宣戦布告なき石油戦争の当事者は日本と中国
28日のワシントンポストにちょっと気になるコラム"The Undeclared Oil War"(参照)があった。標題は「宣戦布告なき石油戦争」とでも訳せるだろうか。出だしがふるっている。
While some debate whether the war in Iraq was or was not "about oil," another war, this one involving little but oil, has broken out between two of the world's most powerful nations.For months China and Japan have been locked in a diplomatic battle over access to the big oil fields in Siberia.
イラク戦争が石油のためだったか議論が割れるとしても、今、現代世界では宣戦布告なき石油戦争を始めた2つの大国があるというのだ。どこか、そう、日本と中国だというのだ。争われる石油は…東シナ海か、いや、あれは天然ガス。そうじゃないのだ、問題はロシア。シベリアの石油だ。
そう言われて、日本人はどう思うだろうか? あまりピンと来ない、大げさな、というのが本音ではないだろうか。しかし、私もそう思った。しかし、コラムを読み進めてぎょっとしたのは、日本の対露ロビー活動なのだ。
Japan, which depends entirely on imported oil, is desperately lobbying Moscow for a 2,300-mile pipeline from Siberia to coastal Japan. But fast-growing China, now the world's second-largest oil user, after the United States, sees Russian oil as vital for its own "energy security" and is pushing for a 1,400-mile pipeline south to Daqing.
確かにエネルギー政策における日本の石油依存度は高いし、石油消費を拡大している中国にしてみればシベリア石油がエネルギー政策上重要な課題ではあるのだろう。が、そんなことより、日本の対露ロビー活動のほうが気になる。全く隠蔽されているわけではないが、日本としてはけっこう熾烈にロビー活動をやっているようなのだ。この実弾(金銭)をドンパチと飛ばすあたりが、「戦争」という皮肉なのだろう。この結果が何をもたらすかといえば、さらなる日中の関係悪化というのは頷くしかない。
The petro-rivalry has become so intense that Japan has offered to finance the $5 billion pipeline, invest $7 billion in development of Siberian oil fields and throw in an additional $2 billion for Russian "social projects" -- this despite the certainty that if Japan does win Russia's oil, relations between Tokyo and Beijing may sink to their lowest, potentially most dangerous, levels since World War II.
大げさといえば大げさだが、その可能性は否定できないと思う。というか、左翼マスコミがこんなところに首を突っ込む前に、国としては予防線だのをばしばし張っているに違いない。
まいったなと私は思う。この記事では触れていないが、先日、プーチンは親中的なユコスの頭をふん縛ったものの、ユコスは潰さないと堂々と宣言した。これまでのユコスの姿勢がそのまま維持されはしないだろうが、この問題は一重にプーチンの意向にかかっていることが明らかになっている。
そこで、プーチンがどう世界経済を見るかだが、彼は馬鹿ではないから日本の潜在力は理解できるだろう。しかし、これから縮退化する日本に永続的に上昇するエネルギー需要があるわけもないとも思うだろう。理性的に考えて、プーチンが石油の流し先を中国に選んでもおかしいことはなにもない。私もそちらに賭けるほうが勝ちそうだ。
それにしても、中国側もけっこう露骨なロビーを展開しているのだが、サウジの件にまで深く首を突っ込んでいたのには、まったく知らないわけではないが、呆れた。
In recent years, Beijing has been lobbying Riyadh for access to Saudi reserves, the largest in the world. In return, the Chinese have offered the Saudis a foothold in what will be the world's biggest energy market -- and, as a bonus, have thrown in offers of sophisticated Chinese weaponry, including ballistic missiles and other hardware, that the United States and Europe have refused to sell to the Saudis.
すごいぜ、中国人。サウジの石油欲しさに、ミサイルだの兵器の献納をやっていやがるのだ。これは端的に「死の商人」ってやつだ。しかも、イランやイラクにもちょっかい出しているらしい。
In the run-up to the Iraq war, Russia and France clashed noisily with the United States over whose companies would have access to the oil in post-Saddam Hussein Iraq. Less well known is the way China has sought to build up its own oil alliances in the Middle East -- often over Washington's objections. In 2000 Chinese oil officials visited Iran, a country U.S. companies are forbidden to deal with; China also has a major interest in Iraqi oil.
記事には触れていないが、日本のとち狂ったアザデガン油田開発なんかにもからんできているのではないだろうか。中国の愚かしさに泣けてきそうだが、日本の同じ程度に愚かなのだろう。
石油は国際ルールさえ維持されれば、もっとも当たり前の商品として流通可能だ。日本のエネルギー政策が石油に偏り過ぎているのは問題ではあるが、これが是正されないのも、こうした流通の良さに高をくくっているからに他ならない。
しかし、イラク戦争を見ていると、こうしたまともな世界市場が機能するにはあまりに大きな代償が必要な時代になってきたとも思える。
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コメント
はじめまして、度々拝見させて頂いております。
目の付け所にはいつも敬服いたしております。
気になったのですが、アカザン油田ではなくて、
アザデガン油田なのではないでしょうか。
正しい発音は知りませぬが。
http://www.iijnet.or.jp/IHCC/newasian07-persha01-01-iraku-map01-joho01-oil01-ilsa01.html
投稿: usam | 2004.06.29 23:22
usamさん、ご指摘ありがとうございました。本文を修正したました。意見に関わる部分ではないのでdel-insタグは適用しませんでした。
投稿: finalvent | 2004.06.30 06:31