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2004.06.24

電子書籍が読書を変える?

 昨日のクローズアップ現代「電子書籍が読書を変える」(参照)は標題からも連想されるように、電子書籍と出版の状況について扱っていた。番組として面白かったかというと、よくわからない。つまらないわけでもない。コメンテイターとして出ていた佐野眞一も何が言いたいのかよくわからなかった。骸骨みたいな森村誠一が、携帯電話を使った読書を、ゲリラ的、とか言っていた。お笑い?
 番組を見てからいろいろ考えたのだが、考えがまとまらない。が、気にはなる。だから、今の自分の気持ちみたいなものを、たらっと書いておこうかと思う。
 クローズアップ現代では、話は電子書籍の技術革新というだけではなかった。それに絞ったほうがよかったのかもしれないとも思うが、それだと一般聴衆者の関心はひかないだろう。SONY愛好家の私としては、LIBRIe〈リブリエ〉(参照)が気になるが、最近は出不精なのでまだ現物を見ていない。自分の目で見ると、どんなものだろうか。松下のΣBook(シグマブック)(参照)にはあまり関心はないが、イカ・ディスプレイ(参考:「IBM ThinkPadの液晶に食べ物の 'イカ' を使用しているか」)も見てみたい気はする。
 リブリエはけっこう解像度も高く紙に近いんじゃないかと期待していたが、番組で見ていて、ふと思ったのだが、ちと持ちづらそうだ。Palm(参照)のようにはいかないのか。iPod(参照)でもそうだが、落としそうだなというのも、気になる。
 電子媒体のディスプレイについては、私はこれまでもいろいろ試してきた。Palmにも縦書きのソフトなどをインストールしたりした。で? なのだが、率直にいうと表示が汚くてあまり使う気にならない。だめなんじゃないか、この手の流用は、というのが私の印象だった。のだが、あれ?である。そうでもないか。
 番組で、携帯電話で読書というのをやっていた。冗談じゃねーよと思っていたのだが、試しに自分のN505iでやってみると、そう悪くない。それが、あれ?という感じだ。このしょうもないディスプレイで夏目漱石とか読むのだが、それはそれなりに夏目漱石だ。ちょっと退屈なおりには、こんなので暇つぶしというのはゲームなんぞするよりいい。使ったのは、「携帯書房」(参照)だ。テキストだけなら、FOMAでなくてもなんとかなる。試してミソ。
 ついでに、最新のT-TIMEでも買うかと該当ページ(参照)に行くと、T-TIMEはバージョン変わらずで、新しくazureというのがあるので試用したが、T-TIMEとの違いがわからん。青空文庫だけを読むには便利かもしれない。
  というあたりで青空文庫を見ていて、ふと新美南吉とか読んでしんみりしてしまった。クローズアップ現代でも言っていたが、電子書籍では、夏目漱石だのといった古典のニーズが高いそうだ。なるほどねとも思う。
 たらっとした電子読書の話のついでなのだが、私はSmartVoice 4 XP(参照)をよく使う。声質はNHKの水谷アナっぽい。朗読としては実用レベルになっている。MP3化もできる。
 クローズアップ現代では、電子書籍は出版の危機の対処というストーリーにしていた。たしかに、今の出版はすごいよなと思う。


『世界の中心で愛を叫ぶ』306万部、『バカの壁』350万部。歴史に残るベストセラーが相次いで生まれる一方で、出版界は未曾有の不況に見舞われている。売れ行きの悪い新刊は3ヶ月で店頭から消え、『収容所群島』や『出発は遂に訪れず』といった古典も次々と絶版となっている。

 「世界の中心で愛を叫ぶ」や「バカの壁」なんてどうでもいいけど、「収容所群島」「出発は遂に訪れず」はなかなかいいところ突きますな。このあたりの本は絶版といっても、古本でまだ買える。どっちも読んでおいたほうがいいぜと思う。「収容所群島」は長くてだめというなら、せめて「イワン・デニーソヴィチの一日」は読めよ。と、こういう本の価値っていうのをきちんと伝える人がいねーのが問題かもしれない。え?松岡正剛? そいつは、島尾敏雄とソルジェニーツィンを読んでいるのか? 
 出版は危機だとは思う。「世界の中心で愛を叫ぶ」や「バカの壁」が売れるっていうこと自体が危機だ。出版界が、本のマーケットをやめて音楽のマーケットを真似したのだ。が、そう嘆くこともないと思う。本に魂を奪われた畜生たちは意外にしぶとく地獄で生きるのだ。まずは貧乏地獄か。しかし我らが牧師、古本屋を信じよう。もっと古ければ青空文庫でなんとかする社会にしよう。「新潮」に連載されていた「本居宣長」だっても図書館に行けば、なんとか読める…はずだ。

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「時事」カテゴリの記事

コメント

こんにちは
絶版物をどんどん電子的に流通させる仕組みが欲しいと思うのですが、どこも、とりあえずの仕組み(リーダー用ソフト、センター、リーダー用端末など)だけ作って、営業的な掘り起こしは全然しないのです。なにが問題になっているんでしょう。データ作りのコストと予想される売上がつりあわない、とか?

投稿: miyakoda | 2004.06.24 19:59

miyakodaさん、ども。私の文章が拙さがいけないのですが、NHKの該当番組では、平凡社の東洋文庫(!!!)について、電子化促進のプロジェクトを紹介していました。このことが良き例となるように、絶版物が電子的に流通される可能性はより強くなると思います。(本という物への愛はまた別としてですね)。つまり、その道に進んでいるとは思います。

投稿: finalvent | 2004.06.24 21:20

一見、市場のない電子書籍がここまで取り上げられて製品が作られるからくりは、実は中国が教科書を電子化しようと言う計画があるためです。
googleでぐぐれば結構出てくる話なんですが
例:http://kinyuu-literacy.hp.infoseek.co.jp/tips_soukan1.html
何故か、マスコミやメディアでは取り上げられないのが不思議です。

投稿: エフ | 2004.06.25 01:21

エフさん、ども。これは非常に面白い話です。規格と他国の状況が気になります。(余談ですが、ココログのバグの関係でURIを囲む括弧を取りました。ご了承下さい。)

投稿: finalvent | 2004.06.25 10:22

「収容所群島」が絶版と聞いて、
使い古されたネタですが、
この国は本当に「収容所列島」だなと思いました…。

オンラインDBと電子書籍が突破口になってくれると良いのですが。

私も、ネット公開用にキルケゴールやニーチェの翻訳を始めよう
かなと思っています。

投稿: kagami | 2004.06.25 21:04


>私はSmartVoice 4 XPをよく使う。

 私も持っていますが、その前身の「テキストリーダー」に青空文庫の作品を読ませて楽しんでいます。

 青空文庫のHTMLからそのルビを生かして、すらすら読んでくれるような文書に変換するプログラムを作っています。紹介しておきます。Windows用です。
http://homepage3.nifty.com/01117/rubytr.htm

投稿: しみづ | 2004.09.06 13:33

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