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2004.06.04

不妊治療と産後うつ病

 昨日「皇太子妃報道のうっとうしさ」(参照)を書いてから、出産経験のある女性と話したおり、「不妊治療を受けた女性はホルモンバランスを崩しやすいのではないか」と言われた。
 そうかもしれない。と、思い手持ちの資料やネットで情報を軽くあたってみたが、よくわからない。しかし、この問題は気になるので簡単に書いておきたい。
 不妊治療と産後うつ病について、直接は関係のない情報なのかもしれないが、BBC"Multiple births and fertility treatment"(参照)が興味深かった。話は、不妊治療によって双子が生まれやすくなるというものだが、次のような指摘がある。


 Many doctors are worried that they are being put under increasing pressure to use more of the fertility drugs to produce more eggs and so increase the chance of the woman getting pregnant.
 US research shows people undergoing fertility treatment would prefer to have multiple births than have no children.
 This is despite reports that those who have multiple births are more likely to suffer depression, anxiety and emotional problems and more prone to divorce.

 不妊治療によって双子が生まれやすくなるということと、双子を持つ母親が憂鬱や不安など感情問題を持ちやすいということ、その2つがどうつながるのかわからないが、不妊治療による精神への影響はありそうだ。
 雅子皇太子妃の場合は、すでに不妊治療を受けてからかなりの時間が経つので、そうした問題でもないと考えるのが妥当なようにも思える。が、そのときふと思ったのだが、そして悪い噂になっていけないのだが、現在再度不妊治療をやっているのだろうか。真相はわからないのだが。
 不妊治療の問題についてネットを雑見したところ、奇妙な印象をうけた。どうもきちんとした情報源がないように見えるのだ。
 非難するようだが、こうした場合のガイドであるべきAll About Japanの「不妊治療」(参照)の情報が混乱している印象を受ける。少なくとも私は混乱した。広告の入れ方が悪いのかもしれない。アトピー情報でもよくあるのだが、不妊治療についてのネットのソースは、医学的な情報なのか、迷信なのかわからない情報が混在している。さらに、All About Japanの「不妊治療」には「おすすめ書籍」とあるのだが、これはガイドが選定したとはとうてい思えない書籍がリストされていた。
cover
不妊治療
ここが知りたいA to Z
 気になって、もとになるアマゾンで「不妊治療」関連の書籍を検索して売れ筋に驚いた。All About Japanの「不妊治療」のリストはどうやらアマゾンから自動的にひいているようだ。率直に言って、売れている本ほど、情報の信頼性は低いように私には思われる。といったことを書いてもあまり意味はないので、私の情報は古いのだが、書籍については自分が参照している「不妊治療―ここが知りたいA to Z 健康双書」を薦めたい。ただし、この本には、不妊治療と産後うつ病の関連の記載はない。
 産後うつ病についてもネットで情報を当たったが、あまり適切なものがなかった。三重大学母子精神保健グループの"Postnatal Depression"(参照)のサイトがあまり充実していないのも気になる。社会的な話題としては、読売新聞の医療ルネサンス(参照)で扱われて話題になったようだ。が、その記事はネットからはすでに参照できないようだ。
 ついでに読売新聞の過去のデータベースを当たると、2002.7.2「『出産後うつ病』抗体で予測へ オランダ・ティルブルフ大の研究チームが発表」という興味深い記事がある。

 赤ちゃんを産んだ後、気持ちが不安定になり、一人で落ち込んでしまう「出産後うつ病」は、妊娠中のいわゆる“マタニティー・ブルー”より深刻な症状で、約15%の女性が経験するといわれている。
 オランダ・ティルブルフ大のビクター・ポップ教授らの研究チームはこのほど、このうつ病を妊娠中から予測できる目安となるたんぱく質(抗体)を見つけたと発表した。早期に発見する検査法につながる成果と期待される。
(中略)
 研究チームは「出産後うつ病になる女性は助けを求めず、放置されたままになっていることが多い」と、早期発見の重要性を訴えている。

 産後うつ病は産後数週から数か月以内に現れるうつ病で、この記事にあるように経験者は少なくはない。が、一般的には長期に及ぶものでもない。先日、極東ブログで「幼保一元化は必要だが」(参照)を書いたおり、育児が社会問題になるのは、女性が職場復帰できる産後の1年から幼稚園に子供を預けられる3歳までかとも思ったが、産後うつ病などのケアを含めて、産後1年以内でももっと社会的な対応が必要なのではないかと思う。
 時事的な話題の線で言えば、政府は今日少子化社会対策大綱を閣議決定する。大綱の原文は「少子・高齢化対策ホームページ」(参照)で入手できるのだが、これがなんとも理解しづらい。不妊治療にも言及はあるが、具体的にはわからない。
 以上の話に、とってつけたような結論をつければ、不妊治療と産後うつ病については、ネットが普及しても情報がないように見えることは社会的な問題だろう、ということになるか。
cover
シアーズ博士夫妻の
ベビーブック
 余談みたいだが、産後うつ病について、私が信頼している書籍「ベビーブック」を私なりにまとめておこう。

