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2004.06.25

欧州では子どもの3人に1人が環境汚染などにより死亡している?

 ニュース自体としては専門者の間ではけして最新とも言えないのだが、現在ブダペストで開催中のWHO閣僚級会議(Europe's ministers of health and environment gathering )に併せて、「欧州児童・青少年における、環境要因が特定される疾病と怪我」(Burden of disease attributable to selected environmental factors and injuries among Europe's children and adolescents)が検討課題となった。詳細は、欧州WHOサイト"Burden of disease attributable to selected environmental factors and injuries among Europe's children and adolescents"(参照)及び、"One in three child deaths in Europe due to environment. New WHO study details devastating effects"(参照)にあたるといいだろう。日本語で読める情報としては、日経エコロジー"WHO、欧州では子どもの3人に1人が環境汚染などにより死亡と報告"(参照)がある。元になった調査は、Lancetに掲載された"Burden of disease attributable to selected environmental factors and injury among children and adolescents in Europe "(参照)もので、これも公共性が高いことから無料で閲覧できる。
 日経エコロジーの標題については、やや不正確に思えるが、欧州の児童・青少年の死去の1/3が環境要因によるというのは、先進的と見られる欧州においてそうなのかという点で、ショッキングな問題提起ではある。欧州に限定しなければ、すでに2002年南アフリカのヨハネスブルグで開催された「持続可能な開発に関する世界サミット(WSSD)」でも扱われていた。当然ながら、こちらでは、途上国的な問題に焦点が当てられていたが、今回のWHO欧州の発表では、日経エコロジーが煽るような標題として、環境汚染に着目したのも頷ける。環境要因としては、屋外の大気の汚染、屋内空気の汚染、水の衛生状態の悪さ、鉛中毒、事故が特定されているからだ。もっとも、原報告を見るとわかるが、怪我の要因がもっとも大きい。
 WHOでは、次のように問題の要点を打ち出している。なお、DALYはDisability-adjusted life yearsの略で、定訳語はわからないが、とりあえず疾病と理解していいだろう。


According to this study, approximately 100 000 children deaths and 6 million DALYs in Europe are attributable to four main environmental risk factors and to injuries. Among children 0 to 4 years of age, the five factors contributed between 22 and 26.5% of all deaths and to 20% of all DALYs. Among those 5 to 14 years of age, the risk factors contributed to 42% of all deaths and to 31% of all DALYs. In the 15 to 19 year age group, they were responsible for 60% of all deaths and for 27% of all DALYs.

 つまり、欧州では毎年、環境要因によって19歳以下の未成年10万人が死亡、6億人が疾病している。0-4歳児に限定すると死亡の22-26.5%、疾病の20%。5-14歳では死亡42%、疾病31%。15-19歳では死亡60%、疾病27%になる。
 また、もう一方のWHO欧州報告ではこうある。

Injury is the leading cause of death among children and adolescents from birth to 19 years across the WHO European Region, with the highest proportion of deaths among teenagers (15-19 years). Up to 13 000 children aged 0-4 years die from particulate matter outdoor air pollution and 10 000 as a result of solid fuel use at home. In the same age group, lead poisoning is responsible for over 150 000 DALYs. In children aged 0-14 years, 13 000 deaths are due to poor water and sanitation. The table below shows the share of health impact from deaths and years of healthy life lost for each environmental risk factor, among children aged 0-4 years and 0-14 years.

 数字の上では、大気汚染と鉛害が注目される。欧州においてこれほど問題なのかというと、実はLancetの原論文にあたるをわかるが、この欧州にはトルコやカスピ海沿岸国も含まれている。もっとも、それによって統計が操作されているという意味ではない。あくまで事態は深刻だ。日本は少子化もあって子どもの問題に関心が向いているかのようだが、こうした問題はあまり取り上げられていないように思う。また、環境問題も特定の住民被害や温暖化など、企業ターゲットであったり、庶民生活の束縛など、政治的に偏向しているようにも思われる。
 私自身が今回の報告で特に気になったのは、一般的な大気汚染の問題ではなく、子どもの鉛害についてだ。この問題は米国では非常に大きな課題となっているのだが、米国民一般としては、漫画のシンプソンズでも皮肉っていたが赤ペンキやクレヨンなど画材色素の問題として見られがちで、ガソリン内の鉛についてはあまり言及されていないようだ。しかし、今回のWHO欧州では、ガソリン側に注目している。
 米国での他調査を見る限り、子どもの脳はかなり鉛に汚染されているようだが、私は日本でこの問題を重視しているケースを知らない。2ちゃんねるでも馬鹿にされるようなパソコンの弊害といったしょーもない話題が注目されているように見える。
 余談だが、そして、批判を含めている意図はないのだが、「通販生活」が最近、シーガルフォーを前面に出さなくなった。なぜなのだろうか? 代わりに出てきた浄水器の売り文句では有害ミネラルの除去が上げられているが、これに関係するのだろうか。私が簡単に調べた範囲では、シーガルフォーでは有害重金属を十分に除去していない。私の了解間違いであるかもしれない。また、シーガルではマシなのかもしれないが、簡易浄水器では銀が使用されている。銀の安全性については、異論や電波も多いのだが、このあたりの安全基準も気にはなる。

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コメント

以前歯科技師の暴露話を読んだことがあるんですが、欧米では
詰め物が銀ではなくセラミックが主流になっているそうです。
日本では銀の弊害については話題に上りませんね。

投稿: (anonymous) | 2004.06.25 17:15

子供の鉛害については日テレの番組でかつて赤ちゃんの髪の毛を測定しています。
鉛が基準値以上でたように覚えています

投稿: メンチカツ | 2004.06.25 18:57

日本では無鉛ガソリンしか売られていないのであまり関係ないのでは・・・?

投稿: (anonymous) | 2004.06.25 23:26

便宜上anonymousとしました。無鉛ガソリンであることの効果は大きいようですね。

ガソリン中の鉛濃度の低下と血液中の鉛濃度変化

http://www.kcn.ne.jp/~azuma/news/Nov1999/991107.html

投稿: finalvent | 2004.06.26 07:40

詰め物にハイブリッドセラミックを使うのは、そのほうが歯科的に治療効果が高いからだそうです。(銀の詰め物は平均でみると10年も持たない)
だから、金属的な意味での「銀の弊害」が大きな理由では無いと思います。

日本では、保険の関係もあって銀のほうがずっと安いので、保険の基準が変わらない限り状況はかわらなそうですが。

投稿: yuno | 2004.06.26 11:33

補足情報を足しておきます。

子どもの鉛血中濃度の問題の臨界は10μg以下。
NEJ
Intellectual Impairment in Children with Blood Lead Concentrations below 10 μg per Deciliter
http://content.nejm.org/cgi/content/abstract/348/16/1517

日本の状況は米国と変わらない
小児の受動喫煙と血中鉛濃度
http://www.suzukinaika.com/kodomoHP/05.html

 受動喫煙は当然問題。あと、この問題の背景には日本の水道の鉛管の問題が潜んでいるようだが、ここを殊更につつくと、奇妙な「ウォータービジネス」の主張になりかねない。

 日本の子どもの鉛血中濃度は潜在的な問題のようだ。

投稿: finalvent | 2004.06.26 16:51

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