Authority, the funds in the Development Fund for Iraq [a fund established to hold and administer the use of Iraq's oil profits, which was previously administered by the Coalition Provisional Authority] shall be disbursed solely at the direction of the Government of Iraq.
 The International Advisory and Monitoring Board shall continue to monitor the operation of the fund. An additional full voting member designated by the Government of Iraq shall be added to the board.
 The Security Council decides that these arrangements be reviewed at the request of the Transitional Government of Iraq or twelve months from the date of this resolution, and shall expire upon the completion of the political process outlined above


Oil for food
 The Security Council decides that the Interim Government of Iraq and its successors shall assume the rights, responsibilities and obligations relating to the Oil for Food Program that were transferred to the Coalition Provisional Authority.

|

« 米の研ぎ方・飯の炊き方 | トップページ | ミステリーショッピング(mystery shopping) »

「時事」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: で、イラクの石油歳入権はどうなる?:

« 米の研ぎ方・飯の炊き方 | トップページ | ミステリーショッピング(mystery shopping) »