  • 赤ちゃんケアに専念するときは家事両立など考えない
  • 赤ちゃんケアをやるべき優先順位のトップに置く
  • 毎日数時間は外に出る時間を作る
  • グループカウンセリングを受ける
  • きちんと栄養バランスの食事をする
  • 身だしなみを崩さないこと(出産前にヘアスタイルを変えておくいい)
  • 休息をきちんと取ること

 日本の状況では、グループカウンセリングは難しいかもしれない。また、赤ちゃんケアを優先にしてまともな食事などできないということもあるだろうが、この点については、都心部ならケータリング・サービスを有効活用するといいと思う。

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「社会」カテゴリの記事

コメント

最後の7項目、雅子さんの場合はほとんどOKですよね。

投稿: 宮内庁御用達 | 2004.06.05 03:20

宮内庁御用達さん、ども。
>最後の7項目、雅子さんの場合はほとんどOKですよね。
私はそうは思えないのですが、いずれにせよ、通常の産後うつ病とは違うと考えていいとは思われます。というあたりの問題提起をしたかったわけです。

投稿: finalvent | 2004.06.05 09:16

はじめまして。
最近の雅子妃の「病状」についての報道には関心があります。
元気な時の彼女は、同じ女性であっても、全くかけはなれた存在だったのに。

宮内庁の機構や公務による拘束などの外的な要因も重なっているでしょうが、「産後うつ」が引き金である可能性があるんじゃないかと感じています。
思い返すと、出産後の会見で「生まれてくれてありがとう、という気持ちです」と発言して涙ぐみ、「涙もろくなりまして」と言っていましたね。
当時は自然な母性本能の表出として見ましたが、finalventさんが書かれていた外交官時代の彼女の姿と対比すると、すでに不安定な感情の徴候ではなかったか、とも思えます。

出産は、個人差が非常に大きいため、因果関係などの一般論が得にくい分野だと思います。 リンクのあった三重大学は地元なので、産後の精神ケアの実状について、そのうち問い合わせてみたいものです。

第二子を35歳で出産した経験から、30代半ば以降の妊娠出産は、望んで自然に授かったものでも、体力的に大変だと感じます。
不妊治療での影響はわかりませんが、高齢出産し、産後3ヶ月足らずで、乳飲み子を他人の手にゆだね、日本全国の催しへの出席とプライバシーのほとんどない「自宅」とのとんぼ返りを続けたら、体力気力面でのダメージは避けられなかっただろうと思います。

アメリカのキャリア女性の例で、第一子出産でうつになり、それでももう一人望んで出産した結果、さらにひどいうつで寝たきりになったという話を聞いたことがあります。その人の友人の女性は、「彼女はもう元の彼女ではない。悲しいけれど、立ち直れないだろう」と言っていました。
出産は、本能と自己実現のあいまった喜びそのものですが、時に、産後のディプレッションという思いがけない置きみやげを受け取ってしまう人もいること、環境がその状態を軽くも深刻にもすることは間違いと思うのです。

投稿: じゃがりこ | 2004.06.09 23:26

じゃがりこさん、ども。メタ的な言い方ですが、現状の日本では30代に初子出産が基本、そして、産む場合は、2子の傾向があるので、高齢出産というのを社会の根幹に据える必要があると思うのです。で、そういうとき、その実経験の声をどう社会にリンクさせるかというのは大きな課題です。個々には取り組みがあると思うのですが、産後うつ病を例にしても米国ではNPO体制があるのに対して、日本の状況が見えにくい感じがします。

投稿: finalvent | 2004.06.10 07:54

>finalventさん、
 コメントありがとうございます。
 私の最後の一文は、「間違いないと思う」の間違いでした。スミマセン。

「高齢出産を社会の根幹に据える」とは、目からウロコでした。
 私自身、個人の経験としてしか語れてないんで、社会とのリンクはまさに課題ですね。

 finalventさんのサイトは最近見つけたばかりですが、取り上げている話題、問題提起ともにおもしろそう。
 定期的にアクセスしたいと思いますので、よろしく〜。

投稿: じゃがりこ | 2004.06.10 10:25

こんにちは。
不妊治療、アトピーに限らずインターネットの情報というのは、探す人にもインターネットリテラシーのようなものが求められると思います。

テレビだと、一方的に画一的な情報が流されるだけで、見る側は、そんなに「考える」ことが少ないでしょう。洗脳的な危険もあるわけです。

私はアトピー性皮膚炎なんですが、治療で、インターネットの情報を探すとき、「実際に治した人」の情報を探すようにしました。そのなかで納得できた情報を参考にして治療にあたっています。おかげさまで、かなり回復することができました。

アトピーの治療では、残念なことですが、医師の言うことも信じられないことが多いんです。

ネットには産後うつ病の確かな情報が見当たらないとのこと。産後うつ病をこうして克服しましたっていう方のブログなんかは、けっこう参考になるのではないでしょうか。

投稿: こころ | 2009.07.09 08:31

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» 赤子を殺す母親の病気:産後うつ病 [EP : end-point]
 産後うつ病と不妊治療はことさらに連関を見つけようとするとややこしいことになるか [続きを読む]

受信: 2004.06.04 14:20

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