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2004.05.27

インド下院選挙とソニア・ガンジー(Sonia Gandhi)

 インド下院選挙についてなにか書こうと思っているうちに状況が変わり、書きそびれていた。それに、率直のところ、私にたいした話があるわけでもない。むしろ、以前BJP(インド人民党)が台頭してきたとき、当然とはいえ、危機感を抱いていたくらいだ。それが杞憂に終わったのだから、失礼な言い方だが、インド人は想像以上に賢いものだと思った。
 インド下院選挙(定数545)開票が13日に始まったものの、私はそれほど関心はなかった。寄り合い所帯(国民民主連合)とはいえ、経済政策をうまくこなしているBJPの優位に変化はないだろうと思っていたからだ。もっとも、コングレス(国民会議派)が押してくれば、日本の公明党のように小さい政党の動きで大きく政治勢力が変わることになる。が、蓋を開けてみると、意外にコングレスがリードして、むしろ、そうした不安定要因をコングレスが抱え込むことになった。
 ここで私はあれ?と思った。ソニアが首相になるわけはない、と私も思っていたのだ。彼女はイタリア人だし…というわけだ。もちろん、それは間違った言い方で、国籍はインド人である。だが、あの顔を見たら、ヒデとロザンナじゃん、と思っていた。つまり、私は最近のソニアの顔を見ていなかったわけだ。が、この機にネットなどで見るに、おお、ちゃんとインド人らしい体型だし、義母みたいな雰囲気ばっちしじゃん。これならいけるかも、と思い直した。が、やはりダメだったな。だめだよなと思うあたりが、どこかで自分の感性がインド人になっている。
 老婆心ながら、 ソニア・ガンジー(Sonia Gandhi)は、1946年イタリア生まれ。ラジブ・ガンジー首相の夫人。結婚は1968年。その当時、ラジブはパイロットであり、ソニアもインド国籍を取っていない。ラジブは、首相だった母インディラの暗殺を契機に政界に入り、1984年に首相となる。この機に妻ソニアもインド国籍を取得した。ラジブは1991年に暗殺された。夫の意志を継いでソニアが正式に政治活動を始めるのは、1997年にコングレスに入党してからのことだ。すぐに同党総裁となる。渡る世間は鬼ばかりどころではない陰惨な歴史だ。
 ところで、今回の選挙のニュースでは、日本と限らず、「ガンジー王朝」とかいう洒落をよく見かける。反面、日本のニュースなどでは、ガンジー家は、建国の父マハトマ・ガンジー(マハトマという言い方には私はちょっと抵抗があるが)の一族とは関係がないよ、と注釈が付く。この関係は今の若い人たちに理解されているのだろうか。

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父が子に語る世界歴史
 ん? それ以前にネールのことを知っているかすら、気になってきたぞ。今の高校生って「父が子に語る世界歴史」とか読んでないかもしれないな。絶版かと思って調べるとまだ大丈夫だ。出だしが泣かせる。

お誕生日がくると、おまえは贈りものをもらったり、お祝いのことばを受けたりするのがならわしだった。けれども、このナイニー刑務所から、わたしはなにを贈りものにしたものだろうか?

 かくして、14歳の一人娘のインディラちゃんは獄中のパパから200通の手紙を貰った。こってり世界史を教えてくれる手紙だった。パパっていうのはこうでなくちゃな。
 ジャワハルラール・ネール(Jawaharlal Nehru,1889-1964)はインド独立運動の指導者の一人で、イギリス支配に抵抗し9回も投獄された。その娘がインディラ・ガンジー(Indira Gandhi,1917-1984)。彼女もインド首相となった。が、先にも触れたように1984年にシーク教徒に暗殺された。
 彼女がガンジー姓なのは、だんなのフェローズ・ガンジー(Feroze Gandhi)によるもの、なのだが、フェローズがガンジー姓を持つのは、インディラとの結婚を機にしたものだ。それまでは、カーン(Khan)姓だった。なぜフェローズがガンジー姓になったかというと、よくわからないのだが、マハトマ・ガンジーの養子となったとも言われている。が、別説もある。細かいことを忘れたのでぐぐってみると、あった。"Nehru-Khan-Gandhi dynasty"(参照)によると、フェローズは"GHANDI"という姓(正確には姓とは言えない)を持っていたが、マハトマが洒落で現在の"GANDHI"としたとも言われている。この説は案外信憑性がありそうで、どうやら、フェローズの母はGHANDI姓のイスラム教徒だったとのこと。"GHANDI"は宗教名だったのかもしれない。なんだかトリビアの泉ネタだが、日本では受けないだろう。
 話を今回のインド下院選挙に少し戻すと、結局、ソニアが首相を辞退し、マンモハン・シン元財務相が指名された。おっと、シンかよ、って、プロレスじゃないのだが、シンとくればシーク教徒である。つまり、ソニアの義母を暗殺したシーク教徒を立てるあたり、お見事。初のシーク教徒の首相だ。というか、そもそもソニアが辞任したのは暗殺を避けるという含みもあったのではないだろうか。
 ここで、唐沢なをきの好きなチャヒルをダシにシーク教徒の話を書きたい気もするがやめとく。が、一言だけ、あのターバンを巻いているインド人はシーク教徒で、ヒンドゥー教徒はターバンを巻かない。ちなみにあのターバンの中身は…おっとこの話はまた。
 インド国民としては、シーク教徒の首相を選んだんじゃないよという感じもあるかもしれないが、むしろこれがうまく行けば、さらにインドは近代化を進める契機にはなるだろう。
 問題は、各種ニュースでも言われているように貧困問題だ。ニュースではあまり報道されていないようだが、厚生行政の課題も多い。コングレスの復権はこうした社会問題への対応を背景としている。こうした取り組みに積極的な共産党も62議席と少なくない。
 シン首相率いるインドはどうなるのだろうか? この問題を扱った20日のフィナンシャル・タイムズ"Incredible India and its reformers"はインドの近代化(世俗化)を評価していた。

If Mr Singh becomes India's first Sikh prime minister, there is no reason why politicians who back the Congress party's secular vision of India would want to weaken the government or allow the return of the Hindu fundamentalist BJP. Nor will they necessarily feel the urge to reverse reforms begun by Congress and built on by the BJP. On the economic front it may be business as usual.

 もっとも、フィナンシャル・タイムズは、大衆はソニアを求めているのだが、というふうな指摘もしていた。
 私はといえば、率直なところよくわからない。BJP台頭のときの懸念も一応杞憂に終わったので、なんとも言えない。だが、感覚的には、シン首相の行政はかなり困難なことになるのではないか。というのは、インドの大衆はどこかでインディラ時代のモデレートな社会主義的な期待を抱いているのではないかと思うのだが、それを許す世界ではないからだ。

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コメント

ううん
日本人がインドのことをそこまで書くとは珍しいしインド人の私にはちょっと嬉しい感じを与えたのです。私もBJPが圧勝するだろうと思っていましたが結果を見てまさかって感じでした。1年経ってる今ちょっと考えて見るとBJPの「IndiaShining」メッセージが原因ではないかと思っております。経済が良くなっているのがインドの5%の人口については正確と思うけど残りの95%に関しまして「IndiaShining」の程ではなかったと言える。経済が良くなっていることは「感」である感じる・体験するよりマスコミで言ってしまうことは失敗を招いた。でもSoniaGandhiは首相にシンさんをノミネートしたことは一番印象的内容でした。ヒンデゥファンダメンタリズムの背景でいい選択肢なと思いましたし次の選挙でこれは必ずプラスの効果をもたらすだろう。今はインドの首相はシーク教、大統領はイスラム教、野党の党首が元イタリア人、黒人がいまだに大統領になってないアメリカの民主主義よりも1ステップ次という現実のインドの民主主義。問題の山があるけど以前の「宗教」より未来の「希望」で一体感を感じるインド人が最近多い

投稿: マニッシュ | 2005.10.03 16:16

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